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人事部門におけるポジション・役割のひとつに、「人事企画」があります。人事企画は、人事部門の中でも中堅以上が担当する、上流工程に位置づけられる仕事です。
変化の激しい時代で組織が人材を活用して競争力を強化するために、人事企画は大きな役割を果たします。
本記事では、人事企画というポジションにフォーカスし、役割や仕事内容、求められるスキルセットなどについて解説します。
人事企画とは、人事部門におけるひとつのポジションのことです。最初に、人事企画の役割や重要性について解説します。
人事企画は、人事部門の中でも組織や人材の戦略的な課題に取り組むポジションです。
人事企画の役割は、組織のビジョンや目標に沿って人事制度や評価制度、教育制度などを設計・運用・改善することです。
人事企画は組織のパフォーマンスや競争力を高めるために、人材のニーズや能力を分析し、適切な人材マネジメントを行うことが求められます。
人事企画は組織の競争力を高めるために、重要な役割を果たします。
人事企画によって組織に必要な人材を適切に採用し、能力や適性に応じて教育やキャリア開発を行うことで、組織のパフォーマンスを向上させることができます。
また、人事企画が報酬や福利厚生などの制度を設計することにより、社員のモチベーションやエンゲージメントを高めることが可能です。
組織の変化に対応するためにも、人事企画が必要です。人事企画は組織のビジョンや方向性に合わせて、人材の配置や役割分担を柔軟に変更することができます。
市場や社会の動向に応じて人材のニーズやスキルを把握し、必要な教育や研修を提供することも可能です。
人事企画の仕事は、大きく以下の5つに分けることができます。
人員配置計画とは、組織の業務量やニーズに応じて必要な人数や配置部署などを決める計画のことです。人事企画は現状の人員分析や将来の予測をもとに、最適な人員配置計画を策定します。
異動や昇進といった人事異動の管理も、人員配置計画に含まれます。
組織が求める人物像や採用方法、採用時期などを定める採用方針は、人事企画が決定します。採用計画とは、採用方針にもとづいて具体的な採用活動や予算などを決める計画を指します。
人事企画は組織のビジョンや戦略にもとづき採用方針を決定し、効果的な採用計画を策定することが求められます。また、採用方針や採用計画にもとづき採用活動を実施し、その評価も行います。
給与や賞与、福利厚生などの人事制度を設計・運用することも人事企画の仕事です。
人事企画は組織の目標や方針に合わせて、公平でモチベーションを高めやすい人事制度を設計します。設計した制度の運用や改善を行うことも、人事企画の仕事に含まれます。
社員の業績や能力、態度などを評価する評価制度の設計・運用を行います。
人事企画は客観的で透明性が高く、社員にフィードバックができる評価制度を設計します。また、社員の評価の実施や管理も行います。
社員のスキルアップやキャリア形成に必要な、教育プログラムやカリキュラムを企画します。人材育成やキャリア開発では、社員が自己実現できるように研修の企画・実施やコーチング、メンタリングなどを行います。
人事企画は組織のニーズや社員の希望に応えられる教育制度を企画し、人材育成やキャリア開発の支援を主導します。
近年における人事企画の業務では、以下のような課題を抱えています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、在宅勤務やフレックス制度の導入に踏み切る企業が増えました。これに伴い、人事企画では社員のパフォーマンス評価やモチベーション管理の見直しが求められています。
多くの企業の人事評価制度は、業績や能力だけでなく、勤怠や勤務態度などの主観的な要素も含まれています。そのような評価制度は全員が顔をあわせるオフィス勤務を前提としており、働き方の多様化が進んだ現在にはマッチしません。評価基準が不明確で不公平感が生じています。
また、評価結果に応じた報酬やキャリアパスの設定が不十分で、社員のモチベーションや成長を促進できていません。人事企画は人事評価制度を見直して個人やチームの成果や貢献度を明確にし、報酬や昇進などに反映させることが必要です。
日本では、少子高齢化による人口減少や労働力不足が深刻な問題となっています。そうした中で大きなテーマになっているのがダイバーシティとインクルージョンの推進です。
企業は、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材を受け入れ、活躍できる環境を作ることが求められています。多様な人材を採用し、活躍してもらうことで、組織の競争力やイノベーションを高めることができます。
しかし、ダイバーシティとインクルージョンの推進には課題もあります。たとえば古い社内の風土や制度にマッチしない、コミュニケーションに不安があるといった点が挙げられます。
人事企画はこれらの課題を解決するために、柔軟な勤務形態や福利厚生、キャリア開発支援などさまざまな施策を通じて多様な人材が働きやすい環境を整えることが求められます。
多くの企業の人材育成プログラムは、新入社員や管理職などの一部の社員に対してしか実施されておらず、社員全員のスキルアップやキャリア開発に寄与していません。
全社員を対象とするプログラムがある場合でも、プログラムの内容や効果測定が十分ではなく、社員のニーズや市場の変化に対応できていないことが多々あります。
人事企画は人材育成プログラムを充実させ、社員一人ひとりの能力や志向に応じた研修やメンタリングなどを提供する必要があります。
一般的に人事データは給与や勤怠などの基本的な情報を中心に管理されており、社員のパフォーマンスやポテンシャル、満足度などの人材の育成や評価に重要な指標が把握できていません。
また、人事データを分析や可視化できていないケースも多く、人事戦略や施策の立案・実行・評価に活用できていないのが実情です。
人事データを活用するためには、データの収集・整理・分析・活用の一連のプロセスを構築し、データにもとづいた意思決定を行う必要があります。またAIなど最先端技術の活用による人事戦略や施策の効果測定、最適化の推進といった活動も求められます。
先の見通せないVUCA時代に突入した今、市場や社会の変化に対応し、柔軟で革新的な組織を作るためには組織の変革と新しい文化の醸成が必要です。
特にコミュニケーションが不十分で創造性やイノベーションが発揮されにくい組織の場合、組織構造や制度の見直し、コミュニケーションや協働の促進などが求められます。また多様性や個性を尊重する文化が根付いておらず、社員のエンゲージメントやロイヤリティが低い組織は人材が定着しません。
こうした中で組織風土を改善するためには、人事企画が主導してトップダウンで組織ビジョンやバリューを浸透させ、フラットでオープンなコミュニケーションを促進し、チームワークや協働を強化する必要があります。
人事企画の仕事に興味がある場合、どのようなスキルが求められるのかを知っておくことが大切です。
人事企画には、社内外のさまざまな人と円滑にやりとりできるコミュニケーションスキルが求められます。
人事企画は経営層や社員、採用候補者などと接する機会が多く、意見や情報を効果的に伝えたり聞き取ったりすることが欠かせません。他者と協力し、信頼関係を築き、共通の目的に向かって働くチームワークも必要です。
人事データや市場動向などを正確に把握し、論理的に解釈できる分析スキルも必要です。人事企画として組織の課題やニーズを明確にし、最適な人事戦略や制度を提案するために必要となります。
データや情報を効率的に収集したうえで、その情報を論理的に分析して要因や影響度を把握することが求められます。分析したデータや情報をもとに、人事企画の施策や方針を立案します。
人事企画は組織や人材に関する課題や問題を発見・解決することが求められるため、課題解決能力が必要です。課題や問題を明確化して原因や背景を探り、最適な解決策を考え出す必要があります。
課題解決能力には課題の本質や範囲を明確に定義する力や、複数の解決策の中から最適なものを選択する力、選択した解決策を実行して効果や改善点を検証する力も含まれます。
自分の考えや提案を分かりやすく説得力ある形で伝えるための、プレゼンテーションスキルも必要です。経営層や部門長などに対して、人事戦略や制度の必要性や効果を説明するために欠かせません。
これには自分の考えや提案を論理的に構成する力や、考えや提案をわかりやすく表現する力などが含まれます。
プロジェクトマネジメントスキルは、複数のタスクやメンバーを効率的に管理し、目標を達成できる能力のことです。人事企画として、採用計画や評価制度などの導入や改善などのプロジェクトを主導する際に必要です。
プロジェクトの目的・範囲・期限・予算・品質・リスクなどを管理し、プロジェクトを目標達成に導きます。プロジェクトの成果や効果を評価し、フィードバックや改善策を提供する力も必要です。
人事企画として働くことで、どんなやりがいや魅力を感じられるのでしょうか。
人事企画は自社のビジョンや目標に沿った人材を確保・育成・配置することで、組織のパフォーマンスを高める役割を担います。
たとえば新規事業や海外展開などの戦略的なプロジェクトに必要な人材を見極めたり、教育プログラムやローテーション制度を設計したりします。
自分が関わった人事制度や施策が会社の成長や変革につながっていると実感できることは、大きなやりがいになるはずです。また、人事制度や組織の設計に関わることで、会社のビジョンや戦略を実現するための土台づくりに貢献できます。
人事企画は、社員のキャリア開発や評価・報酬、福利厚生など、社員のモチベーションやエンゲージメントに影響する要素を設計・運用します。
社員の声を聞きながら一人ひとりが自分の能力や興味に応じて働ける環境を整えることで、社員の成長や満足度の向上に貢献できることは大きなやりがいになります。
たとえばキャリアパスや目標設定の仕組みを作る、パフォーマンスに応じたインセンティブや表彰制度を導入するといった支援策が挙げられます。
人事企画は経営層や各部門と密に連携しながら組織全体の課題やニーズを把握し、解決策を提案・実施する必要があります。
そのため、ビジネス理解力やコミュニケーション力、分析力や企画力などさまざまなスキルや知識を身につけることができます。これらのスキルは汎用性が高いため、転職やキャリアチェンジなどの際に役立ちます。
また人事制度や施策は常に変化するものなので、最新のトレンドに触れる機会が多くあります。たとえばデータ分析ツールやAI技術を活用した人事施策の効果測定ツールなどに触れることは、新しい時代に即したキャリアを形成するためによい影響を与えます。
人事企画を目指す場合、自身の適性についても考えておきましょう。人事企画には、以下のような特徴がある人に適性があります。
人事企画は、社内外のさまざまな人と関わり、調整や交渉を行うことがあります。たとえば社員にはキャリアや評価に関する相談に応じ、採用候補者には会社の魅力や働き方について説明するなどします。
そのため、相手の立場やニーズを理解し、円滑にコミュニケーションをとれる人に向いています。
また他部署や外部パートナーと協力してプロジェクトを進めることがあるため、協調性があり、チームで成果を出せる人にも適性があります。
人事企画は組織の現状や課題を分析し、効果的な施策や制度を設計・提案する仕事です。そのため、データや情報を整理し、論理的に考える力がある人に向いています。
たとえば採用計画や教育制度などの人事制度を設計するときには、市場や競合の動向や自社の強み・弱みを把握し、目標や予算を設定し、効果測定や改善策を考える必要があります。そのような一連のプロセスは、論理的に進めることが必要です。
人事企画は自ら積極的に課題を見つけて解決することが求められる仕事なので、主体性や責任感がある人が向いています。
組織に大きな影響を与えることを理解し、自分の担当領域だけでなく組織全体のことを考えて行動し、自分の意見や提案をしっかりと伝えることができる人に適性があります。
また、自分が考えた施策や制度を実際に実行し、その成果や問題点に対して責任を持って対処することができる人にも向いています。
変化の激しいビジネス環境に対応し、組織や人材の成長を支援するためには、既存の枠にとらわれず新しいアイデアを出せる力が必要です。そのため、柔軟性や創造性がある人に適性があります。
普段から固定観念にとらわれずに新しいアイデアや方法を考えたり、失敗や挑戦から学んだりすることができる人は、人事企画として活躍できる可能性があるでしょう。
人事企画ポジションからのキャリアパスについて、どんな選択肢があるのかを解説します。
人事企画というポジションの中で、キャリアを拡張させていくパターンです。
人事企画ポジションになった場合、まずは人事制度や評価制度の企画・運用などの業務に携わります。経験を積む中で人材育成やキャリア開発のプログラムの設計・実施といった業務にも関わっていくでしょう。
これらの業務で経験を積むと、組織変革や経営戦略に関するプロジェクトに参加し、組織の効率化やイノベーションを促進するための提案や実行を行うようになります。
HRBP(Human Resource Business Partner)とは、ビジネス部門と人事部門をつなぐ役割を担う人材・人事機能です。
HRBPの仕事では人事企画としての経験を活かすことができるため、人事企画からHRBPにキャリアを展開させるパターンもあります。
HRBPは人事部門の専門知識や制度を理解していることと、ビジネス部門の業務内容や目標に精通していることが必要です。人事企画では人事系の知識やスキルだけでなくビジネス視点や戦略的思考も必要なので、人事企画の業務を通じてHRBPになるための土台を構築できるでしょう。
人事企画の経験を経て、将来的には人事部のマネージャーや部長に昇進するというキャリアパスもあります。
マネージャーや部長に昇進するためには、人事部門全体の方針や計画を立案・推進できることや、人事部門のメンバーをマネジメントして育成・活用できることなどが必要です。
経営陣や組織外の関係者とも良好な関係を築き、情報収集や交流ができることも求められます。
人事以外の部署に異動して新しい経験を積むことで、キャリアを広げていくプランもあります。
管理部門の他部署へ異動するパターンか、営業などビジネス部門へ異動する2つのパターンが考えられます。
人事企画から他部署へ異動することで、他部署の業務内容や課題を深く理解できます。また他部署のメンバーや関係者とのネットワークを構築することも可能です。
これらは、自身のキャリアの幅や選択肢を広げることにつながるでしょう。
人事企画の仕事を通じて興味を持った分野の資格を取得し、専門家として独立するパターンも考えられます。
人事関連の資格には、たとえば社会保険労務士やキャリアコンサルタント、産業カウンセラーなどがあります。
独立することで、特に自分の得意分野や興味のあるテーマに専念できます。自分の働き方を自由に決められることや、自分の価値観やスタイルに合ったクライアントと仕事ができることなどもメリットです。
転職して、人事企画の仕事を続けるという選択肢もあります。
他社の人事制度や文化を学べることで人事企画としての知見が広がり、キャリアアップにもつながりやすくなります。環境を変えることで、より自分に合ったポジションや役割が見つかる可能性もあるでしょう。
人事企画として転職するためには、人事企画としての実績や評価を得ていることが必要です。転職先の会社や人事部門に魅力を感じ、共感できるかどうかも大切な要素です。
キャリアプランや目標を明確にしたうえで、転職にチャレンジしましょう。
人事企画や上流職であるHRBP・マネージャー職を目指して転職する場合、人事企画の転職支援実績がある転職エージェントの利用をおすすめします。
採用ハードルが高い職種は、非公開求人として転職エージェントが独占して紹介している可能性が高いでしょう。また転職におけるノウハウや応募先の組織体制など、お役立ち情報を共有してくれます。
人事企画の転職に強い転職エージェントを3社、ご紹介します。
BEET-AGENTは、人事企画・HRBPなど人事の転職に強い転職エージェントです。
管理部門・バックオフィス人材に特化しており、事業拡大に伴う人事企画の増員募集や採用にも直接関わる人事企画担当など、多種多様な求人を取り揃えています。
BEETには企業研究の担当者も在籍しており、企業ごとに異なる人事企画の業務内容・組織体制などを把握し、求職者に共有してくれます。
公式サイト:https://beet-agent.com/
人事など管理部門に強い転職エージェントとして、MS Agentは30年以上の実績があります。
大手・上場企業や外資系企業に強みがあるため、大きな組織で人事企画に携わりたい人におすすめです。
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
人事の転職は、その名の通り人事に特化した転職エージェントです。
全国の人材紹介会社集合サイト「人材バンクネット」を運営しており、広域なネットワークを活かした求人・ノウハウの豊富さが魅力です。
公式サイト:https://www.jinzai-bank.net/
人事企画の仕事内容は、人員配置計画の策定や採用方針・採用計画の決定、評価制度の設計など多岐にわたります。
労働力不足や働き方の多様化など社会が大きな変化を迎えている中で、人事企画が果たす役割は重要性を増しています。
人事企画の仕事に興味がある方は、まずは人事部門で経験を積むことから始めましょう。
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