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民間企業の会社員が加入する健康保険の一つに「関東ITソフトウェア健康保険組合」があります。
関東地方に拠点を置くIT企業が対象であり、加入するメリットが評価されて年々人気が高まっています。
本記事では、関東ITソフトウェア健康保険組合に加入するメリットやデメリット、加入条件や方法をまとめて解説します。
現在、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入中でも、別の選択肢を検討中の人事・労務担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
関東ITソフトウェア健康保険組合とは、関東に拠点を置くIT企業に向けて、健康保険に関する事業をおこなう公法人です。
独自の制度や取り組みを通して、被保険者やご家族の生活安定や福祉向上を目指しています。
公的医療保険制度は以下3つに分類され、関東ITソフトウェア健康保険は「被用者保険」に該当します。
また被用者保険は、民間企業の会社員が加入する「健康保険」と、公務員や私立学校教職員が加入する「共済組合」の2つに区分されます。
健康保険は、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入するのが一般的です。
しかし、従業員数が常時700名以上の企業は「単一健康保険組合」を独自に設立可能です。また、同種・同業の事業者が3,000人以上いる場合は、厚生労働大臣の認可を受けて「総合型健康保険組合(総合健保)」として設立できます。
関東ITソフトウェア健康保険組合は、総合健保として認められています。
参考:ITS健保について | [ITS]関東ITソフトウェア健康保険組合
2024年2月末における、関東ITソフトウェア健康保険組合に加入する事業所数と被保険者数の内訳は以下のとおりです。
事業所数 | 7,373社 | |
---|---|---|
被保険者数 | 男 | 420,754人 |
女 | 236,075人 | |
計 | 656,829人 | |
被保険者平均年齢 | 38.01歳 | |
平均標準報酬月額 | 男 | 469,903円 |
女 | 335,934円 | |
平均 | 421,752円 | |
被扶養者数 | 307,265人 | |
扶養率 | 0.47 |
引用:事業概況 | [ITS]関東ITソフトウェア健康保険組合
関東ITソフトウェア健康保険組合の会員数は、ソフトウェア産業の発展にともない、年々増加しています。
また、関東ITソフトウェア健康保険組合は、保険料の安さや福利厚生の充実といった、加入するメリットが多くある点も人気の理由の一つです。メリットの内容は後述します。
関東ITソフトウェア健康保険組合は加入希望者が多い分、条件が厳しく設けられています。また、個人事業主や被保険者の親族も、条件を満たせば加入できます。
企業が関東ITソフトウェア健康保険組合に加入する場合、以下の11項目の加入基準を満たす必要があります。
個人事業主が加入する方法は「法人化する」と「任意継続する」の2パターンがあります。
法人化する場合、上述した加入条件を満たす必要があります。また、任意継続できる要件は以下の3つです。
加入要件が少ないため、もし関東ITソフトウェア健康保険組合に加入している事業所を、社員が退職するなら任意継続を選ぶのが良いでしょう。
ただし、国民健康保険やご家族の健康保険に加入する方が保険料を安く抑えられる場合もあるため、きちんと比較して決めることが重要です。
関東ITソフトウェア健康保険組合の被保険者は、以下の条件を満たす場合のみ、配偶者を含む親族を被扶養者として登録できます。
世帯関係や収入状況を総合的に判断し、認定されます。
関東ITソフトウェア健康保険組合に加入すると、以下5つのメリットが得られます。
関東ITソフトウェア健康保険組合は、協会けんぽと比べて一般保険料が安く設定されており、負担軽減のメリットがあります。
令和6年4月以降の、一般保険料と介護保険料率はそれぞれ以下のとおりです。
毎年見直しがおこなわれ、3月(4月納付分)から適用されます。
また、実際の一般保険料を比較すると以下のような差額が発生しますが、介護保険料も含む場合は差額が減少します。
協会けんぽ (全国平均) |
関東ITソフトウェア健康保険組合 | 差額 | ||
---|---|---|---|---|
被保険者(個人分) | 月額 | 20,500円 | 19,475円 | 1,025円 |
貸与等(7・12月計) | 41,000円 | 38,950円 | 2,050円 | |
年額 | 287,000円 | 272,650円 | 14,350円 | |
事業主(20人分 | 月額 | 410,000円 | 389,500円 | 20,500円 |
貸与等(7・12月計) | 820,000円 | 779,000円 | 41,000円 | |
年額 | 5,740,000円 | 5,453,000円 | 287,000円 | |
事業主と被保険者全員 | 月額 | 820,000円 | 779,000円 | 41,000円 |
貸与等(7・12月計) | 1,640,000円 | 1,558,000円 | 82,000円 | |
年額 | 11,480,000円 | 10,906,000円 | 574,000円 |
令和6年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます | 協会けんぽ | 全国健康保険協会
健康保険に加入していれば、病気やけがなどが起きた際に一定の保障が受けられます。
内容としては、健康保険法で定められている「法定給付」と、法定給付に上乗せして支給される健康保険組合独自の「付加給付」の2つがあります。
協会けんぽには付加給付がありませんが、関東ITソフトウェア健康保険組合では健康の保持増進や福祉向上を目的として、付加給付制度を採用しています。
以下6つの状況に当てはまれば、被保険者や被扶養者は付加給付が受けられます。
関東ITソフトウェア健康保険組合では、被験者本人と家族の健康保持・推進に向けて数多くの施設と提携しています。
季節を問わず利用できる保養施設やスポーツ施設、スポーツクラブやゴルフ場が特別料金で利用可能です。
またJTBが契約している旅館やホテルに宿泊したり、交通機関と宿泊がセットになった旅行パックを利用したりする場合、利用補助が受けられます。
さらには体育奨励イベント「健歩大会」の一環として、東京ディズニーリゾートをお得に利用できます。
プライベートを充実させられるので、ヘルスケアだけでなく従業員満足度の向上にもつながるでしょう。
2つの直営検診センターを設置しつつ、全国183拠点の医療機関や健診センターと契約し、健康診査や特定保健指導の実施を委託しています。
組合員は性別や年齢に応じて、健康診断や人間ドックといった健康診査を受けることが可能です。また、健康診査やインフルエンザ予防接種にかかる利用料については、年度内で1人1回のみ費用補助が適用されます。
IT企業では、新型コロナウイルス対策としてテレワークが推進されました。その結果、就業環境が大きく変わり、従業員の心身への影響が懸念されています。
そこで関東ITソフトウェア健康保険組合は、経営層や人事労務担当者に向けたメンタルヘルス対策セミナーを毎年実施しています。
会社として、被保険者の心身の健康を守る、サポート体制が目指せるでしょう。
関東ITソフトウェア健康保険組合には、以下2つのデメリットがあります。
先述したとおり、関東ITソフトウェア健康保険組合の加入条件は厳しくなっています。被保険者の人数や平均年齢、扶養率を自社の状況と照らし合わせてチェックしましょう。
また被保険者数の増加にともない、保養施設や健康診断の予約が取りにくくなるケースがあることも理解しておきましょう。
協会けんぽでは、医療費の実態をふまえて都道府県ごとに保険料が決定されます。
一方で健康保険組合は、被保険者の数や年齢構成、組合員の給与水準や業種を総合的に判断し、3〜13%の間で保険料を決定します。
もし、関東ITソフトウェア健康保険組合の運営状況が不安定になってしまったら、保険料や給付額が変動するリスクがあるため注意しましょう。
関東ITソフトウェア健康保険組合に加入するには、以下の手順で申請しましょう。
まずは加入条件をすべて満たしているのを確認し、Webサイトから加入申出書をダウンロードします。
加入申出書には、主に以下の内容を記入します。
加入申出書を印刷した後は、以下の添付書類を用意します。
書類が揃ったら、関東ITソフトウェア健康保険組合へ郵送します。書類に不備があった、もしくは確認書類が新たに必要となった場合、再度提出が求められます。その後審査を経て、約1〜2ヵ月後に結果の連絡が来ます。
今回は、関東ITソフトウェア健康保険組合のメリットやデメリット、加入条件や方法をまとめて解説しました。
関東ITソフトウェア健康保険組合は、関東地方を拠点とするIT企業を対象とする総合型健康保険組合です。ソフトウェア産業の発展に加え、充実した制度や保険料の安さにより、年々人気が高まっています。
しかし、関東ITソフトウェア健康保険組合に加入するには、厳しい条件を満たさなければなりません。
企業にとって加入するメリットが多ければ、この記事で紹介した方法に沿ってスムーズに手続きを進めましょう。