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短期でもアルバイトを雇ったら社会保険の手続きは必要?加入要件や対応方法を解説

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短期でもアルバイトを雇ったら社会保険の手続きは必要?加入要件や対応方法を解説

雇用期間や労働時間などの一定条件を満たす労働者は、社会保険や労働保険への加入が求められます。

また、2020年の法改正にともない、短時間労働者でも社会保険に加入できるよう、条件の見直しがおこなわれています。それに伴い、短期間・時間で働くアルバイトは、社会保険に加入する必要があるのでしょうか。

今回は、短期アルバイトが社会保険に加入する条件やメリット、企業側の対応方法を一挙解説します。

雇用期間1年未満の短期アルバイトも社会保険の対象に!

2020年5月29日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(年金制度改正法)」が成立し、社会保険の加入条件が緩和されました。

具体的には、雇用期間の見込みが「1年以上」から、フルタイムの従業員と同様に「2ヵ月超」へ変更されています。

そのため、雇用期間が1年未満の短期アルバイトでも、一定条件を満たせば社会保険の加入が必要です。

社会保険が適用される事業所は2種類

社会保険の適用事業所は、以下の2種類に分けられます。

強制適用事業所

すべての法人事業所、もしくは常時従業員を5人以上雇用している事業所が当てはまります。ただし、一部サービス業や農林業、水産業、畜産業などは例外です。

労働者が社会保険の加入条件に当てはまる場合、事業主や労働者の意思に関係なく、必ず健康保険と厚生年金保険に加入しなければなりません。

任意適用事業所

強制適用事業所以外でも、従業員の半数以上が適用事業所となることに同意し、かつ所定の手続きを経て厚生労働大臣の認可を受ければ、任意適用事業所として登録が可能です

加入条件を満たしていたら、労働者本人の希望で加入するかを選べます。

短時間労働者の社会保険加入が求められる事業所は2種類

社会保険の適用範囲を拡大するため、短時間労働者における5つの加入要件が設けられています。うち1つが「以下2種類のうちいずれかの適用事業所で働いている」ことです。

特定適用事業所

特定適用事業所とは、フルタイムの従業員数と週労働時間がフルタイムの4分の3以上ある従業員数の合計が、101人以上となる企業等を指します。

もし短時間労働者が社会保険の加入要件を満たすなら、必ず健康保険に加入しなければなりません。

なお、2020年の法改正にともない、対象となる企業規模は段階的に引き下げられています。2022年9月までは501人以上、2022年10月からは101人以上となり、2024年10月からは51人以上に変更されます。

特定任意適用事業所

特定適用事業所以外でも、事業主と加入対象者で労使合意をすれば、特定任意適用事業所として登録できます。

短時間労働者が加入要件を満たしていたら、労働者本人の希望で加入するかを選べます。

参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構

社会保険適用拡大ガイドブック|厚生労働省

アルバイトに適用される保険5種類

国や各都道府県などが運営する社会保障制度のうち、以下5つの保険がアルバイトにも適用されます。

本記事のテーマでもある「社会保険」は、健康保険や厚生年金保険、介護保険の総称です。

【社会保険】

  • 健康保険(医療保険)
  • 厚生年金保険
  • 介護保険

【労働保険】

  • 労災保険
  • 雇用保険

健康保険(医療保険)

健康保険は、公的医療保険制度の一種です。

被保険者は、業務外のけがや病気などに対する医療費の給付や医療サービスが受けられます。

保険料は事業主と労働者が半分ずつ負担する「労使折半」で、労働者本人の標準報酬月額をもとに算出されます。

厚生年金保険

厚生年金保険は、70歳未満の会社員や公務員が加入する公的年金制度です。

被保険者は、老後年金や遺族年金、障害年金を受け取れます。なお保険料は、労働者と事業主による労使折半です。

20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する「国民年金」に上乗せする形で保険料を支払いますが、その分給付額も多くなります。

健康保険や厚生年金保険は、雇用形態に関わらず一定条件を満たせば加入義務が発生します。

介護保険

介護保険は、被保険者が65歳以上で要介護状態になった際に、介護サービスや給付が受けられる制度です。

保険料は40〜64歳までは健康保険料とともに給与から天引き、65歳からは国民年金から天引きされます。なお、40歳以上かつ健康保険の加入者が自動的に加入するため、事業者側の手続きは不要です。

労災保険

正式名称は「労働者災害補償保険」です。業務災害や通勤災害が発生した際、治療費や休業時の補償など、労働者はさまざまな給付が受けられます。保険料は全額事業主が負担します。

なお雇用形態に関わらず、すべての労働者に加入義務が発生します。そのため従業員を1人でも雇用する事業所は「適用事業所」となり、労災保険の加入手続きが必要です。

管轄の労働基準監督署に必要書類を提出すれば、今後雇用する労働者の人数が変化しても更新手続きは不要です。

雇用保険

雇用保険は、失業給付や再就職促進のための給付、雇用安定に向けたサポートが受けられる制度です。

保険料は事業主と労働者の双方で負担し、その割合は賃金総額や事業種類によって異なります。

加入対象者は雇用形態に関わらず、週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある労働者です。

事業者は、労災保険の加入手続き完了後に受け取った「労働保険保険関係成立届事業主控」を含め、管轄するハローワークへ必要書類を提出しましょう。

なお年に1回、雇用保険料と労災保険料の年度更新のため申告書を提出する必要があります。

アルバイトの社会保険加入条件

雇用形態を問わず、社会保険への加入条件は以下の3つです。

  • 常時雇用されている
  • 所定労働時間や日数が常時雇用者の4分の3以上
  • 短時間労働者の5つの要件にすべて当てはまる

常時雇用されている

常時雇用とは、アルバイトやパートなどの雇用形態に関わらず、以下2つのいずれかに該当する人を指します。

  1. 期間の定めなく雇用されている者
  2. 過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者、または雇い入れ時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者

所定労働時間や日数が常時雇用者の4分の3以上

週の所定労働時間および月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上あった場合、短時間労働者でも社会保険の対象です。

短時間労働者の5つの要件すべてに当てはまる

先ほど紹介した2つの条件に当てはまらなくても、短時間労働者は以下5つの要件すべてに当てはまった場合、社会保険の対象者となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上ある
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上である(ただし残業代や賞与等を除く)
  • 2ヵ月を超えて使用されることが見込まれる
  • 学生でない(ただし休学中または夜間学生は加入対象となる)
  • 特定適用事業所または特定任意適用事業所に勤めている

アルバイトやパートを含む短期労働者が社会保険の加入条件を満たす場合、加入を促すことで次の2つのメリットが得られます。

人材の定着と獲得につながる

社会保険は福利厚生の一種で、被保険者はさまざまな給付やサービスが受けられます。福利厚生の充実により企業の魅力が向上し、人材の獲得および定着がしやすくなるでしょう。

キャリアアップ助成金の支給対象になる

アルバイトやパートを含め、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進させる取り組みをした事業主に対し、キャリアアップ助成金が付与されます。

キャリアアップ助成金は、以下6種類あります。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース 
  • 賃金規定等共通化コース 
  • 賞与・退職金制度導入コース 
  • 社会保険適用時処遇改善コース(2026年3月31日まで)

なかでも社会保険適用時処遇改善コースは、2024年3月31日までの「短時間労働者労働時間延長コース」に代わり新設されました。

以下2つのうちいずれかの取り組みをおこなった企業が対象です。事業所管轄のハローワークへキャリアアップ計画を提出し、取り組みの実施と6ヵ月分の賃金支払いが完了すれば、支給審査・決定となります。

  1. 新たに社会保険の被保険者となった際、手当支給・賃上げ・労働時間延長をした場合
  2. 労働時間を延長して、新たに社会保険の被保険者とした場合

短期アルバイトに社会保険加入を拒否された場合

社会保険に加入すると給料から保険料が天引きされて手取り額が減るため、なかには加入したくないと考える人もいるでしょう。

その場合、事業者側には以下2つの対応が求められます。

社会保険に加入するメリットを説明する

まずは、労働者からの理解を得られるよう、社会保険に加入するメリットを丁寧に伝えましょう。具体的には、以下の3つが挙げられます。

  • 保険料の負担額が少なくなる(会社が一部負担する)
  • 受け取れる年金の種類が増える(老齢年金、障害年金、遺族年金)
  • 充実した医療給付が受け取れる(傷病手当金、出産手当金)

国民年金や国民健康保険は全額自己負担ですが、社会保険に加入すれば労使折半となり、労働者側の負担額が減ります。

また、基礎年金に上乗せする形で納付するので、将来受け取れる年金の種類や金額が増えます。他にも病気やけが、出産などで仕事を休む際、賃金のうち3分の2程度を受け取れるのもメリットです。

参考:パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。 | 政府広報オンライン

適用条件に満たない範囲で働いてもらう

社会保険の加入条件を満たさなければ、加入しないまま働いてもらうことも可能です。

短期アルバイトは、短時間労働者の要件のうち1つでも当てはまらなければ対象外となります。そのため週所定労働時間が20時間未満、もしくは月収が8.8万円未満になるよう調整すると良いでしょう。

アルバイトにおける社会保険への加入手続き

アルバイトが社会保険に加入する際は、事実発生から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出しましょう。

提出先は、事務センターまたは管轄の年金事務所です。また、提出方法は、窓口・郵送・電子申請の3種類があります。

従業員への本人確認をおこなったうえで、以下の項目を記入しましょう。

提出者記入欄

  • 事業所整理番号
  • 事業所番号
  • 事業所の所在地
  • 事業所の名称
  • 事業主の氏名
  • 電話番号

被保険者の情報

  • 氏名
  • 生年月日
  • 個人番号(基礎年金番号)
  • 取得年月日
  • 被扶養者の有無
  • 報酬月額
  • 備考

このとき、備考欄の「3.短時間労働者の取得(特定適用事業所等)」に丸をつけます。

社員が副業していたら社会保険はどうなる?

近年は働き方の多様化が進み、社員が副業としてアルバイトする事例もみられます。その場合、社会保険はどのように扱えばよいのでしょうか。

社会保険が適用される・されないケースをそれぞれ紹介します。

社会保険が適用されるケース

アルバイト先でも雇用契約を結び、かつ社会保険の加入条件を満たしている場合は、保険適用となります。

もし本業と副業の両方で社会保険が適用されるなら、社会保険料の支払いが二重に発生する分、将来もらえる年金額が増えます。なお被保険者本人は、事実発生から10日以内に、二重加入について日本年金機構へ届け出なければなりません

「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出し、被保険者本人が主たる事業所を選びます。提出先は、主たる事業所を管轄する年金事務所です。

手続き完了後は、それぞれの事業所で受ける報酬月額にもとづき保険料が算出されます。また、主たる事業所のみ健康保険証を発行できるので、複数枚所持する状態を防げます。

社会保険が適用されないケース

雇用契約を結んでいない、もしくは社会保険の加入条件に満たない範囲で働いているなら、社会保険の適用外となります。

なお雇用契約を結ばない働き方としては、フリーランスやギグワークが挙げられます。

フリーランスとは、個人でクライアントからの業務を請け負う働き方です。自身の経験・知識・専門スキルが求められ、成果物に応じて報酬が発生するのが一般的になります。

一方ギグワークとは、インターネット経由で企業や個人から仕事を請け負う単発・短時間の働き方です。

専門的なスキルがなくても手軽に仕事ができ、一般的には勤務時間に応じて報酬が発生します。例として配送やデリバリーなどが挙げられます。

なおフリーランスの一種としてギグワークが位置づけられる場合もあるなど、両者の定義はさまざまです。

企業から支払われる給与所得ではなく、フリーランスやギグワークなどにより事業所得・雑所得をもらう場合には、社会保険は適用されず保険料も増えません。

参考:兼業・副業等により 2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ|日本年金機構

まとめ

今回は、短期アルバイトが社会保険に加入する条件をはじめ、加入メリットや企業側の対応方法をまとめて解説しました。

2020年の法改正にともない、雇用期間が1年未満の短期アルバイトも社会保険に加入できるようになりました。

アルバイトが社会保険に加入すれば、人材を確保できたり助成金を受け取れたりと企業側のメリットもあります。まずは自社で雇用している従業員が加入要件を満たすかを確認しましょう。

そして対象者への説明を丁寧におこなったうえで、書類提出の期限に間に合うようスピーディに手続きを進めましょう。

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BackOfficeDB編集部
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BackOfficeDB編集部
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