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有給休暇は、心身の疲労を回復し仕事をより円滑に進める上で、従業員、雇用主双方にとって無くてはならないものです。しかし、有給休暇についての細かい定めについて詳細に知っている方は少ないのではないでしょうか。
本記事では付与日数や初回付与日など有給休暇の基礎知識から、ケース別の有給休暇の付与について詳しく解説しています。
有給休暇は業種・業態や労働者の区分なく、一定の要件を満たしている労働者すべてに与えられる権利であり、取得日数についても法律で定められています。労働者の健康と生活の質を向上させるために設けられています。
ここでは、条件別の有給休暇の付与日数について詳しく説明します。
有給休暇は、所定労働時間が週30時間以上・週5日以上の就業条件であれば基本日数が付与されます。
一般的には、入社した日から6か月後に初回の有給休暇が与えられます。しかし、会社によっては労働者が不利益を被らない範囲で付与が前倒しになることもあるようです。
有給休暇を取得した日は賃金が発生し、基本として1日単位での取得が可能です。しかし、会社の規則によっては半日や時間ごとでの取得が可能です。
以下では、所定労働時間別の付与日数について詳しく説明します。
フルタイム勤務や、所定労働日数が週5日以上・所定労働時間が30時間以上の勤務の場合は基本日数が付与されることになります。この場合、下記の表に従って付与する日数が決定します。
原則として、出勤日数÷所定労働日数が8割を超えることが付与対象の条件です。
継続勤務年数(年) | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
※参照元:リーフレットシリーズ労基法|厚生労働省
初回付与日にまとめて与えられる10日の有給休暇を、半年ごとに分割して1年かけて付与することは認められていません。就業規則に明記された場合でも、労働基準法と比較した際に労働者が不利になる変更は労働基準法違反となるので注意が必要です。
また、入社日に関係なく有給休暇を一斉に労働者へ付与する場合は、短縮された算定期間をすべて出勤したものとみなして有給休暇の計算を行います。
パートやアルバイトなど、所定労働日数が週4日・所定労働時間が30時間未満の短時間労働の場合は、所定労働日数と勤務年数に応じて有給休暇が付与されます。この場合も、フルタイムと同様に出勤日数÷所定労働日数が8割であることが条件です。
週の所定労働日数が決まっていない場合は、直近6カ月の労働日数の2倍、もしくは、前の年の労働日数が有給休暇を計算する際の基準になります。
具体的な数値は以下の表を参考にしてください。
所定労働日数 | 継続勤務年収(年) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
週間 | 年間 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
4日 | 169日~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121日~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
2日 | 73日~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
1日 | 48日~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
※参照元:リーフレットシリーズ労基法|厚生労働省
所定労働日数が週によって決まっている場合、週所定労働時間での判断になり、それ以外は1年間の所定労働時間で判断されます。
パートやアルバイト、嘱託社員でも、一定の条件を満たせば有給休暇の取得が可能です。アルバイト・パート勤務、嘱託社員での有給休暇が発生する条件は、入社日から半年以上経つこと、所定労働日の8割を超えることの2点です。
フルタイム勤務と同様に、週5日以上もしくは週30時間以上をラインに有給休暇の日数が異なってくるので注意が必要です。休暇の日数の算出方法は上記の2つの表を参照ください。
有給休暇の付与は原則として1日単位となっています。しかし、労使協定の締結などにより時間単位での有給休暇の取得が可能になりました。(以下時間時間単位年休と表記)
時間単位年休の取得には、労働組合、もしくは労働者の過半数の代表と労使協定を結ぶことが必要です。なお、この時に結んだ労使協定は、管轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。
上記の書面上での協定に基づき、年間の有給休暇のうち、1年で5日の範囲内で時間単位年休が付与されます。
労働基準法の改正により、平成31年4月から有給休暇の付与が10日以上のすべての労働者に対して年5日の有給休暇の確実な取得が必要となりました。しかし、時間単位年休に関しては、確実に取得しなければならない5日からの差し引きはできません。
有給休暇をとるうえで必要な要件となってくる出勤率は、出勤日を全労働日で割ることで計算することができます。
この式での計算結果が、8割(0.8)を超えた場合は有給付与の対象です。
出勤日とは、全労働日のうちで、実際に就労した日の事です。この場合、就労の有無を労働日ごとに判断します。そのため、遅刻・早退などで所定労働時間の一部しか就労してない場合でも出勤日としてカウントしなくてはいけません。
労働法上での勤務日数のカウントは、原則1日単位となっています。仮に1時間しか勤務してない日があったとしても、勤務した時間がある以上は出勤日数1日としてカウントされます。
原則、1年間で5日の取得が義務となっている有給休暇ですが、事情によっては使い切ることができない場合もあるでしょう。その場合、残った有給休暇がどうなるのかを以下で解説します。
有給休暇の期限は、法律の上で2年と定められています (労働基準法115条) 。付与された有給休暇を期限である2年以内に消化しきれないと、残った有給休暇は無くなる仕組みです。
付与される有給休暇は最大20日までとなっています。このうちの5日は義務で取得しないといけないことになっているため、次の年に繰り越せる休暇は15日が上限です。
これに新たに20日の有給休暇が付与されると35日が目安です。有給休暇の残りの日数が35日を超えてしまった人がいる場合、休暇の所得履歴を確認してから、取得を促す必要があります。
付与された有給休暇を1年以内に消化しきれなかった場合、残日数を翌年に繰り越すことが可能です。
仮に、4月1日に正社員として入社した場合は、出勤を求められる日(全労働日)の8割以上の出勤で、6カ月後の10月1日から10日の有給休暇が付与されます。この場合、有給休暇が付与された10月1日から次の年の9月30日までにすべての日を消化しなくても、残った日数を次の年に繰り越すことが可能です。
有給休暇の請求権があるのは2年までで、有給休暇の繰り越しが可能なのは次の年の1年間に限ります。仮に有給休暇の保有期間が2年を超えてしまうと、時効により消滅してしまいます。
そのため、有給休暇を無駄に失ってしまわないようにきちんと有給休暇を管理していくことが大切です。
有給休暇が退職時に残っている場合、そのまま退職してしまうと持っている有給休暇はすべて消失してしまいます。そのため、有給休暇を有効に利用するためには、退職前にしっかり使い切る必要があります。
有給消化を始める前には、残日数をしっかり確認する事が大事です。上記でも度々触れているように、入社以降の期間や勤務していた日数などによって有給休暇の付与日数が変わってくるためです。
また、退職前に有給休暇を消化したい場合は、業務の引継ぎやスタッフの調整などを考慮して、有給を使い始めたい1カ月前を目安に職場に意思を伝えるのがよいでしょう。この際、どのように有給休暇を消化して行くのかなど退職までのスケジュールも相談することにより、有給消化と退職を円満に進めやすくなります。
労働者が有給休暇を使うことを会社が拒否することは原則できず、退職前の有給休暇の消化も同様です。
しかし、例外として会社の運営に影響が出てくる繁忙期などの場合は、会社が有給休暇の取得時期をずらす事のできる時季変更権があります。しかし、退職日までの期間が少なく、取得をずらすことができない場合には、会社が時季変更権を行使できないケースもあるようです。
希望した時期の有給休暇の消化や時季変更権の行使も難しいという場合は、双方がしっかり話し合いをして合意を得たうえで、退職日を遅らせて繁忙期の後に有給休暇を消化して退職するのも一つの手といえます。
引継ぎなどの理由から有給休暇を使い切る事ができなかった場合、使わなかった有給を「会社に買い取ってもらえないか」と考える人もいることでしょう。
結論から言えば、原則として会社が法定の有給休暇を買い取ることは、労働基準法(39条)に違反するために認められていません。有給休暇は本来、労働者がしっかりと休息をとることにより心身の疲れを取って継続的に働けるようにするためのものであるからです。
ただし、特定のケースに限っては例外的に有給休暇の買い取りが認められています。それは、法定の日数を超えた有給休暇を買い取る場合です。
例えば、法定の上では10日の有給休暇が認められている従業員に対して会社側が12日の有給休暇を付与している場合、法定分を超えた2日分を買い取ることは違法ではありません。また、労働者が有給休暇を2年間使用せず、時効を過ぎて消滅した分を会社が買い取ることも許されています。
しかし、会社側には労働者が消化しきれなかった有給休暇を買い取る義務はありません。また、会社側が労働者の有給休暇を買い取る際の金額に規定はなく、双方で話し合って決定していくことになります。
有給休暇が付与されるタイミングは法律で決まっていますが、雇用形態や会社の事情によっては付与のタイミングが変動することもあるので注意が必要です。
ここでは、ケース別の有給休暇が付与されるタイミングを解説します。
有給休暇は、企業に入社して6か月経過した労働者に付与しなければいけないことが労働基準法第39条によって定められています。
有給休暇の付与を受ける労働者が再雇用の場合は、有給休暇の基準日と今までの勤続年数はリセットせずに、退職前の勤続年数と基準日をそのまま継続して考えます。ただし、再雇用の労働者の労働日数・労働時間が減っている場合は、有給休暇の付与日数は比例付与方式をもとに決定するので注意が必要です。
労働者が月途中で入社した場合でも、他の労働者と同じように入社から6カ月後の日が付与の基準日となります。また、万が一の病気や怪我・育児などで休業をしている場合は、休業企業も出勤日に含めて計算をしたうえで付与されます。
初回の有給休暇の付与は入社後6か月の場合が一般的ですが、労働者に不利にならないようであれば有給休暇の付与を前倒しにすることができます。
入社日に5日の有給休暇を前倒しで付与し、6カ月経過した後に残りの5日を付与するという分割付与も会社によっては存在します。
ただし、仮に前倒しで有給を付与した際の基準日は初回の付与日に合わせなければなりません。例えば、4月1日の入社日に5日を付与し、その6か月後の10月1日に残りの5日を付与した場合に基準日は、毎年の4月1日となります。
従業員の有給休暇の付与日がバラバラだと、会社の規模によっては管理が複雑化してしまいます。そこで、有給休暇の付与日を会社全体で統一することも可能です。
この制度を会社で導入する場合は、企業規則への明記と、就業規則変更届の労働基準監督署への提出が必要になります。
基準日を統一する場合、入社日によっては付与基準日までの日数に不公平が生じてしまう場合もあるため注意が必要です。そのため、社員によっては前倒しでの付与など調節が求められます。この際、従業員の不利にならないようにする必要があります。
有給休暇の取得は、一定の基準を満たした労働者すべてが与えられている権利です。このことは、労働基準法第39条によって明確に定められています。そのため、会社側が労働者にきちんと有給休暇を取らせないことは違法です。
もし、会社側が適当な理由なく労働者からの有給休暇の申請を拒否した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を求められてしまう可能性があります。
有給休暇は労働者の権利であるとともに義務でもあります。これまでの日本社会では、職場への気遣いや仕事を休んでしまうことへの抵抗感などから有給休暇を取らない人が少なくありませんでした。
そのため、2019年4月から施行された働き方改革関連法により、有給休暇の取得が義務付けられました。これは企業規模に関係なく、すべての企業が該当しています。
とはいえ、日本における有給休暇の取得率はまだまだ高いとはいえないのが課題の一つです。ライフワークバランスの実現のためにも有給休暇について一人ひとりがしっかり意識する必要があります。
上記の労働基準法により、年間最低5日の有給休暇の取得が必須となっています。有給休暇をきちんと取ることにより、仕事の効率アップや優秀な人材の確保、企業イメージの向上など企業と労働者の双方にメリットがあります。
社員全員が有給休暇を効率的に取得できるよう、会社側は計画的な有給休暇の付与を求められています。
もし、一年間の間に労働者が自らの意思で5日以上の有給休暇を取得していた場合は、会社から追加で5日間の有給休暇を取得させなくても問題ありません。ただし、年10日以上の有給休暇を付与されている労働者の希望の有給が5日に満たない場合、基準日から1年以内に追加の日数を与える義務が発生します。
有給休暇は法律で定められた労働者の当然の権利であるため、原則として会社側が労働者からの有給休暇取得の申し出を拒否することは認められていません。また、取得理由を伝えなくてもよいものとなっています。
そのため、以下のような行為はパワーハラスメントに該当してしまう可能性があるため注意が必要です。
ただし、事業の正常な運営に支障が出る場合のみに限って、会社側は時季変更権を行使することが可能になります。時季変更権については以下で詳しく解説します。
時季変更権とは、会社側が労働者の希望した有給休暇の請求日(取得時期)を、一定の条件下のもとで変更できるようになる権利のことです。
原則として、有給休暇は労働者の希望日に取れるようにしなければなりません。しかし、労働者が有給休暇の取得を希望した時期に認めると会社の正常な運営を妨げてしまう場合、他の時期に有給休暇を与えることが可能です。
この有給休暇の時季変更権もまた、法律で定められた権利の一つです。とはいえ、有給休暇は労働者の請求が優先されることには変わりません。そのため時季変更権を行使する際は、慎重に進めていく必要性があります。
また、行使が正当な理由の下で行われる場合でも、会社側は労働者に時季変更権の理由と必要性をしっかりと伝えることが重要です。
繰り返しにはなりますが、有給休暇は労働者の正当な権利です。しかし、時季変更権により、会社側も経営に支障が出るときに限って有給休暇の日程変更を申し込まれることもあります。
もし、従業員の立場で有給休暇の申請が拒否されてしまった場合は、まず希望が通らない具体的な理由を確認することが大切です。時季変更権はあくまでも時期を変更する権利であり、有給休暇の取得自体を制限できるものではありません。
時季変更権として認められない理由で有給休暇の申請を拒否された場合は、パワハラと認められることがあります。特に、以下のケースの場合はパワハラに当たります。
これらのパワハラの疑いがある事柄が起こった時は、コンプライアンス窓口もしくは会社の人事部などに報告しましょう。
有給休暇の取得妨害やパワハラなどの問題が社内のみで解決できない場合、労働局や労働監督基準所に置かれている総合労働相談コーナーに相談するのが有効です。
2019年4月の法改正から有給休暇が法律で義務になったことに伴い、有給管理も義務化しました。有給が本当に取得されているのかどうかの証明や、効率的に有給を管理するためにも有給休暇管理帳簿の作成が必要です。
有給休暇の管理を怠った場合、ケースによっては罰則を課される事もあります。罰則の内容は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
有給休暇管理帳簿は、必要な要件を満たしているのであれば特にフォーマットの指定はありません。そして、有給休暇管理帳簿を作成する必要があるのは、年間10日以上の有給休暇を取得している人だけです。
加えて、有給休暇管理帳簿は有給を与えている期間中やその後の3年間の保存が義務となっています。当然ながら、帳簿記録の対象となる労働者が増えれば増えるほど帳簿の管理が煩雑化します。
これらを踏まえて、有給休暇管理帳簿の管理には、適切な管理体制を整備・運用することが重要です。そこでおすすめなのが、有給休暇管理システムの導入です。
有給休暇管理システムの導入には、以下のメリットがあります。
管理システムの導入により、多くの業務の自動化が可能です。細々とした入力が必要だった有給休暇の管理や、通常の勤怠管理システムとの連携などを効率的にすることができます。
手動入力を減らすことにより、ヒューマンエラーの発生要因を大幅に減らせます。また、手作業によるケアレスミスの抑制も可能です。
有給休暇管理単体での管理はもちろん、資金台帳や労働者名簿などと併せて管理することもできるようになります。バックオフィス業務の煩雑化が防げるため、全体的な業務の効率化が可能です。
現在、さまざまな有給休暇管理システムが流通しています。そのため、自社のニーズやコスト面などに合ったシステムを精査した上での導入が望ましいです。
有給休暇は、労働者が社会で健やかに働き続けるためには切っても切り離せない制度です。
会社のためにも、労働者自身にとっても、有給休暇は適切に管理される必要があります。そのためには、有給休暇に関する様々な法律や制度をしっかりと理解していくのが大切です。
有給休暇管理ツールの導入などを上手く使いながら、有給休暇をしっかり管理しましょう。