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任天堂の法務部は「最強」って本当?実際にあった裁判の概要や転職難易度も解説

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任天堂の法務部は「最強」って本当?実際にあった裁判の概要や転職難易度も解説

任天堂(任天堂株式会社)はゲームやおもちゃの開発・製造・販売を行う日本を代表する大企業です。

数々のゲームを世に送り出してヒットさせていますが、近年では2020年3月にリリースされたゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」(通称:あつ森)が一大ブームを巻き起こしたことは記憶に新しい方も多いでしょう。

そんな任天堂にはゲームユーザーの中で「法務部が最強」という噂があるのをご存じでしょうか。法務部とは会社の法律に関する業務を一手に引き受けた専門部署のとですが、任天堂の法務部はなぜ最強といわれているのでしょうか。

この記事では、任天堂の法務部が最強とささやかれる理由を探りながら、任天堂が関わった過去の裁判の概要を紹介します。

また任天堂の法務部で働いてみたいと考えている方に向けて、任天堂法務部への転職可能性や難易度、転職の可能性を上げるための方法などについても触れていきます。

法務・コンプライアンス・知財の求人

まずは法務部について解説

法務部は企業の管理部門に配置された企業法務を扱う専門の部署です。企業活動と法律は切っても切り離せない関係性にあり、法的リスクの予防や法的トラブル発生時の対応・解決、コンプライアンスの周知・徹底などに法務部は重要な役割を果たしています。

法務部の業務は多岐にわたり、業務内容や業務範囲は企業ごとに違いがあります。以下に代表的な業務をピックアップして紹介します。

  • 契約法務:売買契約書や業務委託契約書などの契約書の作成、リーガルチェックなど
  • 機関法務:株主総会や取締役会などの適法な開催、組織再編や上場対応など
  • 訴訟対応:社内外で発生した訴訟への対応や準備、外部弁護士との協議や費用交渉など
  • コンプライアンス:ビジネスモデルや業務の法的リスクやハラスメントの相談など法律に関する社内の相談窓口対応、コンプライアンス研修の実施、就業規則やその他社内規程の整備など
  • 労働トラブル対応:未払い残業代や不当解雇など会社と従業員の法的トラブル対応、外部弁護士への取り次ぎなど
  • 知的財産権:知的財産の保護、権利侵害に対する対応、外部弁護士への相談・連携など

なお、任天堂に「法務部」という名称の部署があるのかは外部からは明らかではありません。法務を担当する部署は複数あるとされており、社内組織の詳細が公開されているわけではありません。

任天堂HPで確認すると、事務系の職種紹介ページで「法務」と「知的財産」が紹介されているため、これらの職種の人たちが上記のような業務に携わっていると推測できます。

※参考:任天堂 新卒採用|事務系

便宜上、この記事では「法務部」と表記して、「任天堂の法務部、最強説」の真相を探っていきます。

「任天堂の法務部は最強」とささやかれる理由

任天堂の法務部はなぜ最強といわれているのでしょうか。

収益の柱である知的財産を守る必要がある

まず、任天堂の法務部は「最強」になるべくしてなったと考えることができます。なぜなら、任天堂の収益の柱は豊富な知的財産であり、これを守ることは法律や知的財産に関わる部署としての大きな使命だからです。

知的財産とは、人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物のことです。ゲーム業界でいうとゲームのキャラクターの画像やストーリー、音楽やゲーム機器のコントローラーやシステムなどあらゆるモノが知的財産となり得ます。

知的財産を侵害されると、売上が減少するなど会社の利益が侵害されることになるため、侵害行為の差し止め請求や損害賠償の請求など適切に対応しなければなりません。

この対応の中心となるのが法務部や知財部といった部署であり、弁護士や弁理士などの外部の専門家と連携しながら権利を守っていきます。

数々の裁判で勝訴

任天堂の法務部が最強といわれるもっとも大きな理由は、任天堂がこれまでに関わった数々の裁判で多くの勝訴を勝ち取ってきたためです。

そのためゲームユーザーを中心に、「法務部が強いから」「法務部が本気を出したから」など最強の噂が広がるようになりました。

ゲーム業界を牽引する大企業だからこそ注目される

知的財産に関する訴訟は、任天堂に限らず、ほかのゲーム会社が関わったものも多数あります。しかし訴訟があっても大きな話題にならずに、結果まで報道されることなく終結するケースは少なくありません。

これは、任天堂がゲーム業界を牽引する大企業であり、有名なゲームを多数生み出しているヒットメーカーだという点に集約されるでしょう。

任天堂や有名ゲームに関わる裁判だからこそ世間やユーザーからの注目度が高く、メディアや報道機関もセンセーショナルに報道するのだと考えられます。

任天堂に関する有名な裁判

任天堂の法務部が最強といわれるのは、多くの裁判で勝訴してきたからだと考えられています。以下では任天堂が関わった有名な裁判を一部紹介します。

ドンキーコング裁判

「ドンキーコング」というのは、任天堂が1981年に発売したアーケードゲームのことです。1982年、任天堂はユニバーサル・スタジオから映画「キングコング」の商標権侵害にあたるとして、ロイヤリティを求める訴訟を起こされました。

判決では、ユニバーサルには「キングコング」の名前やストーリーなどに関する権利がなく、消費者が任天堂のドンキーコングとキングコングを混同する可能性はないなどとの指摘があり、任天堂が勝訴しました。

この裁判はドンキーコング裁判と呼ばれ、任天堂法務部最強ストーリーの最初の裁判であると位置づけられています。

ユリゲラー裁判

ユリゲラーは超能力者を名乗るイスラエルの人物です。1970年代に代名詞のスプーン曲げで一世を風靡し、日本のテレビCMにも出演するなど日本でも有名になりました。

2000年、ユリゲラーはポケットモンスターのキャラクター「ユンゲラー」が自身のイメージを無断で使ったものとして任天堂に対して賠償金を求める訴訟を起こしました。

しかし「ユンゲラー」という名称は日本でしか使われていないとしてアメリカ国内での訴訟が無効となり、任天堂が勝訴しました。

3DS裸眼立体視特許裁判

「裸眼立体視」とは、角度や向きが異なる映像を切り替えて出力することで立体的に見える仕組みのことです。「ニンテンドー3DS」シリーズはディスプレイに裸眼立体視を採用したゲーム機です。

2003年、自分が取得した裸眼立体視の仕組みに関する特許を許可なく採用されたとして、任天堂は元ソニーの社員から賠償金を請求されました。

第一審では任天堂に対して賠償金の支払い命令がくだされましたが、任天堂が控訴しました。差し戻し審となった訴訟では、原告独自の特許ではなく特許権侵害はなかったとして任天堂が逆転勝訴しました。

マジコン裁判

「マジコン」とは、ゲームソフトをコピーして使用できる機能を備えた機器の総称です。

2016年、「ニンテンドーDS」用の「マジコン」を販売したとして、任天堂はソフトメーカー49社とともに、販売業者らに対して不正競争防止法にもとづく販売行為の差止等を求める訴訟を提起しました。

その結果、任天堂およびソフトメーカー各社の主張が全面的に認められ、販売業者に対して「マジコン」の販売行為差し止めと総額約9,500万円の損害賠償金の支払いが命じられました。販売業者の一部が控訴しましたが棄却されたため、任天堂およびソフトメーカー各社の勝訴が確定しました。

マリカー裁判

2017年、任天堂は公道カートの「マリカー」(現:MARIモビリティ開発)に対して、知的財産権の侵害行為の差し止めおよび損害賠償を求めて訴訟を提起しました。

「マリカー」は外国人旅行客向けに、任天堂が開発した「スーパーマリオシリーズ」に登場するキャラクター「マリオ」のコスチュームで公道を走るというサービスを開始し、「マリカー」の商標を取得していました。

任天堂は、「マリカー」は任天堂のゲームシリーズである「マリオカート」の総称であるとして、特許庁に対して商標の取り消しを求めました。しかし申立てが棄却されたため、任天堂が不正競争防止法違反および著作権法違反として訴訟を提起したところ、マリカー側に1,000万円の支払いが命じられました。

その後、両者がともに控訴していましたが、第一審で認められなかった部分も含めて任天堂が全面勝訴し、「マリカー」は5,000万円の損害賠償金の支払いが命じられました。また、商標登録された「マリカー」についても、特許庁が商標登録を無効とする旨の審判をくだしています。

コロプラ裁判

2017年、任天堂はゲームメーカー「コロプラ」のスマートフォンゲーム「白猫プロジェクト」に関する技術が自社の特許を侵害しているとして、配信停止と賠償金の支払いを求める訴訟を提起しました。

コロプラ側は任天堂から特許侵害の指摘を受けていたものの、「特許侵害はなくアプリの配信停止はあり得ない」といった内容の声明を発表していました。

しかし最終的にはコロプラ側が任天堂に対して今後のライセンスを含めた和解金を支払うことで和解が成立しました。和解で決着を迎えた裁判ですが、コロプラ側が特許侵害を認めたかたちとなり、事実上は任天堂の勝訴といえる裁判です。

任天堂の法務部で働くには

最強と呼ばれる任天堂の法務部に興味をもち、ぜひ働いてみたいと感じている方もいるでしょう。ここからは、任天堂の法務で働くための方法や転職できる可能性について解説します。

近年の新卒採用者数は全体で10名前後

現在学生の方は、新卒枠にエントリーし、採用されれば任天堂で働くことができます。

ただし2023年の採用ページによると過去3年間の新卒採用者数は2019年が12名、2020年が11名、2021年は7名でした。応募者数は不明ですが、採用人数が決して多いとはいえず狭き門であることが想像に難くありません。

※参考:任天堂 採用情報

また同ページでは総合職の募集として営業や仕入れのほかに経理や総務、人事の仕事などが紹介されたうえで「入社後に一人ひとりの適性をみて、配属先を決定します」と書かれています。

新卒採用の場合、職種や部署をピンポイントで採用する中途採用とは異なり、入社するまで配属先がわからないケースが多数です。そのためたとえ任天堂に入社できても法務部で働けるかどうかはわかりません。

任天堂の配属方針を知ることはできませんが、一般論でいうと新卒採用で法務部に配属される可能性は高くないと考えられます。法務部は一般に構成人員数が少ないこと、専門性が高いため異動などで欠員補充するケースが多いことなどが理由です。

キャリア採用もあるが技術職が中心

任天堂のHPによると、キャリア採用も実施しています。ただしエンジニアやデザイナーなどの技術職募集が中心です。

コーポレートスタッフ(管理部門)として内部監査担当と財務担当の募集はありましたが、法務職を募集しているという情報は得られませんでした。

※参考:任天堂 キャリア採用|募集要項

なお、キャリア採用とは一般にスキルを保有する経験者を即戦力として採用することを指します。中途採用の場合は業界や職種未経験者の採用も含みますが、キャリア採用は基本的に業界や職種経験者を採用する場合に使われる用語です。

任天堂が意図をもってキャリア採用と明記しているのかは不明ですが、もし任天堂の法務部へ転職できる可能性があるとすれば、法務経験者や弁護士などの専門職に限られると予測することもできます。

任天堂の法務部で働くハードルは極めて高い

ここまでの内容をもとに判断すると、新卒、転職組ともに任天堂の法務部で働くためのハードルは極めて高いと言わざるを得ないでしょう。

最強といわれる任天堂法務部で働きたいという強い意思があれば可能性がゼロではないのかもしれませんが、現実的な道として任天堂以外の法務部への転職可能性も探っておく必要があります。

任天堂以外の法務部への転職難易度

ここからは、任天堂以外の法務部への転職可能性や難易度について解説します。

任天堂以外の法務部も転職難易度が高い

任天堂に限らず、どの会社の法務部も転職難易度は高めです。そもそも、法務部や知的財産部門がある企業は限定されており、これらの部門が存在しないという企業が多いでしょう。

また法務部を置くのは大企業が中心です。中小企業やベンチャー企業で法務部を新設する動きも出てきてはいますが、まだまだ多くはありません。

大企業は新卒採用をメインで行っているケースが多く、中途採用枠があっても高い実績や能力が求められるのは必至です。

法務は専門性が高く責任が重い職種

法務部は法律や制度、手続きに関する専門的な知識が必要な部署です。資格は必須ではありませんが、基本的には大学の法務部や法科大学院出身者、士業資格の保有者など法律の素養がある人で構成されています。

企業内弁護士として弁護士が法務に所属するケースもあります。実際に法務部の求人を見ると応募条件としてこれらの学歴や士業資格を挙げている求人は少なくありません。

また、法務部の業務にミスがあると法律に抵触するとして企業の信頼失墜につながりかねないため、非常に責任が重い仕事です。すなわち、法務部に転職するには、法務部で通用するだけの法的な専門性を備えていなければならないでしょう。

さらに業務の正確性や慎重さ、責任感などを備えている必要があります。法務部ではこれらをクリアできる人材を求めるため、必然的に採用のハードルが上がります。

法務中途採用は即戦力が求められる

法務部は直接的な利益を生み出さない間接部門であるため、少数精鋭で構成されている企業が多数です。そのため中途採用者に対して丁寧な教育や指導を行う余裕はないケースが大半で、即戦力として活躍できる人材が必要とされています。

企業法務の経験者が有利になり、未経験からの転職は極めて難しいでしょう。

募集人数が少ない

法務部はもともとの人員数が少ないのに加えてなかなかポジションに空きが出ません。基本的には大手企業に所属するため、雇用や収入の安定性やワークライフバランスの保ちやすさなどを理由に長く勤める人が多い傾向があります。

また退職や休職などでポジションに空きが出ても、他部署からの異動で補充するケースが多く、外部からの採用するケースは少なめです。外部から採用する場合でも大量募集するケースはほとんどなく、1~2名の募集にとどまります。

まとめると、法務部は求人数が少ないうえに募集枠も小さいため競争倍率が高い、ということです。

資格が必ずしも転職成功に結びつかない

企業の法務部を希望する人の中には、採用の可能性を上げるために資格の取得を検討している人がいるかもしれません。実際、弁護士資格や弁理士資格をもっている応募者も少なくありません。

しかし法務部は士業事務所と異なり資格が必ずしも評価の対象となるわけではなく、それよりも企業法務の経験や組織との相性が重視される傾向があります。資格の取得を通じて採用の可能性を高めることが難しいため、ほかの角度からの工夫が必要になってきます。

法務部へ転職したいなら転職エージェントに相談を

難しい法務部への転職を叶えるためには、転職エージェントに相談することが重要です。

法務部は公開されている求人数が少ないため、求人サイトなどを利用して自分で求人を探しても、なかなか見つけられません。転職エージェントが保有する非公開求人を紹介してもらい、求人数の少なさをカバーしましょう。

また、法務部は採用のハードルが高いため、経歴やスキルを的確に伝えられるよう応募書類や面接で工夫する必要があります。転職エージェントに相談すれば応募書類の添削や面接対策を行ってくれるため、採用担当者の心に刺さるアピールができるでしょう。

不採用だった場合でもエージェントを通じて面接のフィードバックを受けられるため、次の応募につなげられます。自力で応募した場合はフィードバックを得られないため、改善点を自分で判断しなければなりません。

転職エージェントに相談するとキャリア面談を通じてキャリア設計をサポートしてくれます。自分では思ってもいなかった適したキャリアを提案してくれる可能性もあるので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。

法務部の転職では、法務の転職に強い転職エージェントを選ぶことが大切です。

法務の求人紹介・転職相談はこちら

任天堂の法務部は実力も入社難易度も最高峰

ゲーム業界を牽引する任天堂の法務部には、利益の柱である知的財産を守るという大きな使命が課せられています。そのため法務部のレベルが高いのは想像に難くなく、ユーザーなどから「法務部が最強」と呼ばれているのも納得がいくのではないでしょうか。

ただし任天堂の法務部へ転職するためのハードルは非常に高く、働ける可能性はかなり低いと考えられます。

法務部の仕事に興味のある方は、任天堂に限定せず、ほかの会社の法務部も含めてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。その際には、非公開求人を保有する転職エージェントの利用も検討してみてください。

法務・コンプライアンス・知財の求人

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BackOfficeDB編集部
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BackOfficeDB編集部
こんにちは。BackOfficeDB編集部です。 私たちは、管理部門に関する情報発信を専門にしています。 業務効率化や、各職種のキャリアプラン、スキルアップなど、管理部門の様々なお悩みにお答えします。