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一般的に、法務職の転職は難しいといわれています。なぜなら、法務部の仕事は専門性や重要性が高く、企業が求める水準も高いからです。
未経験者から法務職へ転職するのが難しいのは当然ですが、経験者なら簡単に転職できるかというと、そうではありません。法務職は業界ごとの異なる知識を求められることも多く、異業種では前職の知識が全く通用しないという事態が往々にして起こります。
当記事では、法務職の転職が難しい理由と、キャリア事例を交えた転職成功の秘訣を解説します。法務職で転職を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
一般的に、法務部などに勤めている法務職の方は転職が難しいといわれています。なぜ法務職の転職は難しいのでしょうか。
結論からいえば、法務部の仕事は専門性と重要性が高く、企業が人材に求める水準も高いためです。高度な法律の知識はもちろんのこと、業界特有の商習慣やルールなどに精通していなければなりません。
一方、現下の少子高齢化に伴う労働人口の減少やグローバル化に伴う国際競争の激化、事業領域の拡大などに応じて、法務人材の需要は高まっています。しかし、業務の専門性および重要性の高さから企業が求める水準に達する人材は少なく、採用のハードルも極めて高いのが現状です。
法務は企業の社会的信頼にもかかわる非常に重要な業務に該当するため、全くの未経験者が法務職に転職するのは難しいでしょう。高度な法律の知識、例えば弁護士や司法書士などの資格や受験経験があれば、採用される可能性もあるかもしれません。また、年齢を重ねれば重ねるほどより高度な知識や経験を要求されるため、なるべく早期の転職が求められます。
それでは経験者の転職が簡単かというと、全くそのようなことはありません。業種・業界によって求められる知識や経験が全く異なるため、異業種の法務部に転職するのは難しいかもしれません。また、法務職が担う業務は契約法務だけでなく、機関法務(ガバナンス)、法令遵守(コンプライアンス)、紛争対応、労働問題、法令調査、知的財産(IP:Intellectual Property)管理、債権管理など、非常に多岐にわたります。たとえ豊富な実務経験があったとしても、先方の求める経験がなければ未経験者として見なされてしまうかもしれません。
このように、経験者・未経験者を問わず、法務職の転職は難しいのが一般的です。次章ではより具体的に、法務職の転職が困難な理由を解説します。
法務職は専門性が高く重要度も高いことから、転職が難しいといわれています。企業が求める水準は高く、採用のハードルも高いのが一般的です。
ここでは、法務職の転職が困難な4つの理由を解説します。
法務職は、新たなビジネスを創出するための法令調査や、企業や消費者からの訴訟への対応など、非定型の業務を担当する機会も少なくありません。今までに事例や経験のない業務を遂行するには、柔軟な対応力が求められます。また、訴訟対応などにおいては、顧問弁護士などの協力を仰ぎつつ高度な解決力が必要です。
一方で、法務職は法律を対象とした事務的な業務と思われるかもしれません。しかし、法務部の仕事の先には、必ず人間がいます。例えば、新ビジネスに挑戦する担当者はどのような法的な懸念を抱いているのか、企業や消費者は何を問題視し訴訟を提起してきたのかなどを慎重に考察しなければなりません。
労働問題などに対応する場合は、労働者に寄り添い問題の原因を取り除く必要があります。IT社会においては、法務部の仕事はAIをはじめとした情報技術に奪われるといわれています。しかし、AIが人間に寄り添うことはできません。法務職には、今後より高度なコミュニケーション能力や人間力が問われるでしょう。
逆の視点で捉えると、コミュニケーション能力や人間力が伴わない人材は、転職が難しくなるということです。「業務の先には必ず人間がいる」ということを常に忘れないようにしましょう。
法務部の仕事は企業機密にかかわるため、少数精鋭で行っているケースがほとんどです。人材不足や競争激化、事業領域拡大などで需要自体はあるものの、大企業でも数名程度の求人に留まることも珍しくありません。おのずと求人倍率は上昇し、転職へのハードルは高くなってしまいます。
高い求人倍率を勝ち残るためには、他者と差別化できるような高度な知識や経験が必要です。わかりやすい例では、弁護士や司法書士の資格を有していると、転職活動も優位に進めることができるでしょう。また、同業種の法務部における経験も、有利な判断材料となるかもしれません。
逆に、他者と差別化できるような知識や経験がないと、経験者といえども転職は難しいかもしれません。高い求人倍率を乗り越え転職を実現するには、差別化に資するような知識・経験を身に付けることが重要です。
法務部では主に、法律にまつわる仕事を行っています。例えば、契約法務・機関法務(ガバナンス)・法令遵守(コンプライアンス)・紛争対応・労働問題・法令調査・知的財産(IP:Intellectual Property)管理・債権管理などです。
これらの業務を担うには法律に関する高度な専門知識が要求されます。訴訟対応などは原則法曹などに協力を仰いで進めていくことになりますが、弁護士などの専門家と協力して対応できるだけの知識は必要です。
加えて、業界特有の商習慣やルールも把握しておかなければなりません。商標管理や特許管理を担う場合は先行調査が必須です。また、新規ビジネス領域に進出する場合は、既存の法令では判断が難しいようなケースも出てくるかもしれません。
このように法務職には高度な専門知識が必要です。法改正や市場の変化などに合わせて、継続的な学習が求められます。法律に関する専門知識が不足しており、継続的な学習も難しい場合は、法務職への転職は難しいかもしれません。
法務部は少数精鋭で業務を回しているケースも多いため、即戦力の人材が求められる傾向にあります。前章で述べたとおり法務職には高度な専門知識が求められるため、3~5年程度の実務経験が必要です。経験者の場合は、マネジメント経験があると将来の管理職候補として歓迎されるかもしれません。
一方、未経験者の場合は、実務経験に代わるような高度な専門知識などが求められます。例えば、法学部卒の学位、弁護士や司法書士の資格や受験経験などがあると、ポテンシャルをかわれて採用されるかもしれません。
いずれにしても法務職には即戦力が求められるため、転職するには豊富な実務経験や高度な専門知識が必要となることを覚えておきましょう。
転職が難しいといわれる法務職ですが、どのような点に留意すれば転職活動を有利に進められるのでしょうか。ここでは、法務職の転職を成功させるためのポイントをご紹介します。
得意領域を伸ばすのも、法務部の転職を成功させるポイントです。例えば、法律に関する知識に加えてビジネス英語が得意であれば、グローバル企業や外資系企業の法務部に転職できる可能性があります。
また、法務部以外の部署・部門に関する知識や経験があると重宝されるかもしれません。中小企業やスタートアップベンチャーなどでは、専任の法務職ではなく、経理・総務・人事などが法務を担当しているケースがあります。さらに財務・会計・税務などの知識があれば、会計的な視点で契約内容を精査できるため市場価値が高まるかもしれません。
中小企業やスタートアップベンチャーなどでは、経営的な視点も必要です。法的な問題は顧問弁護士などに相談すればよいため、法務部には法律に関する高度な知識ではなく、経営に則した知識や経験が重視される場合もあります。
加えて、近年ではインターネットを介したビジネスが一般的となっているため、情報技術およびITビジネスに付随する個人情報保護等に関する知識などを身に付けておくとよいでしょう。
また、法務職は法律だけでなく、その先にいる人をも対象とした仕事であるため、コミュニケーションスキルや人間性が問われるのは言うまでもありません。
実績を積んでキャリアを整理しておくことも、法務職の転職には重要です。例えば、企業とのトラブルや顧客からのクレームへの対応および、それに伴う訴訟対応などを行った実績、労使間の労働トラブルに対応した実績、商標管理や特許管理に伴う先行調査を行った実績などが該当します。
契約法務を担当した場合は、名称等の固有情報を伏せて契約書等を具体的に示すことも、アピールにつながるでしょう。また、上場に関する実務経験やトラブル対応など非定型の業務経験があるとニーズが高まるかもしれません。
どれだけ実績があっても、面接担当者はともに働いた人ではないため、自分自身で説明するほかに実績を伝えるすべはありません。具体例をまじえて実績を説明することで、面接官があなたと共に働くことをイメージできるかどうかが転職成功のカギとなります。
法務の転職に強い転職エージェントを利用することで、効率的に転職活動を進めることができます。特化型転職エージェントは法務に精通したキャリアアドバイザーの知見に基づき、求職者と企業のマッチングを図りミスマッチの少ない転職を実現します。
総合型のエージェントと異なり、専門のアドバイザーが特定ジャンルの求人に限って提案してくれるため応募や選考がスムーズに進むところが、特化型転職エージェントの最大のメリットです。
前章では、法務職の転職を成功させるためのポイントについて解説しました。なかでも、法務の転職に強いエージェントを利用するのは有効な方法です。
ここでは、法務の転職におすすめの転職エージェントを5つご紹介します。
◆公式サイト:https://beet-agent.com/
「BEET-AGENT(ビートエージェント)」は、法務など管理部門・バックオフィス系職種に特化した転職エージェントです。管理部門の転職は、業務の範囲・内容やスキルセットが曖昧で、転職難易度が高い領域です。
BEET-AGENTでは、法務の働き方や業務領域および企業ごとの特性を熟知した担当アドバイザーと綿密に面談することで、マッチング精度の高い求人紹介を受けることができます。
さらなるキャリアアップを目指す方を対象としたハイレイヤー向け高年収求人や、企業の事業戦略に直接コミットするような重要ポジションの求人、スケールアップ企業やIPO準備中企業の求人など希少性の高い求人も豊富です。
サービス登録から内定・入社までの一般的な流れは、下記のようになっています。転職エージェントのサービスは、基本的にすべて無料で受けることができます。
はじめに面談をすることで、認識祖語が少ない求人提案を受けることができます。日中仕事で忙しい方でも夕方に面談を組むことができますし、事情を話せば電話等で対応してくれます。
転職が初めての方は、アドバイザーが用意する書類フォーマットを利用すると簡単に応募書類を作ることができます。面談で話した内容を踏まえて、アドバイザーが求職者ごとの特性やキャリアプランに合わせて書類を添削してくれるので、書類通過率があがるメリットもあります。
そのほか面接対策や内定後の条件交渉まで、内定・入社に至るまでのすべてのステップにおいて担当アドバイザーが伴走するため、確度の高い転職活動が可能です。
◆公式サイト:https://beet-agent.com/
◆公式サイト:https://no-limit.careers/
「NO-LIMIT(ノーリミット)」は、法曹業界に特化した転職エージェントです。弁護士特化型の集客支援や人材採用、事務所経営支援サービスから派生した人材事業のため、法律事務所・企業の内情や強みを熟知したキャリアアドバイザーが、求職者の要望に沿って最も活躍できる求人を厳選して紹介してくれます。
法務職のほか弁護士など有資格者向けの転職支援も行っているため、求人の幅が広く、年収などの待遇がよい求人が豊富です。なかでも、求人サイトや企業HP上などで公募されていない「非公開求人」を多数取り扱っており、NO-LIMITを利用することで応募先の選択肢が広がることでしょう。
サービスに登録すると、まずは担当アドバイザーによるカウンセリングが組まれます。法務職専門のアドバイザーと話すことによって、キャリアプランや理想の転職が明確になります。とくに初めての転職の方は、転職の流れや書類作成のポイントをここで確認しておくことをおすすめします。
ご希望に応じた最適な求人のご紹介、履歴書の添削や先方との面接日程の調整、内定獲得後の入社時期や勤務条件の調整など、転職活動の開始から内定・入社まで伴走し、手厚くサポートします。
◆公式サイト:https://no-limit.careers/
「MS Agent」は、株式会社MS-Japanが運営する管理部門と士業に特化した転職サービスです。30年以上の実績があり、特化型エージェントのなかでも老舗にあたります。
求人数も転職支援実績も業界トップクラスのため、安心してサービスを利用できます。まずはサイトにアクセスして、希望条件に合う求人があるかどうかチェックしてみることをおすすめします。
◆公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
「JAC Recruitment」は、ミドル・ハイクラス人材向けの転職エージェントです。管理職や専門職、グローバル人材に特化した専門性の高い求人を紹介しています。
いわゆる管理部門・バックオフィス系職種に特化したサービスではありませんが、長年法務職としてキャリアを重ねてきた方にとっては魅力的な非公開求人を紹介してもらえるかもしれません。また、外資系企業やグローバル企業の法務部への転職にも最適なサービスです。
◆公式サイト:https://www.jac-recruitment.jp/
「法務求人.jp」は、「弁護士転職.jp」を運営するC&R リーガル・エージェンシー社の法務人材特化サービスです。弁護士の転職支援実績をもとに、手厚いサービスが受けられます。
転職エージェントサービスもありますが、公開求人であれば直接応募も可能です。自分に合った利用方法を選択できるところもおすすめポイントです。
◆公式サイト:https://www.houmukyujin.jp/
最後に、キャリア事例を交えた転職成功の秘訣をご紹介します。転職前に知っておきたい法務の心得として、確認してみましょう。
一つ目の事例では、国内大手飲料メーカーで法務を担当し、法務部長などを歴任したAさんのケースをご紹介します。
Aさんは入社後、総務部に配属され国内の総務・法務を担当しました。その後、米国ロースクールへの留学の機会を得て、海外企業との提携・M&A・紛争対応などの国際法務に携わります。
法務部の新設にあわせて立ち上げメンバーとして配属され、法務課長・法務部長を歴任しました。法務部では国内国際法務やリスクマネジメントなどを担った後、人事本部長・リスクマネジメント本部長等経験し現在に至ります。
法務だけでなく人事や経営企画、CSRなど、様々な職務を経験できたことで視野が広がり、常に全体のことを考え企業価値を最大化するミッションを強く意識できました。
特に法務においては、経営の戦略パートナー・事業ビジネスパートナーとして、法的な観点から企業戦略の実現をサポートするという重要な役割を経験できたことは貴重です。加えて、すべての法務案件は事実に基づいたものでなければならないため、現場に出て情報を的確に把握し、それを伝えるコミュニケーション能力も求められます。
法務以外の知識や語学力など、他者と差別化を図れる要素を身に付けることが重要です。また、常に経営的な視点に立って、企業価値を最大化するという全社意識は、法務職にも求められます。加えて、法務職には状況を正確に把握し、適切に伝えるコミュニケーション能力も必要です。
二つ目の事例では、国内スタートアップIT企業で法務部門を立上げ、法務職を担った後、社長室に移り法務を含む企業課題の解決に従事するSさんのケースをご紹介します。
Sさんは設立間もないスタートアップIT企業で法務部門を立ち上げ、国内大手企業との共同事業や出資契約などの交渉を担当しています。同時期に経済産業省のガイドライン検討委員に就任し、AIやデータ契約に関するガイドラインを共同起草しました。
その後、現職の社長室に異動し、現在は法務を含む企業課題の解決に従事しています。
2008年に弁護士の資格を取得し、一般民事を手掛ける法律事務所を開業します。並行してスタートアップ企業で企業内法務を担当し、しばらく経ったころ、興味の移り変わりと同時に、自身が法律家思考に馴染みすぎていることに危機感を覚えました。
法務を離れて政策や経済学を学び始め、現在は法務あるいは経営企画の立場から、法務機能の実装や拡充に従事しています。これからの法務は、さまざまな分野に興味・関心を持ち、思い描く法務の像をもっと自由に追求していくことが重要です。
まず、法務の高い専門知識を獲得することは重要です。Sさんのケースでは、弁護士資格として客観的な差別化要素を獲得しています。一方で、法律の知識だけに満足するのではなく、政策・経済・経営など、多角的な興味・関心を持つことが非常に大切です。
三つ目の事例では、国内大手総合商社で国内法務を経験後、外国留学を経験して国際取引法務に従事し、外資系大手消費財メーカーの代表取締役に就任したKさんのケースをご紹介します。
Kさんは国内大手総合商社に入社した後、債権保全・回収業務などの国内法務を経験します。その後、ドイツ留学を経て国際法務に従事しました。
リーガルマネージャーとして英国駐在後、国際法務やコンプライアンスに関わり、現在の会社に移籍します。医療機器・化粧品・医薬品・食品等に関する法務を経験した後、法務責任者を歴任し2012年に現職へ就任しました。
企業内法務は、リスクマネジメントによってビジネスの価値を守り、持続的成長をサポートし、不安定で不確実な環境の中で変化をリードしていく役割が求められます。法律知識だけでなく、ビジネスそのものに対する理解と好奇心を持つこと、ビジネスの目的やミッションの達成に向けて自らを変化させていくことが重要です。
ビジネスの成長がすなわち社会的な課題の解決という目的を持つ企業であれば、企業内法務の仕事はビジネスを守り、成長に貢献し、社会の課題解決において重要な機能を果たすことになるでしょう。
法務職は法律に関する知識だけでなく、ビジネスに対する理解と関心を持つことが重要です。目的やミッションを達成するための柔軟性も求められます。また、ビジネスの成長を社会的課題の解決と捉え、より広い視点を持つことが非常に大切です。
今回は法務職の転職について解説しました。法務職は一般的に、転職が難しいといわれています。なぜなら、法務部の仕事は専門性や重要性が高く、企業が求める水準も高いからです。未経験者の転職はもちろん、経験者でも異業種への転職は難しいでしょう。
一方で、弁護士・司法書士などの資格取得で高度な専門知識を取得したり、スキルアップで得意領域を広げたりする取り組みも、転職を有利に進める一つの方法です。その他の手段としては、法務転職に強い転職エージェントを利用する方法もあります。
BEET-AGENTやNO-LIMITなど転職支援サービスを積極的に活用し、法務職の転職を成功させましょう。