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覚書とは?契約書や念書との違いは?法的効力の有無やひな形についても解説

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覚書とは?契約書や念書との違いは?法的効力の有無やひな形についても解説

覚書(おぼえがき)とは、契約者同士が締結・合意した内容を忘れないようにまとめた書面のことで、契約書の一種と考えられるものです。

契約書は当事者間の合意のなる根幹の内容を示した文書である一方、覚書は契約書を補完する役割を持った文書として用いられます。

「覚書に法的効力はあるのか?」
「契約書・覚書・念書との違いは?」
「覚書に収入印紙は必要?いくら貼ればいいの?」
 

など、覚書について疑問を持っている方もいるのではないでしょうか?

また、覚書は、主に簡易的な契約書として用いられているため、「契約書よりも気軽」といったイメージを抱いている方も多いかもしれません。

しかし実は、覚書も契約書と同一の法的効力をもつことがあるため、取り扱いには十分注意が必要です。

今回は、ビジネスにおける覚書の意義や、契約書・念書との違い、覚書が作成されるケースについて分かりやすく解説します。

また、覚書の内容(雛形)や、収入印紙が必要なパターン、その他の注意点も詳しく解説するので、覚書に関する基本的な知識が身につき、より効果的な活用方法が分かるようになるでしょう。

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覚書とは契約書の一種|契約書・念書との違いを解説

まずは、覚書の意義や契約書・念書との違いについて解説します。

覚書の法的効力は内容次第

覚書はビジネスの実務においては、簡易的な契約書という意味で用いられることが一般的です。

ただし文書のタイトルに『覚書』と記されている場合であっても、実質的には契約書と変わらない性質をもつことがあり、このような場合には文書のタイトルにかかわらず契約書と同じ法的効力をもちます。

詳しくは、後述の「覚書と契約書の違い」で解説します。

そのため、『覚書』という言葉を会話で用いる際には齟齬が発生しないように気を付ける必要があり、書面で用いる際には書面の内容にしっかり目を通すようにしましょう。

覚書と契約書の違い

『契約』は民法522条1項に基づき、意思表示の合致により成立したものを書面で証明するものです。基本的に契約は特定の方式は定められておらず、口約束でも契約が成立します。

覚書は、契約の有効期間延長や一部修正のために用いられます。

文書のタイトルが『覚書』でも『契約書』であっても、どちらも契約の当事者間で合意した内容の証明書類です。よって覚書の内容が実質的に『契約書』と判断される場合には、契約書と同様の法的効力をもちます。

覚書と念書の違い

覚書と似た文書に、『念書』があります。

一般的な傾向として、契約書や覚書が当事者双方の合意のもとに作成・締結されるのに対し、念書は片方の当事者から一方的に作成・送付される文書であることが多いです。

そのため契約書や覚書と同様の法的効力は発生しませんが、事実や認識のありかたを示す証拠として利用することができます。

ビジネスの現場では、『念書』というタイトルが用いられることは一般的ではなく、同一の意味で『誓約書』が用いられることがあります。

覚書が必要なケースとは?

次に、ビジネスで覚書が必要となるケースについて紹介します。

簡易的な契約書として用いられる場合

覚書は、契約書と比べて書面の作成やレビュー、社内決裁などが省略されていることが多く、簡易的な契約書として用いられることがあります。

例えば、短期間・1回限りの請負契約を締結するときや、支払代金が少額である取引など、契約書を取り交わすほどの必要性はないものの、当事者間の合意を記しておく必要がある際に作成されます。

既存の契約書を変更・更新する場合

すでに基本となる契約書が締結されている場合に、その内容を一部変更または更新する際に覚書が活用されることもあります。

例えば、契約期間を延長したり、内容の一部を変更したりする場合など、改めて契約書を取り交わすのではなく覚書を活用することで、書面の作成・レビューのプロセスを大幅に削減可能です。

とはいえ前述したように、覚書は契約書と同様の法的効力をもちえます。特に重要な契約については、覚書によって契約を補完するのではなく、新たに契約書を作成することが望ましい場合もあります。

契約書の内容を補完したい場合

早急に相手方と合意を交わす必要があるとき、一旦大枠を契約書で交わしておき、あとから覚書で詳細を補完する場合もあります。

ビジネスの現場では、スピーディーな意思決定と合意形成が求められる場合も少なくありません。そのため、覚書が活用されているのです。

覚書の記載項目・ひな形

ここでは、覚書に記載すべき項目や内容について、具体的なひな形をもとに紹介します。

表題

まずは、文書の表題(タイトル)を決定します。

先ほど紹介したように、文書の効力はタイトルではなく、あくまで内容によって判断されるため、単に『覚書』でも問題はありません。

しかし相手方への配慮および文書管理の観点から、例えば『契約条件変更の覚書』など、ある程度内容を把握できる表題をつけるようにしましょう。

前文

覚書の前文には、文書で用いられる用語の定義づけや、文書の内容を要約するという目的があります。

契約書と同様に、覚書においても、当事者の名称やサービス・商品名等には略称が用いられることが一般的です。最終的に覚書のレビューを行う際には、前文で確定した略称と本文中での使用に食い違いが生じていないか注意しましょう。混乱を避けるため、原契約の内容を変更する場合などには、原契約で用いられていた略称と同じものを使うのがおすすめです。

また、どの契約の内容を修正するのかを明確にするため、『いつ・誰が』締結した契約書なのかを必ず明記します。

前文の書き方の例

○○(以下「甲」という。)と○○(以下「乙」という。)は、甲乙間で締結した○年○月○日付の○○○○契約(以下「原契約」という。)の契約条件に関して、以下のとおり覚書(以下「本覚書」という。)を締結する。

本文

覚書の本文として、当事者間での合意内容を記します。

原契約の内容の一部を変更する場合には、例文のように、下線などを利用すると変更点がどこなのか分かりやすくなります。

いつから覚書の効力が生じるのかや、原契約の取り扱いについても記載しておきましょう。

本文の書き方の例

第1条(原契約の変更1)
原契約第○条第○項につき、請負代金を○円と改定する。
○年○月末日を期限とする○月分の支払いから前項の規定に従う。

第2条(原契約の変更2)
原契約第○条第○項につき、契約期間を○年○月○日に延長する。

第3条(本覚書の効力)
本覚書は、本覚書締結の日から有効とする。
前項の規定および理由の如何にかかわらず、原契約が解除・解約・契約期間満了等により終了した場合、本覚書は当然にその効力を失う。

第4条(原契約の効力)
本覚書で明示的に言及された変更を除き、原契約の各条項の内容は、本覚書の締結により何ら影響を受けず、従前通りの効力を生じ、本覚書で使用される文言は、原契約で使用される定義に従う。
本覚書と原契約との間で抵触する条項があるときは、本覚書の条項を優先させる。

日付・署名・押印

最後に、覚書の締結日と各当事者の署名・押印欄を作成します。

再度覚書を作成する場合などに、今回作成する覚書を特定できるようにするため、締結日を記載し忘れないようにしましょう。

覚書の締結日をいつにするかは、合意形成したとき、当事者の最後が署名・押印したときなど複数の選択肢があるため、当事者間で確認が必要です。

日付・署名・押印の書き方の例

本覚書の締結を証するため、本書2通を作成し、甲及び乙が各々記名押印の上、各1通を保管する。

○年○月○日

甲:
【所在地】
【商号】
【役職・代表者氏名】

乙:
【所在地】
【商号】
【役職・代表者氏名】

覚書に収入印紙は必要?

以下からは、覚書にも収入印紙の貼付が必要なのかどうかや、判断基準について解説します。

覚書の内容次第で収入印紙の貼付が必要

覚書であっても、文書の内容が印紙税法上でいう『課税文書』に該当する場合には、収入印紙の貼付が必要です。

そもそも収入印紙とは、一定金額以上の契約書や領収書等に対し、印紙税法で貼付・消印が義務付けられている証票のことをいい、収入印紙の貼付が必要な書類のことを課税文書といいます。

課税文書の対象については、印紙税法で第1号文書から第20号文書まで定められており、収入印紙は主に法務局・郵便局・市区町村役場・コンビニエンスストア(200円分の額面のみ取り扱い)などで購入できます。

課税文書の判断基準

課税文書に該当するかどうかは、文書のタイトルや文書中の文言などから外形的に判断されるのではなく、記載内容に即し実質的に判断されます。

課税文書に該当するかどうかは、その文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。

引用:No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁

例えば、文書のタイトルが単に『請負に関する覚書』であったとしても、記載されている内容が実質的にみて請負契約を締結するものであり(請負の仕事完成義務・注文者の報酬支払い義務)、報酬額が1万円を超える場合には、課税文書に該当し200円分の収入印紙の貼付が必要です。

また文書に直接的な金額の記載がなくとも、記載された単価や数量、記号等から当事者間で金額を計算できる場合には、その金額に応じた収入印紙を貼付します。

課税文書となる対象や金額については、国税庁のWebサイトから確認できます。

参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁

電子化された覚書なら収入印紙は不要

覚書を電子的に作成・締結した場合には、収入印紙の貼付は不要です。

実は覚書だけではなく、契約書なども、WordファイルやPDFファイルなどの電子文書は課税対象とはなりません。

しかし、先に覚書を紙で取り交わし、あとから念のため電子文書を送信するような場合、紙の覚書が『原本』となるため、収入印紙の貼付が必要です。

逆に、先に電子文書を取り交わし、あとからそれを印刷した場合には、電子文書のほうが『原本』となるため、収入印紙は不要です。

覚書を作成する際の注意点4つ

ここでは、覚書を作成する際に注意すべきポイントを3つ紹介します。

原契約を特定する 

覚書で契約書の変更や補完などを行う場合には、その対象となる契約書を明確に特定する必要があります。

契約書に通し番号などが記載されていれば理想的ですが、文書タイトル・当事者名・締結日などの情報を覚書の前文に明記し、原契約を特定できるようにしましょう。

また、対象となる契約だけではなく、変更・補完などの対象となる条項も明確にすることが重要です。

課税文書にあたらないか確認する

覚書を紙で作成する場合には、内容をしっかりと検討し、課税文書に該当しないか確認しましょう。

課税文書に対して収入印紙を貼付しないと、印紙税額の3倍に相当する額の過怠料を支払わなければなりません。文書の作成者が自ら税務署に届け出ることにより、過怠料の額を1.1倍に抑えることもできますが、面倒な手続きを経る必要があります。

したがって、覚書を作成する際には、課税文書への該当性を毎回検討するか、非課税である電子文書での作成がおすすめです。

既存の契約書と紐づけして保管する

覚書を契約書の変更や補完のために用いる場合には、原契約と紐づけて保管しましょう。

とくに覚書によって契約期間を延長する場合は、契約書だけをみて契約の有効期間を判断することができなくなってしまうため、注意が必要です。

そのため、覚書は物理的に契約書と同じ場所に保管するとともに、契約管理台帳などにも覚書の存在と内容を記載しておく必要があります。

合意なし・抽象的な表現の覚書は無効になる可能性

ここまで解説したように、覚書であっても内容次第では契約書と同等の法的効力をもちます。

しかし、当事者が合意していない内容を記した覚書や、公序良俗に反する場合、記載内容が曖昧・抽象的な場合、実現不可能な内容なものである場合には、法的効力を有しません。

したがって、覚書に契約書と同等の法的効力をもたせたい場合には、契約書と同等のリーガルチェックを経て、法的に有効な内容で作成するようにしましょう。

保証人がいる契約の覚書作成には要注意

保証人がついている契約の内容を覚書によって変更する場合には、特別な注意が必要です。これは、主債務(保証の対象となる債務)と、保証債務とが、別個の契約から生じている別個の債務であることと、保証債務の性質によるものです。

例えば、100万円の金銭消費貸借契約(借金)について、保証人が全額保証するとの保証契約が付随している場合を検討してみます。

この場合、覚書によって主債務の金額を80万円に減額するときには、保証契約に対して覚書を作成しなくても、保証人の保証債務の上限も80万円に引き下げられます。

一方で、覚書によって主債務の金額を120万円に増額したとしても、保証契約に対して覚書を作成していないときは、保証人の保証債務は100万円が上限のままとなります。

簡単にいえば、『保証人の知らないところで主債務の条件が変わった場合には、保証人が有利なように扱う』ということです。

保証人の知らないうちに主債務の内容を変更すると、保証人との間でトラブルに発展する可能性があります。保証人がついている契約の内容を覚書によって変更する場合には、あらかじめ保証人の了承を得ることが望ましいといえるでしょう。

覚書を電子化するメリット

先ほど紹介したように、課税文書に該当する場合であっても、電子的に作成された覚書には収入印紙を貼付する必要はありません。

そのほかに覚書を電子化するメリットとしては、電子化により情報の検索とアクセスが容易になる点が挙げられます。

電子化された文書は、特定のキーワードや日付で瞬時に情報を検索でき、原契約との紐づけやクラウド保管も可能なため、文書管理の業務効率が格段に向上します。

また、文書の作成・保管・共有といったプロセスを瞬時に行えることから、複数の当事者に送付する場合や、リーガルチェックを受ける場合でも、瞬時に情報のやり取りが可能です。

近年は電子帳簿保存法の改正もあり、あらゆるビジネス文書の電子化が進んでいるため、まだ電子化を導入していない企業の担当者の方は、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、覚書の意義や記載例、作成時の注意点などについて紹介しました。

覚書は、契約書と比べて心理的にも軽い印象があり、また作成・締結のプロセスも簡易化されていることが多いため、ビジネスの現場でも頻繁に用いられている文書です。

一方で、覚書であっても契約書と同等の法的効力をもつこともあり、内容によっては収入印紙の貼付も必要となる、れっきとした法的文書のひとつといえます。

そのため覚書を作成する場合には、弁護士によるリーガルチェックを受けるなど、しっかりとしたチェック体制を確立することが重要です。

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BackOfficeDB編集部
この記事の執筆者
BackOfficeDB編集部
こんにちは。BackOfficeDB編集部です。 私たちは、管理部門に関する情報発信を専門にしています。 業務効率化や、各職種のキャリアプラン、スキルアップなど、管理部門の様々なお悩みにお答えします。