関連サービス
社会保険労務士は、労働・社会保険分野の専門家として高度な知識とスキルを保有しています。
働き方改革や頻繁に実施される社保制度改正などに対応できることから一定の需要がある職種ですが、求人数が多くないため転職活動は難しさもあります。
本記事では、社会保険労務士の転職先の種類や理想のキャリアを実現するためのポイントを解説します。
最初に、社会保険労務士(社労士)の転職市場におけるニーズや求人動向について解説します。
近年、働き方改革や社会保険制度の改正が進んでおり、企業にとって社会保険労務士の重要性がますます高まっています。
特に労働時間管理やハラスメント対策などの労働問題、人事制度の運用などにおいて、専門知識をもつ社労士の需要が急増しています。
これにより、多くの社労士事務所や企業で社労士を積極的に採用する動きが見られます。
社労士の求人は、年度替わりのタイミングで増加します。
これは多くの企業が新しい年度に向けて組織体制を整えるタイミングにあたり、人事制度の再構築や就業規則の改定などが実施されるためです。
また年度替わりは従業員の入社・退社が集中する時期なので、それにともない人事・労務の手続き関係が非常に多くなります。
こうした理由から年度替わりは繁忙期となるため、2月くらいから多くの企業や社労士事務所で求人が増加します。選択肢が増えて、チャンスをつかみやすい時期となるでしょう。
3号業務というのは、社会保険労務士法第2条1項3号に記載された業務のことです。
社会保険労務士法第2条1項3号
事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。
行政への申請や書類の作成代行など手続き関連業務である1号業務と2号業務は、社会保険労務士の独占業務ではあるものの、定型業務のためAIやRPAによる自動化や電子化が進んでいます。
一方で3号業務は「相談に応じ、又は指導する」とあるように、いわゆるコンサルティング業務を指します。コンサルティング業務をおこなうには実務経験や臨機応変な判断が必要なため、自動化が難しいとされています。
とくに労働分野においては働き方や働く人々の価値観の多様化が進み、新たな課題や法的トラブルが増えています。そうしたなかで、労務コンサルティングのニーズは今後さらに高まると考えられています。
社会保険労務士の転職は難しいと言われることがあります。その理由を解説します。
社会保険労務士の転職市場では、実務経験者が優遇されることが多いです。特に小規模な社労士事務所では欠員を背景に募集することが多く、新たに採用する社労士が即戦力となることを期待しています。
このため未経験者や経験が浅い社労士が転職を試みる場合、応募先の選択肢が限られることが多く、転職活動が難航する原因となります。
社労士は社会人受験者が多く、年齢を重ねてから資格を取得するケースも多々あります。その場合は現在の職場で資格を活かす、あるいは開業するといったキャリアパスが想定されます。
未経験で資格を取得して転職する人はそれほど多くありません。一般企業で労務の経験がある場合は転職しやすくなりますが、完全未経験での転職は年齢が若くないと難しい面があります。
社会保険労務士の求人は、ほかの職種に比べて少なめです。これは、社労士が労働・社会保険分野における専門的な職業であることに起因します。
たとえば法律事務所の場合、弁護士はあらゆる法律に対応できますが、社労士事務所で対応できるのは労働・社会保険分野の法律に限定されます。そのため顧客の獲得が難しく、社労士業務専門の事務所がそれほど多くありません。
1人で開業するケースも多く、社労士が複数人いる社労士法人は数が限られているため、社労士事務所・法人の求人は少なめです。
また企業の求人では社労士資格が必須ではないケースが多いため、資格保有者だからといって優遇されるとは限りません。
したがって、求職者が希望する条件に合った求人を見つけるのが難しいことがあります。
社会保険労務士の業務は多岐にわたり、事務所や企業によって扱う分野や業務内容が異なるため、転職活動が難しくなる要因となります。
たとえばある事務所では労働保険や社会保険の手続き・給与計算などを主におこなっている一方で、別の事務所では就業規則の作成や人事労務コンサルティングが中心となることがあります。
年金分野ひとつとっても、障害年金に特化している事務所、遺族年金に強い事務所なども存在します。
このため社労士としての実務経験があっても、違う分野だと専門性という点で即戦力にならないことがあり、ミスマッチが発生しやすくなります。
自分の経験やスキルが応募先のニーズに合致するかどうかを見極める必要があるため、転職活動の難しさを増幅させています。
転職を考えるうえで年収アップが可能かどうかを重視する方は少なくないでしょう。
しかし雇用される社会保険労務士の平均年収は400万~500万円と、資格の難易度が高い割に年収は低いため、年収アップにつながらないことも多いという現実があります。
社労士事務所は小規模なところが多く、雇用する社労士に高い給与を提供できないケースが多いことが平均年収が低い理由のひとつです。また、企業の場合は間接部門である人事・労務や総務などに所属することが多いため、ほかの間接部門と同様に年収水準が抑えられます。
このため社労士が転職したあとの年収については、現実的な期待値をもつことも必要になるでしょう。
ただし小規模事務所から大企業の人事部への転職など、年収が上がるケースもあります。年収アップを目的として転職を希望する場合は、年収アップが可能なパターンに絞って転職活動を進めるなどの工夫が必要です。
社会保険労務士資格があると開業することも可能ですが、雇用される場合は以下の選択肢が考えられます。
それぞれの分野で求められるスキルや経験を理解し、自分に最適なキャリアパスを見つけることが重要です。
社会保険労務士資格を活かせるもっとも一般的な転職先として、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人があります。
ここではクライアント企業に対して、労働保険や社会保険の手続き・就業規則の作成・労務管理のコンサルティングなど、多岐にわたるサービスを提供します。
社労士としての専門知識と資格を直接活かせる場であり、実務経験を積むことでさらにスキルを磨くことができます。
専門家として働く最前線の現場なので、法改正や制度変更の動向など最新情報がすぐに手に入り、知識を維持・向上させやすい環境です。
法律事務所や会計事務所で、社会保険労務士部門が設けられていることがあります。業務内容は社労士事務所・法人とほとんど同じですが、他士業と連携することでクライアントに対して一括したサービスを提供しやすいという特徴があります。
たとえば会計事務所では社労士が社会保険・労務関係の手続きを担当し、税理士が税務申告や年末調整などを担当することで、クライアント企業の手続き関係を一貫しておこなうことが可能です。
一般企業の管理部門でも社会保険労務士の資格や知識を活かすことができます。特に人事や労務部門では、従業員の労働条件管理や労働法令遵守のための対応が求められます。
また総務や法務部門でも、労働法や社会保険の知識が重要となる場面が多く、社労士の専門性を活かせます。
自身の受験経験を活かし、社会保険労務士を目指す学生や社会人受験生に対する教育の分野でも活躍できます。社労士の予備校で講師として働くことで、自身の知識を他者に伝える役割を担います。
教育に興味がある方にとっては、知識を共有し、次世代の社労士を育てる喜びを感じることができるでしょう。
コンサルティング会社でも、社労士の資格や知識は重宝されます。特に人事労務コンサルティングを扱う会社では、企業の労務管理改善や労働条件の適正化、組織改革などに関する助言をおこないます。
コンサルタントとしてのスキルを磨きながら、さまざまな業界や企業と関わることで、幅広い経験を積むことができます。
社会保険労務士の転職活動では、具体的な転職先の選定に入る前に整理すべき項目があります。
以下の項目を整理することで、自分にとって最適な選択をするための指針となります。
転職を検討する際、まずは転職の目的を明確にすることが重要です。
社会保険労務士としてのキャリアアップを目指すのか、新しい分野に挑戦したいのか、あるいは働きやすい環境を求めているのかといった目的を明確化しましょう。
自身の目的を整理することで、転職先の選定がスムーズになります。
また転職の目的が明確であれば面接の際にも自信と説得力をもってアピールすることができ、採用担当者に対して好印象を与えることができます。
次に、自分が求める転職条件や優先順位を整理することが重要です。年収・勤務時間・働きやすさなど、転職先に求める条件を具体的にリストアップし、それぞれの項目の優先順位を決めましょう。
たとえば年収アップが最優先の場合は高収入が期待できる業界や大企業をターゲットにする必要があります。一方で働きやすい環境を重視する場合は、残業が少ない企業・事務所やサポート体制が整っている企業・事務所などを探す必要があるでしょう。
このように何を重視するのかによって応募先の選定基準が変わります。優先順位を明確にすることで、自分にとって最適な転職先を見つけやすくなります。
社会保険労務士としての実務経験や得意分野を整理することも大切です。これまでの職務経歴を振り返り、自分がどのような業務を経験し、どの分野で成果を上げたのかを把握しましょう。
労働保険や社会保険の手続き・就業規則の作成・労務管理のコンサルティングなど、具体的な経験やスキルをリストアップすることで、自分の強みを明確にできます。
これにより、転職先で求められるスキルや経験に合致するかどうかを判断しやすくなります。面接でのアピールポイントとしても活用できます。
社会保険労務士として理想の転職を実現するには、以下のポイントを意識することが大切です。
転職活動を成功させるためには、自分がどの分野でどのような経験を積んできたのかを的確に伝えることが重要です。転職先の選定前に明確にした自分の強みや実績を具体的に説明しましょう。
数値や成果を用いて具体的にアピールすることで、採用担当者に自分のスキルと経験が明確に伝わりやすくなります。
社会保険労務士は働きながら取得する人が多い資格なので、社会人経験や特定業界での経験があるというのが強みのひとつです。そのため資格や社労士実務の経験だけではなく、社会人経験で培った強みもアピールしましょう。
たとえばコミュニケーション能力や問題解決能力、チームワークなどのソフトスキルは、どの職場でも求められる重要なスキルです。またリーダーシップやプロジェクトマネジメントの経験など、管理職としての適性や能力も積極的にアピールしましょう。
そうすることで、採用担当者に対して総合的な人材としての魅力を伝えることができます。
転職活動を成功させるためには、幅広い情報源から情報を収集することが重要です。
企業の公式Webサイトや求人サイト、業界専門誌などさまざまな媒体から最新の求人情報や業界動向を把握しましょう。
またSNSや転職口コミサイトなどから、企業の社風や働き方についての情報を得ることも有益です。
幅広い情報を収集することで、応募先企業についての理解を深め、自分に適した転職先を見つけやすくなります。
転職活動を効率的に進めるためには、転職エージェントやスカウト型サイトなどの転職支援サービスを利用することが有効です。
転職エージェントは、自分の希望条件に合った求人を紹介してくれるだけでなく、職務経歴書の添削や面接対策から条件交渉まで様々な転職支援サービスを提供してくれます。
スカウト型サイトは企業からのオファーを待つことができるため、自分では見つけられなかった求人に出会えるチャンスが広がります。
複数のサービスを併用することで、転職の成功率を高めることができます。
社会保険労務士におすすめの転職サービスを紹介します。
BEET-AGENTは、社会保険労務士や労務の経験者に特化した転職エージェントです。
アドバイザーが管理部門の働き方やキャリアに詳しいため、社会保険労務士の知識やスキルを活かして、人事・労務・法務などのポジションに転職したい方におすすめです。
事業会社に限らず、社労士法人など士業事務所のネットワークもあるため、応募求人の幅を広げることができるでしょう。
公式サイト:https://beet-agent.com/
MS Agentは、管理部門と士業に特化した転職エージェントです。社会保険労務士事務所から企業、コンサルティングファームまで幅広い求人を扱っています。
自分の経験を最大限に活かせる求人との出会いに期待できるでしょう。
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
ヒュープロは、社労士や人事労務の転職に強みをもつ転職エージェントです。
スピード内定が売りで手間をかけないフローを徹底しているため、効率のよい転職活動が実現できます。ヒュープロにしかない独占求人もあります。
公式サイト:https://hupro-job.com/
SYNCAは、人事労務など管理部門特化型の転職サイトです。社労士資格を活かして管理部門に転職したい人におすすめです。
求人に応募することも、企業からのスカウトを待つこともできます。必要に応じてキャリアアドバイザーのサポートを受けることも可能です。多彩なアプローチで企業との接点を増やせます。
公式サイト:https://candidate.synca.net/
ヒビコレは、社会保険労務士専門の求人サイトです。社労士特化型だから資格を活かせる職場をダイレクトに探せます。
特に関東圏の求人が多いので、関東圏にある社労士事務所を探している方におすすめします。
公式サイト:https://www.1150job.com/
社会保険労務士は労働・社会保険分野の専門家として需要がある職種ですが、求人数が少なく各事務所で専門分野が異なることなどから、なかなかマッチする転職先が見つからないことがあります。
社労士の転職先は事務所のほかに企業や予備校、コンサルティング会社などもあるため、視野を広くもって転職活動を進めましょう。
IT企業にて新卒から人事部に配属されて、現在まで5年間働いています。
現役人事ならではの視点で、人事に関する情報を記事にしていきたいと思います。
法務部・経理財務をはじめとした管理部門のコンサルタント。不動産営業・管理事務等を経験したのち、バックオフィス専門のアドバイザーとして参画。