月次決算に1週間以上かかっている、請求書の入力作業に経理担当者の時間が取られている、という課題を抱えていませんか。AIを活用したSaaSの導入により、仕訳・請求書処理・経費精算といった作業を大幅に自動化できるようになってきました。
本記事では、経理業務でAIがどのように活用されているかを領域別に整理し、実際の活用事例と主要なSaaSを紹介します。経理DXの推進を検討している担当者の方に、具体的な導入イメージをお伝えします。
経理業務へのAI活用が加速している背景には、3つの要因があります。
1つ目は、インボイス制度と電子帳簿保存法の改正です。2023年10月のインボイス制度施行と電子帳簿保存法の義務化により、紙の書類をデジタルデータとして管理する必要が生まれました。
大量の証憑を手入力で処理するのが現実的でなくなり、AI-OCRによる自動データ化への需要が急増しています。
2つ目は、人手不足と人件費の上昇です。少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、経理部門でも限られた人員で業務量をこなす必要があります。
繰り返し発生するデータ入力・照合・承認処理は、AIによる自動化と相性の良い領域です。
3つ目は、AIの精度向上とSaaSの低価格化です。クラウド型のAI-OCRは読み取り精度が大幅に向上しており、中小企業でも導入しやすい価格帯のサービスが増えてきました。
かつては大企業向けだった技術が、幅広い企業規模で活用できるようになっています。
銀行口座やクレジットカードの取引明細と会計ソフトを連携し、AIが勘定科目を自動で推測・計上する機能です。利用を重ねるほどAIが自社の仕訳パターンを学習し、精度が高まっていきます。
主要なクラウド会計ソフトでは1,000〜2,000以上の金融関連サービスと連携しており、幅広い金融機関の明細を自動取得できます。仕訳の入力作業が大幅に減り、経理担当者は確認・修正業務に集中できるようになります。
紙やPDFで届いた請求書・領収書をスキャンまたは撮影するだけで、日付・金額・取引先・品目などをAIが自動で読み取ってデータ化する機能です。
従来のOCRと異なり、書体のばらつきや手書き文字、複雑なレイアウトにも対応できます。AI単独での読み取りに加え、専任オペレーターが確認する「ハイブリッド方式」を採用し、高い読み取り精度を実現しているサービスもあります。
従業員がスマートフォンで領収書を撮影すると、AI-OCRが金額・日付・店舗名を自動入力し、勘定科目の分類まで行います。交通系ICカードの連携や経路検索との組み合わせにより、交通費の精算も自動化できます。
申請後の承認ルーティングや規定チェックもAIが担うため、経理担当者のチェック工数を大きく削減できます。不正申請や重複申請の自動検知機能を備えたサービスもあります。
発注書・受取請求書・支払通知書を突き合わせ、金額の一致を自動で確認する機能です。件数が多い企業では照合作業に多大な時間がかかりますが、AIが全件を自動照合することで、差異のあるケースのみ担当者が確認すればよくなります。
自動仕訳によってリアルタイムに近い形でデータが蓄積されるため、月末に集中して入力する必要がなくなります。試算表・残高試算表・キャッシュフロー計算書といった帳票もワンクリックで自動生成できるサービスが増えています。
経費申請の内容をAIがパターン分析し、規定外の申請や過去データと比較して異常値を検出します。人が全件チェックするよりもミスが少なく、不正リスクの低減と内部統制の強化につながります。
導入効果は企業の規模・業務内容・運用体制によって大きく異なります。自社の現状業務量を把握したうえで、費用対効果を見積もることが大切です。
ここでは実際にAIを活用した経理向けSaaSを導入し、業務改善につながった事例を紹介します。
請求書処理が属人化し、経費精算のフローも整備されていなかった食品メーカーでは、TOKIUMを導入して処理を一元化しました。属人化の解消とプロセスの標準化により、全社で年間5,000時間の工数削減を実現しています。
月次決算に時間がかかっていた映像コンテンツ企業でも、TOKIUMのBPOサービスを活用してノンコア業務を外部に切り出しました。経理担当者が戦略的な財務業務に注力できる体制が整い、月次決算を2日短縮しています。
関東圏の自治体では、紙の請求書処理にかかっていた人手をTOKIUMの導入で2名体制に集約し、年間1,000時間以上の工数削減につなげました。
東京都DX推進実証実験プロジェクトにおいて、導入企業5社の工数を計測した結果、作業時間80%削減という成果が報告されています。
継続率は99.8%(2025年1月〜12月の月次解約率中央値に基づく)と高く、導入後の定着率の高さもうかがえます。
公式サイトでは、自動仕訳や金融機関連携によるデータ入力の効率化により、経理業務の時間を最大90%削減できるとしています。幅広い金融関連サービスとの連携が、手入力の工数を大きく減らすポイントです。
経理業務のAI活用を支援する主要なSaaSを紹介します。

請求書・領収書の受領・データ化に特化したサービスです。AI-OCRによる即時データ化と、専任オペレーターが確認するハイブリッド方式を組み合わせ、高いデータ化精度を実現しています。
自然言語で読み取り箇所を指示できる「読み取りAIエージェント」を搭載しており、非定型の帳票にも柔軟に対応できます。請求書の受領から仕訳・支払処理まで一気通貫で自動化でき、経理担当者の入力・確認作業を大幅に減らせます。幅広い業種・規模の企業に導入されています。
| サービス名 | invox受取請求書 |
| 初期費用 | 0円 |
| 月額料金 | 980円+データ処理料~ |

ひとり法人から大企業まで対応するクラウド会計ソフトです。銀行やクレジットカードなど幅広い金融機関と連携しており、取引明細をAIが自動で取得・仕訳します。
使い込むほど精度が向上する自動仕訳機能を搭載しており、書類のAI-OCR読み取りから仕訳作成まで自動化できます。インボイス制度にも対応しており、会計業務全体をAIで効率化できるサービスです。
| サービス名 | freee会計 |
| 初期費用 | 0円 |
| 月額料金 | 2,980円~ |

フリー株式会社が提供する、経費精算・受取請求書処理・支払管理を一つにまとめた支出管理サービスです。「魔法スキャン」機能では、領収書にスマホをかざすだけで自動撮影し、最短1.5秒で経費申請が完了します。
受取請求書はAI-OCRが取引明細まで自動で読み取り、入力作業を最小限に抑えられます。AIによる書類の自動振り分けや税率に応じた仕訳自動作成にも対応しており、申請から支払・債務管理までを一気通貫で効率化できます。LINEやSlackとの連携にも対応しています。
| サービス名 | freee支出管理 |
| 初期費用 | 要問い合わせ |
| 月額料金 | 年237,600円~ |

株式会社ビズリーチが提供する経費精算システムです。経理特化型の高精度AIを搭載しており、手書き領収書や長いレシート、複雑なレイアウトの書類にも対応できます。
請求書は明細レベルまで自動で読み取れるため、経理担当者の入力・確認工数を削減できます。会計システムとの連携実績も豊富で、自動仕訳にも対応しています。初期費用がかからないため、コストを抑えてスタートできます。
| サービス名 | ハーモス経費 |
| 初期費用 | 0円 |
| 月額料金 | 29,000円~ |

株式会社マネーフォワードが提供するクラウド会計ソフトです。幅広い金融関連サービスと自動連携しており、AIが勘定科目を提案して仕訳候補を自動作成してくれます。
マネーフォワード クラウド経費・請求書・給与などとの連携により、経理関連業務をプラットフォームとして一元管理できます。ひとり法人から中堅企業まで対応したプランが用意されており、自社の規模に合った形で導入できます。
| サービス名 | マネーフォワード クラウド会計 |
| 初期費用 | 無料 |
| 月額料金 | ¥2,480〜 ※年払い |

株式会社TOKIUMが提供する経費精算システムです。AI-OCRで領収書を自動データ化し、確信度が低い項目は人が確認するヒューマン・イン・ザ・ループ設計で、安定した読み取り精度を実現しています。
AIが経費規定を全明細自動チェックし、金額異常やルール違反を検知してくれるため、承認者の確認工数を大幅に削減できます。AI出張手配機能では、対話形式で交通手段やホテルの提案を受けられます。
| サービス名 | TOKIUM経費精算 |
| 初期費用 | 要問い合わせ |
| 月額料金 | 10,000円+従量課金制~ |

株式会社コンカーが提供する、出張管理・経費精算・請求書管理を統合したシステムです。海外拠点を持つ企業や多通貨対応が必要な企業での活用実績が豊富で、グローバルで広く導入されています。
AI搭載のExpenseIt機能で領収書を自動読み取りし、カテゴリ分類・明細化まで行います。重複申請や規定外利用をAIが自動検知する監査機能も備えており、内部統制の強化に役立ちます。SAP ERP・Oracle・Microsoft Dynamicsなど主要ERPとの連携実績も豊富で、既存の基幹システムとデータ統合しやすい設計です。
| サービス名 | SAP Concur |
| 初期費用 | 要問い合わせ |
| 月額料金 | 要問い合わせ |
データ入力・仕訳・照合といったルーティン業務をAIが代替することで、経理担当者は分析・改善提案・経営への情報提供といった付加価値の高い業務に時間を割けるようになります。人手不足の環境下でも、業務量を維持できる体制をつくれます。
手作業入力によるヒューマンエラーが減り、財務データの精度が向上します。AIの規定チェックや異常検知機能により、申請ミスや不正を早期に検出できるため、内部統制の強化にもつながります。
自動仕訳によってリアルタイムに近い形でデータが蓄積されるため、月末に集中して入力する必要がなくなります。決算業務の負荷が分散され、経営状況を早いタイミングで把握できるようになります。
AI-OCRや自動仕訳の精度は、学習データの質に大きく左右されます。導入初期は読み取りエラーや仕訳ミスが一定数発生するため、担当者による確認・修正を続けながら精度を育てていく期間が必要です。
新しいAIツールを導入しても、既存の会計ソフトやERPとの連携が取れなければ二重入力が発生します。導入前に連携対応状況を確認し、業務フローの変更範囲を見積もっておくことが大切です。
請求書・領収書・仕訳データは機密性の高い情報です。クラウドサービスを導入する際は、データの保管場所・アクセス権限・バックアップ体制を確認し、電子帳簿保存法の要件に準拠した運用ができるかを確かめてください。
まず、経理業務の中でどの工程に最も時間がかかっているかを可視化してください。請求書入力・仕訳・経費精算・月次決算・照合作業のうち、特にボトルネックになっている工程を特定することで、優先すべきAI活用領域が明確になります。
解決したい課題に合ったサービスを選定します。請求書処理に特化するならinvoxやTOKIUM、会計全般を効率化するならfreee会計やマネーフォワード クラウド会計が選択肢になります。
経費精算を中心に改善するならハーモス経費やfreee支出管理も候補です。無料トライアルを活用して操作感を確認してください。
全社展開の前に、特定部門・特定業務に絞って試験導入することをおすすめします。AIの学習期間を確保しながら精度を確認し、運用ルールを整備してから段階的に拡大することで、導入リスクを下げられます。
AI活用の効果を最大化するためには、従業員への操作教育と運用ルールの策定が欠かせません。承認フローの変更や仕訳ルールの設定など、新しいシステムに合わせた業務フローの整備を丁寧に進めてください。
導入後は、工数削減量・エラー率・処理速度などを定期的に計測し、目標値と比較してください。AIの学習が進むほど精度が向上するため、定期的な設定見直しと学習データの追加で継続的に改善できます。
A:月額1,000円程度から利用できるサービスもあり、中小企業でも十分に導入できます。invox受取請求書のミニマムプランは月額980円(税抜)、マネーフォワード クラウド会計のひとり法人プランは月額2,480円(税抜・年払い)から利用可能です。まずは無料トライアルで操作感を確かめてから判断することをおすすめします。
A:サービスによって異なります。invoxやTOKIUMのように、AIと専任オペレーターを組み合わせたハイブリッド方式を採用するサービスでは、99%以上の精度を実現しています。精度を重視する業務では、ハイブリッド方式のサービスを選ぶことをおすすめします。
A:電子データで受け取った請求書は、電子データのまま保存することが法律で義務づけられています。多くのクラウド経理サービスは電子帳簿保存法対応の保管機能を提供していますが、自社の保存要件を満たしているかを導入前に確認してください。
経理業務へのAI活用は、仕訳自動化・AI-OCRによる請求書処理・経費精算の自動化・月次決算の早期化など、幅広い領域で実用的な段階に入っています。中小企業でも月額1,000円台から導入できるサービスが登場しており、導入のハードルは年々下がっています。
自社のボトルネックとなっている経理業務を特定し、課題に合ったサービスで無料トライアルを試してみてください。気になったサービスの資料を複数取り寄せ、機能・料金・導入サポートを比較したうえで判断することをおすすめします。