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女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、日本における男女の賃金や社会的地位の格差を是正して豊かな社会を作り上げることを目的として制定された法律です。
女性活躍推進法の制定によって、各企業・国・地方公共団体は、男女間の格差を解消しつつ、自発的に職業生活を希望する女性がその個性と能力を十分に発揮できるような環境作り・施策に着手することが求められるようになりました。
そして、女性活躍推進法は令和4年7月8日に改正施行されて、従来よりも更に職業生活における女性の活躍を推進する動きが強まっています。
本記事では、女性活躍推進法の概要及び改正内容、各企業が女性活躍推進に向けて取り組むべき具体的な方策などについて分かりやすく解説します。経営者の方や人事担当者の方は、ぜひ最後までご一読ください。
女性活躍推進法とは、職業生活やキャリアアップを希望する全ての女性が各人の能力・個性を発揮できる社会を目指すために制定された法律のことです。2015年8月に成立、2016年4月から施行され、2020年及び2022年に順次改正されています。
まずは、女性活躍推進法が制定・改正された背景や女性活躍推進法によってもたらされた影響について解説します。
参考:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成二十七年法律第六十四号)
「男性は仕事をして女性は家を守る」という古い価値観が原因で、日本の社会構造は男性優位の状況が長期間継続している現状があります。
しかし、経済社会の国際化・高度化・情報化は日々進展しており、日本社会が国際的な通用力を維持するには、性別にかかわらず多様な個性・能力を発揮することが求められます。
このような要請がある中、過度な男性優位の社会構造・職場環境は、多様な人材の能力発揮にとって弊害でしかありません。
また近年では、少子高齢化の影響によって、多くの業種・業界で労働力不足が課題になっているのが実情です。男性だけを採用対象にしているだけでは、事業活動の継続自体が困難になりかねません。
以上を踏まえると、女性活躍推進法が制定・施行された背景には、以下のような課題克服に対する意識があるといえるでしょう。
これらの目的を達成するには、一企業だけが積極的に取り組みを進めるだけでは足りません。
そのため、女性活躍推進法によって、国・地方公共団体・事業主が一丸となって女性が活躍しやすい環境作りが目指されています。
女性活躍推進法によって、各企業には以下の諸施策の実施が求められます。
これらの取り組みを着実に実施することによって、企業におけるPDCAサイクルの循環が促進され、結果として、女性活躍の場が広がります。
また、事業者がこれらの取り組みに前向きになるインセンティブとして、行政側も以下のような対応をする必要があります。
なお、近年の日本における男女の賃金格差は、以下のように推移しています。女性活躍推進法などの諸施策の影響によって男女間の賃金格差は狭まっていますが、今なお先進国と比べると差があるのが実情です。
年代 | 日本国内の男女間の 賃金格差 |
厚生労働省の取り組み |
---|---|---|
1985年(昭和60年) | 41.7% | 男女雇用機会均等法に基づき、企業における募集・採用・配置・昇進に関する賃金待遇の確保等の推進。 |
2010年(平成22年) | 28.7% | 男女間の賃金格差の要因を分析して平成22年研究会報告を提出。役職・勤続年数の差異が大きな要因であることが判明し、さまざまな対策をスタート。 |
2015年(平成27年) | 25.7% | 女性活躍推進法に基づき、個々の企業における状況把握・目標設定・情報公表を通じて、女性活躍推進のPDCAサイクルを循環させる取り組みを開始。 |
2019年(令和元年) | 23.5% | 女性活躍推進法の改正によって、諸施策の適用範囲を中小企業まで拡大。男女間の賃金差異を状況把握の見直し選択項目に追加、情報公表範囲を拡充。 |
社会のあり方の変革に関連する法律として、男女共同参画社会基本法という法律が存在します。
男女共同参画社会基本法は、性別問わず、男女共に社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会を確保することを目的とした法律です。
これによって、男女が均等に政治的・経済的・社会的・文化的利益を享受することが可能になり、男女共に責任を担うべき社会が形成されます。
これに対して、女性活躍推進法は、就労意欲を有する全ての女性にキャリア形成のチャンスを付与することを目的とした法律です。
つまり、女性活躍推進法が女性の活躍機会を保障することを目的とする法律であるのに対して、男女共同参画社会基本法は、男女問わず全ての人たちを不当な差別から守り、平等な参画機会を確保するものであるという点で違いがあります。
女性活躍推進法も男女共同参画社会基本法も個人が尊重されて能力を発揮できる社会の形成を目指す法律ですが、女性活躍推進法は女性の職業生活にフォーカスしている点に特徴があるといえるでしょう。
令和元年に改正して令和4年に全面施行された、女性活躍推進法のポイントを解説します。
常時雇用する労働者数が301人以上の一般事業主は、事業における女性の職業生活における活躍に関する以下に掲げる情報を公表する義務が課されています。
公表項目 | 公表項目の内訳 | 公表義務の詳細 |
---|---|---|
女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績 | ①採用した労働者に占める女性労働者の割合 ②男女別の採用における競争倍率 ③労働者に占める女性労働者の割合 ④係長級にある者に占める女性労働者の割合 ⑤管理職に占める女性労働者の割合 ⑥役員に占める女性の割合 ⑦男女別の職種または雇用形態の転換実績 ⑧男女別の再雇用または中途採用の実績 ⑨男女の賃金の差異 |
・①~⑧のうち1項目を選択して公表しなければいけない ・⑨は全ての一般事業主に対して公表義務が課されている |
女性の職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績 | ⑩男女の平均継続勤務年数の差異 ⑪10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 ⑫男女別の育児休業取得率 ⑬労働者の1ヶ月あたりの平均残業時間 ⑭雇用管理区分ごとの労働者の1ヶ月あたりの平均残業時間 ⑮有給休暇取得率 ⑯雇用管理区分ごとの有給休暇取得率 |
⑩~⑯のうち1項目を選択して公表しなければいけない |
改正前の女性活躍推進法では、常時労働者を301人以上雇用する一般事業者の開示義務の範囲について、「①~⑧から1項目以上、⑩~⑯から1項目以上、合計2項目以上」と定められていました。
これに対して、改正後の女性活躍推進法における当該一般事業者の開示義務の範囲は、「①~⑧から1項目、⑨は公表必須、⑩~⑯から1項目以上、合計3項目以上」と変更されるに至っています。
以上を踏まえると、女性活躍推進法の改正により、職業生活を希望する女性には以下のメリットが生じるといえるでしょう。
日本の就労実態を踏まえると、「男女の賃金の差異」は雇用形態によって大幅に異なります。
また、職業生活を希望する女性の中には、「育児や家事・介護と両立しながら多様な雇用形態から就労スタイルを選択したい」などの希望を抱く人も少なくありません。
そこで、職業生活を希望する女性が適切かつ効果的にキャリアを選択できるように、「男女の賃金の差異」を公表する時には以下3区分に分けることが求められています。
なお、企業における男女の賃金の差異については、行動計画の策定等による取り組みの結果、特に女性の登用や継続就業の進捗を測る観点から有効な指標となり得るものですが、必ずしも実態を捉えたものではないリスクを生むかもしれない点に注意が必要です。
たとえば、 女性労働者の新規採用を強化する等の女性活躍推進の施策によって、相対的に男女の賃金の差異が拡大することもあり得るでしょう。
また、 男女の賃金の差異が小さい場合でも、管理職比率・平均継続勤務年数などの個々の指標に着目すると男女間格差が存在しているケースも存在します。
したがって、 企業においては「男女の賃金の差異」として算出された数値の大小だけに注目するのではなく、自社の管理職比率・平均継続勤務年数・部署ごとの人員分布などの状況把握・課題分析を実施したうえで、自社にとって効果的な女性活躍推進施策を検討・継続することが重要だといえるでしょう。
「男女の賃金の差異」は、短期的な対策によって大幅に改善されるものではありません。そのため、企業として賃金格差解消に向けた本格的な取り組みをスタートしても、数値上公表される外部データ・数値上には企業努力が反映されず、「この企業は女性の賃金が上がりにくい職場だ」という印象を受け取られかねないリスクが生じます。
そこで、企業側としては「男女の賃金の差異」について、数値だけでは伝えきれない自社の実情を説明するために、「説明欄」等を活用して、任意でより詳細な情報・捕捉的な情報を公表すると効果的でしょう。
たとえば、以下のような追加情報があれば、女性求職者にとって有益だと考えられます。
女性活躍推進法の改正によって、常時労働者を101人以上300人以下雇用する一般事業者に課される情報公開義務のあり方にも変化が生じました。
まず、改正前女性活躍推進法でも、常時労働者を101人以上300人以下雇用する一般事業者については、「①~⑧、⑩~⑯の全15項目から1項目以上を選択して公表」という義務が課されていました。
これに対して、改正後女性活躍推進法では、当該一般事業者に対して、「①~⑯の全16項目から1項目以上を選択して公表」という形で情報公開義務の範囲が変更されています。
今回の法改正における注目ポイントは、常時労働者を101人以上300人以下雇用する一般事業者の情報公開義務の対象の中に「男女の賃金の差異」に関する項目が含まれるようになった点です。
もちろん、一般事業者側としては①~⑯の中から1項目以上を任意に選択できるので、必ずしも男女間の賃金格差に関する情報が公開されるとは限りません。
ただ、「男女間の賃金差異」が社会的な関心として高まっている実情を踏まえると、今回の法改正の影響によって、男女の賃金に関するデータが公表される可能性が高まるでょう。
常時労働者を101人以上雇用する一般事業者に課されている情報公開義務は法的義務です。これに違反した時には、厚生労働大臣から勧告等のペナルティが科されます。
これに対して、女性活躍推進法の改正前後で、常時労働者を100人以下雇用する一般事業者に課されている情報公開義務が努力義務に過ぎない点に変わりはありません。
ただし、女性の安定的な職業生活を確保する趣旨に基づき、女性活躍推進法の改正によって、常時雇用する労働者数が100人以下の中小企業の情報公開努力義務の範囲についても変更が加えられました。
具体的には、「①~⑧、⑩~⑯の全15項目から1項目以上を選択して公表」から「①~⑯の全16項目から1項目以上を選択して公表」への改正です。常時労働者を101人以上300人以下雇用する一般事業者の変更内容と同様です。課される情報公開義務が、法的義務か努力義務かという違いがあるに過ぎません。
一般事業主の女性活躍推進に向けた取り組みに対するインセンティブとして、プラチナえるぼし認定・えるぼし認定制度が導入されています。
これらの認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める「プラチナえるぼし」「えるぼし」の認定マークを自社商品などに付すことが許され、世間に対して女性活躍推進に力を入れている企業であることをアピール可能です。
また、プラチナえるぼし認定を受けた企業は、一般事業主行動計画の策定・届出が免除されるというメリットも得られます。
プラチナえるぼし・えるぼし制度の詳細及び認定基準は以下の通りです。
ランク | 要件 |
---|---|
プラチナえるのし |
|
えるぼし(3段階目) | 後述の5つの基準全てを満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること |
えるぼし(2段階目) |
|
えるぼし(1段階目) |
|
なお、プラチナえるぼし及びえるぼしの認定に関する5つの基準として以下の数値目標が定められています。
評価項目の基準 | えるぼし認定制度 | プラチナえるぼし認定制度 |
---|---|---|
採用 |
①男女別の採用における競争倍率が同程度であること(直近3事業年度の平均した「採用における女性の競争倍率 × 0.8」が、直近3事業年度の平均した「採用における男性の競争倍率」よりも雇用管理区分ごとにそれぞれ低いこと または ②直近の事業年度において以下両方の要件を満たすこと |
|
継続就業 |
直近の事業年度において、以下①②のどちらかの要件を満たすこと
|
①については8割、②については9割に変更して要件充足を判断 |
労働時間等の働き方 | 雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働及び法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとに全て45時間未満であること | |
管理職比率 |
①直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること
|
直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値の1.5倍であること
|
多様なキャリアコース |
直近3事業年度に、大企業については以下2項目以上(非正社員がいる場合は必ずAを含む必要あり)、中小企業については以下1項目以上の実績を有すること
|
女性活躍推進法の要請に基づいて、一般事業主が諸施策に取り組む時の流れについて解説します。
まずは、自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析がファーストステップです。
そして、女性の活躍に関する状況把握をする際には、必ず以下の基礎項目を利用しなければいけません。
これらの項目について調査を進めることによって、自社が抱える課題及び改善策の方向性を明確化できるでしょう。
企業が抱えている課題や今後の展望を踏まえたうえで、一般事業主行動計画を策定します。
一般事業主行動計画には、開示義務が課された条項について、計画期間・数値目標・取り組み内容・取り組みの実施期間を具体的に盛り込むことが重要です。
一般事業主計画を作成し終えたら、社内への周知・外部への公表を行います。
まず、策定した一般事業主計画を社内周知する対象は、正社員だけではなく非正規雇用・パート・アルバイトなどを含めてた全労働者です。
社内周知の方法に決まったルールは存在しませんが、以下のような周知方法が推奨されます。
なお、事業所内に掲示する方法を選択する時には、掲示場所に注意をする必要があります。
たとえば、従業員の出入りがない社内の一室に掲示しただけでは不十分なのは明らかです。休憩室など、一般事業主計画の備え付け場所は従業員に十分周知されており、かつ、労働者が手に取ったり閲覧しやすかったりする場所に掲示するのが適切でしょう。
また、社内全体へ効率的に一般事業主計画を周知するには、トップダウンの方式で周知徹底するのがおすすめです。組織のトップや管理職、人事労務担当者が率先して周知活動に尽力してください。。
次に、策定した一般事業主計画は、社内だけではなく社外向けへも公表しなければいけません。
たとえば、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページへの掲載によって、女性の活躍推進に向けた取り組みに尽力していることを社会的にアピールしましょう。
策定した一般事業主計画は事業所の所在地を所管する都道府県労働局への届出が必要です。
各都道府県労働局のホームページ等を参照すれば、届出の流れや一般事業主計画策定時の注意点などが記載されているので、必ず事前にご確認ください。
一般事業主行動計画表の記入例について、具体的に紹介します。
一般事業主行動計画表を策定する際には、計画期間・目標・取組内容をできるだけ具体的に示す必要があります。
計画内容が具体的なものでなければ、社内外に対する説得力に欠けるからです。
なお、一度決めた一般事業主行動計画表の内容に最後まで拘束されるわけではなく、計画途中で一般事業主行動計画の内容を変更することも可能です。
あまりに非現実的な内容の一般事業主行動計画を策定しても実効性は低いですが、ある程度のビジョンを有する計画内容でなければ女性の活躍は推進されません。
そのため、企業全体にもメリットがある一般事業主行動計画を策定することを心がけるべきでしょう。
女性活躍推進法に基づいた施策が採られることによって、どのような結果が生じたかについて解説します。
参考:「女性活躍・男女共同参画の重点方針2024 (女性版骨太の方針2024)」の策定に向けて|令和5年12月25日男女共同参画会議
以下のように、女性活躍推進法の施行・改正により、女性役員比率が増加傾向にあります。
全上場企業の女性役員比率 | 東証第一部市場上場企業の女性役員比率 | |
---|---|---|
2018年 | 4.1% | 4.5% |
2019年 | 5.2% | 5.8% |
2020年 | 6.2% | 7.1% |
2021年 | 7.5% | 8.8% |
2022年 | 9.1% | 11.4% |
2023年 | 10.6% | 13.4% |
女性役員比率が増加すると、企業にとって優秀な人材確保を実現できるだけではなく、女性活躍推進に力を入れている企業であるということで、社会的評価が高まるというメリットが生じます。
とはいえ、G7やOECD諸国における女性役員比率に比べると、日本国内企業の女性役員比率は極めて低調なのが実情です。
「女性役員を1名以上選任するように努める」「女性役員比率30%以上を目指す」などの具体的な目標を掲げて、女性人材登用・育成に向けた取り組みは今後も継続する必要があるといえるでしょう。
少子高齢化の影響で、労働人口は減少傾向にあります。
そのため、企業が現在の事業活動を維持したり、業績向上を目指してさまざまな業務にチャレンジしたりするためには、以前よりも少ない労働者数で事業活動を支えなければいけなくなり、結果として労働者単位の就業時間が増えてしまいます。
従業員の労働時間が長くなると、過労死や労災などのリスクが高まります。また、労働関係法制に違反する状態が発生することによって企業がコンプライアンスを遵守できず、法的ペナルティを課される危険性も生じかねません。
女性活躍推進法に基づく施策を実施すれば、職業生活を希望する女性が労働市場で活躍してくれるというメリットを得られます。その結果、以下に示すように、男女共に週間就業時間60時間以上の雇用者の割合が減少し、労働者の就労実態が大幅に改善されるでしょう。
年度 | 男女合計 | 男性 | 女性 | 30代男性 | 40代男性 |
---|---|---|---|---|---|
2019年 | 6.4% | 9.8% | 2.3% | 12.4% | 12.4% |
2020年 | 5.1% | 7.7% | 1.9% | 9.9% | 9.8% |
労働市場に女性が積極的に参画することによって、ステレオタイプな性別役割分担の意識の改善を期待できます。
そのひとつの具体例として挙げられるのが、男性の育児への参加です。
女性の労働人口が増加すると、育児負担を男女双方で分担する必要があります。結果として、夫婦双方が仕事・家庭両方に深く関わる機会が生まれるので、男女共に多様なワークライフバランスのあり方を模索できるようになるでしょう。
女性・男性の育児休暇取得率は、以下のように推移しています。女性活躍推進法の施行・改正によって、男性の育児休業取得率が大幅に増加している傾向を読み解くことができます。
年度 | 女性の育児休業取得率 | 男性の育児休業取得率 |
---|---|---|
2016年 | 81.8% | 3.16% |
2017年 | 83.2% | 5.14% |
2018年 | 82.2% | 6.16% |
2019年 | 83.0% | 7.48% |
2020年 | 81.6% | 12.65% |
2021年 | 85.1% | 13.97% |
参考:「女性活躍・男女共同参加の重点方針2024(女性版骨太の方針2024)」の策定に向けて|男女共同参画局
最後に、女性活躍推進法に基づく取り組みを積極的に実施している企業を紹介します。
株式会社丸亀製麺は、2000年設立の宿泊業・飲食サービス業を展開する企業です。
従業員総数 | 20,787人 |
---|---|
女性の正規労働者数 | 198人 |
女性の非正規労働者数 | 12,280人 |
男性の正規労働者数 | 618人 |
男性の非正規労働者数 | 7,691人 |
男女の賃金差異に 関する実績 |
全労働者 | 97.5% |
---|---|---|
正規雇用労働者 | 78.3% | |
非正規雇用労働者 | 122.0% |
株式会社丸亀製麺では、新卒社員作用をスタートして9年が経過しており、新卒に占める男女の社員数はほぼ過半数の状況です。そのため、男女の勤続年数差及び男女の賃金差異は縮小傾向にあります。
ただし、現場担当・営業部門における女性管理職が1人も誕生していない点が企業課題としてピックアップされているのが実情です。
そこで、株式会社丸亀製麺では、以下のような対策によって、女性の活躍支援・キャリアアップ推進を目指しています。
UCC上島珈琲株式会社は、1951年設立の食料品、飲料・たばこ・飼料製造業を営む企業です。
従業員総数 | 919人 |
---|---|
女性の正規労働者数 | 211人 |
女性の非正規労働者数 | 46人 |
男性の正規労働者数 | 606人 |
男性の非正規労働者数 | 56人 |
男女の賃金差異に 関する実績 |
全労働者 | 70.6% |
---|---|---|
正規雇用労働者 | 73.7% | |
非正規雇用労働者 | 72.2% | |
正社員(管理職社員) | 86.6% | |
正社員(一般社員) | 80.5% | |
契約社員 | 85.3% | |
パートタイマー | 89.0% |
UCC上島珈琲株式会社が抱える課題は、管理職における女性社員の割合が8.92%と低調な水準である点です。比較的給与水準が高い管理職における男女従業員数の偏りが原因で、男女の賃金格差が生じていると考えられます。
そこで、UCC上島珈琲株式会社では、以下の取り組みによって女性の活躍推進を進め、男女間の賃金格差の是正を目指しています。
UCC上島珈琲株式会社における取り組みの結果、女性の新規採用数は増加傾向にあります。ただし、取り組みをスタートしてからの期間が短いため、現段階では、賃金水準の低い女性社員の割合が一時的に増加し、結果として、男女の賃金格差が発生しているのが実情です。
とはいえ、男女の賃金格差の是正は短期的に実現できる目標ではないので、数年後、十数年後には勤続年数の長い女性従業員の割合が増えて、男女の賃金格差はある程度是正されることが見込まれるでしょう。
参考:男女の賃金の差異(UCC上島珈琲株式会社)|厚生労働省
株式会社ダイアナは、1986年設立のサービス業を営む企業です。ビューティライフスタイル事業、フードライフスタイル事業、ファッションライフスタイル事業などを展開しています。
従業員総数 | 233人 |
---|---|
女性の正規労働者数 | 97人 |
女性の非正規労働者数 | 69人 |
男性の正規労働者数 | 57人 |
男性の非正規労働者数 | 10人 |
男女の賃金差異に 関する実績 |
全労働者 | 67.8% |
---|---|---|
正規雇用労働者 | 82.9% | |
非正規雇用労働者 | 54.6% |
株式会社ダイアナにおける男女間の賃金差の要因は、女性社員の時短社員・新卒社員の割合の高さ、配偶者の扶養内での就労を希望する女性の短時間労働者割合の高さが挙げられます。
そのため、株式会社ダイアナでは、社員のライフスタイルに配慮したうえで、非正規社員を正規社員へ転換する取り組みが進められています。
株式会社富士通ゼネラルは、1936年設立の製造業を営む企業です。電⼦電気機械器具の製造・販売などを行っています。
従業員総数 | 1,919人 |
---|---|
女性の正規労働者数 | 262人 |
女性の非正規労働者数 | 14人 |
男性の正規労働者数 | 1,467人 |
男性の非正規労働者数 | 176人 |
男女の賃金差異に 関する実績 |
全労働者 | 70.0% |
---|---|---|
正規雇用労働者 | 69.5% | |
非正規雇用労働者 | 55.3% |
株式会社富士通ゼネラルは、性別によって賃金体系及び制度上の違いを設けていることはありません。にもかかわらず、男女間の賃金差異が生じているのは、管理職比率を含む等級別人員構成に男女差があるためと考えられます。
そこで、株式会社富士通ゼネラルでは、ダイバーシティー&インクルージョンを推進するため、女性に限らず多様な人材が活躍できる環境作りや、積極的な人材育成・活用を推し進めることによって、男女共に希望するキャリアを創造できる就労環境構築を目指しています。
参考:男女の賃金の差異(株式会社富士通ゼネラル)|厚生労働省
豊田合成株式会社は、1949年設立の輸送⽤機械器具製造業を営む企業です。合成樹脂・ゴムを中⼼とする⾃動⾞部品などの製造・販売を行っています。
従業員総数 | 6,733人 |
---|---|
女性の正規労働者数 | 778人 |
女性の非正規労働者数 | 40人 |
男性の正規労働者数 | 5,423人 |
男性の非正規労働者数 | 492人 |
男女の賃金差異に 関する実績 |
全労働者 | 76.6% |
---|---|---|
正規雇用労働者 | 75.2% | |
非正規雇用労働者 | 80.9% |
豊田合成株式会社では、同一労働の賃金について男女差を設けていません。
そのため、男女間の賃金差異が生じているのは、職能資格別の人員構成比差、勤務時間・勤務形態の違い及びこれに付随する手当の支給有無だと考えられます。
そこで、女性の管理職登用を積極的に進めるため、「女性リーダー養成研修」を実施したり、産休・育休によるブランクを挽回する施策を展開しています。
また、職能資格別の人員構成比を同等にするために、次世代の女性管理職候補の増加を目指して、計画的な育成カリキュラムを実施・継続しています。
カゴメ株式会社は、1949年設立の⾷料品、飲料・たばこ・飼料製造業を営む企業です。調味⾷品・保存⾷品・飲料・その他の⾷品の製造・販売、種苗・⻘果物の仕⼊れ・⽣産・販売などを展開しています。
従業員総数 | 2,220人 |
---|---|
女性の正規労働者数 | 558人 |
女性の非正規労働者数 | 184人 |
男性の正規労働者数 | 1,174人 |
男性の非正規労働者数 | 304人 |
男女の賃金差異に 関する実績 |
全労働者 | 65.4% |
---|---|---|
正規雇用労働者 | 67.3% | |
非正規雇用労働者 | 87.6% |
カゴメ株式会社において男女間の賃金差異が生じているのは、40代・50代が中心層である管理職に占める女性割合の低さです。
そのため、「2040年頃までに各職位の女性比率50%」という長期ビジョンを達成するために、採用基準や昇格基準を抜本的に見直し、管理職登用等の女性活躍施策を計画的に推進しています。
⽣活協同組合コープみらいは、2013年設立の小売業を営む組合です。生鮮食品・一般食品などの供給事業に加えて、利用事業・福祉事業にも積極的に取り組んでいます。
また、コープデリ⽣活協同組合連合会は、1992年に設立された卸売業を展開する組合連合会です。会員向けに物資等を供給したり、物流・商品媒体作成・開発ソフトの作成等の幅広い事業を展開しています。
従業員総数 | 13,472人 |
---|---|
女性の正規労働者数 | 824人 |
女性の非正規労働者数 | 8,472人 |
男性の正規労働者数 | 2,353人 |
男性の非正規労働者数 | 1,823人 |
従業員総数 | 1,318人 |
---|---|
女性の正規労働者数 | 221人 |
女性の非正規労働者数 | 559人 |
男性の正規労働者数 | 510人 |
男性の非正規労働者数 | 28人 |
男女の賃金差異に 関する実績 |
全労働者 | 43.2% |
---|---|---|
正規雇用労働者 | 80.5% | |
非正規雇用労働者 | 109.5% |
男女の賃金差異に 関する実績 |
全労働者 | 35.4% |
---|---|---|
正規雇用労働者 | 76.3% | |
非正規雇用労働者 | 62.3% |
⽣活協同組合コープみらい・コープデリ⽣活協同組合連合会における男女の賃金差異の要因は、女性の非正規職員割合の高さが原因です。
また、給与水準が高い男性のシニア職員が多い点も特徴として挙げられます。
そのため、誰もがいきいきと働き続けることができる職場風土の醸成、仕事・家事・育児を両立できるような次世代育成支援制度の活用の推進が進められています。
これによって、女性職員の管理職比率向上だけではなく、女性職員の定着率向上も期待できるでしょう。
参考:男女の賃金の差異(⽣活協同組合コープみらい/コープデリ⽣活協同組合連合会)|厚生労働省
女性活躍推進法に基づく施策は、「希望通りのキャリアを形成したい」「出産・育児・家事と両立しながら職業生活を実現したい」という女性の希望を叶えるためのものです。
これによって、女性が自分の個性・才覚・資質を社会生活で活かすことができるようになるでしょう。
そして、就労の場面において女性が活躍できる幅が広がることは、女性だけではなく男性を含む労働市場・経済社会全体に好影響をもたらすものです。
労働人口を増加させ、新しい価値観によって経済活動に刺激させるために、今後も各企業は女性活躍推進法に基づく取り組みを積極的に推進していくべきだと考えられます。
弁護士・法務人材を専門にした、キャリアアドバイザー。法律事務所の経営、集客支援を経験したのち、事務所のほか事業会社の法務構築、企業内弁護士・法務人材の採用支援を開始。