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契約法務とは?目的や業務内容、業務に必要なスキルや資格を解説!

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契約法務とは?目的や業務内容、業務に必要なスキルや資格を解説!

法務業務の中で欠かせない業務のひとつが「契約法務」です。

契約法務を遂行することで、契約の内容や効力を明確にし、契約に関するトラブルやリスクを予防・解決できます。

ビジネスを取り巻く環境や法的リスクが複雑化・高度化する中で、契約法務の重要性はますます高まっている傾向です。

本記事では、そんな契約法務の概要や目的、具体的な業務内容を紹介します

また、契約法務に従事するために必要なスキルや有効な資格、業務のポイントも解説しています。

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契約法務とは

契約法務とは、契約書の作成・審査等の契約に関する一連の業務を対応します。

契約法務は重要な法務業務のひとつ

法務業務には、機関法務・商事法務や、戦略法務などさまざまな種類があります。

その中の契約法務は、ビジネスを展開するうえで必要な契約業務を担い、取引先企業である外部との関わりが多い法務という立ち位置です。

契約社会と呼ばれるアメリカと異なり、日本ではビジネスの契約が形式的な内容にとどまっているケースが多くあります。

理由としては、契約書の条項を盛り込みすぎることで取引先との関係性が悪くなることを避けたいという心理がはたらいているためです。

しかし、万が一トラブルが生じたときに自社を守れるのは契約書しかありません。

とくに近年は、ビジネスを取り巻く環境が複雑化しており、法的リスクが増大しています。

したがって、契約法務は企業にとって極めて重要な法務業務のひとつなのです。

法務が扱う契約書の種類

法務が扱う契約書の種類は多岐にわたりますが、代表的なものとしては以下のようなものがあります。

  • 売買契約書:商品やサービスの売買に関する契約書
  • 賃貸契約書:不動産や物品の賃貸に関する契約書
  • 委託契約書:仕事や業務の委託に関する契約書
  • ライセンス契約書:知的財産権の使用許諾に関する契約書
  • NDA(秘密保持契約):情報の秘密保持に関する契約書
  • 雇用契約書:従業員の雇用に関する契約

これらの契約書は、企業が取引や業務を円滑に進めるために重要な役割を果たします。

また、万が一トラブルが発生した場合にも、契約書の内容に基づいて解決することができます。

契約法務の目的

契約法務はリスクを最小化し、企業が法令を遵守するために欠かせない業務です。

取引内容の明確化とリスクの最小化

契約法務の大きな目的は、取引内容を明確にし、取引におけるリスクを最小限にすることです。

契約書は、取引の内容や条件、取引当事者の責任や義務などを明確に記載する文書です。

契約書を作成することで、当事者双方の認識のずれや不明点を解消し、互いの権利と義務を確認できます。

また、契約書には万が一トラブルが発生した場合の対処方法や責任分担なども定められます。

契約書をチェックして自社に不利な条項があれば、指摘や排除をすることで、トラブルの発生を防ぎ、発生した場合でも迅速かつ適切に解決することができます。

法律で契約書の作成が義務付けられている契約もある

契約法務は、法令遵守の観点からも重要な業務です。

契約書は原則として自由に作成できるものですが、法律で作成が義務付けられている契約もあります。

たとえば、建設工事請負契約は建設業法により、必ず書面で契約することが定められています。

また、事業者が特定商取引法にあたる訪問販売をおこなうときには、契約に際して契約書を交付することが義務付けられています。

法律で作成や交付が義務付けられている契約に関する契約書の作成を怠ると、制裁金や罰則の適用、損害賠償などのリスクを負うかもしれません。

こうしたリスクを防ぐのはもちろん、企業の対外的な信用も保つためにも法令に基づき適切に契約書を作成することが必要です。

契約法務の具体的な業務内容

契約法務の業務は大きく「契約書の作成」「契約書のチェック」「リスク条項の指摘・修正」「関係者への説明」「トラブル対応」の5つに分類できます。

契約書の作成

契約書の作成業務では、契約の内容や条件を文書化します。

契約の目的や種類に応じて適切な契約書のテンプレートを選択し、必要な条項を追加したり削除したりします。

売買契約書では、商品の品質・数量・価格・支払方法・引渡時期などを定めます。

契約書のひな形がある場合はそのまま流用し、無い場合には一から作成が必要です。

契約書のチェック

契約書のチェックは、契約書に不備や不利益な条項がないかを確認する業務です。

取引先から提示された契約書をチェックことが多いですが、自社で作成した契約書のチェックをする場合もあります。

いずれの場合でも契約書を丁寧に読み、法律上の問題がないかを検討します。

たとえば、契約書に違法な条項や不公正な条項が含まれていないか、契約内容が法令や規則に適合しているかなどをチェックします。

リスク条項の指摘および修正

リスク条項とは、契約当事者が想定しない事態が発生した場合に生じる損害や責任のことです。

契約書にリスク条項が含まれていた場合は、その内容や影響を分析し、必要に応じて修正案を提案します。

たとえば、契約書に過度な損害賠償責任や不利な解除条件がある場合には指摘し、契約相手に対して緩和や削除を求めます。

契約内容に法的問題点があった場合の関係者への説明

契約書のチェックで法的な問題点やリスクがあった場合は、関係部署や取引先とコミュニケーションを図り、問題点やリスクを説明するとともに修正・削除に対する理解や同意を得ます

法務以外の部署や取引先の担当者は、必ずしも法的知識があるとは限りません。

理解や同意を得やすいよう、専門用語を使わずにわかりやすい言葉で説明することが必要です。

契約関係から生じたトラブルや紛争の対応

契約の履行や解除に関するトラブルや紛争が発生した場合の対応も、契約法務に含まれます。

法務担当者は契約書の内容や法律の規定に基づいて、トラブルの原因や責任を分析し、適切な対策を立案します。

たとえば、取引先が契約の履行を遅延あるいは拒否した場合には、督促や催告をしたり、損害賠償請求や契約解除をおこなったりします。

トラブルの内容や規模によっては法務だけでの対応が難しいため、顧問弁護士や外部弁護士の活用も検討します。

契約法務の業務におけるポイント

契約法務において適切な契約書を作成し、自社の法的リスクを予防するには、以下の点を意識することが大切です。

自社に不利な内容の条項を見落とさないこと

契約書は、相手方の要求や提案に基づいて作成されることが多く、自社に不利な内容の条項が含まれている可能性があります。

そのため、契約法務において自社の立場やリスクを考慮して、不利な条項を見落とさないように注意しなければなりません

不利な条項を発見した場合には、相手方と交渉して修正や削除を求めることができ、法的リスクを予防できます。

取引の内容や自社の意向にそった契約にすること

契約書は、取引の内容や自社の意向を正確に反映するものであるべきです。

そのため契約書を作成する際には、取引の目的や範囲・責任や義務・権利や利益などを明確に定めることが必要です。

自社の特性やニーズに応じて必要な条項を追加したり、不要な条項を削除したりといったことも検討しましょう。

関連する契約や判例との整合性を確認すること

ビジネスにおける契約は単独で存在するわけではなく、ほかの契約や判例と関連して解釈されるものです。

したがって、契約法務においては関連する契約や判例との整合性を確認することが必要です。

たとえば、ほかの契約と矛盾する条項や違反する条項があれば、修正や削除しなければなりません。

また、判例に基づいて有効性や効力が判断される条項も注意深く検討する必要があります。

万が一のトラブルまで想定して条項に盛り込むこと

契約書を作成する際には、万が一のトラブルまで想定して条項に盛り込むことが必要です。

違約や不履行が発生した場合の責任や損害賠償の範囲、方法、解決手段などを明記しましょう。

契約法務に必要な知識とスキル

契約法務に従事するには、以下のような知識とスキルが必要です。

契約に関する法律や業界固有の規制などの知識

契約法務では、契約の内容や条項に関する法律・規制を理解し、適用することが求められます。

どの業界でも押さえておきたい法律としては、民法や商法、消費者契約法、個人情報保護法などがあります。

それ以外には、金融や医療、ITなど所属業界に応じて固有の規制も把握する必要があります。

また、契約相手が海外の企業や団体である場合は、国際法や外国法に関する知識も必要です。

調査スキル

契約の内容や条件を決める前には、契約相手の信用度や実績、市場動向などを調査することが重要です。

また、契約書のチェックにおいては関係法令や判例、事例などを調査する必要があります。

情報収集や分析・評価などの調査スキルをもつことで、契約のリスクやメリットを正しく判断し、適切な契約戦略を立てることができます。

リスクマネジメントスキル

リスクマネジメントスキルとは、リスクの特定や評価、対策の立案や実行、モニタリングや改善のスキルを指します。

契約法務では契約にともなうリスクを予測し、回避や軽減することが求められるため、重要なスキルのひとつです。

契約の履行における、トラブルや損失を最小限に抑えることができます。

文書作成スキル

文書作成スキルも契約法務で欠かせないスキルです。

文書の目的や内容に応じた構成や表現、文法や用語の選択など多様なスキルを含みます。

これらのスキルがあることで、契約の意思や合意内容を正しく伝えることができます。

契約書は誤字脱字も許されないため、細かい部分まで精査して文書を作成することが大切です。

外資系やグローバル企業では英語力も必要

ビジネスのグローバル化にともない、海外企業との取引が増えている企業も多いことでしょう。

その場合は、契約法務でも英語力が求められます

とくに外資系やグローバル企業では、英語での交渉や文書作成が必要になる場合があります。

契約法務のキャリアアップにつながる資格7選

契約法務の分野でキャリアアップを目指す場合、有効なのが資格の取得です。

契約法務に従事するために資格は必ずしも求められませんが、資格があることで評価や信頼の獲得につながります。

ビジネス実務法務検定

ビジネス実務法務検定は、実務レベルでの法律知識を習得できる検定です。

法務に限らず幅広いビジネスパーソンを対象にしている検定で、1級~3級まであります。法務実務に役立てる場合は1級の受験を検討しましょう。

文書情報管理士

文書情報管理士は、書類の電子保存方法を理解し、文書の大切さを伝えるエキスパートのための資格です。

階級は上級・1級・2級の3つで、文書のライフサイクルや文書の種類や役割、文書保管に関する法律などさまざまな知識を学べるので契約法務実務に役立ちます。

ビジネス・キャリア検定(企業法務)

ビジネス・キャリア検定は、職務の遂行に必要な専門知識を習得できる検定です。

8つの分野・44試験から職種やレベルに応じた受験が可能ですが、契約法務に携わる場合は企業法務が適しています。

個人情報保護士

個人情報保護士は、個人情報保護に関する専門知識と理解があり、個人情報を適切に管理できることを証明できる資格です。

近年、企業や自治体による大規模な個人情報の漏えい事件が頻発している中で、社会的な関心や価値が高まっている資格のひとつです。

行政書士

行政書士は、官公庁へ提出する公的書類の作成や許認可申請の代理などを担える国家資格です。

契約書の作成は行政書士の主要業務のひとつなので、取得すれば契約法務に携わるうえで非常に役立ちます。

司法書士

司法書士は、法的な書類作成や登記などをおこなえる国家資格です。

認定司法書士であれば、訴訟額140万円以下の範囲で紛争トラブルにも関与できます。

そのため、契約法務でも評価の対象となり得る難関資格です。

主に不動産登記や商業登記などの登記手続きや供託手続きを専門としているため、関係する業務や契約を扱う場合は取得する意義が大きいでしょう。

弁護士

弁護士は、法務に関する資格の中でもっとも職域が広く、価値も高い資格です。

契約法務に限らず法務業務全般でおおいに知識を発揮できるでしょう。

ただし、難易度が極めて高いため取得を目指す場合には、明確な目的意識が必要です。

まとめ

契約法務は、契約書の作成やチェックなどの業務を通じて、自社に生じ得るリスクやトラブルを予防する法務です。

法務業務の中でもとくに重要かつニーズが高い分野なので、資格の取得を通じてスキルや知識の習得を目指してみてはいかがでしょうか。

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