管理部門・バックオフィスのお役立ち情報メディア

ハラスメントの種類は?発生する原因や企業が行うべき対策を解説

お気に入りに追加
お気に入りに追加
会員の方のみご利用になれます。
お気に入りに追加した記事は、
マイページに一覧で保存できます。
ハラスメントの種類は?発生する原因や企業が行うべき対策を解説

ハラスメントが法律で定義された結果、世間での認知度は高まり、社会問題として提起される機会が増えました。

ハラスメントの発生には原因があり、それらを解消しなければ、企業にとって生産性の低下や離職につながる問題となります。

本記事では、ハラスメントの種類や特徴、関連する法律、企業が行うべき対策などを解説します。ハラスメント対策を実践している企業・団体を3つ取り上げているので、参考にしてみてください。

ハラスメントとは

ハラスメントとは、いじめや嫌がらせを意味し、相手に精神的・身体的な苦痛を与える行為です。状況によって、種類や特徴が異なります。

ハラスメントの種類と特徴

ハラスメントの種類は大きく分けて4つです。

パワーハラスメント

パワーハラスメント(以下、パワハラ)とは、職場内での立場や優位性を利用し、業務範囲を超えた指示や命令をおこない、労働者の職場環境を害する行為です。ほかのハラスメントと比較しても、相談件数が多い傾向にあります。

パワハラは、上司から部下へのハラスメントだけでなく、部下から上司、同僚同士など、職場でのあらゆる人間関係で成立します。

セクシュアルハラスメント

セクシュアルハラスメント(以下、セクハラ)とは、職場内で労働者の意に反する性的な言動により、労働条件に不利益を被ったり就業環境が害されたりする行為です。

性的な冗談や関係の強要、必要性がない状況で身体に触れるなどが、セクハラに該当します。

妊娠・出産・育児休業等ハラスメント

妊娠・出産・育児休業等ハラスメントとは、職場内で妊娠や出産に対しての制度等を利用する従業員への嫌がらせや妨害行為です。

産休・育休でみんなが仕事で迷惑している」という発言も、このハラスメントに当てはまります。

カスタマーハラスメント

カスタマーハラスメントとは、消費者、顧客、取引先など(カスタマー)からの理不尽な要求や暴言、暴行などの行為のことです。

特にクレームや言動のうち、要求の内容が妥当性を欠いているものを指します。

また、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当であり、それらにより従業員の就業環境が害されるものも該当します。

参考:2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!|厚生労働省

ハラスメントに関する法律

ハラスメントが法律で定義されて以来、職場においてあってはならない問題として捉えられるようになりました。

2019年に改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が成立し、この法律は大企業だけでなく中小企業にも適用されています。

パワハラ防止法によって、企業はパワハラ防止措置を義務付けられ、適切な措置を講じていない場合には、助言や指導、勧告の対象です。

セクハラに関しては、男女雇用機会均等法により防止措置が定められており、事業主は職場内でセクハラを防止しなければなりません。

参考:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!|厚生労働省

ハラスメントの現状

ここからは、ハラスメントが世の中に広まった背景やその現状について解説します。

ハラスメントが広まった背景

これまでもハラスメントは、職場や学校などのコミュニティ内で存在していました。

近年ハラスメントが広まった背景には、インターネットの普及に伴い、SNS等で情報の拡散が容易になった点が挙げられます。

今までは顕在化していなかった組織内でのハラスメントについて、一人ひとりが発信しやすくなったために、問題提起される機会が増えたといえるでしょう。

職場でのハラスメントの現状

職場でのハラスメントにおいて、顧客等からの著しい迷惑行為、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)は看過できない問題といえるでしょう。

厚生労働省の資料によると、カスハラの相談に対しては「件数が増加している」の割合の方が「減少している」より高い調査結果も出ています。

厚生労働省は、カスハラについての対策企業マニュアルを作成し、実際に起こった際の対応や事前の準議などの対策の基本的な枠組みを掲載しています。

参考:「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成しました!|厚生労働省

職場で起きやすいハラスメントとしては、パワハラ、セクハラ、マタニティハラスメント(以下、マタハラ)です。

令和2年度の厚生労働省の調査発表によると、過去3年間に職場でパワハラを経験した人の割合は31.4%であり、セクハラに関しては10.2%となっています。

また、過去5年間に妊娠・出産・育児休業についてのハラスメントを経験した女性労働者の割合は26.3%です。

パワハラというと暴力行為をイメージされることが多いですが、過大な要求や人格を否定する発言など、精神的な攻撃も法律で定義されています。

そのため、パワハラ行為の相談内容は時代によって変化しています。

参考:令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点|厚生労働省

職場以外でのハラスメントの現状

ハラスメントは、職場以外でも起こり得る人権侵害です。ここからは、職場以外でのハラスメントとその現状について解説します。

モラルハラスメント

モラルハラスメント(以下、モラハラ)は、倫理や道徳に反した言動で、相手への暴言や侮辱などで精神的な苦痛を与える行動を指します。

職場でも起こる可能性はありますが、仲間内といったコミュニティでも起こり得るハラスメントです。

アルコールハラスメント

アルコールハラスメント(以下、アルハラ)は、飲酒を通しての人権侵害のことです。具体的には、飲酒の強要や意図的な酔いつぶし、酔ったうえでの迷惑行為を指します。

明確な飲酒の強要がなくても、飲まなくてはならない状況下で飲酒を勧めると、アルハラとみなされます。

アルハラによって飲酒をさせられた人が急性アルコール中毒になった場合、ハラスメント行為者は傷害罪に問われる可能性があります。

ハラスメントが発生する原因

ハラスメントの発生原因を知り、今後の防止策を検討することは重要です。ここからは、ハラスメントが発生する原因について紹介します。

コミュニケーション不足

上司は部下の業務内容を把握し、問題点があれば改善点を提案する必要があります。普段からコミュニケーション不足であれば、信頼関係が構築されておらず、上司と部下の間で誤解が生じかねません。

コミュニケーションを積極的に取っていなければ、業務上の指導とハラスメントの区別がつかずパワハラとみなされるケースもあるでしょう。

職場環境や業務量

情報共有が活発でない職場、他の部署とのやり取りが密でない閉鎖的な職場では、ハラスメントが起きやすくなります。

職場の責任者の権限が大きく、部下が発言できない組織風土であれば、職場環境を見直す必要があるでしょう。

また、業績目標のレベルが高く、誰がやっても期限までに終わらない仕事量を従業員に押し付ける場合も、ハラスメントになる場合があります。

倫理観や認識の違い

性格の合わない従業員の悪い噂を流したり、無視をしたりと倫理観の欠如からハラスメントが発生する場合もあります。

また、業務を指導する社員が業務上必要であると判断しても、相手の気持ちを無視した厳しい指導や指示は、ハラスメント行為になる可能性があります。

企業がおこなうべきハラスメント対策

ハラスメントが発生し、問題として取り上げられると、企業のイメージダウンは避けられません。

ここからは、企業がおこなうべきハラスメント対策を紹介します。          

従業員に周知する 

企業側は、ハラスメントの加害者への対処や罰則について、就業規則や服務規律の文書に明記し、周知する必要があります。

企業のトップが率先してハラスメント対策を重要課題とし、組織全体で取り組む姿勢を明確にしましょう。

経営陣も、ハラスメント防止・撲滅に向けて発信すると、より効果的です。

厚生労働省は、パワハラの周知に向けて年2回(半年に1回)の頻度で定期的なメッセージの発信を推奨しています。

※参考:「社内でハラスメント発生! 人事担当の方」パワハラ対策7つのメニュー|厚生労働省 あかるい職場応援団

現状を把握する

職場におけるハラスメントの現状を把握するために、企業が抱える問題や課題の調査をおこない、問題発生の原因や対応について検討しましょう。

現状把握の方法は、社内アンケートなどの調査方法が挙げられます。

社内アンケートで従業員のハラスメントへの意識や実態を把握し、職場でのハラスメント防止や労働環境の整備につなげます。

相談窓口の設置

社内に、ハラスメントの相談窓口を設置するのも効果的です。

従業員が利用しやすいように、相談窓口の存在や利用方法、個人のプライバシーが守られることを周知する活動を行いましょう。

相談窓口の設置には、担当者や相談に対応するための制度といった、運営体制を構築しなければなりません。ハラスメント相談に対する留意点をまとめたマニュアル作成や、相談を受けた場合を想定した研修を実施するとよいでしょう。

従業員に窓口の存在を知ってもらい、相談に対して適切な対応がなされていると、社内でのハラスメントへの意識の向上が期待できます。

ただし、誰がどのような回答をしたかが分かるような、秘匿性の低いアンケートでは従業員の本音を聞き出すことは難しいでしょう。

回答によって不利益な状況を生み出さないよう、匿名性を守るべきです。

再発防止の措置をとる

社内でハラスメントが発生した場合、ハラスメント行為者への処罰と再発防止策を講じましょう。

再発防止策として、社内で研修を実施することは有効ですが、ハラスメント行為者と被害者が顔を合わせる可能性があります。

両者への配慮を考慮すると、社外セミナーへの参加も選択肢の一つです。

ハラスメント対策の事例3選

ハラスメント対策の事例を3つ紹介します。

ソニー銀行株式会社

ソニー銀行株式会社では「従業員がハラスメントによって能力を発揮できない状況は、企業にとって大きな損失」と考え、以下のハラスメント対策に積極的に取り組んでいます。

  • 外部機関による相談窓口「職場のヘルプライン」を設置
  • パワハラ対策VTR研修を全従業員(派遣労働者を含む)に実施
  • ハラスメント防止パンフレットを全従業員に配布し、部署内での読み合わせを実施
  • ハラスメントアンケート調査を実施し、結果に基づいた研修を実施取り組みの背景

また同社には、派遣労働者、契約社員、正社員が混在する部門があり、ハラスメントが生じやすい環境であることを認識していました。

ハラスメント対策として、業務とは別に、1対1の対等なコミュニケーションを促進するなど、チームとしての意識づくりに取り組んでいます。

さらに派遣労働者に対するハラスメント対策として、派遣元の担当者と派遣先の人事担当者が連携して対応することが重要と考えています。

参考:「企業理念と結びついたハラスメント対策」ソニー銀行株式会社|他の企業はどうしてる?|あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト

リンテック株式会社

リンテック株式会社では、CSR(企業の社会的責任)、とりわけコンプライアンス遵守への取り組みに力を注いでいます。同社で実施しているハラスメント対策は、以下のとおりです。

  • 「一人ひとりの人権と人格を尊重し、公正に処遇する」旨の理解と教育を目的として『行動規範ガイドライン』を発行
  • コンプライアンスの重要性を社員にわかりやすく伝え、理解してもらうため、『リンテックりんりかわら版・守ってマスカ?』を発行
  • ハラスメントについてのCSR(企業の社会的責任)勉強会の実施
  • ヘルプライン(内部通報制度)の創設
  • セクハラ・パワハラなどについてのコンプライアンス研修を新任の管理職研修、係長研修で実施

リンテック株式会社内の、ハラスメントに対するヘルプラインへの相談件数は、1年に1回あるかないかです。

しかし、社内アンケートを取ったところ、「ハラスメントのような状況を見聞きした」との回答を確認でき、潜在的なハラスメントがあるのではと仮説を立てました。

そこで同じ情報を従業員に発信しても、人事部名とCSR推進室名での発信では従業員のハラスメントへの受け取り方やアンケート結果などが異なる可能性があるとわかり、双方の部署が連携を開始します。

スムーズに正確なデータを取るためにも、コンプライアンス遵守を推進するCSR推進室と人事部の連携を重要視しています。

参考:「CSR推進の一環として対策を実践」 リンテック株式会社|他の企業はどうしてる?|あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト

陸上自衛隊北熊本駐屯地

陸上自衛隊北熊本駐屯地で、元自衛官が上司や先輩から過度な暴行によるパワハラを受け、うつ病を発症して退職しました。元自衛官は、国や上階級に対して訴訟を起こし、勝訴しています。

閉鎖的な環境とハラスメントに対する管理体制の不備が、根本的な原因であるとされています。また、駐屯地側はハラスメントの実態を把握せず、問題が深刻化するまで放置していました。

ハラスメント対策として、定期的なアンケート調査やハラスメント研修の実施、トップによる発信など、組織全体で倫理観を高め、ハラスメントを許さない環境を作ることが重要です。

参考:陸自北熊本駐屯地パワハラ訴訟 国に賠償命じる判決 熊本地裁|NHK 熊本県のニュース

まとめ

ハラスメントの種類や発生する原因、企業が行うべき対策を紹介しました。

ハラスメント対策を講じることで、従業員の人権が守られるほか、企業の生産性の維持・向上が期待できます。

特にパワハラやセクハラ、マタハラは、多くの職場で起こりやすいハラスメントです。

それぞれのハラスメントについての防止措置は事業主に義務付けられているので、必ず法律を確認し対策に取り組みましょう。

お気に入りに追加
お気に入りに追加
会員の方のみご利用になれます。
お気に入りに追加した記事は、
マイページに一覧で保存できます。
この記事をシェア
BackOfficeDB編集部
この記事の執筆者
BackOfficeDB編集部
こんにちは。BackOfficeDB編集部です。 私たちは、管理部門に関する情報発信を専門にしています。 業務効率化や、各職種のキャリアプラン、スキルアップなど、管理部門の様々なお悩みにお答えします。