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少子高齢化による労働人口の減少や転職ありきの働き方、働き方改革による働き方の多様化など、働く社会は時代とともに変化しています。
企業の課題として、優秀な人材の確保や定着がより難しいことが挙げられ、それを対策するためには組織の課題を早期に把握し、対策を講じる必要があります。
組織診断は組織の現状と課題が客観的に評価できるうえに、改善や変革に役立つツールであるため、導入する企業が増加傾向です。
本記事では、組織診断のメリットや実施方法を詳しく解説します。
組織診断とは、組織の状況を知るための意識調査です。組織の現状を客観的かつ定量的に分析し、問題を可視化します。
組織診断を行うことで、従業員の満足度やエンゲージレベル、コミュニケーションの質など、組織の現状や課題が明らかになるメリットがあります。
組織診断は行うだけではなく、理想とする組織と現状のギャップを生めるための戦略や改善策を実施し分析することが大切です。
ここからは、組織診断が注目される理由や目的、実施するタイミングを解説します。
組織診断が注目される理由には、「労働人口の変化」や「働き方の多様化」が挙げられます。
少子高齢化により労働人口は、年々減少しています。働き手が減っている分、優秀な人材の確保が困難となっているのが現状です。
また、心身のストレスやケガ、病気が原因で働けなくなることも考えられます。
優秀な人材が不足すると、生産性が低下し、従業員のモチベーション維持などの課題を抱えることになるでしょう。
新型コロナウイルスが流行した2019年以降、リモートワークやフレックスタイム制度などを導入する企業が増えました。
これに伴い、組織内のコミュニケーションや業務プロセス、システムの見直しが必要となっています。
時代の変化に合わせて、組織の環境や仕組みをより良いものにしていくために、組織診断を積極的に導入し活用している傾向にあるのです。
組織診断の目的は、大きく分けて以下の3つです。
業務プロセスの問題点、従業員のモチベーション低下、人間関係の悪化など組織内部の問題点を明確にします。
問題に対する具体的な改善策を立て、実行し組織のパフォーマンス向上を目指します。
従業員が仕事や企業に対して「高い愛着心」をもつことは、組織の成功に不可欠です。組織診断を行うことで、従業員のニーズや期待を理解し、応えられます。
組織診断を定期的に行えば、将来発生する可能性のあるリスクを予測し、備える事が可能です。
現状を客観的に評価し、変化する環境に柔軟に対応できる組織を目指せます。
組織診断は、一度きりではなく繰り返し行うことでより良い結果を生みます。
実施するタイミングは、組織の状況や目標に応じて変化すると良いでしょう。
人事異動や新規事業などは、従業員の感情が変化しやすいタイミングといえます。変動を把握し、適切なサポートを行うことが重要です。
また、離職率が高まったり、売上が低下したりと数値で組織の問題が顕在化した場合に実施するのも効果的です。
組織診断には、「センサス調査」と「パルス調査」の方法があり、双方の違いは以下の通りです。
センサス調査 | パルス調査 | |
---|---|---|
期間 | 半年~1年に1度:大規模調査 | 1週間や1ヶ月:短期間 |
設問数 | 50~150問 | 5~15問 |
精密性 | 高い | 低い |
メリット | 包括的で詳細、多面的な調査が可能 | 継続的に経過や変化を把握可能 |
デメリット | 従業員の負担が大きい | 精密度が低い |
センサス調査とパルス調査を組み合わせて使うと、長期的な視点と短期的な視点をもてるため効果的です。
組織診断には、従業員の満足度調査やエンゲージメント調査、ストレスチェックなどがあります。ここでは、調査の活用方法を解説します。
従業員の満足度調査とは、職場環境に対する従業員の満足度を測定する調査で、通称「ES調査」と呼ばれます。やりがいの可視化や人事施策のPDCAに役立つ調査です。
勤務条件や給料、福利厚生、人間関係、評価、スキルなど、仕事に対する満足度の調査に適しています。
社内制度や待遇に潜む問題、社内コミュニケーションの問題を把握できます。調査によって、社員の不足や不満に感じている待遇や環境を改善し、従業員の満足度の向上が期待できます。
エンゲージメント調査は、従業員が企業に対してどの程度愛着や貢献意欲を持っているかを測る調査です。
会社への信頼度、仕事に対するやりがいや達成度、自身へ期待される役割の理解度などを調査します。
働きがいややりがいの向上、生産性の向上が期待でき、企業価値に対する意見を集めやすい調査といえます。
ストレスチェックとは、企業が従業員に対して定期的に行う心理的な負担の程度を把握するための調査です。
50人以上の従業員がいる企業では、年1回の実施が労働安全衛生法第66条の10で義務化されています。従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止し、職場環境の改善が目的です。
組織診断を実施するメリットは、以下の2点です。
組織診断では、把握しにくい社員の感情やニーズ、意見を把握し組織の現状を客観視できます。現状から、組織の強みや弱みを把握でき、課題や改善策を講じられるメリットがあります。
社員の離職サインを察知できれば、離職防止の対応が可能です。
組織診断により従業員の不満や要望を聞き入れることで、モチベーションが向上するメリットがあります。
モチベーションが向上すると、生産性や創造性が高まり、企業の競争力や収益性の向上、コミュニケーションが活発化します。
組織診断を実施するデメリットは、以下の2点です。
組織診断では、従業員にアンケートや面談などの調査を行います。
設問数や実施頻度が多ければ、意見や状況を把握できますが、同時に従業員に負担をかける可能性があります。
調査結果がフィードバックされず、業務に反映されないと感じると、調査への参加意欲が低下し、正しい回答が得られにくくなるでしょう。
組織診断は、組織全体の状況を客観的に把握し、改善策を導き出すことで組織のパフォーマンスを上げられます。
しかし、調査は従業員の感情や意見が反映されるため、少なからず主観的データが含まれることは避けられません。
設問の内容や表現があいまいであったり、選択肢が不適切であったりすると、回答に不正確さが生じデータの信頼性が下がってしまいます。
調査の目的や方法、設問項目などを適切に統計し、従業員の理解と協力を得てもらうことが大切です。
続いては、組織診断を実施する際の6つのステップを紹介します。
組織診断の目的は、組織の課題を明らかにし、改善するための調査です。
調査を行う前に、組織の状況や目標、課題の原因や要因などに仮説を立てることが重要です。検証可能な仮説を複数立て、仮説に基づいた調査項目や質問を設定すると良いでしょう。
組織診断は、目的や課題によって診断項目が変わるため、調査前に目的とゴールを明確にすることが必要です。
課題に対する改善策によって得たい成果や、最終的に目指す組織の状況を具体的にしましょう。従業員満足度を80%以上に向上させるなど、ゴールを数値化すると評価がしやすくなります。
次に、調査対象と調査項目を設定しましょう。全従業員を対象にするのか、特定の部署ごとなのか役職や年齢など、目的に応じて対象を選ぶことが大切です。
調査項目は、従業員の意識や働き方、やりがい、人間関係、職場環境、福利厚生、組織の状態を具体的に測るための項目を設定します。
組織診断の調査は、アンケート調査やインタビュー調査、グループディスカッション、1on1、データ分析などさまざまな方法があります。
調査対象の規模や特徴、調査項目の内容や調査機関に合わせて調査方法を選ぶと良いでしょう。
課題や目的に合った組織診断の結果を、数値やグラフから分析することが重要です。組織の現状と理想の組織の差を確認し、課題点や改善策を洗い出しましょう。
課題が複数ある場合は「すぐに対応すべき課題なのか」や「将来的に解決すべき課題なのか」など、優先順位をつけるのも大切です。
部署ごとや従業員ごとの状況や課題を可視化し、ゴールに合わせて改善策の分析をしましょう。
分析した調査結果や明らかとなった課題、今後の方針などは従業員へフィードバックを行いましょう。フィードバックにより、従業員の意識や行動を変え、当事者意識が高まります。
フィードバックを行わないと、「改善がない」や「意見をくみ取ってもらえない」など、従業員が不満に思う可能性もあるので適切に行いましょう。
組織診断を効果的に行うには、以下のポイントに注意して行うことが大切です。
組織診断を効果的に実施するには、事前に目的や方法、期間、結果の活用方法を対象となる従業員に説明し理解を得る必要があります。
組織診断の内容や診断結果は、個人情報における取り扱いや機密が守られている旨も伝えましょう。
解決すべき課題に、優先順位をつけることも大切です。すべての課題を同時に改善することは困難であり、効果も薄くなります。
優先順位をつける際には、従業員の期待度と満足度を照らし合わせて戦略的な対応が求められます。
課題の重要度や影響度、期待度、満足度などを評価し、優先順位をつけましょう。
実行可能かつ効果測定ができる方法を、検討して実行すると継続的な評価がしやすくなります。
組織診断は、一度診断をして終わりではなく、診断結果をもとに改善し続ける姿勢が大切です。
定期的な継続には、計画(Plan)実行(Do)評価(Check)改善(Act)のサイクルを活用するとより効果があります。
組織診断ツールとは、組織診断の実施から活用方法の提案・サポートまで幅広い機能を備えたシステムです。
企業の課題解決に向けて、組織診断を効率的に実施・活用できるのがメリットです。ただし、導入費用や手間といったコストがかかる点に注意が必要です。
最後に、組織診断ツールを選ぶときのポイントを紹介します。
組織診断ツールを選ぶ際は、以下3つのポイントに注目しましょう。
一言で組織診断ツールといっても、組織診断の種類や搭載機能が異なります。そのため、自社の目的やニーズとツールの性能が合致しているかどうか確認しましょう。
課題を明確にしたうえで、解決するためにどんな情報が必要か、どのような機能が求められるかをリストアップするのがおすすめです。
なお、代表的な組織診断ツールの種類は、以下の4つです。
各ツールの評価項目が異なるため、自社の目的に合わせて選びましょう。実際に導入した企業のユーザーレビューを参考にしながら、イメージをつかむのも良いでしょう。
組織診断ツールは、多くの機能を備えています。
例えば、設問を自由に追加・変更できるカスタマイズ性の高さが魅力のツールや、テンプレートの種類が豊富なものもあります。
しかし、せっかく導入しても使いこなせなければ、意味がありません。また、解決したい課題に合った機能を備えているツール選びが重要です。
まずは、目的に合わせて欲しい機能をピックアップしましょう。その後デモ版を試したり、ツールを使用している他社のレビューを参考にしたりして、実際の操作性をチェックしましょう。
組織診断ツール活用の大きなメリットである「データを活用するための提案やサポートの有無」も重要なポイントです。
組織診断の結果は収集するだけでは意味がなく、具体的なアクションにつなげていく必要があります。
しかし、ツール導入後のサポートがなければ意味のあるデータ活用が難しくなり、問題の把握・改善につながらない可能性があります。
診断結果をどう解釈すればいいのか、何を改善すべきなのかをきちんと提案し、サポートしてくれるツールを選ぶのがおすすめです。
サポート機能の具体例は、以下の通りです。
今回は組織診断の概要をはじめ、メリットやデメリット、導入する方法やポイントを一挙解説しました。
組織診断を活用すれば、目に見えない課題や従業員の悩みを把握できます。
ただし、実施前には社員への説明や周知をおこなったり、解決したい課題の優先順位をつけたりと、周囲への配慮や工夫が欠かせません。
また、今回紹介した7つのステップに沿って段階的に実施するのも大切です。より効率的に組織診断をするには、ツールを導入するのもおすすめです。