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育児休業給付金(育休手当)と聞くと、子どもを出産した女性が取得できる手当を思い浮かべる人もいるでしょう。
実際は男女は関係なく雇用保険に加入していて、育児休業を取得していれば受給権利がある給付金です。
本記事では、育児休業給付金の申請方法や法改定内容を解説します。
育児休業給付金は、育児休業中は収入が減少してしまうため、そのマイナス分を補うことを目的とした国の制度です。
ここからは、育児休業給付金の支給条件や給付期間を紹介します。
育児休業給付金を受け取るには「育児休業給付金」「パパ・ママ育休プラス」「産後パパ育休(出生時育児休業)」の制度の利用が必要です。
育児休業給付金とは、1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した場合にもらえる手当です。
父親と母親がともに、育児休業を取得するための制度です。
この制度を利用すると、子どもが1歳2ヵ月になる前日までの間で最大1年延長できます。
延長期間も給付金の受給は可能です。
2022年10月に新たに制定された産後パパ育休(出生時育児休業)によって、男性も育児休業給付金を受け取れるようになりました。
産後パパ育休とは、出生後8週以内(56日以内)の期間で4週間(28日)の育児休業とは別に、4週間(28日)の休暇を取得できる制度です。
参考:育児休業給付の内容と支給申請手続|厚生労働省(都道府県労働局・公共職業安定所)
3つのそれぞれの給付金を受け取るための条件は、次のとおりです。
育児休業給付金の支給条件は、以下の5つです。
支給条件 | |
---|---|
1 | 1歳未満の子どもがいる ・育児休業給付金が申請できるのは、1歳未満の子どもがいる間 ・延長事由がある場合のみ、1歳6ヵ月または2歳に達するまで延長可能 |
2 | 雇用保険に加入している被保険者 |
3 | 育休前の2年間で、1ヵ月に11日以上働いた月が12ヵ月以上ある |
4 | 育休期間中の1ヵ月あたり、休業開始前の1ヵ月賃金の80%以上が支払われていない 例:毎月30万円の賃金もらっていた場合、育児休業中に毎月24万円以上の賃金が支払われていると支給されない |
5 | 育児休業中に就業している日数が1ヵ月あたり10日以下 |
※参考:
育児休業給付の内容と支給申請手続|厚生労働省(都道府県労働局・公共職業安定所)
育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します | 厚生労働省
パパ・ママ育休プラス制度の利用条件は、育児休業給付金の要件と同様です。
産後パパ育休を取得することで受け取れる給付金は、出生時育児休業給付金という名目です。
支給条件は、以下の4つになります。
支給条件 | |
---|---|
1 | 産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した被保険者 |
2 | 育休前の2年間で、1ヵ月に11日以上働いた月が12ヵ月以上ある |
3 | 育児休業中に就業している日数が1ヵ月あたり10日以下 |
4 | 子どもの出生日から8週間を経過する日の翌日から、6ヵ月を経過する日までに離職しない方 |
出生時育児休業給付金支給決定通知書がハローワークから届いたら、1週間程度で口座に振り込まれます。
※参考:
育児休業給付の内容と支給申請手続|厚生労働省(都道府県労働局・公共職業安定所)
育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します | 厚生労働省
育児休業給付金が受け取れる期間は、女性の産後休業が終了した翌日(出生から8週目)から子どもが1歳になる前日までです。
また、一定の要件を満たす場合は、育児休業給付金の受け取り期間を1歳6ヵ月から最大2歳まで延長できます。
延長の要件は、以下の5つです。
父親と母親がともに育児休業を取得する場合、パパ・ママ育休プラスの取得手続きをおこなうことで、1歳2ヵ月になる前日まで受給期日を延長することができます。
※参考:育児休業給付の内容と支給申請手続|厚生労働省(都道府県労働局・公共職業安定所)
育児休業給付金の申請は、企業の担当者が行う業務です。必要書類が多く期限もあるため、不備なく申請できるよう確認しましょう
申請手続きの流れは、以下のとおりです。
必要書類は、事業主と従業員で異なります。
【事業主が用意する書類】
【従業員に用意してもらう書類】
申請先は、会社の所在地を管轄するハローワークになります。
子どもの出生日から起算して、8週間経過した日が育児休業開始日となり、翌日から申請できます。育児休業開始日から2ヵ月を経過する日の月末までが締め切りです。
例えば、2月5日に出産した場合は、産後8週間の翌日(4月3日)が育児休業開始日となり、そこから2ヵ月後の月末(6月末)までが初回申請の締め切りです。
育児休業終了までの間は、原則2ヵ月に1度申請する必要があります。被保険者本人が希望すれば、1ヵ月ごとの支給申請も可能です。
2回目以降の申請は、育児休業給付次回支給日指定通知書に印字されている期間内に申込みましょう。
※参考:
育児休業給付の内容と支給申請手続|厚生労働省(都道府県労働局・公共職業安定所)
育児休業給付金は、180日までと181日目以降では給付率が変動します。また、上限下限が設定されているので注意しましょう。
ここからは、育児休業給付金の計算方法や目安の給付額を紹介します。
給付額は、育児休業開始から180日までは「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で計算されます。原則、支給日数は30日です。
育児休業開始から181日目以降は「休業開始時賃金日額×支給日数×50%」で計算されます。
休業開始時賃金日額とは、育児休業開始前6ヵ月間の賃金を180で割った額です。
給付額の目安は、以下のとおりです。
ケース | 180日までの支給額 (給付率67%) |
181日目以降の支給額 (給付率50%) |
---|---|---|
平均月額150,000円 | 100,500円 | 75,000円 |
平均月額200,000円 | 134,000円 | 100,000円 |
平均月額250,000円 | 167,490円 | 124,990円 |
平均月額300,000円 | 201,000円 | 150,000円 |
平均月額350,000円 | 234,500円 | 175,000円 |
平均月額400,000円 | 268,000円 | 200,000円 |
平均月額450,000円 | 301,500円 | 225,000円 |
平均月額500,000円 | 310,143円 | 231,450円 |
平均月額500,000万円のように支給額の計算式に当てはめて、上限を超えた場合の支給額は上限の310,143円もしくは231,450円です。
令和6年7月31日までは、休業開始時賃金日額の上限額が15,430円、下限額は2,746円です。
180日までは給付率67%なので、支給上限額310,143円・支給下限額55,194円です。
181日目以降は給付率50%になるので、支給上限額231,450円・支給下限額41,190円になります。
令和5年8月1日から支給限度額が変更になります。 皆さまへの給付額が変わる場合があります|厚生労働省
育児休業給付金を利用するときは、いくつか注意が必要です。ここからは、給付金を利用する際の注意点を紹介します。
育児休業給付金は、育休中に仕事に復帰することを前提とした制度です。
そのため、育休開始時に退職が決まっている場合は、給付金はもらえません。
ただし、復帰予定だったとしても、やむを得ない事情で退職することになった場合は、給付金の返還は不要です。また、離職するまでの期間は、給付金が支給されます。
育児休業給付金は、雇用保険から支給される給付金です。そのため、育休を取得する従業員は、雇用保険に加入している必要があります。
雇用保険は、パートタイムやアルバイトでも加入できる制度です。
要件は、週の所定労働時間が20時間以上であること、1ヵ月以上の雇用見込みがあること、学生でないことなどです。
これらの要件を満たす従業員は、雇用保険の被保険者となります。
延長申請の期限は、育休が満了する日の2週間前までです。
1回目の延長申請なら、1歳の誕生日を迎える2週間前、2回目なら1歳6ヵ月になる日の2週間前までに申請する必要があります。
申請の際は、以下のように期間を延長するための確認書類が必要です。
2022年・2023年の法改正により、男女ともに以前より育休を取得しやすくなったといえます。
仕事と育児を両立させるためには、企業のサポートが必要不可欠です。
育休取得の申し出があったさいに、スムーズに対応できるように企業内で環境整備を整えましょう。