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パートやアルバイトなどの短時間で働く方の中には、年収の壁を気にしながら労働している方もいるでしょう。
一定額を超えると社会保険料や税金が発生する「年収の壁」により、扶養から外れてしまうなどリスクがあるため、働く時間や日数を考慮しながら働いている現状があるといえます。
従来、短時間労働者は社会保障を受けられる社会保険の適用外でしたが、近年は段階的に適用が拡大され、条件を満たす短時間労働者の方は適用となりました。そして2024年には、社会保険の加入条件がさらに緩和される予定です。
短時間労働者を雇用する企業は、社会保険の加入条件を正しく把握し、従業員とコミュニケーションをとりながら適切に対応しなければなりません。
この記事では、社会保険の加入条件を、2024年の法律改正と併せて解説します。
社会保険は、病気やけが、老齢、失職、労働災害などさまざまなリスクに対して、働く人を守る公的制度です。「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」を総称して社会保険と呼び、労働者は、原則加入する義務があります。
狭義の社会保険に、「厚生年金保険・健康保険・介護保険」の3つを指して社会保険と呼ぶ場合があります。また、残りの雇用保険と労災保険は、まとめて「労働保険」と呼びます。
ここからは、それぞれの保険の役割を紹介します。
厚生年金保険は、企業で勤務する70歳未満の会社員あるいは公務員が加入する公的年金制度です。労働者が65歳以上になると老齢厚生年金、けがや病気で障害が残ったときは障害年金、受給者が亡くなった遺族へは遺族年金が支給されます。
公的年金制度には、厚生年金のほかに、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」があります。国民年金が1階部分、企業で勤務する従業員が加入する「厚生年金」が2階部分となり、将来国民年金に厚生年金分が上乗せして年金を受け取れる仕組みです。
国民年金 | 厚生年金 | |
---|---|---|
対象者 | 日本に住んでいる20歳以上60歳までの人 | 会社員や公務員 |
保険料 | 一律、加入者が全額負担 | 収入により異なる、保険料は事業主と折半 |
支給開始年齢 | 65歳 | 65歳 |
招来の受給額 | 加入期間に応じて一律 | 収入と加入期間による |
障害年金 | 障害等級1~2級の場合に支給 | 障害等級1~3級の場合に支給(3級未満でも障害手当金支給の場合あり) |
最低保険者期間 | 10年 | 1ヶ月 |
健康保険は、病気やけがで医療機関を受診するときの自己負担額を軽減する保険です。1958年に国民健康保険法が制定されてから、すべての人が公的医療保険への加入が義務づけられた「国民皆保険制度」が始まりました。
健康保険に加入すると、限度額適用認定や高額医療費、傷病手当金、出産手当金、埋葬費など不測の事態のときに医療や手当金を受け取れます。
一方、個人事業主など社会保険に加入していない人は、「国民健康保険」に加入します。保険料や給付内容など、各健康保険の違いは以下のとおりです。
健康保険 | 国民健康保険 | |
---|---|---|
加入対象者 | 事業主に雇用されて働く、74歳までの従業員および一定の条件を満たす短時間労働者 | 社会保険に加入していない74歳以下の人(個人事業主など) |
保険者 | 健康保険組合・共済組合・全国健康保険協会(協会けんぽ) | 市区町村 |
保険料 | 「標準報酬月額」に基づいた保険料を事業主と折半、被扶養者の保険料納付は必要ない | 前年の所得に応じて世帯単位で算出 |
納付条件 | 労災に該当しない病気やけが | 病気やけが |
医療費負担 | 1~3割※ | |
保障内容 | 病気やけがで働けなくなった場合は傷病手当金制度あり、出産手当金制度あり | 傷病手当金制度や出産手当金制度なし |
※医療費は、健康保険に加入していれば1〜3割の自己負担額で医療を受けられます。負担額は、小学校入学前までは2割負担、6~69歳は3割負担、70~74歳は2割負担(現役並みの所得者は3割負担)、75歳以上は1割負担(現役並みの所得者は3割負担)と決まっています。
介護保険は、介護が必要となった人が適切なサポートを受けられるよう、費用を給付し社会全体で介護を支える公的制度です。40歳以上になると、介護保険の加入が義務づけられ保険料を支払います。
介護保険サービスの利用は、原則要介護認定を受けた65歳以上の第1号被保険者が、居宅や施設などで必要なサービスを受けられます。
雇用保険は、失業や退職時に失業手当である求職者保険や就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付が受け取れる制度です。
また、育児休業を取得した場合の育児休業給付金や、介護休業を取得した場合の介護休業給付金も雇用保険から支払われます。
労災保険は、仕事中や勤務途中のけがや病気、障害、死亡した場合に保険給付を行う制度です。一人以上雇用する会社に加入が義務づけられ、保険料は全額事業主が負担します。
労災保険の保障対象になると、療育費用の自己負担がかかりません。
手厚い保障が受けられる社会保険は、事業所ごとに適用されるか否かが判断されます。
ここからは、社会保険の加入条件を事業所に焦点を当てて紹介します。
社会保険は、一定の要件を満たす事業所は加入が義務化されています。社会保険が適用となる事業所を適用事業所といい、加入が義務化された「強制適用事業所」、加入を選択できる「任意適用事業所」の2種類あります。
強制適用事業所は、社会保険の加入が義務づけられる会社を指します。要件は以下のとおりです。
適用業種とは、下記の非適用業種以外の事業所です。
強制適用事業所以外の事業所は、被保険者の半数以上の同意があれば、事業主が適用事業所の申請ができます。
厚生労働省が認可し、社会保険の適用となった事業所を、任意適用事業所と呼びます。任意適用事業所は、厚生年金保険と健康保険のどちらか一方を選択して加入が可能です。
また、被保険者の3/4以上が適用事業所の脱退に同意し、厚生労働省の認可を受けると脱退できます。
会社に勤める正社員やパートタイマー、アルバイト、派遣社員の方も、社会保険の加入条件があります。
ここからは、従業員の社会保険加入条件を紹介します。
従業員の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入条件は以下のとおりです。
このように、正社員など常時勤務される方は、社会保険の加入義務が発生します。
常時勤務していなくても、「週の所定労働時間・月の所定労働日数が正社員の4分の3以上」であればパートタイマーやアルバイトの方も社会保険の加入対象です。
また、週の所定労働時間・月の所定労働日数が正社員の4分の3に届かない場合も、以下の条件を満たすと、社会保険の加入が必要となります。
パート・アルバイトの社会保険の加入条件は、以下のとおりです。
原則、契約上の労働時間が20時間以上かどうかで判断します。そのため、残業代など臨時の労働時間は含みません。
雇用契約上は、週の所定労働時間が20時間未満であっても、全業代以外の実労働時間が2ヶ月連続して週20時間を超え、今後も20時間以上が見込まれる場合は、社会保険が適用となります。
月額の賃金が、88,000円以上かどうかで判断します。この賃金には、残業代を含む時間外労働手当、休日・深夜手当、通勤手当、賞与などは含みません。
この賃金が、年収106万円以上で社会保険が発生する「年収の壁」と呼ばれています。従業員が101人以上など加入条件を満たすと、社会保険の適用となり加入義務が発生します。
年収の壁は106万円以外にも、所得税や住民税など税金が生じる金額や控除適用になるか否かにより、配慮する金額が異なります。
年収 | 住民税 | 所得税 | 社会保険 |
---|---|---|---|
100万円未満 | なし | なし | なし |
100万円 | かかる | なし | なし |
103万円 | かかる | かかる | なし |
106万円 | かかる | かかる | かかる |
130万円 | かかる | かかる | かかる※ |
※年間130万円を超えると、扶養から強制的に外れてしまいます。扶養されている方は、自分で国民年金や健康保険に加入しなければなりません。従業員数101人以下の企業も、任意適用事業所の場合は会社の社会保険に加入できるケースもあります。
130万円の壁について、2023年9月に厚生労働省が、2年連続までは130万円を超えても扶養から外さなくてもよいと方針を発表しました。2024年の法律改正に加えて、2025年には年金制度の改正が行われます。
雇用期間が2ヶ月を超えるかどうかで判断します。2022年10月の法律改正により、雇用の見込み期間が1年以上から2ヶ月以上に変更されました。
夜学や定時制を除く学生は、社会保険の対象外です。
勤める会社の従業員規模によって、加入義務適用の対象が決まります。現在は、101人以上の規模の会社が、加入条件です。
2024年10月より、51人以上の規模の会社へさらに適用が拡大されます。
※出典:従業員数500人以下の事業主のみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省
派遣労働者も、パートやアルバイトと同じく、一定の条件を満たす場合は社会保険の加入対象です。
法律改正で、短時間労働者の適用範囲が段階的に拡大しているため、適用になりそうな従業員へ、早めに伝えて今後の働き方を相談すると良いでしょう。
事業所が健康保険および厚生年金保険の加入義務がある場合は、新規適用届の提出が必要です。
ここからは、事業所が新たに社会保険に加入する場合の手続きを紹介します。
社会保険の加入に必要な書類は、強制適用事務所と任意適用事務所で異なります。
強制適用事務所が社会保険の加入に必要な書類は、以下のとおりです。法人(商業)登記簿謄本および住民票は、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを提出する必要があります。
任意適用事務所が社会保険の加入に必要な書類は、以下のとおりです。住民票は、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを提出する必要があります。
社会保険の加入期限は、強制適用事務所の場合は事実発生から5日以内に、任意適用事務所の場合は、従業員の過半数以上の同意後速やかに届出をしなければなりません。
期限内に必要な書類を、事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センターへ提出します。提出方法は、窓口持参または電子申請、郵送の3種類です。
※参考:新規適用の手続き|日本年金機構
従業員を雇用し、社会保険に新たに加入する場合は、事業主が「被保険者資格取得届」を年金事務所に提出します。
ここからは、従業員が社会保険に加入する際の手続きを紹介します。
本社が支社の労務管理を行っているなど、2つ以上の適用事務所の事業主が同一である場合、厚生労働大臣の承認を受ければ、1つの適用事務所とみなし一括適用の申請ができます。
この申請が承認されれば、支社間などで人事異動があった場合、社会保険の加入・喪失届の提出が必要なくなるため、手続きの簡略化ができます。
役員を兼任している方や、他社で副業やアルバイトをしている方もいます。働いている会社が複数あり、社会保険は他社で加入している場合は、別途手続きが必要です。
被保険者は、1つの事務所を選択し、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出します。事案発生から10日以内に、窓口持参または電子申請、郵送により申請可能です。
社会保険の加入条件が段階的に緩和され、より多くの人が加入できるように取り組みが進んでいます。
ここからは、社会保険の適用範囲を法律改正の内容と併せて紹介します。
社会保険の適用範囲は、法律改正の度に変更されています。
2016年10月の改定では、従業員数501人以上の企業が加入対象になりました。さらに2022年10月の改定では、従業員数501人から101人以上へと大幅拡大し、雇用期間も1年以上から2ヶ月以上の雇用見込みがあれば対象となったのです。
そして2024年10月に従業員数51人以上へ変更となっており、数年で大幅の適用拡大がおこっていると分かります。
改正時期 | 2016年10月 | 2022年10月 | 2024年10月 |
---|---|---|---|
従業員数 | 501人以上 | 101人以上 | 51人以上 |
週の所定労働時間 | 20時間以上 | ||
雇用期間 | 1年以上 | 2ヶ月以上 | |
賃金 | 88,000円以上(年収106万円以上) | ||
対象 | 学生以外 |
2024年の法律改正以降は、従業員数51人以上従業員がいる企業も社会保険の加入対象です。
総務省統計局が発表した「令和3年経済センサス-活動調査」によると、従業員数50〜99人の企業は 105,274事業所あり、720万4千人がいると分かります。短時間労働者が3割いると想定した場合、200万人以上が適用追加対象となり、対応に追われる企業が増えると予想されます。
※参考:令和3年経済センサス - 活動調査|総務省・経済産業省
社会保険の適用となる従業員の数え方は、社会保険の被保険者数で判断します。具体的には、常時勤務する従業員と週の労働時間がフルタイム従業員の3/4以上の従業員がカウント対象です。法人の場合は、法人番号が同じ企業は合計して算出されます。
従業員のカウント数が一度適用されると、従業員数や給与などの要件が下回っても、拡大後のルールが適用となるので、注意が必要です。従業員の数えるタイミングは、直近1年間のうち社会保険の加入条件を満たす月が6ヶ月あれば適用となります。
社会保険の適用拡大の背景には、今後予想される人口減少や労働人口の減少、高齢化率の上昇が挙げられます。
厚生労働省が発表した「我が国の人口について」によると、2023年9月時点で約1億2,330万人いる人口は、2070年に約8,700万人となり高齢化率は39%と推計しています。
人口減少と高齢化に伴い、税収の減少や社会保障費増加が予想され、今後さらに適用拡大が進むでしょう。
※出典:我が国の人口について|厚生労働省
また、短時間労働勤務や副業など時代の変化に伴い、多様な働き方が増えていることも適用拡大の背景にあるといえます。
総務省統計局が発表した「労働力調査(詳細集計)」によると、雇用者5,689万人のうち、正規従業員は3,588万人、非正規従業員は2,101万人です。非正規雇用のみで生活を支える方にとっては、社会保障の加入が可能になると、手厚い保障を受けられるメリットがあります。
社会の変化に伴う制度の変更は、社会全体を支えるために必要な取り組みといえるでしょう。
※参考:労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均|総務省統計局
社会保険の適用範囲が拡大すると、どのように影響を及ぼすのでしょうか。
ここからは、社会保険の適用拡大に伴う影響について紹介します。
新たに社会保険の加入対象となると、労働者の影響で大きいのは社会保険料の負担といえます。人によっては、働く時間は同じでも今までの手取りよりも少なくなるケースもあるでしょう。
東京都で40歳未満の方が月90,000円の収入がある場合を考えてみます。
健康保険料:月90,000円×10%(東京都の場合)÷2=4,500円
厚生年金保険料:月90,000円×18.3%÷2=8,235円
合計12,735円の社会保険料が給料から毎月天引きされます。社会保険の適用前は手取りが約1,080,000円であったのが、適用後は927,180円となり、約15万円手取り収入が減ってしまうのです。
保険料負担が増える一方、社会保障が手厚くなるメリットもあるといえます。
社会保険の加入が必要になった場合、従業員の都合で加入するか否かを決められません。人によって、扶養内で働き続けたい方もいれば、これを機会に働く時間を増やしたい方もいるかもしれません。
そのため、法律改正により加入になりそうな従業員が発生したら、早めに該当従業員に加入意思の確認をし対応しましょう。
社会保険の適用が拡大されれば、社会保険の対象となる従業員を確認し、不備なく対応する必要があります。
社会保険の対象となれば、標準報酬月額に基づき保険料を毎月徴収します。保険料は、内容により計算方法も異なるので注意しましょう。
社会保険料の算出方法は、以下のとおりです。
社会保険の加入義務があるにもかかわらず未加入の事業所は、指導や立入検査、罰金など罰則を受ける可能性があります。
ここからは、社会保険未加入の罰則を紹介します。
未加入の事業所は、日本年金機構から文書などで加入促進の通知が来ます。通知を無視し未加入のままでいると、加入指導・立入検査と段階的に厳しい指導になる可能性があります。
立入検査になった場合、強制加入となり未納分の遡及適用の対象となるため、加入通知が来たら速やかに自主加入しましょう。
さらに未加入の事業所は、健康保険法第208条および厚生年金保険法第102条に基づき6ヶ月以下の懲役あるいは50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
虚偽の申告をしたり、加入指導を何度もされたりなど悪質な場合に適用されます。
第二百八条 事業主が、正当な理由がなくて次の各号のいずれかに該当するときは、六月以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する。
一 第四十八条(第百六十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、届出をせず、または虚偽の届出をしたとき。
二 第四十九条第二項(第五十条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、通知をしないとき。
三 第百六十一条第二項または第百六十九条第七項の規定に違反して、督促状に指定する期限までに保険料を納付しないとき。
四 第百六十九条第二項の規定に違反して、保険料を納付せず、または第百七十一条第一項の規定に違反して、帳簿を備え付けず、もしくは同項もしくは同条第二項の規定に違反して、報告せず、もしくは虚偽の報告をしたとき。
五 第百九十八条第一項の規定による文書その他の物件の提出もしくは提示をせず、または同項の規定による当該職員(第二百四条の五第二項において読み替えて適用される第百九十八条第一項に規定する機構の職員および第二百四条の八第二項において読み替えて適用される第百九十八条第一項に規定する協会の職員を含む。次条において同じ。)の質問に対して、答弁せず、もしくは虚偽の答弁をし、もしくは第百九十八条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、もしくは忌避したとき。
※引用元:健康保険法|e-Gov法令検索
第百二条 事業主が、正当な理由がなくて次の各号のいずれかに該当するときは、六月以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する。
一 第二十七条の規定に違反して、届出をせず、または虚偽の届出をしたとき。
二 第二十九条第二項(第三十条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、通知をしないとき。
三 第八十二条第二項の規定に違反して、督促状に指定する期限までに保険料を納付しないとき。
2 適用事業所等の事業主が、正当な理由がなくて、第百条第一項の規定に違反して、文書その他の物件を提出せず、または当該職員(第百条の八第二項において読み替えて適用される第百条第一項に規定する機構の職員を含む。次条において同じ。)の質問に対して答弁せず、もしくは虚偽の陳述をし、もしくは検査を拒み、妨げ、もしくは忌避したときは、六月以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する。
※引用元:厚生年金保険法|e-Gov法令検索
日本年金機構の調査により、社会保険の未加入が発覚した場合は、過去2年分の保険料をさかのぼって徴収されるケースがあります。該当する従業員全員の過去2年分社会保険料を、翌月末までに現金で支払う必要があるため、多額かつ大きなダメージとなるでしょう。
原則、保険料は従業員と折半して支払いますが、対象従業員が退職し本人と連絡がとれない場合は、会社が全額を負担しなければなりません。
加入勧奨や加入指導の段階で、自主的に加入した場合は、遡及適用にはならないので、リスクを避けるためにも、加入通知が来たら早急に対応しましょう。
未加入の事業所は、ハローワークに求人掲載をしてもらえません。
ハローワークの求人掲載は無料で利用しやすく、採用手段に利用している企業もいるでしょう。社会保険の完備がされていないと、求職者からもマイナスのイメージを抱かれます。
このように社会保険に未加入の場合、指導や罰則があり会社にとって大きなダメージになります。法律改正で新たに加入対象となるケースもあるので、見逃さず速やかに手続きをしましょう。
新たに社会保険の加入者が増えて対応に追われる企業の担当者は、支援制度を活用するのもおすすめです。
ここからは、無料で受けられる支援制度や、助成金を紹介します。
社会保険の適用拡大に伴い、従業員への説明や準備、手続きが必要になります。
手続きなどに不安がある場合は、無料で相談や派遣ができる制度を利用すると良いでしょう。ノウハウが豊富な社会保険労務士などの専門家に、無料で相談やアドバイスを受けられます。
管轄の年金事務所に連絡し、「専門家派遣依頼届」を提出すると、相談ができます。
社会保険の適用対象者の中には、年収を気にせず働く時間を増やしたい方もいるでしょう。短時間労働者の労働時間を延長させ社会保険に加入するなど、雇用契約の変更をする場合は、「キャリアアップ助成金」を活用すると良いでしょう。
この助成金は、正社員化コース、短時間労働者労働時間延長コース、賃上げ(基本給)、社会保険の適用など各要件を満たすと一人あたりに助成金が支払われます。
「短時間労働者労働時間延長コース 」を申請する場合を考えてみます。短時間労働者の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険に加入すると適用となり、中小企業で一人あたり5万8,000〜23万7,000円の助成金を受け取れます。
延長時間\企業規模 | 中小企業 | 大企業 |
---|---|---|
3時間以上 | 23万7,000円 | 17万8,000円 |
2時間以上3時間未満 | 11万7,000円 | 8万8,000円 |
1時間以上2時間未満 | 5万8,000円 | 4万3,000円 |
※参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省
キャリアアップ助成金の申請方法など詳細については、都道府県労働局あるいはハローワークへお問い合わせください。
この記事では、社会保険の加入条件を、法律改正の内容と併せて解説しました。社会保険適用拡大に伴う影響は、企業と従業員どちらにも大きいでしょう。雇用側の企業は、加入対象者を把握し、意思確認後適切に対応しなければなりません。
社会保険の手続きには、期日があります。支援制度を活用しながら、早めに対応しましょう。