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人事部は、人材の活用を通じて自社の成長や競争力の向上に寄与する重要な部署です。
その仕事内容は、採用活動から研修・教育の実施、人事制度や福利厚生制度の設計・運用まで実に広範におよびます。
本記事では、人事部の仕事をテーマに、人事人材の市場動向や具体的な仕事内容や人事として働くメリット・デメリット、必要なスキルについて解説します。
人事部の仕事内容は大きく分けると7つあります。
それぞれの具体的な業務内容を解説していきます。
採用活動は自社に必要な人材を市場から探し出し、雇用するまでの一連の業務のことです。求人広告の作成や応募者の書類選考・面接、内定通知や入社手続きなどの業務があります。
応募者や候補者に対して自社の魅力や価値を伝えることで、企業のブランドイメージを高めることも、採用活動における重要な業務です。
社員のスキルや知識を向上させるための研修や教育を企画、実施することも人事の仕事です。
社員のニーズやレベル・役職などに応じて、研修・教育の内容や方法を考え、プログラムを実施します。人事部が主体となって行いますが、社外の講師やコンサルタントを招いて実施することもあります。
研修後は効果を測るために参加者のフィードバックや評価を収集・分析し、研修の改善点や次のステップを検討します。
人事考課および報酬の決定は、社員のモチベーションやパフォーマンスに大きな影響を与える重要な業務です。人事考課では、社員の業績や能力を定期的に評価し、社員の強みや弱みを把握するとともに適切なフィードバックや育成プランを提供します。
人事考課の結果は、報酬や昇進の基準としても活用されます。業績や貢献度に応じて適正な報酬を決定することで、社員の意欲や忠誠心を高められます。
適切な報酬や昇進を決定するために、自社の戦略やビジョンに沿った評価項目や指標を設定し、社員に周知することも人事部の仕事です。評価者や評価対象者の選定、評価時期や頻度、評価方法や手順なども決定します。
また、定期的に人事評価制度の効果や問題点を分析し、必要に応じて見直しや改善を行います。
社員の健康や安全、モチベーションを高めるためには福利厚生制度が重要な役割を担います。人事部は健康保険などの法定福利厚生だけでなく、社員食堂や保育所の設立、医療費補助やキャリア支援など自社独自の福利厚生を設計・運用します。
社員から歓迎される福利厚生制度が運用されれば、社員のパフォーマンスやロイヤルティを高めることができます。
社員の勤怠や休暇、退職などの労務関係を管理するのも人事部の仕事です。給与計算や社会保険の手続きなども含まれます。
適切に労務管理を行うことで、残業代の削減や社員のモチベーション向上などさまざまな効果をもたらします。長時間労働が抑制されることで社員の健康面でのよい影響や、企業イメージの向上にもつながります。
人事戦略を策定・提案することも人事部の重要な仕事です。人事戦略とは、組織の長期的な成長や競争力を高めるために、どのような人材をどのように活用するかという計画のことを指します。
具体的には、社内外の人材情報や市場動向を分析し、自社の人材ニーズを把握します。そしてニーズに合った採用・教育・配置・評価などの人事施策を設計・実行し、効果や問題点を評価したうえで改善策を検討するという流れで行います。
まずは、人事部の基本的な役割と近年におけるその変化について解説します。
人事部は、組織の目標や戦略に沿って人材の確保や育成、活用を行う部署です。
企業の4大資源であるヒト・モノ・カネ・情報の中でも、ヒトの活用を通じて組織の競争力や成長を支える重要な役割を担っています。
自社にマッチする優秀な人材の採用から社員がモチベーション高く働けるような人員配置、評価制度の策定・運用など幅広い業務を担当します。
人事部というと、給与や福利厚生などのオペレーション業務が主な仕事内容と思われがちですが、近年ではその役割が戦略的なものへと変化しています。
人事部はHRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)として、ビジネスに積極的に関与することが求められています。HRBPとは、ビジネス部門と協働し、人材や組織に関する課題を解決するパートナーのことです。
HRBPはビジネスの現場に入り込み、ビジネス部門の目標やニーズを理解し、最適な人事施策を提案したり実行したりします。そのためには人事部だけでなくビジネス部門の知識やスキルも必要です。また、コミュニケーション能力や問題解決能力、分析力や企画力なども求められます。
近年における人事人材の市場動向について解説します。
少子高齢化にともなう労働力人口の減少を受け、採用難の時代に突入しています。そのため近年の人事には自社に合った人材を獲得できる採用力が求められており、転職市場では採用担当を中心に人事人材のニーズが高まっています。
その中でも特にニーズが高いのがIT人材やDX人材の採用に強い人事です。人事領域の知識だけではなくITやDX、ビジネスに関する知見も求められますが、人事としての市場価値を高めるためには習得する価値があります。
人事の転職では即戦力が基本なので、経験者が有利です。ただし、必ずしも人事部門での経験が求められるわけではありません。
たとえば営業職の経験者であれば顧客との関係構築や信頼を築くためにコミュニケーション能力や交渉力が必要なので、人事業務にも活かすことができます。
また部下や後輩の教育を担った経験がある場合も、教育内容・方法を検討したり、適切なフィードバックを与えたりする必要があります。これらは人事業務、特に教育・研修業務で役立つでしょう。
転職活動の際には、応募先の業務と親和性の高い業務経験をアピールすることで採用の可能性を高められます。
人事には多様な業務がありますが、大企業と中小企業で業務範囲が異なります。転職活動を進める際にはその違いを理解し、自分のキャリアやスキルに合った職場を選ぶことが重要です。
大企業では、人事部門が専門的に人事業務を担当し、各領域に専門家やチームが配置されていることがあります。人事スタッフ一人ひとりが担う役割は細分化されており、ひとつの業務を担当することが多いでしょう。
中小企業では、総務や経理などとの兼任である場合や、一人で広範の業務を担う場合が少なくありません。また人材が不足していることから日常的な労務管理などに重点を置き、外部のコンサルタントや社会保険労務士などに専門的な業務を委託することもあります。
人事の仕事では、以下のようなスキル・知識が求められます。
人事は社内外のさまざまな人と関わり、情報を伝えたり、調整したりする役割を担っています。そのため、相手の立場やニーズを理解し、適切な言葉遣いや表現方法でコミュニケーションをとるスキルが求められます。
また、応募者に企業の魅力や求める人材像を伝えるためのプレゼンテーションスキルも必要です。
人事ではさまざまなプロジェクトやタスクを同時に進めることが多く、それぞれに期限や予算、目標などがあります。業務を効率的かつ効果的に遂行するためにプロジェクトマネジメント能力が必要です。これにはスケジュール管理能力も含まれます。
プロジェクトマネジメント能力を発揮することで、プロジェクトやタスクの進捗や品質を管理し、リスクや問題を早期に発見し対処できます。
人事が自社の戦略や目標に沿って業務を遂行するためには、自社の経営状況や競争力を把握しなければなりません。そのためにはビジネスに関する知識が必要です。また法律や規則に適合した人事制度や社内規程を作成するためには、法律の知識も欠かせません。
ビジネスや法律の知識があることで、組織のニーズに応える人材を効果的に管理し、人事に関連する法的トラブルやリスクを回避することができます。
人事に必要なデータ分析スキルとは、人事に関するさまざまなデータを収集・整理・分析・活用するスキルのことです。分析ツールを扱うスキルも含まれます。
これらのスキルはたとえば採用活動の効果測定や人材育成の計画立案などの場面で発揮できます。データを活用することで客観的かつ論理的に人事戦略を策定し、経営陣や社員に対して説得力のある提案を行うことが可能です。
また、市場や業界の動向を把握し、競争力のある人事制度を構築するためにも役立ちます。
リーダーシップも人事の仕事に必要な能力です。リーダーシップとは、自分や他者を率いて目標に向かって進む能力のことをいい、リーダーや役職者に限らず一般スタッフクラスの人事人材にも求められます。
人事の仕事でリーダーシップを発揮できる場面としては、たとえば新入社員の教育や研修を担当する場面があります。適切な指導やフィードバックを行うことで、新入社員のモチベーションやパフォーマンスを高めることができます。
人事には公平さや正義を重んじ、法律や規則を遵守する倫理観が求められます。
人事では採用や評価、昇進や降格、解雇や退職など社員のキャリアや生活に大きな影響を与える決定をしなければなりません。その際には、自分の感情や偏見に左右されず、客観的かつ公正に判断することが求められます。
また、人事部門では応募者や社員の個人情報を扱うので、プライバシーに配慮した適切な情報管理も不可欠です。
人事部で働くことには、スキルや知識の向上、やりがいなどさまざまなメリットがあります。
人事部では採用や教育、評価など社員のキャリアやモチベーションに関わるさまざまな業務を行っているため、幅広い視野や知識を身につけられます。
また社内の各部署や役職者などと関わる機会が多いため、自社のビジネスや企業文化などを多角的に理解することができます。
応募者や人材紹介会社、教育機関など外部の人ともコミュニケーションをとることで市場や業界の動向やニーズに敏感になります。
社内外のさまざまな人と関わることで、対人関係のスキルが向上します。
たとえば採用活動では応募者の適性や意欲を見極めるために、効果的な質問やフィードバックを行います。また労務管理では、社員の給与や評価制度などに関する相談やクレームに対応するために、柔軟かつ公平な態度でコミュニケーションをとることを意識するでしょう。
これらの経験を通じて対人関係のスキルが向上することで、組織の発展に貢献するとともに自身の成長にもつながります。
人事業務を通じて社員のキャリアやスキルの向上を促したり、働きやすい環境を整えたりすることで、やりがいや達成感を感じることができます。社員をサポートすることで、社員の成長や幸せを支え、自分の仕事が社員や組織に貢献していると実感できるでしょう。
社員から感謝されたり信頼されたりすることで、自分の存在価値を高められ、やりがいにつながります。
人事は上記のように魅力ある仕事ですが、大変な部分も少なくありません。
これから人事を目指す方は、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで自身の適性を判断する必要があります。
人事部で働くということは、社員の採用や人事評価に直接関与するということです。これらは社員のキャリアや生活に大きな影響を与えるだけでなく、会社の業績や企業風土にも関わる重要な決定です。そのため、人事部の仕事は責任が重く、プレッシャーが大きいといえます。
また社員の個人情報や機密情報の漏洩を防ぐために、情報管理のルールやシステムを遵守し、不正やミスを起こさないように注意しなければなりません。責任が重く神経を使う場面も多いでしょう。
業務を通じて社員のキャリアや生活に影響を与えることは、社員からの不満や苦情に直面することが多いことを意味します。たとえば人事評価に納得できない社員や、不適切な扱いを受けたと感じる社員からのクレームや相談に対応しなければなりません。
高い対人スキルがあったとしても、ストレスを感じることが多いはずです。
人事の仕事内容は多岐にわたります。応募者や従業員のキャリアや働き方に直接関わる責任の重い仕事ですが、その分やりがいも大きいです。
転職活動の際には、自身の適性を把握したうえで、応募先で求められている人材像と自身の保有スキルを照らし合わせましょう。そうすることで、応募先とのマッチングの可能性を高められます。