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「転職すると住民税の支払いはどうなるの?」「転職先住民税の支払いを引き継げるの?」というような疑問を抱えている方は少なくありません。
住民税は原則勤務している企業が特別徴収して支払うため、転職しても転職先の企業で特別徴収が適用されます。
しかし、転職先で特別徴収を継続するには所定の手続きが必要な他、退職時に転職先が決まっていない場合は退職時期によって納付方法が異なるため、注意しなければなりません。
本記事では、転職した際の住民税の納付方法や押さえておくべきポイントなどについて解説いたします。
住民税とは、区市町村民税・都道府県民税の総称で、1月1日時点で住民票が登録されている住所に納付する税金です。
まず、住民税は前年の1月1日から12月31日までの所得を基に計算されます。
つまり、2024年度の住民税は2023年の所得に基づいて決定されているため、転職して収入が変わっても、住民税額にはすぐ反映されません。
住民税額は、次の2つの要素で決定されます。
所得割は前年の所得に応じて計算され、通常は所得の10%(区市町村民税6%、都道府県民税4%)となります。
一方、均等割は所得金額にかかわらず、一律に発生する金額です。地域によって金額は異なりますが、一般的に年間数千円程度となります。
住民税額の計算式は次のとおりです。
所得金額-所得控除額=課税所得金額
課税所得金額×税率(10%)-税額控除額=所得割額
所得割額+均等割額=住民税額
引用:個人住民税|総務省
上記のとおり、所得控除や税額控除などの適用によって実際の税額は変動します。そのため、所得金額がそのまま住民税額に反映されるわけではありません。
不明な点がある場合は、お住まいの自治体の税務課に相談することをおすすめします。
住民税の納付方法は、次の2つです。
特別徴収とは、勤務先が従業員の給与から住民税を天引きし、自治体に納付する方法です。勤務先が納付をしてくれるため、自分で納付する必要がなく、手間を省けます。
転職したタイミングによっては、普通徴収で支払う場合もあるので注意が必要です。
普通徴収とは、個人で住民税を納付する方法です。
自治体から送られてくる納税通知書に基づき、年4回の分割払い(6月・8月・10月・翌年1月)で納付します。
退社後の転職先が決まっていない場合や無職期間がある場合は、普通徴収に切り替わることが多いため、納付漏れがないように注意しなければなりません。
転職先が決まっている場合、特別徴収の継続が可能です。ただし、特別徴収を継続するためには、所定の届出書を提出する必要があります。
具体的なステップは次のとおりです。
この手続きが実施されていない場合、普通徴収に切り替わってしまい、転職先で特別徴収が継続されません。
特別徴収の継続を希望しているにもかかわらず、給与から住民税が引かれていない場合は手続き状況を確認しなければなりません。
転職先が決まっていない場合、退職日によって住民税の納付方法は変わります。ここでは、次の2項目に分けて退職日ごとの納付方法を解説します。
6月1日から12月31日の間に退職する場合、普通徴収と特別徴収を選べます。
普通徴収を選択した場合は、退職後に市区町村から送られてくる納税通知書に基づいて納付が必要です。
なお、納付回数は最大4回ですが、8月に退職した場合は10月と翌年1月の2回納付するというように、退職時期によって納付回数は異なります。
一方、特別徴収を選択すると、残りの住民税(退職日から翌年5月までの住民税)を一括で納付(一括徴収)する扱いになります。
一括徴収は退職時の給与・退職金などから引かれますが、退職金が支給されない場合や、退職金額が住民税残額に満たない場合は、不足分を自分で納付しなければなりません。
不足分がある場合は普通徴収に変更され、後日納付書が届くため、その納付書を用いて不足分の住民税を納付します。
納付方法を選択する際は、退職金額や今後の収入額などを加味したうえで判断しましょう。
1月1日から5月31日の間に退職する場合、原則として退職時の給与・退職金などから前年度分の住民税(翌月から5月分)が一括で徴収されます。
ただし、退職時の給与額が住民税残額を満たさない場合は、例外として普通徴収に切り替わります。
なお、5月1日から5月31日に退職した場合、住民税残額は1ヶ月分であるため、最後に支払われる給与から特別徴収されるのが一般的です。
このように、住民税の納付方法は退職時期によって大きく異なります。そのため、転職を考えている方は、住民税の納付方法をしっかりと把握し、計画的に対応することが重要です。
転職先が決まっていない場合は、納税資金の準備や納付スケジュールの管理に細心の注意を払わなければなりません。
不安な点がある場合は、早めに勤務先や市区町村に相談することをおすすめします。
参考:大阪市:退職・転勤などがあった場合(給与所得者異動届出書の提出)
転職時の押さえておくべき住民税のポイントは、次の3つです。
住民税の支払いが遅れると、延滞税が課されます。
延滞税は納付期限の翌日から納付日までの日数に応じて加算され、延滞期間が延びるほど延滞税額は増えていきます。最悪の場合、財産差し押さえになるリスクもあるため、できるだけ早く納付することが重要です。
ただし、転職にともなって収入が不安定になってしまい、支払いが困難という方は少なくありません。事情があって支払いが困難な場合は、早めに市区町村の税務課に相談することをおすすめします。
年金保険料や健康保険料とは異なり、住民税には原則として減免措置がありません。
災害や病気など、特別な事情がある場合には、自治体によっては減免措置を設けていることがありますが、単に収入が減少しただけでは、通常減免の対象にはなりません。
そのため、転職後に収入が大幅に減少したとしても、前年の所得に基づいて計算された住民税を全額支払う必要があります。
転職を考えている方は、この点を十分に理解し、転職後の収入と住民税の支払いを含めた資金計画を立てることが重要です。
転職に伴って引っ越しをする場合、住民税の二重払いを心配する方もいるかもしれません。
しかし、住民税は1月1日時点の住所地で課税されるため、年度途中で引っ越しをしても、その年度の住民税は元の住所地に納付することになります。
つまり、転職と引っ越しを同時に行っても、住民税の二重払いは発生しません。
ただし、引っ越し後に住所異動の手続きをしていないと、住民基本台帳法にもとづき5万円以下の罰金が適用される場合があります。そのため、引っ越し先の自治体に住民票を移す手続きは忘れずにおこないましょう。
以上のポイントを押さえておくことで、転職時の住民税に関するトラブルを避けられます。
転職を考えている方は、これらの情報を参考に、慎重に計画を立てることをおすすめします。
転職先で住民税が引かれていない場合の代表的な理由は次の3つです。
転職先で住民税が引かれていない場合、まず考えられるのは、既に住民税を支払っている可能性です。
前職退職時に住民税を一括で納付した場合や、普通徴収で納付している場合は、転職先での給与から住民税が引かれないことがあります。
特に退職時に一括納付を選択した場合、来年度6月の給与まで住民税が天引きされることはありません。
住民税は前年の所得に基づいて計算されます。したがって、無職で前年の所得がない場合は住民税が発生しません。
この場合、住民税を納付する必要がないため、転職先で住民税が引かれていないとしても特に心配する必要はありません。
また、前年に給与支払いがない育休・休職明けの場合も、給与から住民税は天引きされません。
育休・休職中に支払われるお金は給付金にあたり、給付金は課税所得扱いにならないためです。
企業で働いている場合、原則特別徴収となるため、給与から住民税が天引きされて自治体に納付されます。
しかし、以下要件に該当している場合は、普通徴収が可能です。
これまで解説した理由に該当していないのに、給与から住民税が天引きされていない場合、上記要件に該当している可能性があります。
自分の納付状況を確認し、早急に対応しましょう。
転職時に気になるポイントとして、住民税の支払い方法について気になる方もいるでしょう。
住民税の納付方法は特別徴収と普通徴収があり、納付方法は退職時の転職先の決定状況や、転職タイミングによって異なるため、自分が対応する納付方法をきちんと理解しておかないと、未払いリスクが高まります。
転職後の税金トラブルを回避するためには、これらの情報を事前に把握し、適切に対応しましょう。