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【2024年10月~】社会保険の適用拡大!改正項目や対応方法もわかりやすく解説

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【2024年10月~】社会保険の適用拡大!改正項目や対応方法もわかりやすく解説

2024年10月から、社会保険の適用対象がさらに拡大されることが決まりました。これにより、従業員数51人以上の企業も社会保険の加入が義務付けられます。

2016年10月に従業員数501人以上の企業が対象となり、2017年、2022年と段階的に従業員数101人以上の企業へと拡大されてきました。そして、今回の改正では適用範囲は更に拡大し、より多くの中小企業に社会保険の加入が義務付けられることになります。

社会保険の適用拡大は、従業員の福利厚生を充実させるための重要なステップですが、企業にとっては新たな義務や負担が増えることも意味します。

本記事では、改正の具体的な内容や企業が取るべき対応策についてわかりやすく解説していきます。スムーズに対応できるよう、重要なポイントを押さえておきましょう。

目次

社会保険の概要

社会保険とは、労働者やその家族の生活を守るための公的な保険制度です。企業や個人事業主が従業員のために保険料を負担し、従業員も一部を負担することで成り立っています。

病気やケガ、老後の生活、失業など、さまざまなリスクに対して経済的な支援を提供することを目的としています。社会保険には、健康保険、厚生年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険の5種類があります。

健康保険

健康保険は、従業員やその家族が病気やケガをした際に、医療費を一部または全額カバーする制度です。医療機関での診察や治療、薬剤の処方などにかかる費用を抑えることができるため、安心して医療サービスを受けることができます。

厚生年金保険

厚生年金保険は、老後の生活を支えるための年金制度です。従業員が一定の年齢に達した後、毎月の保険料に応じて年金が支給されます。また、障害や死亡による経済的な困難を軽減するための給付も含まれています。

介護保険

介護保険は、介護が必要な高齢者や障害者が適切な介護サービスを受けられるようにするための制度です。介護施設の利用や在宅介護サービスの提供にかかる費用を支援し、被保険者とその家族の負担を軽減します。

労災保険

労災保険は、仕事中や通勤中に発生したケガや病気、さらには死亡に対して保障を提供する制度です。医療費や休業補償、障害補償、遺族への補償など、多岐にわたる給付が行われます。

雇用保険

雇用保険は、失業した際の生活を支えるための制度です。失業給付や再就職支援、職業訓練など、失業者が早期に再就職できるようサポートします。また、育児休業給付や介護休業給付など、育児や介護を行う従業員への支援も含まれています。

これらの社会保険制度は、従業員の生活を幅広くサポートし、安心して働ける環境を整えるために重要な役割を果たしています。

企業が社会保険の適用対象になるための要件

社会保険は、民間の保険と違い、従業員個人や事業主が自由に契約して加入するものではなく、法律で事業所単位に加入が義務付けられています。

これを「強制適用事業所」といい、そこで働く従業員は本人の意思に関係なく加入者となります。

強制適用事業所の要件は、健康保険・厚生年金保険と介護保険と労災保険・雇用保険で多少異なります。

健康保険・厚生年金保険

健康保険・厚生年金保険に関しては、法人の場合、業種や従業員の人数に関係なく、すべての事業所が強制適用事業所となります。労働者を雇用せず、事業主1人だけであっても対象です。

個人事業の場合には、常時勤務している従業員が5人以上いる場合に強制適用事業所となります。ただし、農林水産業、飲食業、サービス業等の業種は例外となります。

介護保険

介護保険に関しては、法人・個人事業を問わず、40歳以上の従業員(短時間労働者を除く)を1人でも雇用していれば強制適用事業所となります。

労災保険・雇用保険

労災保険・雇用保険に関しては、法人・個人事業を問わず、労働者(パート、アルバイト等を含む)を1人でも雇用していれば強制適用事業所となります。ただし、個人経営で労働者数が5人未満の農林水産業の事業は例外です。

労働者が社会保険の適用対象になるための要件

労働者が社会保険の適用対象となるための要件は、健康保険・厚生年金保険と介護保険、労災保険・雇用保険で多少異なります。以下に具体的な要件を説明します。

健康保険・厚生年金保険

健康保険・厚生年金保険に関しては、すべての従業員(短時間労働者を除く)が被保険者となります。短時間労働者(パート、アルバイトなど)の場合には、短時間労働者が社会保険の適用対象となるための要件(後述)を満たす場合に被保険者となります。

介護保険

介護保険に関しては、40歳以上のすべての従業員(短時間労働者を除く)が被保険者となります。

労災保険・雇用保険

労災保険に関しては、労働者であれば雇用形態に関係なく全員が被保険者となります。ですが、雇用保険に関しては、1週間の所定労働時間が20時間未満の方、65歳以上で新たに雇用される方及び昼間学生の方などは被保険者となれません。

短時間労働者が社会保険の適用対象となるための要件

短時間労働者が社会保険の適用対象となるためには、以下の要件を満たす必要があります。

使用される従業員が101人以上(2024年10月からは51人以上に変更)

短時間労働者が社会保険の適用対象となるためには、勤務している事業所の従業員数が101人以上であることが必要です。

ただし、2024年10月からはこの要件が緩和され、従業員数51人以上の事業所も対象となります。

週の所定労働時間が20時間以上

短時間労働者が社会保険の適用対象となるためには、週の所定労働時間が20時間以上であることが条件です。これにより、週に20時間以上働くパートタイマーやアルバイトも社会保険に加入することが求められます。

所定内賃金が月額8.8万円以上

月額賃金が8.8万円以上であることも、短時間労働者が社会保険に加入するための要件です。賃金がこの基準を満たすことで、経済的な基盤を支えるための社会保険の恩恵を受けることができます。

2か月を超える雇用の見込みがあること

短時間労働者が社会保険の適用対象となるためには、雇用期間が2か月を超える見込みがあることが必要です。短期的な雇用ではなく、一定期間以上の雇用関係が見込まれる場合に社会保険の適用が義務付けられます。

学生ではないこと

社会保険の適用対象となる短時間労働者は、学生でないことが条件です。ただし、夜間学生や通信制の学生については例外が認められています。

【2024年(令和6年)10月施行】社会保険の適用拡大

2024年10月から施行される社会保険の適用拡大について詳しく解説します。

社会保険の適用拡大の改正項目

2024年10月から施行される社会保険の適用拡大により、適用対象となる従業員数が従来の101人以上から51人以上に引き下げられます。

これにより、より多くの中小企業が対象となり、短時間労働者の社会保険加入が進むことが期待されます。

改正の背景

今回の改正は、少子高齢化や働き方の多様化に対応し、社会保険制度の持続可能性を高めることを目的としています。特に、パートタイム労働者やアルバイトの社会保険加入を促進することで、全労働者の社会保障を充実させる狙いがあります。

施行にあたって改定された法律

今回の適用拡大に伴い、年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しています。年金制度改正法では、「短時間労働者を被傭者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げる(現行500人超→100人超→50人超)。」と明記されています。

参考:年金制度改正法(令和2年法律第40号)|厚生労働省

改正後の適用対象者(パートタイマー・アルバイト、被扶養者)

改正後は、従業員数51人以上の事業所で働くパートタイマーやアルバイトも社会保険の適用対象となります。また、被扶養者としての基準も見直され、より多くの労働者が社会保険の恩恵を受けられるようになります。

改正により、社会保険の適用範囲が拡大し、労働者の生活安定と企業のコンプライアンス強化が期待できますが、企業にとっては新たな義務や負担が増えることにもなります。企業は改正内容を理解し、適切な対応を行うことが必要です。

過去に実施された社会保険の適用拡大

社会保険の適用対象は、2016年から段階的に拡大されてきました。過去に実施された社会保険の適用拡大についても確認しておきましょう。

2016年(平成28年)10月からの適用拡大

2016年10月から、社会保険の適用拡大が初めて大規模に実施されました。この改正により、従業員数501人以上の企業に勤める短時間労働者が新たに社会保険の適用対象となりました。

これにより、多くのパートタイマーやアルバイトが健康保険や厚生年金保険に加入することが義務付けられ、労働者の福利厚生が大幅に向上しました。

2017年(平成29年)4月からの適用拡大

2017年4月には、さらに適用拡大が進みました。この段階では、労働時間が短い労働者に対する適用条件が緩和され、従業員数が500人未満の企業でも、一定の条件を満たす場合には社会保険への加入が必要となりました。

これにより、適用対象がさらに広がり、多くの中小企業に勤務する労働者が社会保険の恩恵を受けることが可能となりました。

2022年(令和4年)10月からの適用拡大

2022年10月には、再度社会保険の適用が拡大され、従業員数101人以上の企業に勤務する短時間労働者が新たに適用対象となりました。これにより、従業員数の要件がさらに引き下げられ、より多くの企業が社会保険の加入義務を負うこととなりました。

この改正は、少子高齢化に対応し、全ての労働者が社会保険に加入できるようにするための重要な一歩でした。

過去の適用拡大の歴史を見ると、社会保険の適用対象は徐々に広がり、より多くの労働者がその恩恵を受けられるようになっていることがわかります。今回の2024年10月からの適用拡大も、その一環として位置づけられます。

社会保険の適用拡大に向けた対応方法

2024年10月から施行される社会保険の適用拡大により、多くの企業が新たな義務を負うことになります。

企業は適用対象者の把握、対応方針の検討、適用対象者への説明、そして必要な書類の作成・提出といった一連のプロセスを適切に管理する必要があります。

適用対象者の把握

まず、企業は自社の従業員の中で社会保険の新たな適用対象者を正確に把握することが重要です。従業員の労働時間や賃金、雇用期間などのデータを収集し、法改正に伴う条件を満たしているか確認します。特に短時間労働者の勤務状況を詳細に把握し、適用対象者をリストアップしましょう。

対応方針の検討

適用対象者が特定できたら、次に企業としての対応方針を検討します。社会保険の加入によって発生するコストや事務手続きの増加を踏まえ、どのように対応するかを計画します。

たとえば、労働時間の調整や賃金の見直しなど、具体的な施策を検討し、実行可能な対策を策定します。

適用対象者への説明

新たに社会保険の適用対象となる従業員には、改正内容や加入手続きについて丁寧に説明する必要があります。

加入のメリットや保険料の負担についても具体的に説明し、不明点がないようにします。また、従業員が安心して手続きを進められるよう、質問や相談に応じる体制を整えましょう。

書類の作成・提出

適用対象者への説明が完了したら、必要な書類を作成し、所定の期間内に提出します。

健康保険や厚生年金保険の加入手続きには、企業と従業員双方が必要な書類を準備することが求められます。正確に書類を作成し、提出期限を守ることで、スムーズな手続きを進めることができます。

社会保険の適用拡大に伴う対応は、企業にとって一時的な負担となるかもしれませんが、従業員の福利厚生を充実させる重要なステップです。適切な準備と対応を行い、法改正に対応することで、企業の信頼性と従業員の満足度を高めることを目指しましょう。

社会保険の適用拡大に向けて企業が活用できる支援制度

社会保険の適用拡大に伴い、多くの企業が新たな対応を迫られることになります。

適用対象者の増加により、企業の負担も大きくなるため、適切な支援制度を活用することが重要です。こちらでは、企業が社会保険の適用拡大にスムーズに対応できるようにするために活用できる支援制度について紹介します。

専門家活用支援事業

専門家活用支援事業は、社会保険の適用拡大に伴い、企業が直面するさまざまな課題に対して専門家の支援を受けられる制度です。社会保険労務士や税理士などの専門家が、適用対象者の把握や手続きのアドバイスを提供し、企業が円滑に対応できるようサポートします。

これにより、企業は法的なコンプライアンスを維持しつつ、従業員の福利厚生を強化できます。詳細は、お近くの年金事務所にご確認ください。

参考:全国の年金事務所|日本年金機構

よろず支援拠点

よろず支援拠点は、全国各地に設置された中小企業向けの相談窓口です。ここでは、社会保険の適用拡大に関する相談や情報提供、具体的な対策について無料でアドバイスを受けることができます。

経営改善や労務管理の専門家が在籍しており、企業の個別の状況に応じたサポートを提供します。詳しくは、下記よりご確認ください。

参考:よろず支援拠点

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規労働者のキャリアアップを支援するための助成金制度です。特に、パートタイム労働者や契約社員を正社員に転換した場合や、賃金を引き上げた場合に助成金が支給されます。

社会保険の適用拡大に伴い、労働者の雇用形態を見直す際にこの助成金を活用することで、企業の財務負担を軽減しつつ、従業員の待遇を向上させることができます。申請は都道府県労働局(ハローワーク)より行うことができます。

参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

中小企業生産性革命推進事業

中小企業生産性革命推進事業は、中小企業が生産性向上を目指して行う取り組みに対して支援を行う制度です。この事業では、ITツールの導入や業務プロセスの改善など、さまざまな施策を通じて企業の効率化を図ります

社会保険の適用拡大に伴う業務負担を軽減するためにも、これらの支援を活用し、生産性を向上させることが重要です。申請は中小企業生産性革命推進事業(中小機構)より行うことができます。

参考:中小企業生産性革命推進事業

これらの支援制度を積極的に活用することで、企業は社会保険の適用拡大にスムーズに対応できるようになります。

各制度の特徴を理解し、適切な支援を受けることで、企業の負担を減らし、従業員の福利厚生を充実させながら、企業の競争力を高めることができます。

【まとめ】社会保険の適用拡大に向けた準備を進めよう

2024年10月から施行される社会保険の適用拡大は、企業にとって大きな転換点となります。適用対象となる従業員の範囲が広がることで、企業は新たな義務や対応が求められます。

まずは、従業員の状況を正確に把握し、誰が新たに社会保険の適用対象となるのかを明確にしましょう。その上で、必要な対応方針を策定し、従業員への説明を丁寧に行うことが重要です。書類の準備や提出も怠らず、法令遵守を徹底しましょう。

専門家の支援や各種支援制度を活用することで、対応の負担を軽減することも可能です。今回の法改正を機に、企業のコンプライアンス体制を見直し、働きやすい職場環境の構築を目指していきましょう。

社会保険の適用拡大は企業にとっては一時的なコストや手間が増えるかもしれませんが、長期的には従業員のモチベーション向上や企業の競争力強化につながります。社会保険の適用拡大に向けた準備を進め、より良い企業運営を実現していきましょう。

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こんにちは。BackOfficeDB編集部です。 私たちは、管理部門に関する情報発信を専門にしています。 業務効率化や、各職種のキャリアプラン、スキルアップなど、管理部門の様々なお悩みにお答えします。