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健康経営とは、従業員の健康管理を重要な指針のひとつに掲げる経営戦略のあり方のことです。
少子高齢化によって労働人口が減少している中、従業員は重要な人的資本です。
従業員の健康に配慮することは「コスト」ではなく、今後の事業活動の成長のための「投資」と理解できます。
本記事では、近年注目を集めている健康経営の内容、健康経営の実施例、健康経営に取り組む時の流れなどを分かりやすく解説します。
働き方改革やワークライフバランスの充実など、価値観が大きく変化する現代において、「経済社会における自社の魅力を最大化したい」と考えている経営者の方や、人事部門・総務部門の方は、ぜひ最後までご一読ください。
健康経営とは、企業が雇用する従業員等の健康管理を経営的な視点で捉えて戦略的に実践することです。
健康経営は、日本再興戦略・未来投資戦略に位置付けられた「国民の健康寿命の延伸」に関わる国策的な取り組みのひとつに掲げられています。
従来「従業員それぞれの健康管理は、あくまでも本人が管理する自己責任のものであり、企業側は従業員自身の健康管理に関与する必要はない」という考え方が普及していました。
つまり、従業員に対して健康診断を受けさせたり、安全な職場環境を提供するために諸施策を実施することは、企業にとって「コスト」でしかありませんでした。
しかし、労働人口の減少や効率的な人材育成などの観点から、近年、人的資本に対する考え方が大きく転換しています。
従業員の健康に配慮することは、企業にとって「投資」です。従業員の健康を維持・向上させることに成功すれば、生産性向上・業績アップ・従業員のモチベーション向上・組織の活性化・企業価値向上などのメリットだけでなく、優秀な人材を確保しやすくなるというリターンを得られます。
以上をまとめると、健康経営は、従業員の健康管理・健康増進を投資と理解した前提で実施する経営戦略的な諸施策だといえるでしょう。
健康経営が重要な経営戦略に位置付けられるようになった、背景・経緯について解説します。
健康経営が注目されるようになった重要な背景として、生産年齢人口の減少と急速な高齢化が挙げられます。
日本の人口データは、今後30年で以下のように推移すると予測されています。
2020年 | 2050年 | |
---|---|---|
人口総数 | 12,614万6千人 | 10,469万人 |
生産年齢人口 | 7,509万人 | 5,540万人 |
高齢化率 | 28.6% | 37.1% |
65歳以上人口 | 3,602万人 | 3,888万人 |
参考:令和4年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況令和5年度高齢社会対策|令和5年6月内閣府
ここから分かるように、今後30年で日本の総人口は約20%減少、特に生産年齢人口が約30%減少すると予測されています。
その結果、高齢化は急激に加速し、人口の約40%が高齢者になることも想定されます。
このような状況が継続すると、生産年齢人口の減少が原因で従来通りの経済活動を維持することが困難になりかねません。
そこで、健康的な状態で長期間就業できる人口数を増やすための対策が急務であり、健康経営を軸とした諸施策が必要であると考えられます。
実際、日本の平均寿命は今後30年で、以下のように推移するとも予測されています。
2020年 | 2050年 | |
---|---|---|
男性の平均寿命 | 81.6歳 | 83.5歳 |
女性の平均寿命 | 87.7歳 | 90.3歳 |
健康経営の推進について|令和6年3月経済産業省 商務・サービスグループヘルスケア産業課
ただ寿命を伸ばすだけではなく、健康を維持できる期間を伸長すれば、年齢・性別に関わらず職業生活を営む人口が増加し、生産年齢人口の減少課題を克服できるでしょう。
健康経営が求められるようになった要因として、企業側が担うべきリスクマネジメントの範囲が拡大している点が挙げられます。
そもそも、従業員を雇用する企業には、安全配慮義務が課されています。安全配慮義務とは、企業が労働者の安全・健康に配慮する義務のことです(労働契約法第5条)。
たとえば、工場内での作業中に従業員が危険に晒されないように、ヘルメットや防護服などを配布することや、ハラスメントトラブルによって従業員が精神疾患を罹患しないように定期的に研修会を実施したり社内に専門カウンセラーを配備したりすることなど、さまざまな事項が含まれます。
安全配慮義務の範囲を決定する際には、各企業が抱える個別事情だけではなく、組織に対する社会通念的な価値観や一般的な基準も考慮されるのが実情です。
そして、企業にとっての従業員の位置付けは「コスト」から「投資対象」に変化しています。
つまり、従業員の健康・安全を脅かすような状況から守る取り組みを強化すれば、従業員自身だけではなく、企業にもメリットが還元されるという構造になるということです。
そのため、労働者の心身の健康を維持・改善することを目的とする健康経営に力を入れる動きが強いと考えられます。
仕事や人生に対する多様な価値観が普及してきたことも、健康経営に関する取り組みを後押しする要因になっています。
現在、「仕事が生活の中心」「働いてお金を稼ぐことが正しい」というステレオタイプな価値観は崩れています。
各人が抱える個別的な事情や人生プランに対する考え方を前提に、仕事とプライベートを両立させる柔軟な働き方が志向される傾向が強くなっているのが実情です。
たとえば、家事や育児に注力する時間、家族と共に過ごす時間、趣味に使う時間を十分に確保するには、現実的な就労時間の範囲内で効率的に仕事を進める必要があるでしょう。
また、仕事だけに忙殺されると、心身が疲弊してプライベートな時間や人生そのものを充実して過ごすことができません。
近年、国策として推進されている働き方改革では、ワークライフバランスの充実を目指す柔軟な働き方が重視されています。それを実現する方策のひとつとして、健康経営は重要な経営手法に位置付けられています。
今後、日本の社会保障給付費は以下のように推移すると予測されています。
2025年 | 2040年 | |
---|---|---|
社会保障給付費総額 | 140兆円 | 190兆円 |
対GDP比 | 21.8% | 24.0% |
医療費 | 47.8兆円 | 66.7兆円 |
介護費 | 15.3兆円 | 25.8兆円 |
参考:健康経営の推進について|令和6年3月経済産業省 商務・サービスグループヘルスケア産業課
要介護者の増加にともなって、公的保険でまかなわれる社会保障の負担額が約35%増加します。すると、企業が負担する社会保障費も大幅に増額されて、プライマリーバランスを意識した健全な事業活動が困難になりかねません。
社会保障費の負担増が原因で設備投資等に資金を投入できないと、日本の経済社会が閉鎖的になってしまいます。
そこで、従業員の健康を維持するために積極的に投資をすることは、医療水準の高度化や公的保険の範囲にとらわれない、産業発展の促進と並ぶ重要な施策に位置付けられます。
国策及び各企業の経営方針として健康経営の考え方を取り入れることは、社会保障給付費の減額による日本経済の発展に資する重要施策といえるでしょう。
健康経営に役立つ取り組み内容を、具体的に解説します。
まず、従業員の健康状態を把握するには、健康診断の受診を徹底するのが最優先です。(労働安全衛生法第66条第1項)
会社側には、従業員に定期健康診断を受けさせる義務が課されていますが、この受診率を100%に近付けるために、従業員が受診しやすいスケジュールを定期健康診断の実施日、健康診断の受診について丁寧に従業員側とコミュニケーションを図るなどの工夫を凝らしましょう。
また、職務命令として健康診断の受診を促し、健康診断を受診しなかった時には懲戒処分の対象になり得ることを通知するのも選択肢のひとつです。
さらに、健康診断を実施した後の再検査やセカンドオピニオンを受けさせることについては会社側に義務は課されていませんが、従業員の健康状況をスピーディーに把握して療養を促すという意味では、積極的に再検査を受けるような取り組みに力を入れるべきだと考えられます。
次に、健康診断受診以外の場面でも、従業員に対する保健指導を徹底する取り組みも不可欠です。(労働安全衛生法第66条の7)
保健指導とは、健康に関する知識・情報を提供したり、病気等の予防や健康の促進に役立つアドバイスを実施する活動のことです。
たとえば、従業員の健康に対する意識を高めるための保健指導として、以下の方法が挙げられます。
健康診断を実施するタイミングや頻度、保健指導の内容は、従業員の年齢層や習慣などの個別具体的な事情を考慮して決定するのが適切です。
社内の日々の状況を確認したうえで、従業員の健康に役立つような方法で保健指導等を徹底しましょう。
業務負担が重かったり、職場の人間関係が上手くいかなかったりすると、うつ病などを発症して健康な状態で労働者が自分自身の能力を発揮できなくなってしまいます。
そこで、従業員の心の健康を守るための施策として、ストレスチェックを有効活用するのがおすすめです。
ストレスチェックとは、労働者にストレスに関する選択回答式の質問票へ回答させて、その結果を集計・分析することによって、労働者自身のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡易式の検査のことです。
労働者が自分のストレス状態を把握できれば、ストレスが溜まらないように工夫をしたり、医師の面談を受けて助言をもらったりするなどの対策に踏み出すことができます。
また、労働者が抱えているストレス状況を会社側が理解することによって、仕事の軽減や部署異動、職場環境の改善などの措置にも踏み出しやすいでしょう。
つまり、ストレスチェックは、うつ病などのメンタルヘルスの不調を未然に防止するための仕組みであると考えられます。
2015年12月の労働安全衛生法の改正によって、50人以上の労働者を雇用する事業所では、毎年1回全ての労働者に対してストレスチェックを実施することが義務付けられています(契約期間1年未満の労働者、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の3/4未満の短時間労働者を除く)。(労働安全衛生法第66条の10)
なお、ストレスチェックを実施する際には、事前に社内の衛生委員会等においてストレスチェックの運用方針を明確化したうえで、ストレスチェックの実施者・面談指導を担当する医師を配備するなどの作業が必要です。
厚生労働省HPの「ストレスチェック制度導入マニュアル」をご参考のうえ、適切なタイミング・方法でストレスチェックを実施してください。
健康経営に向けた取り組みを実施する際には、各労働者が仕事や人生・生活のあり方についてどのような希望を有しているかに配慮する必要があります。
企業側が労働者に対して仕事を押し付け、各労働者のプライベートが犠牲になるようなことがないように、ワークライフバランスの充実を目指しやすいような就労環境・体制を整備してください。
たとえば、ワークライフバランスの維持に役立つ体制として、以下のものが挙げられます。
など
ワークライフバランスの充実を目指す制度を設ける時には、事前に従業員サイドに対してヒアリングを実施することをおすすめします。
従業員からのニーズが高い制度を導入すれば、高い利用率を期待できるうえに、健康経営の効果は高まるでしょう。
健康経営に基づく施策で忘れてはいけないのが、従業員が普段仕事をする職場環境への配慮です。
たとえば、職場の雰囲気が暗かったり、部署内でのコミュニケーションが滞っていたりすると、前向きな気持ちで仕事に打ち込むことができず、場合によってはメンタルヘルスの問題を生じかねないからです。
そのため、企業側としては、事業所や部署内の個別事情を丁寧に勘案しながら、従業員同士がコミュニケーションを図ることができるような風通しの良い職場環境を作り出す工夫が必要だと考えられます。
以下の施策を参考にしつつ、自社内で採用できそうな方法を取り入れてください。
など
健康経営の施策には、さまざまな内容が含まれます。
そのため、「あれもこれも」と欲を出してしまうと、全ての施策が中途半端になって、健康経営戦略の効果が十分に発揮されないリスクが生じかねません。
ここでは、健康経営に基づく施策に取り組む時の一般的な流れについて解説します。
まずは、健康経営を実施する目的やビジョンを明確化するのがファーストステップです。
なぜ健康経営に基づく戦略を実施するのか、健康経営について具体的にどのような目標を設定するのか、各目標に対してどのような施策を検討しているのか、社内のどの部門が健康経営に基づく施策を担当するのかなど、可能な限り健康経営に基づく施策のスケジュールやプランを具体化しましょう。
健康経営に基づく取り組みの方向性が固まったら、その旨を従業員に対して周知します。
健康経営に基づく諸施策は、従業員側の協力がなければ成果を上げることができません。
社内周知の方法については、全体会議・全体朝礼などのタイミングで代表者や部門が社員に向けて健康経営の取り組みについて説明をしたり、社内報やメールなどで周知するのも選択肢です。
なお、健康経営の取り組みの中で何が効果的なのかについては、従業員側からの意見を聴いた方が成果を上げることができる可能性が高いです。
可能であれば、健康経営に関する取り組み内容を決定する前に、ヒアリングの機会を設けたり、社内アンケートなどを実施することをおすすめします。
また、複数の課題を並列的に取り扱うのではなく、取り組むべき課題に優先順位を設けることもご検討ください。
健康経営に基づく取り組みを実施した後は、定期的に結果・データを収集してください。
なお、健康経営に関する取り組みは、短期的に成果が得られないことが多いです。
健康に対する意識が変革されたとしても、行動や生活習慣の改善に繋がるにはある程度長期間を覚悟しなければいけません。
健康経営は、いきなり抜本的な改善結果が得られるものではありません。
そのため、健康経営に関する取り組みを実施する際には、定期的にデータを収集したうえで、取り組み内容を臨機応変に改善していく柔軟さが不可欠です。
各施策に対する従業員からの評判を確認したり、健康経営エキスパートアドバイザーなどの外部専門家の意見を参考にしながら、従業員の健康意識を効率的に改善できるような啓蒙活動に力を入れていきましょう。
ひと昔前までは、従業員の健康維持・改善に配慮した取り組みを実施することは「コスト」と捉えられていました。
では、なぜ現在において、健康経営に取り組む必要があるのでしょうか。健康経営に取り組むメリットについて解説します。
健康経営への取り組みに力を入れている企業は、現在働いている従業員だけでなく、外部からの評判も良くなります。
たとえば、自分自身の健康維持を企業がサポートしてくれる状況が整っていれば、現在雇用関係にある従業員の職場満足度は高まります。
その結果、離職率が低下して定着率が向上するので、事業活動の効率性がアップしたり、従業員がスキル・ノウハウを習得しやすくなったりするでしょう。
現在、健康経営は国を挙げて推進されている戦略のひとつです。
そこで、健康経営に踏み出すインセンティブとして、健康経営に関する取り組みに力を入れている企業や、健康経営によって一定水準の成果を出している企業に対して、補助金制度や支援金制度が用意されています。
たとえば、健康経営に関連して国が設けている補助金制度・支援金制度として、以下のものが挙げられます。
その他、自治体ごとに、健康経営に熱心に取り組む事業者を後押しするサポート制度等を設けている場合があります。
詳しくは「地域の取り組み(ACTION!健康経営)」をご確認ください。
参考:国の取り組み - ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
健康経営に力を入れている企業は、社会的評価やブランドイメージを高めることができます。
従業員の健康に配慮した取り組みや多様な働き方推進に力を入れていることは、社会的に好印象で受け止められるでしょう。
まず、社会的評価が高まることは、企業の株価上昇に繋がります。これによって、融資を受けやすくなったりするので、新規事業や設備投資等に積極的にチャレンジしやすくなります。
また、ブランドイメージの向上により、就職市場・転職市場からの印象も高まるというメリットが得られます。
企業の健康経営への取り組み状況は、6割の求職者がの就職先を決める際の要素としているのが実情なので、人材不足の課題をクリアし、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。
参考:健康経営のメリット - ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
健康経営に関する取り組みには、デメリット・注意事項も存在します。
健康経営に関する取り組みには「短期的に成果が出にくい」「成果を評価しにくい」という性質があります。
たとえば、「食生活に対する意識の向上」というテーマを掲げてさまざまな取り組みを実施したとしても、啓蒙活動がどの程度浸透したか、食生活に対する意識変革によって従業員にどれだけのメリットが生じたのかを算出するのは困難です。
そもそも、健康経営に関する取り組みは、長期的な視点で労働者の意識や生活のあり方を改善し、健康な状態を作り出すことを目的としたものが多いです。
そのため、健康経営に基づく諸施策を実施する際には、目標を設定して施策を開始した後も、定期的に従業員向けのヒアリング・アンケート等を実施し、都度軌道修正をしながら臨機応変かつ継続的な姿勢を忘れないことが重要だと考えられます。
健康経営に関する取り組みは、日々の仕事内容とは直接関係ないように見えることが多いです。
そのため、どれだけ企業側が熱心に取り組みを進めようとしても、従業員にうまく浸透しないリスクが生じます。
また、従業員の中には、「会社から健康について面倒な指摘・指導をされたくない」などと受け取る人も少なからず存在するはずです。このようなタイプの従業員は、健康経営に関する取り組みが実施されることを逆に負担・ストレスに感じるでしょう。
したがって、健康経営への取り組みをスタート・継続する時には、経営陣と従業員との間で丁寧なコミュニケーションを継続して健康経営に対する理解を得ることが重要です。
取り組み開始時に広報をするだけではなく、定期的に社内報などで成果を報告するなどの工夫をしながら、社内全体で健康経営に向けた意識を醸成していきましょう。
健康経営に対する社会的な機運を醸成するには、健康経営に関する各種顕彰制度を通じて優良な健康経営に取り組む法人を可視化し、社会的な評価を受けることができる環境を整備することが重要だと考えられます。
ここでは、健康経営に対するモチベーションを高めるための各種認定制度について解説します。
康経営銘柄は、東京証券取引所に上場している企業から健康経営に優れたものを選定する認定制度のことです。
健康経営銘柄企業には、健康経営を普及していくアンバサダー的な役割や、健康経営を行うことによって生じる生産性・企業価値への効果を分析したり、ステークホルダーに対する積極的な情報発信が求められます。
健康経営銘柄に認定されるためには、毎年8月~10月頃に実施される健康経営度調査に回答する必要があります。
そして、以下の観点からの総合的な評価に基づき、健康経営銘柄に認定されるかが最終的に決定されます。
など
長期的な視点からの企業価値向上を重視する投資家にとって、健康経営に力を入れている企業は有力な投資対象になり得るでしょう。
健康経営優良法人制度とは、健康経営の取り組みを実践している企業を見える化することによって、従業員・求職者・関係企業・金融機関などから社会的に高い評価を受けられる環境を整備を目的とする顕彰制度のことです。
認定機関は日本健康会議です。健康経営優良法人制度は、大規模法人部門と中小規模法人部門の2つに大別されます。
そして、健康経営優良法人に認定された大規模法人のうち、特に優れた実績を誇る上位500企業が「大規模法人部門(ホワイト500)」として表彰されます。
大規模法人部門において、健康経営優良法人やホワイト500に認定された企業には、グループ会社全体・取引先・地域の関係企業・顧客・従業員の家族など、健康経営の考え方を社会的に普及していくトップランナーとしての役割が求められます。
健康経営の考え方を全国的に浸透させるには、地域の中小企業にまで取り組みを波及させることが不可欠です。
そこで、健康経営優良法人制度では、中小規模法人のうち、特に健康経営に力を入れている企業を健康経営優良法人に認定するとともに、トップ500の企業を「ブライト500」として表彰し、中小規模法人の健康経営に取り組む動機付けにしています。
健康経営優良法人及びブラント500に認定された中小規模法人には、自社の健康課題に応じた取り組みを実践すること、地域における健康経営の拡大のために取り組み事例等を積極的に発信する役割が求められます。
最後に、健康経営に関する実際の取り組み事例を具体的に紹介します。
健康経営についてどのような取り組みを実施するかは企業の実態によって異なりますが、自社における健康経営施策を策定・改善する際にお役立てください。
サツドラホールディングス株式会社は、地域医療対応型のドラッグストアチェーン事業を展開するグループ会社です。
「健康で明るい社会の実現に貢献する」という企業理念のもと、以下の諸施策を実施したことが評価されて、「健康経営優良法人2023年」に認定されました。
参考:経営課題から戦略マップ作成、女性の健康への着眼と行動変容まで~実践レポート⑨ - ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
トリニティ株式会社は、スマートフォンアクセサリーなどの企画・製造・販売事業を展開する企業です。
以下のように、女性の健康問題への理解を促す施策に積極的に取り組んだ結果、健康経営優良法人2023年の「ブライト500」に認定されています。
参考:「女性の健康課題」は高いヘルスリテラシーから~実践レポート⑧ - ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
協栄金属工業株式会社は、金型設計製作・金属加工・組立検査などの事業を展開する企業です。
以下の諸施策を継続する点が評価されて、健康経営優良法人のブライト500に4年連続で認定される実績を誇ります。
など
参考:地域の雇用を守る、働く心に着眼した健康経営~実践レポート⑦ - ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
大橋運輸株式会社は、法人運送や生前整理・遺品整理などの事業を展開する企業です。
高齢化率が高い愛知県瀬戸市に所在することもあって、社員が定年後も健康で暮らせるために、2022年に健康経営理念「現役時代に良い健康習慣を身につけ定年後も健康で暮らす」を掲げて、以下のような取り組みを進めています。
参考:地域と連携して取り組む、地方中小運輸企業の「健康経営」~実践レポート⑥ - ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
積水化学工業株式会社は、住宅、管工機材、住宅建材・建材用の化成品、高機能プラスチックなどを中心に製造する大手樹脂加工メーカーです。
2021年及び2022年に健康経営銘柄に選出、2024年まで8年連続で健康経営優良法人大規模法人部門(ホワイト500)に認定されています。
積水化学工業株式会社では、「従業員は社会からお預かりした貴重な財産である」という考えに立脚したうえで、以下の健康管理施策に取り組んでいます。
参考:グループ一体で進める健康経営~実践レポート③ - ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
従業員は人的資本であり、企業にとって貴重な資産です。
そのため、優秀な人材を確保して、長期的にスキルを磨いてもらうためには、健康経営に力を入れた取り組みが不可欠だと考えられます。
また、健康経営には、従業員の心身の健康を守るだけではなく、企業のブランド価値を高めたり、事業活動の効率化を達成するなどのメリットをもたらすという側面があることも忘れてはいけません。
健康経営は企業側・労働者側双方に大きな恩恵をもたらすものである以上、健康経営に基づく施策を上手くPDCAサイクルに取り込んでいくべきでしょう。