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各企業には「専門知識がなくて問題を解決する方法が分からない」「法律関係の業務や手続きを効率化させたい」と、それぞれ抱える悩みがあるでしょう。これらの解決方法の一つに「顧問契約」があります。
顧問契約とは、弁護士や税理士、コンサルタントといった専門家に依頼し、知識やノウハウを自社に取り入れる方法です。
本記事では、顧問契約の概要をはじめ、契約するメリットやデメリット、契約時の流れや注意点を解説します。
顧問契約とは、特定の業務知識やスキルをもつ専門家と契約を結び、継続的な企業経営のサポートを受けることをいいます。
顧問契約の方法や依頼できる専門家の種類は、下記のとおりです。
顧問契約の方式は、依頼する専門家や業務内容によって以下3種類から選びます。
委任とは、民法643条で以下の通り定義されています。法律関係の業務を依頼する場合は、税理士や弁護士などと委任契約を結びます。
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
引用:民法643条
準委任契約は、民法656条にて以下の通り定義されています。経営戦略のサポートをはじめ、法律が関与しない業務を委託する際は、準委任契約をおこないます。
準委任は、法律行為でない事務の委託について準用する。
引用:民法656条
請負とは、民法632条で以下の通り定義されています。
委任契約や準委任契約では、成果に関係なく業務をおこなった時点で報酬の支払いが発生します。一方請負契約では、仕事が完了したときの成果に応じて報酬を支払います。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用:民法632条
顧問契約で依頼できる専門家は、主に以下の5つです。自社が解決したい課題に合わせて選びましょう。
弁護士に依頼すれば、法的トラブルの予防・対処をはじめ、多岐にわたるサポートが受けられます。報酬相場は月額3〜5万円で、具体的には以下4つの役割を担います。
司法書士は、登記業務をはじめ、事業承継や内部統制に関するアドバイスができます。報酬相場は月額1〜5万円ですが、依頼したい内容によって金額が変動します。
具体的な業務内容は、以下の通りです。
税理士は、税務処理や経理のサポートに特化しています。報酬相場は月額1〜5万円で、会社や税理士事務所の規模、依頼する業務内容によって大きく変動します。
具体的には、以下3つの業務をおこないます。
そのほか、年末調整や給与計算の実施、節税対策のアドバイスも可能です。
社会保険労務士(社労士)は、人事や労務管理の専門家です。人材採用から退職までのさまざまな手続き・トラブルに対応できます。報酬相場は月額2〜17万円と、会社の従業員数によって大きく変動します。
主な業務は、以下の通りです。
経営コンサルタントは、企業が抱える経営戦略やマーケティングの課題解決に向けて、提案やサポートをおこなう職業です。報酬相場は月額20〜50万円で、会社の規模によって変動します。
主な業務内容は以下の通りです。
解決したい課題が明確であれば、ITや人材育成など特定の知識・ノウハウをもつコンサルタントに依頼する方法もあります。
顧問契約の報酬形態は、以下3つに分けられます。
定額型では、月額固定で報酬を支払います。経営戦略の改善や継続的な業務代行など、長期的なサポートが必要な場合に用いられる方法です。
タイムチャージ型は、専門家の稼働時間に応じて月額が変動する仕組みです。報酬額は顧問の実績やスキルによっても変わります。
調査や文書作成を単発で依頼したい、短期プロジェクトに関わってほしい場合は、時間単位で計算できるタイムチャージ型が適しています。
成果報酬型は、顧問の業務によって成果が得られた場合にのみ、報酬を支払う方法です。
稼働時間ではなく、顧問が関わったビジネスにおける利益の一部を報酬額として算出します。法的トラブルの解決や事業承継の成功といった、主に成果が明確な案件で用いられます。
顧問契約をすると、以下3つのメリットが得られます。
課題を解決するために必要な知識やスキル、ノウハウを自力で習得するには、多くの時間や労力がかかってしまいます。
しかし、顧問契約で専門家に依頼すれば、課題解決に向けて迅速に対処できます。依頼できるジャンルは、人事労務や資金調達、営業やマーケティングなどさまざまなので、課題を明確にしたうえで専門家を選びましょう。
顧問契約の場合、専門家と自社の付き合いが長くなり、自社の経営方針やシステムを把握してもらえます。そのため、課題解決や改善に向けて、適切なアドバイスをしてくれるでしょう。
また、法令の改正や助成金の情報など、最新情報を随時提供してくれるのもメリットです。
たとえば、弁護士と顧問契約をおこなえば、会社の体制整備とリスク調査によるトラブル防止につながります。万が一トラブルが発生しても、急遽専門家に依頼したり、事情を説明したりする手間がかからないのもメリットです。
顧問契約には、以下2つのデメリットがあります。
顧問契約では、長期間の契約が前提となるため、一度締結すると解約が難しくなります。短期間のプロジェクトでの業務を依頼したい場合は、業務単位で契約できる「業務委託契約」も検討すると良いでしょう。
定額型の場合、固定の顧問料を毎月支払うことになります。すると、利用頻度が少ない場合、かえってコストがかかってしまいます。
まずは、依頼したい内容・作業量を確認し、これらが少ない場合にはタイムチャージ型や成果報酬型を採用している専門家を探しましょう。
顧問契約書では、以下7項目を記載するのが一般的です。
まずは、顧問契約書のタイトルを記載します。例えば、弁護士に依頼する際は「法律顧問契約書」とするなど、依頼する内容を含めたタイトルにも変更可能です。
契約当事者である相手の氏名または事業所名と、自社の企業名を正式名称で記載します。そして、本書で契約を締結する旨を記載します。
依頼する業務内容を具体的に記載します。顧問先によっては、特定の業務が基本契約に含まれていなかったり、オプション料金が発生したりする場合もあります。
本契約で受けられるサービスの範囲を明記し、トラブル防止に努めましょう。
顧問契約では、契約書に記載がなければ報酬請求ができないと民法648条で定められています。そのため、契約書にきちんと顧問料の金額・支払日・支払方法を記載しましょう。
顧問料以外に費用が発生する可能性があれば、金額の決め方や支払い条件も決めておきます。
顧問契約の期間や更新方法を決めます。
1年契約で自動更新とするケースが一般的ですが、3ヵ月程度の試用期間を設ける場合もあります。もし単発で依頼するなら、予定通りにプロジェクトが進まなかった場合を想定し、契約延長できるかも相談しましょう。
民法651条により、顧問契約を含む委任はいつでも解約できます。ただし、顧問側は解約前までの報酬を得る権利があり、解約時期が不利であれば損害賠償の請求も可能です。
法的トラブルに発展しないよう、途中解約の方法や時期・顧問料の処理方法、解約条件を丁寧に記載しましょう。
ここまでの内容を丁寧にすり合わせても、トラブルに発展するケースがあります。万が一に備えて、第一審をおこなう管轄裁判所を決めておきましょう。
顧問契約は、以下の3ステップで完了します。
まずは、当事者間で契約内容を細かく決めましょう。専門家に相談する際は、自社の状況や活動内容が分かるような登記・確定申告書・パンフレットなどの書類を持参するとスムーズです。
相談時に確認すべき項目は、主に以下の通りです。
契約内容に納得できれば、契約書作成に移ります。一般的には、依頼先の専門家が用意する顧問契約書の書式に沿って作成します。
契約書の最終確認をおこないます。話し合った内容がきちんと反映されているかだけでなく、不明点や訂正したい箇所がないかもあわせてチェックしましょう。問題がなければ契約締結となります。
顧問契約を成功させるには、以下2つのポイントに気をつけましょう。
まずは、自社の課題やゴールを明確にしましょう。依頼すべき業務内容が明らかになるので、専門家を選ぶ際もスムーズです。
もし社内で解決できる可能性がある、もしくは別の方法が最適だと分かった場合は、顧問契約の費用や労力を削減できます。
一定期間の付き合いとなる顧問契約では、専門家との相性も重要です。
契約内容を相談する際は、自社が属する業界や職種への理解があるか・質問や相談に対するレスポンスが早いかをきちんと確かめましょう。
今回は、顧問契約を結ぶメリットやデメリット、契約時の流れや注意点を一挙解説しました。
顧問契約では、自社にない専門知識やノウハウをすぐに取り入れられるので、社内体制が整い事業をスムーズに進められます。
しかし、顧問料が発生するため、本当に顧問契約すべきなのか事前に見極める必要があります。
自社の課題を明確にしたうえで、特定の知識やノウハウを取り入れたい場合や、法律業務を代行したりアドバイスをもらったりして効率化させたい場合には、顧問契約がおすすめです。