管理部門・バックオフィスのお役立ち情報メディア

ワーク・エンゲージメントとは?企業へのメリットと高め方を解説

お気に入りに追加
お気に入りに追加
会員の方のみご利用になれます。
お気に入りに追加した記事は、
マイページに一覧で保存できます。
ワーク・エンゲージメントとは?企業へのメリットと高め方を解説

企業活動の成長を支える鍵になるのが「従業員のモチベーション」です。

どれだけ設備投資や業務効率化を実現したとしても、そこで働く従業員のやる気や誇り、前向きな気持ちがなければ、企業活動の活性化は見込めません。

そして、従業員のモチベーション維持・向上に資する考え方が「ワーク・エンゲージメント」と称される概念です。

企業側が各従業員のワーク・エンゲージメントに上手くフォーカスできれば、活力溢れる組織作りに成功するでしょう。

本記事では、ワーク・エンゲージメントの構成要素やワーク・エンゲージメントの高め方、ワーク・エンゲージメント向上が企業にもたらすメリットなどについて分かりやすく解説します。

BEET

ワーク・エンゲージメントとは?

ワーク・エンゲージメントとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を示す用語のことです。

ワーク・エンゲージメントが示す心理状態は、持続的かつ全体的な仕事に対する志向性です。

つまり、「今日は上司に怒られたからやる気が出ない」「最近新しいプロジェクトを任されたからモチベーションが上がっている」というような、特定の出来事や行動をきっかけとした一時的な心理状態の変化を示すものではありません。

あくまでも、仕事全体に関するモチベーション・やる気のレベルを反映した、中長期的かつ包括的な働く意欲に関する指標です。

そして、ワーク・エンゲージメントを適切に把握する際には、ワーク・エンゲージメントに類する概念との棲み分けに注意する必要があります。

ここでは、ワーク・エンゲージメントと以下3つの考え方の違いについて解説します。

  • バーンアウト
  • ワーカホリズム
  • 職務満足感

バーンアウト

バーンアウトシンドローム(燃え尽き症候群)とは、高いモチベーションを維持していた人な何かしらのきっかけで突然やる気を喪失してしまう症状のことです。医学的には、うつ病の一種に分類されます。

仕事におけるバーンアウトシンドロームは、それまで仕事に対して熱意やエネルギーを注ぎ込んでいた人が、突然モチベーションを失って仕事に取り込むことができなくなった状態として発現します。

ワーク・エンゲージメントが仕事に対する充実した心理状態であるのに対して、バーンアウトはその真逆を意味する状況です。

以下のような状況にある従業員は、バーンアウト状態におちいっている可能性が高いので、企業側も丁寧な姿勢で当該従業員に向き合う必要があります。

  • 今まで無かったようなミスを繰り返す
  • 職場の人間との間で適切に報連相をできなくなる
  • 明らかに職場での発言量や積極性が欠如している
  • 遅刻や欠勤が増える
  • 業務中にもかかわらず眠そうにしている
  • 同僚などとの関わりを減らそうとしている

ワーカホリズム

ワーカホリズムとは、衝動的な感情が原因で強迫的に仕事をする状態のことです。仕事中毒・ワーカホリックと表現されることもあります。

ワーク・エンゲージメントもワーカホリズムも、一生懸命仕事に打ち込んでいる状況は同じです。ただし、両者は仕事に打ち込む動機が全く異なります。

ワーク・エンゲージメントは、仕事に対する前向きなモチベーションから積極的・能動的に働く場合を示すものです。

これに対して、ワーカホリックは、仕事を離れていと罪悪感や不安感が募るため、これを払拭するために嫌々働かざるを得ないネガティブな状況を意味します。

以上を踏まえると、ワーク・エンゲージメントとワーカホリックは表面上表れている現象自体に差異はないものの、従業員の内面・精神状態に大きな違いがあるといえます。

従業員にワーカホリズムの疑いがある場合、特別な対処をすることなく仕事を続けさせるとバーンアウトやうつ病の状態に陥る危険性が高いので、当該従業員に対して丁寧なケアを心がけましょう。

職務満足感

職務満足感とは、職場の人間関係・給与条件・キャリア展望・福利厚生の内容などの具体的な職場生活に対する満足度を示す尺度のことです。

職務満足感とワーク・エンゲージメントはどちらも就労に対するポジティブな感情を示す点で似ています。

ただし、ワーク・エンゲージメントが仕事全体に対するモチベーションの高さを示すのに対して、職務満足感は会社組織や雇用条件などの従業員を取り巻く外的要因に対する満足感を指す点で異なります。

企業として従業員の職務満足感を高める施策を実施することも大切ですが、従業員の仕事に対する積極的な姿勢を促すためには、ワーク・エンゲージメントに配慮した工夫・支援体制を整える方が優先されるべきでしょう。

参考:白書、年次報告書|厚生労働省

ワーク・エンゲージメントの3要素

ワーク・エンゲージメントは、オランダのユトレヒト大学のSchaufeli教授らが提唱した概念で、以下3つの要素で構成されると考えられています。

活力

活力とは、仕事から活力・やる気を得ることです。

仕事から活力を得ている状態になると、その活力を再び仕事に還元できるので、ワーク・エンゲージメントが高まった好循環を作り出せるでしょう。

また、誰でも仕事中にミス・失敗・挫折にぶつかるものです。充分な活力があれば、少しくらいの壁があっても心が挫けることなく仕事に対するモチベーションを維持しやすくなります。

熱意

熱意とは、自分の仕事に対する誇り・熱量のことです。

自分の仕事を好きなほど、従業員が仕事に対して積極的な姿勢を維持しやすくなります。その結果、さまざまなスキルを習得できたり、幅広いキャリア選択肢ができることに対して希望が生まれるので、ワーク・エンゲージメントが高まります。

さらに、熱意溢れる従業員を雇用することは企業にとってもメリットが大きいです。積極的な営業活動や商品開発、その他仕事上のさまざまなアイディアが出てくるので、企業成長に貢献してくれるでしょう。

没頭

没頭とは、仕事に対する集中度のことです。

仕事に対して没頭するほど、業務の効率性やスキルの習熟度は高まります。スキルや技能の獲得は従業員を前向きな気持ちにしてくれるでしょう。

また、業務上のミスは集中力を欠いた状況で発生することが多いです。仕事に没頭できると従業員のミスが減って業務効率性が向上するので、会社にとってもメリットが大きいと考えられます。

参考:白書、年次報告書|厚生労働省

ワーク・エンゲージメントが重要視されている背景

ワーク・エンゲージメントが注目されるようになった背景・経緯は、次のことが挙げられます。

厚生労働省の注目

日本経済が抱える課題を克服する目的から、現在国策の一環として労働環境に対するさまざまな施策が実施されています。

そのひとつとして、職場における従業員の働きやすさの向上が目指されています。従業員が働きやすいと感じる職場環境を作り出すことに成功すれば、人材確保に成功し、企業活動はますます活発になるからです。

そして、「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」(厚生労働省HP)において、ワーク・エンゲージメントを切り口とした分析が公開されました。

これがきっかけで、ワーク・エンゲージメントに注目した従業員へのアプローチや企業経営の立て直しが重要視されるようになっています。

ISO30414への関心

ISO(International Organization for Standardization)とは、スイスジュネーブの国際標準化機構のことです。商取引をめぐるさまざまな事項について、遵守が推奨される基準・国際規格などを定めています

そして、ワーク・エンゲージメントに関連する基準として、ISOが定めたのがISO30414です。ISO30414は、人的資本の情報開示に関するルールのことで、各企業が抱える人的資本に関する情報を財務情報等と同列の重要な情報と位置付けて、社内外への公表を求めています。

ISO30414の基準に従って、人的資本の情報を定量的・定性的に公表するには、企業に雇用される従業員の情報を適切に把握する必要があります。その際には、ワーク・エンゲージメントなどの諸基準が参考にされているのが実態です。

このように、ワーク・エンゲージメントは、ISO30414の要請を満たすために活用される基準としても効果的なものです。

人的資本情報開示を適切に実施する企業には、多様な人材や投資家が集まるので、更なる企業成長を見込めるでしょう。

労働人口の減少

現在の日本は高齢化が進み、労働人口が減少している状況です。そして、労働人口の減少は今後数十年続くことが予想されています。

つまり、各企業が事業活動の現状維持・向上を目指すためには、労働人口の減少及び人材確保の課題に向き合わなければいけないということです。

優秀かつ多様な人材を確保しなければ、激化する競争社会で事業活動を継続するのは困難になりかねません。

ワーク・エンゲージメントは、従業員の働きやすさを示す指標として有用なものです。

ワーク・エンゲージメントが高い従業員が多いということは、働きやすい職場環境が整っているということであり、働きやすく意欲的な組織風土の企業には多くの人材が集まってくるでしょう。

ワーク・エンゲージメントが高い企業のメリット

ワーク・エンゲージメントに配慮した施策を実施すると、従業員側だけではなく企業側にもさまざまなメリットが生じます。

ここでは、ワーク・エンゲージメントが高い企業が得られる4つのメリットについて解説します。

離職防止

ワーク・エンゲージメントが高いということは、従業員が今の仕事や今後のキャリアについてポジティブな感情を抱いているということです。

このような状況なら、従業員が離職するおそれは少なく定着率が高まります。

そして、従業員の定着率が高まるほど、初歩的な教育訓練を実施するコストを節約できるので、業務効率化・収益向上を実現しやすくなります。

また、能動的かつ積極的な姿勢で仕事に励むことができる企業風土が醸成されていれば、優秀な人材が入社してくる可能性も高まるので、人材の固定化による弊害も防止できるでしょう。

生産性の向上

ワーク・エンゲージメントが高いほど、各従業員が自分の能力を最大限発揮しやすくなります。また、さまざまな業務にチャレンジする機会も増えるので、幅広いジャンルでのスキルアップも期待可能です。

このように、さまざまなスキルを備えた従業員が集まれば、バックオフィス部門の無駄を節減し、フロントオフィス部門の活性化に繋がります

その結果、企業全体の生産性向上が実現するでしょう。

顧客満足度の向上

ワーク・エンゲージメントの充実は、企業が顧客に対して提供する商品・サービスの質を高めてくれます

顧客満足度が向上することで安定的な経営が可能になりますし、競争市場において優位な立場を築くことができるので業績向上も期待できるでしょう。

また、業績が好調な企業は、さまざまな設備投資や新規ビジネスにもチャレンジ可能です。ワーク・エンゲージメントが高い積極的な従業員が参画することで、新規の顧客開拓も目指しやすくなります。

メンタルの強化

ワーク・エンゲージメントが高い従業員はタフです。というのも、仕事に対する熱意や活力に溢れているので、多少の失敗・トラブルがあったとしても心が折れることなくチャレンジを続けることができるからです。

従業員のメンタルを強化できれば、日々の仕事がストップすることもなくなり、安定的な業務継続を実現できるでしょう。

ワーク・エンゲージメントの測定方法

ワーク・エンゲージメントは従業員の心理状態を示す概念なので、簡単に数値化できません。

そこで、ワーク・エンゲージメントをを正確に把握するためには、国際的に確立された測定方法に依拠するべきだと考えられます。

ここでは、ワーク・エンゲージメントの代表的な測定方法3つを紹介します。

UWES(ユトレヒト・ワークエンゲージメント尺度)

UWES(Utrecht Work Engagement Scales/ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度)は、ワーク・エンゲージメント概念を提唱したオランダのユトレヒト大学のSchaufeli教授らによる測定方法です。

ワーク・エンゲージメントの構成要素を活力・没頭・熱意の3つに分類したうえで、17個の質問へ回答させることでワーク・エンゲージメントのレベルを算出します。

数あるワーク・エンゲージメントの測定方法のなかでも、UWESが最も安定性の高い尺度として活用される機会が多いです。

MBI-GS(マスラック・バーンアウト・インベントリー)

MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey/マスラック・バーンアウト・インベントリー)は、バーンアウトレベルを測定することでワーク・エンゲージメントの充実具合を算出する測定方式のことです。

バーンアウトとワーク・エンゲージメントは、対極の概念です。

バーンアウトの数値が低いほどワーク・エンゲージメントが高く、逆に、バーンアウトの数値が高いほどワーク・エンゲージメントが低いという関係にあります。

MBI-GSでは、消耗感(疲労感)・冷笑的態度(シニシズム)・職務効力感の3項目について全16問を回答させるという手法が採られます。

OLBI(オルデンバーグ・バーンアウト・インベントリ)

OLBI(Oldenburg Burnout Inventory/オルデンバーグ・バーンアウト・インベントリー)は、MBI-GSと同じようにバーンアウトを測定することでワーク・エンゲージメントを推定する尺度のことです。

OLBIでは、疲労・離脱という2項目に対して回答が求められます。OLBIの測定結果が低ければバーンアウトレベルが低く、ワーク・エンゲージメントが高いと判断されます。

ワーク・エンゲージメントを高めるには

ワーク・エンゲージメントは、勝手に高まるものではありません。

従業員自身の努力だけではなく、会社側として工夫を凝らすことによってワーク・エンゲージメントを高めることができます。

さいごに、ワーク・エンゲージメントを高めるために実施するべき施策・ポイントを5つ紹介します。

ディスカッションの機会を設ける

ワーク・エンゲージメントは、ディスカッションの機会を設けることで高まります。

どのような仕事でも、インプットだけではなくアウトプットの機会を設けることで従業員のスキルは向上します。そして、アウトプットの機会として同僚などとの間でディスカッションの機会を設定すれば、従業員間のコミュニケーションも深まります。

自分ひとりだけではなくみんなで仕事をしている」という連帯感は、ワーク・エンゲージメントを向上させるきっかけになるでしょう。

社内情報の共有を強化

ワーク・エンゲージメントを高めるには、社内情報の共有を強化するのもおすすめです。

各従業員が抱えている業務内容や情報をリアルタイムで共有することで、社内の団結力を高めることができます。

チームとして仕事をしている感覚が広まれば、何かトラブルを抱えた時に仲間を頼りやすくなりますし、逆に、誰かが困っている時でも躊躇なく手を差し伸べて全体として仕事に向き合うことができるでしょう。

メンター制度を導入

組織の中で仕事をしていると、業務や同僚、上司、クライアントなど、さまざまな悩みやトラブルを抱えてしまいます。

このような時に、誰にも相談できない状況だと、気が滅入ってワーク・エンゲージメントが低下しかねません。

そのため、信頼関係を構築した人間に顔色をうかがうことなく悩みを打ち明けられるような環境を整備するために、メンター制度を導入するのも選択肢のひとつでしょう。

業務効率化ツールの導入

ワーク・エンゲージメント向上を目的として、業務効率化ツールを導入するのも適切なアプローチです。

というのも、非効率な業務を強いられる環境では、従業員がストレスを溜めて仕事に対するモチベーションを低下させてしまうからです。

ワーク・エンゲージメントは従業員の内面に関する指標ですが、メンタルケアによってワーク・エンゲージメントを維持するだけではなく、現在の業務を見直して従業員が不満なく快適に就労できる業務体制を構築してください。

人事評価制度方法の見直し

ワーク・エンゲージメントの向上を目指すなら、人事評価制度方法を見直すのも大切な作業です。

なぜなら、「自分の業務量や成績に見合った評価が下されていない」と従業員に感じさせてしまうと、モチベーションの低下に繋がるからです。

年功序列制度や上司の私的な感情で昇給・昇進が決まってしまうと、各従業員の仕事に対するやる気は失われるだけです。

客観的に分かりやすい公平・公正な人事評価制度を設定して、従業員が仕事上の目標・タスクを設定しやすい環境を整備しましょう。

まとめ

ワーク・エンゲージメントは、従業員の仕事に対するモチベーションを測定する指標のことです。

ワーク・エンゲージメントが高ければ従業員が自分の能力・スキルを最大限発揮しやすくなりますし、その結果、業務効率化などのメリットが企業側にも還元されます。

特に近年、企業には従業員の働きやすさへの配慮が求められるようになっています。

競合企業が福利厚生等に力を入れている状況で遅れをとると人材確保などの面で支障が生じるので、可能な限り早いタイミングでワーク・エンゲージメントに注目した具体的施策に着手しましょう。

お気に入りに追加
お気に入りに追加
会員の方のみご利用になれます。
お気に入りに追加した記事は、
マイページに一覧で保存できます。
この記事をシェア
BackOfficeDB編集部
この記事の執筆者
BackOfficeDB編集部
こんにちは。BackOfficeDB編集部です。 私たちは、管理部門に関する情報発信を専門にしています。 業務効率化や、各職種のキャリアプラン、スキルアップなど、管理部門の様々なお悩みにお答えします。