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働き方の選択肢が増えたことや収入を安定させるためなどを理由に、共働きを始める割合が多くなってきた昨今、父親も育児に参加する姿勢が重要視されています。
しかし、厚生労働省が発表した「令和3年度雇用均等基本調査」によると、女性の8割以上が育休を取得しているにもかかわらず、男性の取得率は2割に達していません。
そのような現状を変えるべく、時代にあわせて育休制度は進化しています。
本記事では、厚生労働省が制定した制度の「パパ・ママ育休プラス」について紹介します。
どのように利用できるのか、利用するための条件はあるのかなどを解説しますので、ご参考になれば幸いです。
パパ・ママ育休プラスは、平成22年に始まった制度で、父親の育休取得を促進することを目的としています。
通常の育休は、子が1歳になるまでに取得できる制度ですが、パパ・ママ育休プラスでは、父親か母親の片方が、子の年齢が1歳2ヵ月になるまで取得することが可能です。
育児休業給付も同様に、1歳2ヵ月になるまで受給できます。
夫婦別々に取得ができるうえ、育児・介護休業法の改正によって、最大2回に分割して取得できるようになりました。
ただし、取得期間は最大1年間であることに注意が必要です。
パパ・ママ育休プラスは、子の1歳2ヵ月までの期間に有効な育休制度です。
父親が積極的に育休を取得できる環境を整えることで、母親は職場復帰の準備をしたり、子育てと仕事の両立をしやすくなったり、といったメリットがあります。
また、父親・母親の片側に育児負担が偏らず、二人で育児をできる魅力もあります。
例えば、母親が育休を取得し、その3ヵ月後から父親が育休を取得した場合、父親はそこから1年間の1歳2ヵ月まで取得できます。
取得期間はトータルで1年で2回に分けての分割取得が可能なので、夫婦で時期をずらして育休をとることも可能です。
育休の取得できる期限を、子か1歳2ヵ月になるまでに先延ばしできるだけであり、育休自体は1年間しか取れない点に注意しましょう。
例えば、母親の産休が終わり、子が生まれてから3ヵ月後に父親が制度を取得した場合、父親は子が1歳2ヵ月になるまで育休を取得できます。
もし、子が生まれてから1ヵ月後から制度を取得した場合は、取得を開始した日から1年なので、1歳1ヵ月までしか取得できません。
パパ・ママ育休プラスの取得は、以下が条件です。
ここでは、3つの条件を詳しく紹介します。
子どもが1歳になる前に、父親または母親が育休を取得している場合、一方が、パパ・ママ育休プラスを取得できます。
例えば、母親が産休後に続けて育休を取得した場合、その育休は子どもが1歳になる時までを期限とし、1年経過した時点で育休が終了します。
しかし、母親の育休直前に父親が、パパ・ママ育休プラスを取得することで、子どもが1歳2ヵ月になるまでの間は父親が育休に入ることが可能です。
パパ・ママ育休プラスは、子どもが1歳2ヵ月になるまで取得期限がありますが、子が1歳になる前に開始しないと制度は適用されません。
今まで育休を取っていた父親・母親と代わるように育休を取得しようとしても、子どもが1歳になってしまうと、もう制度を利用できなくなります。
育休が1年間取得できるところがポイントで、有効期間の終わりを待ってしまうと自動的にパパ・ママ育休プラスの申請期限も過ぎてしまうのです。
利用を考えている場合は、子どもが1歳になる前に申請し、権利を取得しておきましょう。
パパ・ママ育休プラスの取得予定者が、配偶者よりも先に育休を開始してしまうと、その時点でパパ・ママ育休プラスを取得できなくなります。
パパ・ママ育休プラスを取得したい側が、通常の育休を取得する配偶者よりも先に制度を利用することはできません。
産休に続いて母親が育休を取った場合、パパ・ママ育休プラスを用いて育休を取得できるのは父親側になります。
もし、母親がパパ・ママ育休プラスを利用したい場合は、一度復職し、父親に育休をとってもらいましょう。
そうすることでその後、子どもが1歳2ヵ月になるまで育休を取得できるようになります。
通常の育休制度とパパ・ママ育休プラスは、どのような違いがあるのでしょうか。2つを比較して紹介します。
通常の育休制度は、子どもが1歳になるまでしか取得できません。
ただし、保育所に入れない、配偶者が死亡・病気・離婚し養育が困難になったなどの理由がある場合は、1歳6ヵ月まで延長できます。
さらに、1歳6ヵ月になった後も、現状に変化がなく、復帰が困難とみなされた場合は、2歳まで延長できます。
この制度は、あくまでも例外的な処置であることに注意しましょう。また、最初から2歳まで延長して育休を取りたいと言っても、認められません。
一方、パパ・ママ育休プラスは、子どもが1歳2ヵ月までの期限となりますが、「子どもを育てることが困難である」という条件は特に必要ありません。
困難なことは特にないものの、もう少し子どもの側にいたい、などの理由でも気軽に取得できます。
通常の育児休暇では、期間は1年間です。また、分割はできず、継続して1年間しか取得できません。
子どもを育てるために困難なことがある場合は、延期が半年分ずつ増えて、最終的には2年間育休を取得できる場合もあります。
一方パパ・ママ育休プラスでは、子どもが1歳2ヵ月になるまでの期間で、トータルして1年間の育休が取得が可能で、2回に分割して取得することが可能です。
パパ・ママ育休プラスは、条件を満たしたうえで申請をしなければいけません。
申請が決まったら、申請希望者は会社にその旨を伝えます。
申請者自らがハローワークに申請もできますが、会社側から渡す書類もあるため、会社側が申請するのが良いでしょう。
申請期限は、子どもが1歳になる前までで、ぎりぎりに申請して書類に不備があると、期限内に申請できなくなるかもしれません。
書類の修正が発生することを想定して、余裕を持って申請できるように、従業員には連絡しましょう。
パパ・ママ育休プラスを申請する書類には、以下のものがあります。
なお、3つ目の書類に関しては、支給申請書に雇用保険被保険者番号の記載があり、配偶者の育児休業給付受給の有無が確認できる場合は、添付する必要はありません。
通常の育休に必要な書類にプラスして、上記書類を用意しましょう。
パパ・ママ育休プラスは、取得する従業員にとって大事な制度ですが、同じくらい企業側にとっても重要なシステムです。
企業側は、どのような対応を取ることが適切なのでしょうか。
ここからは、企業側の視点にたって、対応するポイントをお伝えします。
まずは、自社で取り入れている育休制度の整備をしましょう。
育休制度は、法律で定められているものです。従業員が積極的に取得可能な環境作りも、企業側がおこなうようにしておきましょう。
それと同時に、自社は育休が取得できるという周知もしておくとベストです。
整備するうえでは、まず情報収集をしましょう。
実際に、育児休業やパパ・ママ育休プラスを取得した従業員がいる場合には、話を聞くことで、企業側がサポートできる内容を明確にできます。
研修の実施・相談窓口を設置するなどの措置も、従業員の不安を軽減させるために効果的です。
育休制度を整備したうえで、育休の取得を積極的に促すように周知すると、従業員の満足度も向上するでしょう。
従業員から育休取得の申し出があったら、速やかにハローワークへ申請しましょう。
育休は、子どもが1歳になる前に取得しないと制度を利用できません。
企業側の不手際で、従業員に不利益がないようにしましょう。
また、育休の申請は、従業員から育休に入る1ヵ月前におこなうように会社の規則として決めておくと、不備のない申請ができます。
ハローワークに申請することで、従業員は育休を取得しつつ、2ヵ月に1回育児休業給付金を受けられます。
2ヵ月に1回の支給を受けられるようにするには、企業側が「育児休業給付金支給申請書」と「出勤状況がわかるタイムカードや出勤簿等」の送付が必要です。
申請タイミングは、支給が確定したタイミングで発行される「育児休業給付金支給決定通知書」に記載されています。
パパ・ママ育休プラスの取得中は本人および、会社にかかる社会保険料が免除になりますので、企業側にとっても助かるでしょう。
ハローワークに「育児休業給付金支給申請書」を提出して申告すると、従業員は育児休業給付金を受け取れます。
この給付金は、以下4つの要件を満たした場合にのみ支給されます。
支給が決定されると、子が1歳になる誕生日の前々日まで給付金が支払われる流れです。
また、中小企業向けに「両立支援等助成金」があります。
この助成金は、仕事と家庭を両立するためのもので、育休以外にも介護や新型コロナウイルス感染症に関するコースもあります。
その中で育休に関するコースは「育児休業等支援コース」と「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」の二つです。
育児休業等支援コースでは、育休復帰支援プランという育休取得者のためのプランを作成しなければなりません。
プランには、育休取得者の業務に関する引き継ぎの整理や、育休中の職場に関する情報の提供に対する措置などを記載します。
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)は、父親の育児を支援する助成金です。
男性が育休を取得するための環境を整備する第一種と、男性の育休取得率を向上させるための第二種が存在しています。
いずれも期限があるため、忘れずに申請するようにしましょう。
育休中に仕事から離れていると、社内や仕事がどうなっているのか、戻ったときにどういう状況であるのかを不安に思う人は多いようです。
そのようなとき、会社と電話やチャットでコミュニケーションをとれると、育休中の従業員は安心できるでしょう。
中には、コミュニケーションの一環として、オンラインミーティングを開いている企業もあります。
復職する際の不安を軽減するためにも、定期的にコミュニケーションをとり、悩みを相談できる体制づくりをしておくと良いでしょう。
育休が終了した後の職場復帰をサポートすることも、会社の重要な役割です。
まず、事前に業務の引き継ぎを準備しておきましょう。
復帰前に職場の現状や引き継ぎの仕方などを伝えておくと、従業員は安心できるかもしれません。
そのうえで、まずは簡単な業務から始めてもらいましょう。
最長で一年の休業をとっていた場合、仕事の勘を取り戻すことにも時間がかかる可能性があります。
育休以前のような仕事量をこなせないことも考えられますので、なるべく簡単な業務から慣れてもらうと良いでしょう。
企業が育休を促進するメリットは、複数存在します。
ここでは、企業側が育休を促進する際のメリットについて紹介します。
将来子どもを育てながら働きたいと思っている従業員にとって、男性も女性も育休が取得しやすい環境は企業のイメージ向上につながるでしょう。
特に、長期的で働きたいと考えている従業員にとって、育児のしやすい環境は魅力的であり、優秀な若手従業員を確保することにもつながります。
また、育休を積極的に導入している会社として、メディアや他社から問い合わせを受けることもあるでしょう。
そうすると、宣伝効果も期待でき、世間により良い印象を与えることが可能です。
育休制度が整っていないと、出産後の女性従業員が離職する可能性があります。
会社側は、従業員が復職すると思って引き継ぎの準備をしますが、退職すると穴を埋めなければなりません。
しかし、出産後に退職するのは違法ではないため、会社には従業員を引き留める強制力はありません。
育休制度を整えることで、出産後の離職を防ぐ効果があります。
また、復職後も以前と変わらない地位で働けることを約束しておくと、従業員も安心して働けるでしょう。
出産や育児は、時間や手間がかかり、体力を消耗する大事なライフイベントです。
そのようなときに、ワークライフバランスを重視していない会社であると、従業員のモチベーションの低下や離職といった結果になる可能性があります。
育休制度などの環境整備は、ワークライフバランスの実現につながり、従業員は安心して出産や育児に専念することが可能です。
母親だけに限らず父親にとっても、育休という制度は大事なものです。
中でもパパ・ママ育休プラスは、子が1歳2か月まで取得できるうえに分割取得もできるので、柔軟に対応できるのが魅力です。
企業側にとっても助成金が出るほか、離職を防ぎ、従業員が長期的に働いてくれるなどのメリットがあります。
育休制度を整えておくことは、企業の発展においても重要な事柄一つなので、積極的に取り組んでおくことがおすすめです。