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企業が事業活動を展開するときには、必ず法的な問題への配慮が必要になります。
社内の法務部門だけで対応できない場合は、外部専門家の協力・サポートを受ける事案も多いはずです。
本記事では、企業が顧問弁護士と契約するときの費用面の問題や、顧問弁護士の業務範囲、費用面に注目した顧問弁護士の選び方などについて分かりやすく解説します。
顧問弁護士との契約についてお悩みの法務担当者や経営者の方は、是非最後までご一読ください。
顧問弁護士と契約した場合の費用相場を紹介します。
中小企業が顧問弁護士の契約した際の一般的な月額の顧問料は、以下のように分布しています。
顧問料の月額(弁護士・月3時間) | 分布割合 |
---|---|
0円~2万円 | 0.0% |
2万円~3万円 | 4.9% |
3万円~4万円 | 33.5% |
4万円~5万円 | 2.2% |
5万円~6万円 | 52.7% |
6万円~7万円 | 1.1% |
7万円~8万円 | 1.6% |
8万円~9万円 | 0.0% |
9万円~10万円 | 0.0% |
10万円以上 | 2.2% |
その他 | 1.1% |
参考:月3時間程度の相談を顧問契約の範囲とする場合の月額顧問料はいくらか? ひまわりほっとダイヤル|日本弁護士連合会
上記のデータから、中小企業の顧問料の相場は、3万~6万円であることがわかります。
毎月、顧問弁護士に顧問料を支払うことで、無制限に法律相談等を受け付けてくれるわけではありません。
ここでは、顧問料を支払うことで、相談が可能な業務内容の範囲について解説します。
なお、顧問契約の範囲で対応できる業務範囲は、依頼先によって異なるので、必ず委任契約締結前にご確認ください。
標準的な法律相談を受けることができます。
特に、特別な調査を要さず、電話やFAX、メールなどによって即時に回答できる類の日常的な法律相談については、毎月の顧問契約の範囲で対応してくれるケースが多いです。
企業活動を展開する過程では、取引相手と契約を締結する場面、支払い遅延などが生じて請求書や内容証明郵便を送付する場面が日常的に発生します。
弁護士と顧問契約を締結していれば、追加費用なしで通常の業務内容・契約内容のチェックを受けることができます。
ただし、相手方との厳しい交渉や将来的に訴訟等が予測されるような複雑な事案については、顧問契約の範囲で対応してもらえない可能性も否定できません。
顧問弁護士に、顧問業務以外の法律業務を依頼する場合には、相談料・着手金・報酬金の負担が発生します。
複雑な契約書や和解契約案の作成、催告書・督促状など、内容証明郵便を依頼するときの費用は、以下の表のように分布しています。
弁護士費用 | 顧問契約を締結している 場合の分布割合 |
顧問契約を締結していない場合の分布割合 |
---|---|---|
0円 | 11.2% | 0.0% |
5万円前後 | 49.0% | 25.0% |
10万円前後 | 21.4% | 43.8% |
15万円前後 | 2.3% | 10.9% |
20万円前後 | 3.9% | 8.9% |
30万円前後 | 0% | 5.9% |
その他 | 7.2% | 3.9% |
参考:アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安|日本弁護士連合会
ここから分かるように、弁護士との間で顧問契約を締結していれば、法律文書の作成業務に関する費用を5万円程度に抑えることができます。
これに対して、顧問契約とは関係なく随時弁護士に書類作成業務を委任すると、概ね10万円程度の費用が発生します。
企業の業務内容次第ですが、頻繁に法律文書を作成する機会がある場合には、顧問契約を締結しておいた方が費用面での負担を大幅に軽減できるでしょう。
企業がぶつかる法律問題のひとつに、労働事件が挙げられます。
例えば、ハラスメント被害を理由に損害賠償請求されたり、残業代の未払い、労働基準法違反の長時間残業、懲戒解雇処分の有効性、労災事案の扱いなどが労働審判で争われたりします。
労働審判で争われる争訟の内容次第ですが、弁護士に依頼をした場合の費用目安は以下の通りです。
着手金 | 顧問契約を締結している 場合の分布割合 |
顧問契約を締結していない場合の分布割合 |
---|---|---|
10万円前後 | 15.1% | 3.6% |
20万円前後 | 31.3% | 11.2% |
30万円前後 | 31.9% | 46.1% |
40万円前後 | 3.3% | 9.5% |
50万円前後 | 5.3% | 18.8% |
その他 | 1.0% | 1.0% |
参考:アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安|日本弁護士連合会
報酬金 | 顧問契約を締結している 場合の分布割合 |
顧問契約を締結していない場合の分布割合 |
---|---|---|
20万円前後 | 31.9% | 18.1% |
30万円前後 | 28.6% | 25.0% |
50万円前後 | 19.1% | 33.2% |
70万円前後 | 2.6% | 6.9% |
90万円前後 | 1.0% | 3.3% |
その他 | 3.0% | 0.7% |
参考:アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安|日本弁護士連合会
顧問契約を締結していれば、労働審判や民事訴訟にステージが移行する前段階の法律相談などを、顧問契約の範囲内で対応してもらえます。
また、実際に示談交渉以降の手続きに移行したとしても、価格抑えて対応してもらえるので、数十万円単位で費用を節約できます。
売掛金の未払いが発生している場合、相手方に対して内容証明郵便を送付することから始まり、状況次第では民事訴訟を提起する必要に迫られます。
売掛金回収を弁護士に依頼するときの費用は、請求額によって異なります。
ここでは、相手方に対して2,000万円を請求するケースを前提に、弁護士費用の分布割合を紹介します。
着手金 | 顧問契約を締結している 場合の分布割合 |
顧問契約を締結していない場合の分布割合 |
---|---|---|
50万円前後 | 53.3% | 30.9% |
70万円前後 | 20.7% | 19.1% |
100万円前後 | 12.2% | 44.4% |
120万円前後 | 0.3% | 1.0% |
150万円前後 | 0.0% | 1.3% |
その他 | 10.2% | 1.6% |
報酬金 | 顧問契約を締結している 場合の分布割合 |
顧問契約を締結していない場合の分布割合 |
---|---|---|
100万円前後 | 31.9% | 17.4% |
150万円前後 | 28.6% | 17.1% |
200万円前後 | 19.1% | 58.2% |
250万円前後 | 2.6% | 3.6% |
300万円前後 | 1.0% | 0.7% |
その他 | 3.0% | 1.3% |
売掛金の回収額が高額になると、顧問契約を締結しているか否かで、費用総額に100万円以上の差が生じる可能性もあります。
日常的に取引する顧客数が多い企業の場合には、顧問契約を締結しておいた方が費用負担を軽減しやすくなるでしょう。
「法的な問題を抱えていない時期に、毎月の顧問料がもったいない」
「トラブルが発生したときに、その都度弁護士に依頼すれば良いのでは?」
という考えから、弁護士の顧問契約締結を躊躇する企業は少なくありません。
しかし、顧問弁護士と契約するメリットを総合的に考慮すると、基本的には顧問契約を締結しておいた方が安定的な企業経営に繋がると考えられます。
ここからは、顧問弁護士に依頼をする5つのメリットを紹介します。
法的トラブルが発生したような緊迫した状況になって、いきなり法律事務所を探すのは大変です。
案件内容に強い弁護士を見つけるのは簡単ではありませんし、複数の法律事務所に電話連絡を入れて見積もりなどを見比べるのも面倒でしょう。
これでは、法律事務所探しに時間・労力をとられている間に、法律問題が深刻化しかねません。
顧問弁護士と契約をしていれば、普段から関係性を築けている専門家へ気軽に相談できます。
「とりあえず弁護士の意見を確認しておきたい」というような些細な場面でも、専門家のノウハウ・知見を活用できるので、自信をもって企業活動を展開できるでしょう。
飛び込みで単発的な法律相談を弁護士にもちかけたとしても、法律問題に対する解決策は提示してもらえます。
しかし、一般的な解決方法だけでなく、会社の実情を踏まえた適切な解決策を提示してもらえた方が、早期解決の可能性が高まります。
そこで顧問弁護士に依頼すると、継続的に企業の状況を確認してくれているので、社内事情には詳しいです。
より実効性のある法的アドバイスを期待するなら、顧問契約を締結しておくことをおすすめします。
「法律問題が発生したときに、弁護士に相談をして解決してもらう」というのも正しい弁護士の利用方法です。
しかし、企業経営を円滑に進めるためには、法律問題を迅速に解決すること以上に、法律トラブルを予防することを重視する必要があります。
顧問弁護士と契約しておけば、契約書や事業内容の合法性を普段からチェックしてくれたり、法務部門の機能をサポートしてくれたりするので、リーガルリスクを大幅に軽減できるでしょう。
日常的に顧問弁護士との関わりができることで、従業員の法的素養が充実します。
例えば、弁護士に契約書をチェックしてもらって問題点が抽出されたら、次回以降はその反省点を活かすことができるはずです。
法的なノウハウを理解した従業員が増えることによって、企業全体のコンプライアンス意識も高まるでしょう。
「毎月、顧問弁護士に顧問料を支払うのはもったいない」という考えは間違いです。
顧問料の対価として得られる法的サービス・法的育成の効果を企業内の力だけで獲得するのは、難しいのが現実です。
例えば、企業内に法務部門を創出して人員を配置すると、給与という形で高額な人件費が発生します。
顧問弁護士の顧問料は数万円程度で済むので、法務関連コストを圧倒的に安価に抑えることができるでしょう。
法務部門をアウトソーシングするという考え方は、自体合理的です。
しかし、費用の負担は大きいものなので、弁護士と顧問契約をするときには、顧問料の決め方に注意しなければいけません。
ここでは、弁護士と顧問契約する際の顧問料の決め方や抑え方のポイントについて解説します。
まずは、顧問契約の業務内容や利用条件を必ず確認してください。
これは、企業の事業内容によって顧問弁護士に対するニーズが異なるからです。
例えば、普段から非定型の契約書を相当数チェックしてもらう必要がある企業にとって、毎月の法律相談時間が3時間程度に限定されている顧問契約は充分とはいえないでしょう。
顧問弁護士に相談したいこと、相談するのに必要な時間と顧問契約の内容がマッチしている法律事務所とご契約ください。
弁護士の利用頻度が少ない企業の場合、定額制ではなくタイムチャージ制の顧問弁護士がおすすめです。
法律事務所によっても異なりますが、定額制で顧問契約を締結すると、1年契約で毎月の顧問料を支払うという形式がとられます。
これでは、利用頻度が少ない企業にとっては割高感が否めません。
タイムチャージ制を採用している顧問契約なら、顧問弁護士の実働分に対して費用を支払うだけで済むので、ある程度の顧問料を削減できるでしょう。
ただし、タイムチャージ制を選択すると毎月の顧問料が変動する点に注意が必要です。
特に、争訟が顕在化したような月には、タイムチャージ制を選択した結果、定額制よりもはるかに高額の顧問料を請求されかねません。
弁護士の利用頻度が少なく、また、そもそも法律トラブルを抱えるリスクも大きくない企業の場合には、顧問契約を締結しない場合に発生する弁護士費用を想定するのも大切です。
顧問契約を締結するか否かを判断するときには、必ず費用対効果を分析してください。
例えば、従業員数が少なくて労働事件が生じるおそれもない、また、取引先との関係も良好で、法的問題が生じる可能性がほとんどゼロに近い状況なら、わざわざ顧問料を毎月支払う実益は乏しいでしょう。
その一方で、普段から係争中の案件が頻発するような企業なら、毎月の顧問料を支払うことで費用を大幅に節減できるはずです。
法律事務所の中には、顧問契約に積立制度を導入しているところがあります。
積立制度があれば、顧問弁護士に相談しなかった月の顧問料を、法的トラブルが発生したときの弁護士費用に充てることができます。
「弁護士へ簡単にアクセスできるツールは欲しいけれども、日常的に相談することはない」という企業の場合、顧問契約に積立制度が含まれているかをご確認ください。
顧問契約の金額や条件は、法律事務所によって異なります。
そのため、顧問弁護士の利用を検討しているときには、各法律事務所から見積もりを出してもらったうえで、諸条件について比較するのがおすすめです。
なお、「顧問料が高いから良い弁護士」「顧問料が低いから悪い弁護士」と決めつけるのはやめましょう。
高い費用を支払ったから、良質なサービスを受けることができるとは限りません。
弁護士と面談の機会を設けてもらったうえで、経験や熱意、得意分野やコミュニケーション能力、会社との相性など、さまざまな観点から依頼するべきかを判断してください。
自分の企業に適した、顧問弁護士の探し方について紹介します。
今では、多くの法律事務所がホームページを開設しています。
「事業所の地域名 顧問弁護士」で検索すると、近隣の法律事務所が見つかるはずです。
法律事務所のホームページには、弁護士のキャリアや実績、得意分野が記載されています。
複数の候補をピックアップしたうえで、それぞれに見積もりを出してもらいましょう。
関連企業や知人などに、顧問弁護士を紹介してもらうのも選択肢のひとつです。
紹介の場合、先に当該弁護士を利用した人の意見や評判を確認できるのがメリットです。
自分たちだけで顧問弁護士を見つけるのが難しいときには、地域の弁護士会に相談するのもおすすめです。
各県の弁護士会では「弁護士紹介センター」を開設しているので、各企業のニーズに適した顧問弁護士を紹介してくれます。
現在、インターネット上には、弁護士専用のマッチングサービスが多数存在します。
事業者側の利用料は無料に設定されていることが多いので、複数サイトを併用したうえで、ニーズに適した顧問弁護士を見つけてください。
さいごに、自社の予算に適した顧問弁護士を選ぶときのポイントについて解説します。
顧問契約を締結する前に、弁護士の顧問業務歴をご確認ください。
顧問業務の経験年数が多いほどビジネス業界の常識が備わっていると考えられるからです。
弁護士によって専門分野は異なります。
離婚や相続などの一般民事を得意とした弁護士に企業法務を依頼しても、充分な成果は得られません。
特に、自社と同じ業種の顧問弁護経験がある弁護士に依頼すれば、実効性のあるリーガルサービスの提供を期待できるでしょう。
企業の法務面を支える手段として、顧問弁護士は有力な選択肢です。
自社内で法務部門を整備しても人件費がかさむだけですし、結局外部弁護士ほどの良質なリーガルサービスまでは期待できません。
顧問弁護士と契約しても一定の費用は発生しますが、顧問料以上の効果を得られる可能性が高いです。
顧問弁護士に求める業務内容や費用面などの諸条件を比較しながら、信頼できる法律事務所に問い合わせをしましょう。