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近年、個人情報の漏えいやハラスメント問題など、企業のコンプライアンス違反がたびたび指摘されています。
そのため、法務のコンプライアンス機能強化に取り組む企業が増えており、コンプライアンス担当の重要性やニーズが高まっています。
本記事では、法務部門のコンプライアンス業務をテーマに、役割や目的、業務内容などについて解説します。
コンプライアンス担当に求められる、スキルや資質、職務に就く方法も確認しましょう。
コンプライアンスを遵守している企業は、健全経営をおこなえていると判断されます。
反対に、1度でもコンプライアンス違反が発生してしまうと、社会的信用を失う可能性があるので軽視できません。
それだけ重要な企業のコンプライアンスは、社員一人ひとりが意識を持って会社全体で遵守する必要があるため、多くの企業ではコンプライアンスをひとつの業務として取り組んでいます。
コンプライアンスは「法令遵守」を意味する言葉ですが、近年は法令にとどまらず社会的規範やマナーを含む、幅広い意味でとらえられています。
コンプライアンスを強化することで、企業は社会的信頼を得られるだけでなく、法的なリスクやトラブルを事前に回避することが可能です。
コンプライアンス担当の役割は、コンプライアンス体制の構築や周知、維持することです。
企業のビジョンや方針に沿ったコンプライアンス方針や規程を策定するとともに、社内に対して法令やルールの内容、違反した際のリスクを周知させます。
コンプライアンス違反を発見した場合には、対応策を立案・実施するのもコンプライアンス担当の役割です。
一般的にコンプライアンス担当は法務部門に所属していますが、法務部門とコンプライアンス部門がそれぞれ独立して存在する企業もあります。
その場合は、役割や機能が以下のように分けられます。
とくに大企業や上場企業など、コンプライアンスに対する社会的な要請が大きい企業で分けるケースが見られます。
参考:コンプライアンス推進担当 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
コンプライアンス業務の目的は、法的リスクや経営への悪影響を防ぐこと、企業の社会的信頼やブランド価値を維持・向上することです。
刑罰や行政処分などによる経営への悪影響を避けることは、コンプライアンス業務の大きな目的です。
企業は、自社の事業活動に関連するさまざまな法令や規則を遵守しなければなりません。
たとえば税法や労働法、消費者保護法、不正競争防止法などです。
これらの法令や規則に違反した場合、企業は法律に基づく罰則の適用や取引相手などからの損害賠償請求を受けるおそれがあります。
それだけではなく、営業停止などの行政処分を受ければ、経営への悪影響は免れないでしょう。
こうしたリスクを防止するために、企業は自社のコンプライアンス機能を強化し、適正な運営を継続する必要があります。
帝国データバンクがおこなった「コンプライアンス違反企業の倒産同行調査(2023年度)」の調査によると、2023年度にコンプライアンス違反が理由で倒産した企業は300件を超えたとされています。
コンプライアンス違反が理由で、実際にこれだけの企業が倒産しているため、業務としてコンプライアンス対応が必要であることがわかるでしょう。
参考:コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2023 年度)|帝国データバンク
法令や規則を守るだけでなく、社会的な倫理や責任を果たすことも企業の役割です。
たとえば、環境保護や人権尊重、社会貢献などが挙げられます。
コンプライアンス担当は、こうした分野の活動においても法的観点からアドバイスやサポートを提供し、自社の社会的な信頼やブランドイメージを高めるために貢献します。
それにより、顧客や取引先、株主などの満足度も向上させられる可能性があるでしょう。
また、あらゆる業界で人手不足が加速している中、優秀な人材の流出防止や新たな人材獲得にもつながります。
年々、法務のコンプライアンス業務が重視されています。
その背景には、社会的な期待の高まりやSNSの普及、デジタル化やグローバル化といった環境の変化があります。
近年、企業の社会的責任(CSR)や企業倫理が注目されています。
消費者や投資家などのステークホルダーは、企業に対して法令や規則を遵守するだけでなく、社会的によい行動をとることを求めています。
ただ利益を追い求めるだけの企業は、消費者や投資家から選ばれなくなっている傾向です。
環境や人権といった、社会的な課題にも積極的に取り組んでいるかどうかも企業を評価する指標となっています。
コンプライアンス担当は、社会的な課題に関する事例やガイドラインなどをもとに、企業活動をサポートすることが求められています。
インターネットやSNSの普及により、企業の情報や評判が瞬時に広まるようになりました。
コンプライアンス違反があれば、インターネットの掲示板やSNSなどを通じて世間に拡散され、厳しい批判にさらされる時代です。
一方で、虚偽の情報も流布され、誹謗中傷や風評被害を受けるリスクも発生するでしょう。
また、SNSの自社アカウントを作成して、運用する企業も増えてきています。
一部不適切な表現で投稿があった場合には、即座に批判の対象となってしまうかもしれません。
このようなリスクから自社のブランドや信用を守るために、インターネットやSNSでの情報管理や対応にコンプライアンス部門が関与することが求められています。
デジタル化は、企業のビジネスモデルや業務プロセスを変革するとともに、新たなリスクや課題をもたらしています。
たとえば、個人情報や機密情報の保護、サイバーセキュリティの確保、電子契約の取り扱いなどです。
リモートワークも普及され、企業で取り扱う情報の多くが電子化されたことも、コンプライアンス違反に影響するリスクを生じさせるでしょう。
これらの課題に対処するために、コンプライアンス部門の重要性が増しています。
ビジネスのグローバル化にともない、多くの企業では海外市場への進出や提携を積極的におこなっています。
しかし、海外の法律や文化は日本と異なる場合が多く、知らず知らずのうちにコンプライアンス違反を犯してしまう危険性があります。
そのため、企業はコンプライアンス部門に海外の法律や文化に精通した人材を配置したり、教育を強化したりしています。
ここからは、コンプライアンス業務の具体的な内容を解説します。
コンプライアンス担当は、自社の事業に関係する法令や規則の変更を常に把握する必要があります。
そのために、政府や行政機関、業界団体などからの情報を収集・分析することが欠かせません。
また、自社の事業に影響を与える可能性のある、国際的な動向や社会的な問題にも敏感であることが求められます。
企業のコンプライアンス体制に対する社会的な目が厳しくなる中で、企業は法令や規則の変更に対応するだけでなく、自社独自のコンプライアンス基準を設定することも必要です。
コンプライアンス担当は、その基準を社内規程として策定し、自社の従業員や役員に対して具体的な行動指針を示します。
社内規程はただ策定するだけでなく、社内周知と理解を促進させることが重要です。
その際には、社内報やメール、社内ポータルサイトなどのコミュニケーションツールを活用すると効果的です。
社内にコンプライアンス意識を浸透させるためには、従業員や役員に対してコンプライアンス教育や研修を定期的に実施することが必要です。
教育や研修では、法令や規則の内容や意義、社内規程の遵守方法や違反時の処分などを説明します。
事例やシミュレーションなどを用いて、実践的な学習を提供することが効果的です。
啓発活動の実施も、コンプライアンス担当の業務に含まれます。
たとえば、ポスターやパンフレットなどを作成し、社内各所への配布や提示をすることで、コンプライアンスへの関心や意識を高めることができます。
コンプライアンス違反が発生した場合、コンプライアンス担当は迅速かつ適切に調査や対応を実施することが求められます。
具体的には、違反事実の確認や原因究明、責任者の特定などをおこない、事実関係を明らかにします。
また、違反者への処分や再発防止策の立案・実施などを主導し、問題の解決に努めなければなりません。
さらに関係者への報告や謝罪、外部への情報開示なども適切に実施することが必要です。
コンプライアンス担当には、法令の知識にとどまらず幅広いスキルや資質が求められます。
コンプライアンス担当は、自社の業界や事業に関係する法令や規則を把握し、最新の動向にも敏感である必要があります。
法令や規則が存在する背景や目的を理解し、適切な解釈や適用ができる能力も必要です。
自社にコンプライアンス意識が浸透しているか、コンプライアンス違反が発生していないかといった状況を把握するためには、内部および外部の情報を効率的に収集する情報収集スキルが必要です。
集めた情報を分析するとともに、問題点や改善策を明確に整理し、報告や提案ができるスキルも求められます。
コンプライアンス担当は、自社の経営層や従業員、取引先など、さまざまな関係者とコミュニケーションをとることが多くあります。
その際には、一方的な説明にとどまらず、相手の立場を考慮したうえでの説得力や誠実さをもって伝える力が必要です。
また、経営層や従業員に対してコンプライアンス教育や指導をおこなうこともあります。
そのため、教育内容や方法を工夫し、理解や参加を促す指導スキルも必要です。
コンプライアンス違反や法的トラブルは、ある日突然発生することが多いので、コンプライアンス担当には柔軟な対応力が求められます。
また、法令や規則の変更や新設、内部監査や外部調査なども実施されるため、その都度対応しなければなりません。
迅速かつ、適切に対応力が求められます。
コンプライアンス担当は、企業の法的リスクを管理するだけでなく、企業の社会的責任を果たすことも大きな役割です。
そのためには、高い倫理観と社会的規範性をもち、自らが模範となって行動することが求められます。
企業法務は、法的リスクの予防だけでなく、企業の発展や成長に寄与するために欠かせない分野です。
コンプライアンス担当としても、法令や規則に従うだけでなく、ビジネスの発展も考えることが必要です。
そのためには、コンプライアンスとビジネス推進のバランス感覚をもち、法令や規則の制約の中で、最善のビジネスソリューションを提供することが求められます。
法務のコンプライアンス担当は、法令や規則、業界ルールや社会的課題などに関する幅広い知識が求められます。
社内外とのやり取りに必要な、コミュニケーションスキルや情報収集スキル、高い倫理観なども必要です。
そのため、新卒でコンプライアンス担当になるケースは珍しいでしょう。
コンプライアンス担当になるには、部署異動や法務部門内での担当替えでなるか、転職して配属されるのかのいずれかです。
部署異動や担当替えの場合、一定の適性がある人材が配置されることが多いです。
たとえば、法律系士業資格を保有している人材、コンプライアンスの領域に興味・関心が高く、知識の習得に励んでいる人材などです。
コンプライアンス部門が独立している場合は、法務部門からの異動も考えられます。
転職の場合は、一定の実務経験が必要とされるケースが多いため、法務部門の経験者や業界経験者、法律事務所のパラリーガルなどにチャンスがあるでしょう。
資格取得の難易度は非常に高いですが、弁護士資格があれば評価される可能性が高いため転職で有利にはたらきます。
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コンプライアンス違反が発生したときの経営ダメージは大きく、最悪の場合には倒産することもあります。
最悪な事態を回避するたもには、コンプライアンス担当の存在が重要です。
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