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内部監査は、上場企業などの一定水準を上回る組織にある職種で、目標達成に向けて現場で適切な業務がなされているかを確認したり、業務の効率化や不正を抑制して調査結果を経営者に報告したりする業務を担っています。
一社に数名程度しか在籍しておらず、日頃からCEOなど経営陣と接する機会が多いやりがいのある職種といえます。そのような内部監査へのキャリアを歩むには、どのようなキャリアパスをたどるのが良いのでしょうか。
この記事では、内部監査のキャリアパスについて、人材ニーズの動向とともに具体的なキャリア事例を挙げて解説します。内部監査の将来性やキャリア形成について知りたい方は、参考にしてください。
内部監査は企業内で独立した立場をとり、客観的視点で経営面や業務状況を確認する必要があります。人材ニーズは高く、転職や社内での昇進によって内部監査を目指す方も多いでしょう。
ここでは、内部監査になるためにどのようなキャリアパスを選択すべきかを解説します。
内部監査業務に必要な資格はありません。そのため、社内のさまざまな管理部門で実務経験を積んで知識を習得すれば、内部監査への道が開ける可能性があります。
たとえば、財務や会計・経理・労務は、内部監査と関連性の高い職種のため、異動願いやジョブローテーションで積極的に内部監査への異動希望を出すのがよいでしょう。
また企業によっては、内部監査が経営幹部になるためのステップの一部になっているケースもあります。
上場企業の場合、金融商品取引法に基づいた内部統制報告制度(J-SOX)が求められるため、内部監査はJ-SOXの適用範囲を把握したうえで、内部統制評価や報告に向けた監査を実施する必要があります。
J-SOXとは、企業の財務報告に不適切な内容がないかを確認し、会計に信頼性をもたせることを目的にしたもので、上場企業とその子会社・関連会社・外部委託先なども内部統制の対象にしています。
J-SOXの知識を深め、制度に基づく内部統制の監査を担当できるようになることは、内部監査の道への一歩となるでしょう。
株式上場(IPO)や監査法人との連携は、内部監査のキャリアで有益な経験となります。IPOでは、企業の財務整理や内部統制の強化・監査法人との連携が必要となり、実務経験によって内部統制に関する理解を高められます。
とくに監査法人との連携では、財務諸表の作成や経営管理体制の整備状況・内部管理状況など、社内体制やコーポレートガバナンスの管理状況に対して助言してもらえるため、内部監査業務を深く理解できるはずです。
このような実務経験は貴重な機会となり、内部監査のキャリアパスにつながります。
社外で内部監査を目指すなら、内部監査部門のある企業へ転職するのもひとつです。ここでは、転職先の選択肢とともに、組織内におけるキャリア形成のポイントを紹介します。
大手企業では内部監査が義務付けられているため、転職できればより高度なスキルを磨けると同時に、自身の市場価値アップが期待できます。また子会社への出向により、内部監査室長になれる機会にも恵まれるかもしれません。
次のキャリア形成を目指して転職する場合でも、あらゆる選択肢からステージを選べるでしょう。
これから内部監査が重視されていくようなIPO準備中の企業へ転職すると、監査法人との連携によって多数の監査経験を積める可能性があります。
内部監査・内部統制・コンプライアンスなどを一元的に構築・評価できる人材になれれば、その後さらに転職を検討する際でも高く評価されるでしょう。監査法人との連携経験により、専門性の高い知識も習得できるはずです。
監査法人への転職がかなえば、おもに大手企業や上場企業などのクライアントの依頼に応じて、財務書類の監査業務または監査証明をおこないます。監査法人の規模はさまざまですが、所属するには公認会計士の論文試験合格者、あるいは有資格者が条件になるケースがほとんどです。
監査経験があるからといって入れるわけではないため、長期的な目線で転職を検討するのがよいでしょう。
内部監査は資格必須の職種ではありません。しかし、特定の資格をもっていると専門的知識やスキルを所持している証明になるため、キャリアアップの際に役立ちます。
ここでは、内部監査のキャリア形成に有効な資格を3つ挙げて解説します。
「内部監査士」は、一般社団法人日本内部監査協会(IIA-J)が主催する内部監査士認定講習会の受講・修了によって取得できます。講習会の内容は、内部監査関連の基礎理論や実務などの専門知識が基本です。
取得後は内部監査の知識や技術、報告書の作成・運用方法などの理解者であるという証明にできるでしょう。
「公認内部監査人」は、内部監査人協会(IIA)が認定する国際的な認定資格で、世界約190カ国で試験が実施されています。試験内容は、内部監査の基礎・実務・関連知識の3構成になっており、内部監査の知識以外にビジネス関連の問題まで出題されるのが特徴です。
最終合格率は10%~15%とやや低めですが、取得によって内部監査の専門知識や能力の保有者であることを証明できます。
「内部統制評価指導士」は、内部統制の自己評価(CSA)に関連した知識と能力が問われる、国際的な認定資格です。試験では、内部統制の基礎知識や導入のプロセス・リスク評価・コントロール理論に関する問題が出題され、合格率は非公開です。取得すれば、外資系企業やコンサルティング会社、監査法人などのフィールドで、内部統制の構築・整備やリスクマネジメント関連のコンサルティング業務を担える可能性があるなど、キャリアアップに役立つでしょう。
内部監査を目指す、または内部監査の経験を活かして転職したい場合は、あらかじめ内部監査のポジションが用意されている企業や関連職に就ける企業を選択しなければなりません。
一方で、大手企業の内部監査やIPO準備中企業の監査ポジションの求人は一般公募であまり出回っておらず、採用数も少ないケースが多くなっています。こうした重要ポジションは、特定の人材に特化した転職サイトや転職エージェントのみが取り扱っています。
内部監査の非公開求人をもち、内部監査の転職支援をおこなっているエージェントを3社ご紹介します。
内部監査など、管理部門に特化した転職エージェント「BEET-AGENT」は、内部監査のキャリアパスを熟知したアドバイザーが求職者の経歴をヒアリングし、よりマッチ度の高い求人紹介やアピールポイントを明確にした転職支援をおこなってくれます。
そのため、内部監査の経験者におすすめのエージェントです。
サービス利用にいっさいお金がかからないので、まずは登録してキャリア相談をしてみることをおすすめします。
◆公式サイト:https://beet-agent.com/
MS Agentは、管理部門に特化した転職エージェントです。30年以上転職支援をおこなっており、特化型のなかでは老舗のエージェントです。
業界最大級の求人数を誇るため、まだ出会ったことのない内部監査求人を紹介してもらえるかもしれません。
◆公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
リクルートダイレクトスカウトは、スカウト型の転職支援サービスです。
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内部監査は企業の監査を担当する部署であり、組織が適切かつ効果的に運営するための重要な役割を果たしています。以下は、内部監査の代表的な5つの業務です。
これから内部監査を目指す方向けに、仕事内容を解説します。
予備調査とは、本監査を実施する約1~2ヵ月前におこなう調査業務です。監査対象の現場における過去と現在の比較を目的にしており、基本的に事前通知をもって実施します。ただし、現場における不正が疑われる場合、抜き打ちでおこなわれるケースもあるようです。
内部監査は予備調査の結果を踏まえ、企業経営にまつわるリスクと目標に基づいた内部監査計画を立案します。重要業務のプロセスや部署に焦点を当て、リスクを評価したうえで監査対象を選定するのが基本です。なお監査計画は、社会や企業のニーズに合わせて定期的に更新されます。
監査計画に基づき、実地監査をおこないます。業務プロセスや内部統制の有効性、リスク管理の適切性などを評価し、社内規定や法令に則って業務を遂行できているか確認するのがおもな流れです。原則、監査は現場責任者と監査役で独立かつ客観的におこなわれます。
監査実施後、内部監査は結果を報告書にまとめます。監査で発見した問題点や改善が求められる業務フローを明確化し、経営陣に報告することで、監査対象となった現場で適切な対策がとられるよう促進します。
内部監査は、リスクマネジメントにおいても重要な役割を果たします。監査で見つかった問題点をどのように改善するのか、放置した場合の企業リスクを評価し、適切な改善計画を提案します。このタイミングで適切な対策を講じられると、企業発展の貢献につながります。
このような内部監査の業務は企業の健全性や効率性を評価でき、リスクマネジメントと業務改善の支援につながります。同時に、企業内の信頼性を高める役割も果たせるでしょう。
内部監査は、経営目標の達成に向けて適切な業務環境が整っているか、正しいフローで業務が遂行されているかを確認します。内部監査室が各現場を正しく調査し評価することで、管理体制の強化や改善のほか、業務効率化にも効果的です。
ここでは、企業における内部監査職の重要性を解説します。
近年、社会全体で法令遵守を強化する風潮が高まっているため、各企業で内部管理体制(ガバナンス・コンプライアンス)を整備する動きが盛んになっています。これにより内部監査の経験をもつ人は、転職市場で非常に貴重な人材として求められています。
ただし、求人数は限られているため、資格取得や転職エージェントの活用により、戦略的な転職活動を進める必要があるでしょう。あらかじめ必要な実務経験を積んでおくなど、キャリア形成に向けて準備するのも大切です。
経済や社会の変化に合わせて会社法が改正されると、企業は適切な対応をとらなければいけません。たとえばコンプライアンスの強化や企業の責任が変わるような項目が追加された場合、内部監査は企業の健全性を確保するために、監査対象を変更するなどして対処する必要があるでしょう。
社会のデジタル化に対する取り組みにより、企業では情報セキュリティ強化への対応が求められています。たとえば機密情報や個人情報の漏洩は、決してあってはならないことのひとつです。内部監査はそのような事態を未然に防ぐためにも、利用する情報システム内の監査に対応しています。
内部監査は不正防止やリスク回避にも効果的で、情報漏洩やデータ改ざん・知的財産権の侵害などで企業が社会的信用を失わないよう、働きかける目的もあります。取引先や顧客からの信頼を保ち、法令遵守に基づいた経営をおこなっていると社会へ示すためにも、内部監査室がおこなう監査業務は重要なのです。
事業者には、適切な事業活動を進めるための仕組みを整える「内部統制」や「コーポレートガバナンス」システムの構築が義務化されています。これにより、内部監査は法令順守を促進する企業として、経営や社内規定の策定状況を確認する役割を担っており、社会へ健全性をアピールしているのです。
このように、内部監査はガバナンス強化の観点で非常に重要な役割を担っています。大手企業では内部監査部門の設置が義務付けられており、専門性に特化した監査職は人材ニーズの高いポジションであるとわかります。
内部監査人の年収は経験年数や企業によっても異なりますが、以下で平均的な年収をご紹介します。
内部監査人の平均年収は約650万円です。帝国データバンクによると上場企業の2022年度の平均給与は638万円だったので、内部監査人の年収はおおむね上場企業の水準と同程度であることがわかります。
※参考:帝国データバンク|上場企業の「平均年間給与」動向調査(2022年度決算)
20代で内部監査人になる人は多くありませんが、この場合でも年収は400万~600万円と、比較的高い水準です。これは内部監査人を必要とする企業の多くが大企業であるため、もともとの年収水準が高いことと関係しています。
30代以降になると年収600万円以上であるケースが多く、主担当を任されると年収700万円も見えてきます。40代・50代のベテラン層になると700万円以上となり、責任者やスペシャリストになると1,000万円以上稼いでいる人も少なくありません。
ほかの管理部門系職種の平均年収は以下のとおりです。
内部監査人の平均年収は約650万円なので、管理部門系職種の中でも特に高い水準にあることがわかります。
内部監査のキャリアパスの例と、内部監査の転職に強いエージェントやおすすめの資格を紹介しました。
内部監査のキャリアを歩むためには、実務経験と、資格の取得などをもとに知識の取得が必要です。計画性をもって内部監査になるための準備をしましょう。
内部監査に転職する場合、「BEET-AGENT」など特化型の転職エージェントを利用すると転職活動がスムーズに進みます。
法務部・経理財務をはじめとした管理部門のコンサルタント。不動産営業・管理事務等を経験したのち、バックオフィス専門のアドバイザーとして参画。