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昨今、経理を採用できないと感じている企業は少なくありません。
少子高齢化などによって労働人口は減少し続けることから、労働市場の競争は今後さらに激化するため、経理人材の確保が一層困難になっていきます。
労働市場の競争から抜け出すためには、なぜ経理を採用できないのかを理解したうえで、適切な戦略を立てることが大切です。
本記事では、経理を採用できない理由と採用を成功させるコツ、採用できない場合の対策について解説いたします。
経理部門の人材不足は深刻な状況にあり、多くの企業がこの問題に直面しています。
実際、管理部門に特化した転職エージェントのBEET-AGENTの保有経理求人をみても、非公開求人を含めて4,000件以上の求人がある状況なので、これだけ経理人材を求めている企業があることがわかるでしょう。
経理の人材不足の主な要因としては、「法制度対応に伴う業務量の増加」「新たな経理人材の採用難」「業務の自動化やシステム導入の遅れによる生産性の低さ」が挙げられます。
経理を採用できない理由は、次の5つです。
それぞれ詳しく解説します。
経理は、企業の財務情報をはじめとする機密情報を扱う性質上、高い倫理観が求められている他、朝一夕では習得できない専門性が必要です。
そのため、経理の採用にあたって経理経験者を求める傾向にあります。
しかし、高い専門性・倫理観を持った経理人材は企業も手放したくないため、重宝されやすく、経理経験者も特別な事情がない限り、現在の職場に長く留まる傾向があります。
その結果、経理経験者が転職市場に出回らず、経理経験者を求めている企業が採用できないという事態になっています。
経理職は会計や税務に関する深い知識はもちろん、財務分析や経営戦略への理解など、高度な専門性が要求される職種です。
また、会計ソフトウェアの操作スキルや法令順守の意識も必要となります。
そのため、経理の採用にあたって企業は、多岐にわたる専門知識とスキルを持つ人材を求めていることが多いですが、このような人材を見つけるのは容易ではありません。
特に中小企業は1人で幅広い業務をこなせる「オールラウンダー」的な人材を求めることが多いため、人材確保はさらに困難となっています。
経理は企業の財務情報を扱い、企業の機密情報や資金管理などにも携わる重要なポジションです。
倫理観に欠ける人材を登用してしまうと、情報漏洩や不正会計、横領などが起きるリスクが高まります。
そのため、経理を採用する際は、倫理観の高さや信頼関係も重視しなければなりません。
倫理観が高く信頼関係できる人材でないと採用に踏み込めない点も、経理を採用できない理由です。
経理の人気が低迷しているのも、経理を採用できない理由の1つです。
近年は、動画クリエイターやWebマーケターなど、より創造的で刺激的な職種がフォーカスされやすく、経理は地味で退屈なイメージを持たれがちです。
また、AIや自動化技術の進展により、将来的に経理業務の一部が代替される可能性があるという懸念も、経理人気の低下に拍車をかけています。
その結果、新卒採用市場でも経理職志望者が減少したり、経理から別の職種にジョブチェンジしたりして人材の確保が難しくなっています。
自社とマッチする人材と出会えないのも、経理の採用が難しい理由の1つです。
経理は信頼関係が求められる職種であるため、高い倫理観が必要な他、各部署と連携する都合上、高いコミュニケーションスキルが求められます。
また、企業によって求める経理スキルや経験は様々です。
例えば、ベンチャー企業では柔軟性と多様なスキルを持つ人材が求められる一方、大企業では特定の分野に特化した専門性が重視されることがあります。
このような多面的な要素を満たす人材を見つけることは容易ではなく、経理スキルが高くても、企業文化・価値観とマッチしないケースも少なくありません。
結果として、適切な人材との出会いが難しく、採用に時間がかかってしまいます。
経理の採用確率を高めるコツは、次の6つです。
採用条件や雇用条件の見直しが重要です。
求職者に求めるハードルを高く設定しすぎてしまい、応募者が限られてしまっていることが少なくありません。
経理の実務経験年数や資格の要件などの採用条件を緩和することで、応募者の幅を広げられます。
また、給与や福利厚生、勤務時間などの雇用条件を選ばれやすい待遇に見直すことで、優秀な人材を引き付けられます。
採用確率を高めるためには、採用プロセスの効率化も重要です。
応募から内定までの期間が長すぎると、優秀な候補者を逃してしまう可能性があります。
選考辞退率が多い場合は、面接回数を必要最小限に抑えたり、オンライン面接を活用したりするなどして、プロセスの簡素化をおすすめします。
また、選考基準を明確にし、面接官間で共有することも大切です。
経理業務のマニュアルを整備し、それを強調することも重要です。
採用面接まで進んだとしても、マニュアルが整備されておらず、引き継ぎが不十分であると感じられてしまうと、入社後の業務遂行に不安を抱き、辞退される可能性が高くなります。
マニュアルを整備して引き継ぎ体制の充実をアピールできれば、候補者に安心感を与え、入社の決断を促せます。
経理人材を惹きつけるためには、自社の魅力を効果的にPRすることが重要です。
例えば、経営陣との距離が近く経営に深く関われる環境であることや、最新の会計ソフトを導入していることなどは、経理人材にとって魅力的なポイントになります。
今は求職者が企業を選ぶ時代です。
企業は求職者の目線に立ち、求職者がこの企業で働きたいと思える情報を積極的に発信していかなければなりません。
採用活動を成功させるためには、求める人材像や業務内容、キャリアパスなどの情報を整理し、明確化することが重要です。
これにより、応募者とのミスマッチを防ぎ、採用後のギャップを最小限に抑えられます。
また、求める人物像などを言語化して全体で共有すれば、解釈を統一できるため、担当者ごとの評価違いによる不採用リスクを低減できます。
採用チャネルを多様化することも効果的です。
現代は求人サイトや人材紹介会社だけでなく、SNSや業界特化型の転職サイト、経理・財務の専門家コミュニティなど、さまざまな採用方法があります。
自社に合った採用方法を複数組み合わせることで、応募者数の増加および、採用率の向上が期待できます。
経理の効果的な採用方法は、次の4つです。
それぞれ詳しく解説します。
経理専門の求人サイトは、経理職に特化した求人サイトです。
経理のスキル・資格を持つ求職者が多く集まっているため、専門性の高い人材を採用したい場合や、即戦力となる経験者を探している場合に適しています。
ただし、一般の求人サイトよりも求人掲載の料金が高くなる傾向にあるため、予算と相談しながら利用を検討しなければなりません。
また、求人情報を掲載する際は、具体的な業務内容や求めるスキルを明確に記載し、ミスマッチを防ぐことが重要です。
人材紹介エージェントは、エージェントに登録している豊富な求職者データベースの中から企業のニーズに合った人材を紹介してくれる採用方法です。
企業のニーズをヒアリングしたうえで人材を紹介してくるため、マッチング精度が高く、質の高い経理人材を効率的に採用する方法として注目されています。
また、求職者のやりとりや条件交渉のサポートなども仲介してくれるため、採用プロセスがスムーズに進みやすいというメリットもあります。
ダイレクトリクルーティングサービスは、企業が直接求職者にアプローチできる新しい採用方法です。
このサービスを利用すれば、登録されている求職者の中から、自社のニーズに合った人材を検索し、企業側から直接スカウトできます。
特定のスキルや経験を持つ人材をピンポイントで探してアプローチできるため、効率的に採用活動を進められます。
リファラル採用とは、社員からの紹介で人材を採用する方法です。
リファラル採用であれば、企業文化や業務内容を理解している社員が知り合いを紹介してくれるため、ミスマッチが少なく、定着率も高くなる傾向があります。
ただし、リファラル採用は企業に魅力がないと、知人を紹介してくれません。
そのため、リファラル採用を推進するためには、社員の満足度を向上させて、魅力的な企業だと思ってもらう必要があります。
経理を採用できない場合の対策は次の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
経理で人手不足が発生した場合、まずは業務プロセスの改善を検討することが重要です。
業務プロセスの見直しによって、業務の効率化を図れます。
例えば、重複する作業や無駄な手順を排除し、業務の流れをスムーズにすることで、少ない人員でも業務をこなすことが可能です。
また、業務の標準化を進めることで、誰でも同じ品質で作業できるようにし、特定の人に依存しない体制を整備できます。
これにより、業務の属人化を防ぎ、効率的な業務運営が可能となります。
業務のデジタル化も有効な対策です。
デジタルツールやソフトウェアを活用して経理業務を自動化することで、作業時間を大幅な短縮が可能です。
また、クラウドサービスを利用すれば、データの共有やアクセスが容易になり、リモートワークの推進にもつなげられます。
リモートワークが定着すれば、場所にとらわれずに業務を進められます。
そのため、全国にいる優秀な人材を採用できる他、旦那の転勤など、やむを得ない事情によって生じる人材流出の抑制が可能です。
経理業務の外注化も手段の1つです。
例えば、給与計算や税務申告などの専門知識が必要な業務を外注することで、内部のスタッフはより重要な業務に集中できます。
また、外注先の専門知識や経験を活用することで、業務の質を向上させることも可能です。
このように、経理業務の1部を外部の専門業者に委託すれば、経理を採用できない場合でも内部のリソースを効率的に活用できます
経理人材の採用難は、多くの企業が直面している課題です。
経理を採用できない背景には、「経理経験者が転職市場に出回らない」「専門性が求められる」など、多くの要因があります。
経理人材の確保は企業経営に直結する重要課題です。
そのため、企業の持続的成長を左右する戦略的課題として捉え、経営層を巻き込んだ全社的な取り組みが求められます。
法務部・経理財務をはじめとした管理部門のコンサルタント。不動産営業・管理事務等を経験したのち、バックオフィス専門のアドバイザーとして参画。