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近年、予防法務の認知拡大や市場環境の変化で、企業法務の重要性が増してきました。
しかし、企業法務が具体的にどのような役割を果たすのか、よくわかっていないという方は多いです。
本記事では、労務管理とは何かについて、担う役割や仕事内容などを踏まえてわかりやすく解説します。
企業法務とは、企業活動で生じる法的トラブルの予防・対応、指導などに関連する諸活動の総称です。
企業法務には法的トラブルを予防する「予防法務」、発生した法的トラブルに対応する「臨床法務」、経営戦略を手助けして新規事業・M&Aの法的検討などを実施する「戦略法務」の3種類があります。
企業法務の担う役割は、次の2つです。
法令違反によって刑事罰を科されたり、訴訟事件に発展したりしてしまうと、社会的な信用の低下につながり、最悪の場合は企業の存続も危ぶまれる事態になりかねません。
守る役割とは予防法務のことであり、リスク管理の観点から経営の意思決定や運用体制を確認し、リスクを最小限に留めて損害を発生させないという役割を担っています。
リスクを最小限に留めているだけでは、企業の成長は見込めません。
企業を大きく成長させるためには、新規事業を創出するなどして、ビジネスを拡大させる必要があります。
攻める役割とは戦略法務のことであり、事業・業務の執行を適正化したり、法律・契約をうまく活用して競争力を高めたりするなど、法的観点から新規事業を支援する役割を担っています。
企業法務の重要性が増している理由は、大きく分けて2つあります。
1つ目が、予防法務の認知拡大です。
取引先と紛争が生じた場合は損害賠償が発生する可能性があり、訴訟事件が生じた場合は対応するためのコストが生じる他、社会的信用の低下につながるリスクがあります。
法的トラブルによって生じる損害リスクを低減する方法として、予防法務の認知度・重要度が高まった結果、企業法務の重要性も相乗的に増してきました。
もう1つが、市場環境の変化です。
市場のグローバル化により、海外事業を展開する企業は現地の法令にも対応する能力が必要となりました。
また、現代では違法ではないことを証明するだけでなく、社会的に受け入れられるものなのかという視点も重要視されるようになっています。
市場の変化によって変化していく法令対応が求められるようになったことも、企業法務の重要性が増している要因の1つです。
企業法務の主な業務内容は、次の10つです。
それぞれ詳しく解説します。
企業法務の基本業務の1つとして挙げられるのが、リーガルチェックです。
リーガルチェックは、不都合な条項はないか、法律に違反する条項が含まれていないかなど、あらゆる視点で契約書の内容を確認します。
契約に基づいて事業を遂行し、トラブルによる損害を回避するためには、欠かせない業務です。
コンプライアンス(法令遵守)も、企業法務に求められる業務の1つです。
社内秩序を維持するための社内規定の策定や内部通報窓口の設置、コンプライアンスの社内研修の実施など、その業務内容は多岐にわたります。
ガバナンス(機関法務)は、株主総会や取締役会といった会社の内部機関の活動が適法に運営されるようにサポートする事務局業務です。
ガバナンスは会社法をはじめとする法律知識が必要なことから、企業法務が担当していることが少なくありません。
ガバナンスの主な業務内容は株主総会などのサポートですが、上場対応や組織再編などの業務にも対応します。
従業員を雇用する企業が避けて通れないのが、労務・労働関連の業務です。
労務・労働関連の業務内容としては、雇用契約書のリーガルチェックや労働紛争の解決、労務関連の社内規定の整備、労働基準監督署の対応などが挙げられます。
また、セクハラなどのハラスメントが近年、大きな課題となっています。
そのため、ハラスメント関連の相談窓口の設置や、ハラスメント相談の対応なども労務・労働関連の業務に含まれるようになりました。
法務関連の相談に対応するのも、企業法務が担当する業務の1つです。
相談後、経営者・事業者にヒアリングして、取引内容や相談内容、問題点を把握し、サポートを行います。
ただ、問題となっている事業によって関連する法律は異なります。
さまざまな相談に対応するためには、幅広い法律知識を習得しておかなければなりません。
各種法令は時代の変化に合わせて、改正が行われています。
そのため、法令改正が自社にどのような影響を与えるのかを調査をし、法令に遵守するように社内周知するのも企業法務の業務の1つです。
また、海外事業を展開している場合は、海外の法令改正にも注意する必要があります。
知的財産権関連の業務内容は、知的財産権の取得・管理・行使です。
知的財産権を軽視してしまうと、他社に技術・ノウハウを奪われてしまう他、他社から知的財産権の侵害を理由に損害賠償請求や差し止めされるリスクがあります。
知的財産権は、著作権などの知的財産法が適用されることから、法的知識のある企業法務が担当します。
社内外のトラブルや顧客からのクレームが生じた際、企業法務が紛争解決を担当することが少なくありません。
これは、紛争が訴訟などの法的紛争手段に発展する可能性が高いからです。
訴訟に発展した場合、企業法務のみで対応するケースもあれば、外部の弁護士と連携する
ケースもあります。
なお、外部弁護士に依頼する場合、連絡や相談、費用交渉なども企業法務が担当することが多いです。
債務不履行による債権回収のリスクを回避して資金繰りを安定させるためには、債権をしっかりと管理しておく必要があります。
また、不払いとなった債権については、訴訟や強制執行などを実施して債権の回収を図らなければなりません。
これら債権の回収・管理も、企業法務が担当する業務の1つです。
事業承継・M&Aは、会社法や金融商品取引法、労働契約承継法など、さまざまな法令を遵守しなければなりません。
これら法令を遵守できていなかった場合、事業承継・M&Aが無効になるだけでなく、最悪の場合、損害賠償請求の発生も考えられるでしょう。
そのため、事業承継・M&Aが適法で実施されるようにサポートするのも、企業法務の業務として任されます。
企業法務が理解しておくべき法律は、次の6つです。
それぞれ詳しく解説します。
会社法は、会社の設立や運営、管理など、会社にかかわるさまざまなルールを規定した法律です。
利害関係者の利益確保や法律関係の明確化などを目的に、2006年に施行されました。
会社法は分量が多くすべてを網羅するのは大変なため、自社にかかわる法令について最低限理解しておくとよいです。
労働法は、雇用者と労働者の関係性を定めた法律の総称です。
具体的な法律は、「労働基準法」や「労働契約法」などがあり、従業員を雇用して労働させる際のルールが規定されています。
従業員の雇用は主に人事部が担当していますが、労使関係のトラブルなどは企業法務がかかわることも多いです。
そのため、各労働法を理解して、法令が遵守されるよう努めなければなりません。
独占禁止法は、企業間の自由かつ公正な競争を促し、消費者の利益を図るために施行された法律です。
独占禁止法違反は刑事罰の対象であり、企業イメージの低下を招くなど、企業に与える影響は非常に大きいものとなります。
そのため、企業法務は独占禁止法を理解して、これらリスクを低減するよう努めなければなりません。
知的財産法は、知的財産の保護を目的に定められた法律の総称です。
具体的な法律としては「著作権法」「商標法」「特許法」などがあり、知的財産の創作を促し、他人が無断利用しないように保護することを目的に施行されました。
自社の知的財産を保護し、知らないうちに他社の権利を侵害しないためにも、企業法務では知的財産法の理解も深めておく必要があります。
消費者保護法は、消費者の保護を目的に定められた法律の総称です。
「消費者契約法」や「特定商取引法」などが挙げられ、知識・交渉力が弱い消費者が企業との取引で不利益を被らないように施行されました。
BtoC取引がメインの企業は、消費者保護法の違反リスクが高いです。
そのため、BtoC取引がメインの場合、企業法務は消費者保護法を正しく理解して、法令遵守を徹底させなければなりません。
個人情報保護法は、消費者・取引先の個人情報を取り扱う事業者が守るべきルールを定めた法律です。
デジタル化により、多くの企業が個人情報をデータベースで管理するようになった一方、個人情報の流出リスクも高まっていることから、消費者・取引先の個人情報を守るために施行されました。
企業法務に必要な資質は、次の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
企業法務に必要な資質の1つが、コミュニケーションスキルです。
企業法務の役割は拡大し、社内外の人間と協業や連携などの機会が増えています。
企業法務の役割を果たしながら、社内外の人間とトラブルなく業務を進めていくためには、コミュニケーションスキルが欠かせません。
企業法務として活躍するためには、法令や裁判例、社会情勢だけでなく、経営者や事業部以上に事業内容を理解しておかなければなりません。
しかし、法令や裁判例、社会情勢、事業内容は日々変化しています。
これらの変化に対応し、企業法務としての役割を果たすためには、継続的な学習意欲が必要です。
企業活動を法務の立場から包括的に支援するには、法的知識だけでなく、契約交渉スキルや公的思考力、対外交渉のための文章作成力や法令調査力など、多くの専門スキルが必要です。
そのため、企業法務で活躍していきたいのであれば、バランサーになる柔軟性も求められます。
企業法務に関する資格は、次の5つです。
それぞれ詳しく解説します。
ビジネス実務法務検定とは、法令遵守やコンプライアンスの基礎となる実務的な法令知識の習得を目的とした検定です。
3級(初級レベル)・2級(中級レベル)・1級(上級レベル)の3つの級があり、1級を受験するためには2級に合格しておく必要があります。
法務関連の資格の中では知名度が高く、法務実務の経験がない場合でも2級以上の資格を取得しておけば、就職・転職時にアピールできます。
ビジネスコンプライアンス検定とは、コンプライアンス経営・コンプライアンス行動の理念・目的の理解度や、ビジネスシーンでの対応の習得などを目的とした検定です。
初級試験・上級試験の2種類があり、学習期間は初級が1~2ヶ月程度、上級が2~3ヶ月程度と比較的短い期間で資格の取得が見込めます。
また、同試験はビジネスマンとして必ず知っておかなければならない知識を習得できるため、就職・転職時に評価する企業が増えています。
そのため、企業法務として活躍する入口として、挑戦する価値のある資格です。
行政書士とは、遺言書などの権利義務に関する書類や許認可などの申請書類の作成、提出手続きの代理などを行える国家資格です。
合格率10%以下の超難関資格で、働きながら資格取得を目指す場合、学習期間は1年以上となります。
ただし、企業法務では実務経験の有無が重視されている傾向にあるため、資格を取得しているからといって、就職・転職時に高い評価を得られるとは限りません。
司法書士とは、法人登記の代理や裁判所・法務局などの提出書類の作成権限がある国家資格です。
合格率3%前後の超難関資格で、法律知識がない状態から学習した場合、学習期間は数年間単位(3,000時間以上)となります。
司法書士は登記の専門家としてのイメージが強いため、企業への就職・転職では評価を得にくいことから、司法書士事務所に席を置くのが一般的です。
しかし、司法書士に要求される法令知識レベルは非常に高く、対応できる業務範囲も幅広いため、企業法務であっても取得しておいて損はありません。
弁護士は、法務関連の資格の中で最高峰であり、法務関連の業務全般を行う権限が認められている国家資格です。
現在、企業内で活躍する弁護士が増えています。
日本組織内弁護士協会の統計によると、2023年6月時点で3,184人の弁護士が企業内弁護士として就業している状態です。
弁護士資格は就業・転職において強力なアピールポイントとなることから、企業法務で活躍したいと考えている方は取得すべき資格といえます。
ただ、弁護士の合格率は25%程度であるものの、取得するためには、司法予備試験に合格もしくは法科大学院課程(原則3年間)を修了したうえで司法試験に合格し、さらに約1年間の司法修習を修了しなければなりません。
そのため、資格取得までには3年以上の時間がかかります。
予防法務の認知拡大や市場環境の変化により、企業法務の重要性は年々増しています。
弁護士などの各種資格を取得している方であれば、法律専門の人材として高く評価され、重宝される可能性が高いです。
しかし、企業法務の業務内容は幅広い他、企業法務としての役割を果たすためには、会社法や労働法、独占禁止法など、さまざまな法律を理解しておかなければなりません。
また、法律は定期的に改正されている他、多くの人と関わっていかなければならないため、コミュニケーションスキルや継続的な学習意欲といった資質も求められます。
そのため、ポテンシャル採用で企業法務の人材を確保する場合、自社の社風に合うかどうかだけでなく、企業法務で活躍できる人材かどうかをしっかりと確認することが大切です。