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バックオフィスの一つである総務の仕事は、非常に多岐にわたります。例えば、業務に必要な備品の管理・発注、事業所やオフィスなどの管理、社内規定の作成・運用、株主総会の運営、社内イベントの企画・運営などは代表的な総務の仕事です。
中小企業などで人事部や法務部に十分な人員が割けない場合は、勤怠管理や労務管理、契約書の作成・管理、コンプライアンスの管理なども総務部が担います。すなわち、会社を円滑に運営するために必要な、あらゆる業務を担うのが総務部です。
事務的な仕事が中心となる総務部の業務に、特別な資格は必要ありません。しかし、資格取得を通して学んだ知識は、実務へ大いに活かせるでしょう。
本記事では、総務担当としてキャリアアップや転職に役立つ資格をご紹介します。
総務部の仕事は非常に多岐にわたります。会社を円滑に運営するためのあらゆる業務を担当し、場合によっては人事部や法務部の業務を担うこともあるでしょう。
総務部の担当者には、社内外からの問い合わせ等に対応するためのコミュニケーション能力、事務作業に必要なPCスキルと正確性、さまざまな業務を円滑にこなすための臨機応変な対応などのスキルが求められます。
総務部の業務を行うために特別な資格は必要ありませんが、資格取得で学んだ知識は業務に活かせるだけでなく、キャリアアップにも役立つでしょう。
ここでは、総務担当者におすすめの資格10選をご紹介します。
資格 | 審査基準 |
---|---|
中小企業診断士 | 国家資格 |
社会保険労務士 | 国家資格 |
マイナンバー実務検定 | 民間資格 |
衛生管理者 | 国家資格 |
日商簿記検定 | 公的資格 |
メンタルヘルス・マネジメント®検定 | 公的資格 |
ビジネス・キャリア検定 | 公的資格 |
宅地建物主任者 | 国家資格 |
情報処理技術者 | 国家資格 |
人事総務検定 | 民間資格 |
なお、「国家資格」「公的資格」「民間資格」は法的に定義されたものではありませんが、行政の資料や社会通念上の定義は下記の通りです
各資格について、詳細に解説します。
中小企業診断士は、一般社団法人中小企業診断協会が所管する、中小企業支援法に基づく国家資格です。中小企業の経営課題に対応する専門家として、診断や助言を行います。
試験は筆記形式の第1次試験、筆記と面接の第2次試験、実務補習・実務従事の3つのステップに分かれており、令和4年度の合格率第1次試験が28.9%、第2次試験が18.7%です。合格に必要な勉強時間は1,000時間以上といわれており、難易度の高い国家試験といえるでしょう。
中小企業診断士の資格を習得することで、経営全般について診断・分析を行い、助言・提案を行えるようになります。また、難関資格ということもあり、キャリアアップだけでなく、転職や独立などの際にも大きな強みとなるでしょう。
社会保険労務士は、社会保険労務士法に基づく国家資格です。八士業の一つである社労士は、労務のスペシャリストとして、労働社会保険諸法令に基づく申請書類や帳簿書類などの作成や提出を代行する各種法定業務を独占的に行います。社会保険・労働保険に関する相談を受け、助言・指導などを行うことも重要な業務です。
労働法規・社会保険・労働保険などについて問われる社労士試験ですが、第54回の合格率は5.3%となっており、非常に取得が難しい国家資格といえるでしょう。
一般的に、社労士は人事担当や労務担当が取得する資格です。しかし、会社によっては人事・労務の業務を総務が担うケースもあり、社労士の資格を取得すれば業務の幅が大きく広がるでしょう。
合格に必要な勉強時間は1,000時間以上ともいわれる難関資格ですが、取得できればキャリアアップだけでなく、ハイクラス転職や独立・開業も夢ではありません。
マイナンバー実務検定は、一般財団法人全日本情報学習振興協会が実施・認定する民間資格です。社会基盤であるマイナンバー制度に関する理解を深め、特定個人情報を保護して適正な取り扱いをすることを目的としています。
マイナンバー法や個人情報保護法について問われるマイナンバー実務検定は、1級・2級・3級に分かれており、何級からでも受験が可能です。
社会保険や税務関連に必要なマイナンバーは、総務部・人事部・経理部などで扱うケースが多いため、適正な取り扱いができるようマイナンバー実務検定を取得しておくとよいでしょう。
衛生管理者は、厚生労働大臣の指定を受けた公益財団法人安全衛生技術試験協会が所管する、労働安全衛生法に基づく国家資格です。衛生管理業務従事者として、労働者の健康障害を防ぐための職場環境保全、作業管理および健康管理、労働衛生教育の実施、健康の保持増進措置などを行います。
第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の2つに分かれており、第一種衛生管理者は有害業務を含む業種でも衛生管理業務従事者として働くことが可能です。一方、第二種衛生管理者は有害業務を含まない業種に限って衛生管理業務従事者として働けます。
関係法令・労働衛生・労働生理などについて問われる衛生管理者免許試験ですが、令和4年度の合格率は第一種衛生管理者が45.8%、第二種衛生管理者が51.4%です。国家資格の中では比較的取得しやすい資格といえるでしょう。
従業員数が常時50名を超える事業所は、最低でも1名以上の衛生管理者を任命するように義務付けられているため、衛生管理者は需要の高い国家資格です。キャリアアップを目指す総務担当者は、取得しておくとよいでしょう。
日商簿記検定は、日本商工会議所もしくは各地商工会議所が実施・認定する公的資格です。簿記に関する検定試験には、商業高校生向けの全商簿記や専門学校生向けの全経簿記などもありますが、社会人は一般的に日商簿記を受験します。
日商簿記は1級・2級・3級・初級に分かれており、初級は社会人全般、3級は小規模企業の経理担当者、2級は中小企業の経営担当者、1級は大企業の経理担当者が対象です。1級に合格すると税理士試験の受験資格が得られるため、国家資格の登竜門ともいえます。
一般的に、日商簿記は経理担当が取得する資格です。しかし、総務部が給与計算などを担っている場合は、取得しておくと役に立つでしょう。
メンタルヘルス・マネジメント検定試験は、大阪商工会議所が実施・認定する公的資格です。労働者の心の病を未然に防ぎ、メンタルヘルスを適切にケアする手法を学ぶことを目的としています。
一般社員を対象としたⅢ種(セルフケアコース)、管理職を対象としたⅡ種(ラインケアコース)、人事労務管理スタッフや経営幹部を対象としたⅢ種(セルフケアコース)の3つのコースに分かれており、ご希望のコースを受験することが可能です。なお、第33回の合格率は、Ⅲ種が69.4%、Ⅱ種が58.2%、Ⅰ種は17.6%となっています。
メンタルヘルスの不調を訴える労働者が増加するなか、人材管理も担う総務担当者はⅡ種もしくはⅠ種の取得を目指すとよいでしょう。
ビジネス・キャリア検定は、中央職業能力開発協会(JAVADA)が実施・認定する公的資格です。厚生労働省の職業能力評価基準に準拠した8分野41試験の中から、自身の職業に合わせて受験します。
試験分野は「企業法務・総務」「人事・人材開発・労務管理」「経理・財務管理」など8つの分野、1級・2級・3級・BASIC級の4つの等級に分かれています。BASIC級は新入社員、3級は実務経験3年程度の係長相当職、2級は実務経験5年程度の課長相当職、1級は実務経験10年以上の部長相当職などが対象です。
令和4年度後期の合格率は、3級総務が65%、2級総務が48%となっています。職務を遂行するうえで必要となる知識の習得と、総務担当としての実務能力を評価するため、検定試験を受験してみるとよいでしょう。
宅地建物取引主任者は、現在では宅地建物取引士と呼ばれ、国土交通省の指定を受けた一般財団法人不動産適正取引推進機構(RETIO)が所管する、宅地建物取引業法に基づく国家資格です。不動産取引の専門家として、宅地建物の売買や賃貸などの取り引きに対し、重要事項説明などの法定業務を独占的に行います。
令和4年度の合格率は17.0%、合格基準点は50点満点中36点となっており、国家資格の中では比較的取得しやすい資格といえるでしょう。
一般的に、宅建士は不動産会社などに勤める方が取得する資格です。しかし、総務は事業所やオフィス、社員寮や社宅などの賃貸借契約について、不動産会社と折衝する機会が多くあります。
不動産関連業務を行う際に、不動産会社と対等に交渉し不利な契約を結ばないため、宅建士の資格は役に立つでしょう。また、宅建士は伝統ある国家資格でもあるため、転職などの際に大きな強みとなります。
情報処理技術者は、経済産業省の指定を受けた独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が所管する、情報処理の促進に関する法律に基づく国家資格です。ITに関する知識・技能が一定以上の水準であることを認定するとともに、情報処理技術者としての技術向上を図ることを目的としています。
情報処理技術者試験は、全ての社会人を対象に共通的な知識を学べるITパスポート試験、基本的な知識・技能を認定する基本情報技術者試験、応用的な知識・技能を認定する応用情報技術者試験などからなり、どの区分からでも受験が可能です。
総務は自社サイトの運営や社員データベースの管理などを担うケースもあるため、該当する場合はITパスポート試験もしくは基本情報技術者試験の資格を取得しておくとよいでしょう。
人事総務検定は、一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会が実施・認定する民間資格です。人事・総務のスキルアップを目的としています。
人事・総務の基礎的な知識が学べる3級、労働法規・労働保険・社会保険に関する一般的な知識を有した方を対象とした2級、人事・総務に関する高い知識を有した方を対象とした1級の3つの資格レベルに分かれており、ご自身のレベルに合わせてどの資格レベルからでも受験が可能です。
なお、3級と2級に関しては特別認定講習を修了することで取得することもできます。1級は社労士試験と重複した分野から出題されるため、社労士試験合格を目指している方の予行練習としても最適です。
総務の仕事に資格は必須ではありませんが、取得することでさまざまなメリットを受けられるのも事実です。ここでは、総務担当者が資格を取得するメリットをご紹介します。
総務の仕事は非常に多岐にわたるため、時には専門的な知識を求められることもあります。そのようなとき、資格取得で学んだ知識があれば効率的かつ正確に業務を進めることができるでしょう。
例えば、労務管理の業務を担う場合は人事総務検定や社労士などの資格が有効です。給与計算などは日商簿記の知識が役に立つでしょう。不動産に関する業務を行う場合は、宅建士の資格が非常に有効です。
その他にも、職場衛生に関する業務なら衛生管理者やメンタルヘルス・マネジメント検定、ITやパソコンに関する業務は情報処理技術者などの経験をいかせます。
資格は、自身が保有する知識や技能を客観的に証明するものです。積極的な資格取得は、勤勉で向上心の高い人材であるとのアピールにもなるでしょう。社内におけるキャリアアップはもちろん、転職などにも大いに役立ちます。
社労士や中小企業診断士などの難関資格を取得できれば、ハイクラス転職や独立・開業も夢ではありません。日商簿記・宅建士・情報処理技術者などの資格を取得すれば、異業種への転職も可能となるため、キャリアの幅が大きく広がります。
会社によっては、所定の資格を取得することで資格手当が支給されることもあります。もちろん、総務部であっても例外ではありません。収入アップを目指す場合は、指定された資格を取得するのも一つの方法です。
また、資格の取得は人事評価にもプラスに働くため、昇給や昇進の可能性もあります。賞与査定においても有利に働くかもしれません。転職などの際には、社内規定や福利厚生などに資格手当を規定している会社を選択するのもよいでしょう。
総務の仕事は多岐にわたるため、取得する資格も慎重に選ばなければなりません。特に、仕事と並行して難関資格の取得を目指すには一定の覚悟が必要です。
ここでは、総務の仕事に役立つ資格の選び方をご紹介します。
資格の取得は目的ではありません。資格取得はあくまで手段であり、本来の目的はキャリアアップや業務の精度向上・効率化などです。資格を取得する場合は、自身が担当している業務に関連した資格を選択しましょう。
例えば、労務管理をしている場合は、人事総務検定や社労士などの資格が最適です。総務部で給与計算を行っている場合は、日商簿記の資格が役に立つかもしれません。オフィスや社宅などの不動産管理を任されている場合は、宅建士の資格が有効です。
その他、人と関わる業務なら衛生管理者やメンタルヘルス・マネジメント検定、自社サイトや社員データベースの管理を担当している場合は情報処理技術者などを目指すとよいでしょう。
将来のキャリアアップや転職などを視野に、資格取得を目指すのもよいでしょう。資格は知識やスキルを客観的に評価する指標となるため、昇進や転職で有利に働く可能性があります。
特に、社労士や中小企業診断士などの難関資格は評価も高いため、キャリアの幅が大幅に広がるでしょう。仕事と並行してこれらの資格を取得するには一定の覚悟が必要ですが、取得できればハイクラス転職や独立・開業も夢ではありません。
一部の難関資格は、独学での取得が非常に難しいといわれています。社労士や中小企業診断士などを目指す場合は、資格予備校を利用するのも一つの方法です。
ここでは、総務系資格の取得に役立つ予備校・通信講座4選をご紹介します。
KIYOラーニング株式会社が運営するスタディングは、オンライン専門の資格取得通信講座です。
スマートフォンやパソコンを利用し、スキマ時間でいつでもどこでも資格試験の勉強ができます。試験に頻出のテーマに絞った1動画5分の講義で、忙しい仕事の合間でも無理なく学習を続けられるでしょう。
なお、対応の資格は中小企業診断士、社労士、宅建士、メンタルヘルス・マネジメント®検定、ITパスポート試験、基本情報技術者試験などです。
TAC株式会社が運営する資格の学校TAC(タック)は、北海道から沖縄まで日本全国をカバーする大手資格予備校です。
全国の校舎に通って受講する通学スタイルに加え、パソコンやDVDを使った通信スタイルを選択することもできます。ライフスタイルに合わせて無理なく学習を進めることができるでしょう。
なお、対応の資格は社労士、衛生管理者、メンタルヘルス・マネジメント®検定、中小企業診断士、宅建士、ITパスポート試験、基本情報技術者試験などです。
株式会社東京リーガルマインドが運営するLEC(レック)東京リーガルマインドは、全国展開の大手資格予備校です。
学習形態は、校舎に通学して受講する通学講座と、インターネットやDVDで受講する通信講座から選択できます。定期的に早期申込割引や還元祭などを実施しているため、お得に資格を取得したい方はこまめにWebサイトをチェックしてみましょう。
なお、対応の資格は社労士、衛生管理者、人事総務検定、中小企業診断士、メンタルヘルス・マネジメント®検定、宅建士、ITパスポート試験、基本情報技術者試験などです。
株式会社ユーキャンが運営するユーキャンは、資格取得を始めとした生涯学習をサポートする通信講座です。
専用テキストを使った学習と、インターネットを介したWeb学習が中心ですが、効果的な学習を助けるサポートサイトである学びオンラインプラスなどを通し、手厚いサポートを受けられます。通信講座に不安がある方でも安心して受講できるでしょう。
なお、対応の資格は社労士、衛生管理者、メンタルヘルス・マネジメント®検定、宅建士、ITパスポート試験などです。
繰り返しになりますが、資格の取得は目的ではありません。総務職への転職を希望する場合は、実務経験も重要な評価基準です。
総務職未経験者であったとしても、幅広い業務を担う総務の仕事にはバックオフィスの経験が大いに活かせるでしょう。総務だけでなく、人事や経理など幅広い専門知識を習得する姿勢が重要です。
しかし、資格取得が全くの無意味というわけではありません。資格は知識やスキルを客観的に表すバロメーターにもなるため、未経験者でもポテンシャルが評価され採用に結びつくかもしれません。
また、難関資格である社労士や中小企業診断士の資格を取得できれば、有利に転職活動を進めることができるでしょう。
今回は総務におすすめの資格10選をご紹介しました。
総務担当に資格は必須ではありませんが、知識やスキルを客観的に表す資格の取得は、転職やキャリアアップに大いに役立ちます。社労士や中小企業診断士などの難関資格を取得できれば、ハイクラス転職や独立・開業も夢ではありません。
総務の仕事は非常に多岐にわたるため、求められるスキルや知識もさまざまです。担当業務に応じて最適な資格を取得することで、仕事の精度向上や効率化を実現できるでしょう。
当記事を参考に資格を取得し、キャリアアップを目指しましょう。