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CFOは「Chief Financial Officer」の略語で、日本語では最高財務責任者と訳されます。
近年のグローバル化やデジタル化、DXの推進といったビジネス環境の変化を受け、企業の財務戦略が重要視され、それにともなってCFOのニーズが高まっている状況です。
本記事では、CFOとは何かをテーマに、役割や重要性、業務内容や必要なスキルなど押さえておくべき情報を解説します。
CFOの就任を目指す方に向けて、CFOのバックグラウンドや資格、就任するメリット・デメリットなども紹介します。
CFOは、財務戦略を経営戦略に取り込みや企業の経営をマネジメントする経営幹部のひとりです。
ビジネスを取り巻く環境はめまぐるしく変化を続けており、企業は国内だけでなく国際的な競争力を強化しなければ生き残れない時代になっています。
そのような背景もあり、企業は財務部門の強化を重要課題としており、財務戦略の立案・実行を担うCFOを求めています。
CFOの重要性が増している背景には、いくつかの要因があります。
まず、きっかけとなったのはバブル崩壊です。
バブル崩壊後、多くの企業が経営危機に陥り、財務面での厳しい判断が求められていた一方で、金融機関からの融資は困難になり、個人や機関投資家からの資金調達が必要になりました。
また、大企業の不正会計や内部統制の不備などの問題も発覚し、企業は財務管理の透明性を高める必要もありました。
それらを対応するには、専門性の高い知識やステークホルダーとの対話力が求められ、企業の財務健全化に対応可能なCFOの存在が重要視されていったのです。
近年では、グローバル化にともなう経営環境の変化においても、CFOの重要性が高まっています。
グローバル市場で競争優位性を確保するためには、国際会計基準や税制、リスク管理などに精通したCFOが不可欠です。
海外展開やM&Aなど、戦略的な判断、DXの推進においても、CFOが必要です。
デジタル技術の活用により、財務データの収集や分析が効率化され、より迅速かつ正確な意思決定が可能になりました。
同時に、デジタル技術は財務部門だけでなく、組織全体のビジネスモデルや価値創造に影響を与えます。
そのため、CFOはDXを推進するリーダーとしてイノベーションや変革を牽引することが求められています。
経営陣の一員として、財務的な視点から経営に貢献することが期待されるのがCFOですが、単なる財務のエキスパートではありません。
財務部門の人事管理や組織運営、業務改善などを通じて財務の専門性を高めるとともに、財務の面から組織全体をマネジメントする役割を担います。
また、業務プロセスの改善による効率化とコスト削減を推進することで、組織の競争力や収益性を向上させることも大きな役割です。
CFOと財務部長のどちらも企業の財務に関する重要な役割を担っていますが、その職務内容や責任範囲は異なります。
CFOは、経営陣の一員として財務戦略や予算管理、資金調達、リスク管理などを担当します。
また、株主や投資家、金融機関などの外部ステークホルダーとのコミュニケーションも重要な役割です。
一方の財務部長は、財務部門のトップとして会計や経理、財務分析などの日常的な業務を管理します。
つまり、CFOは内部だけでなく外部の戦略にも注力し、財務部長は主に内部の業務に注力するという違いがあります。
CEOとは、Chief Executive Officerの略称で、最高経営責任者のことを指し、企業の経営全般を統括する役員です。
一方COOとは、Chief Operating Officerの略称で企業の事業運営や業務改善などを担当する役員で、最高執行責任者を意味します。
CFOは、企業の中長期的な成長や収益性を向上させるために必要な資金計画や投資判断など、企業の財務面に特化した役割を果たしており、CEOやCOOは、企業のビジョンやミッションの策定、事業戦略や組織管理など、企業の経営面や事業面に幅広く関与するという違いがあります。
※参考:CFO(最高財務責任者)とは | JACFO 一般社団法人 日本CFO協会 オフィシャルサイト
CFOの具体的な業務内容について、主なものを挙げます。
業務内容を知ることで、自身の適性判断や磨くべきスキルや知識の把握に役立てましょう。
企業の長期的な成長や競争力を高めるために、財務戦略を立案して実行します。
財務戦略の立案においては、資本構成や投資方針、収益性やリスク管理など財務に関する全体的な方向性を示します。
経営陣や取締役会と協力して財務戦略を策定し、財務部門や関連部門と連携して実行するのは、CFOの重要な業務のひとつです。
企業の事業活動や投資計画に、必要な資金を調達します。
市場環境や企業の財務状況に応じて最適な資金調達方法を選択し、実施することが求められます。
資金調達にともなうコストやリターンを評価し、効率的な資本運用をおこなうことも重要な仕事です。
上場を目指す企業では、企業の財務報告や経理処理に関する内部統制を確立し、維持することが求められます。
そのためCFOは、内部統制の設計や実施に関する方針や基準を策定します。
また、内部監査部門やリスク管理部門と協力して内部統制の有効性を評価し、改善していきます。
上場準備においては、企業の財務報告に関する外部監査を受けるために監査法人を選定する必要があります。
そのためCFOは、監査法人との契約内容や報酬などを交渉し、監査プロセスを円滑に進めていきます。
また、上場する際に必要な証券会社を選定するのも業務です。
証券会社との契約内容や手数料などを確認・交渉し、上場準備や株式管理を行います。
自社の財務状況や戦略に関する情報を株主や取引先、従業員などのステークホルダーに伝えることも、CFOの業務範囲です。
決算説明会や有価証券報告書などを通じて、ステークホルダーに適切な情報開示を行います。
ステークホルダーからの質問や要望に対応し、信頼関係を構築することも欠かせません。
ベンチャー企業の場合、企業の成長フェーズによってCFO役割や業務内容が変わってくることを押さえておきましょう。
創業したばかりの企業で重要な業務が資金調達です。
金融機関だけでなく、ベンチャーキャピタルや個人投資家なども含めて資金を集める必要があります。
その際の交渉や返済計画の策定、財務諸表の整理や候補リストの作成などが主要業務です。
事業が軌道に乗ってくる拡大期は、財務戦略の立案や実行が主な業務となります。
人件費や広告代、開発費などのコストがかさむ時期なので、予算配分やコスト削減なども重要です。
この時期にはビジネスモデルが確立されているため、ベンチャーキャピタルや投資家から出資を受けやすくなります。
大規模な資金調達もありえる時期なので、CFOの力量が試されます。
上場に向けた準備に入る時期では、内部統制や監査法人の選定といった業務が多くなります。
上場後を見据えた、ステークホルダーとのコミュニケーションや信頼関係の構築も重要な業務です。
キャリアプランのゴールとして、CFOを目指している方もいることでしょう。
CFOに就任するためには、どのようなスキルや知識を高めるとよいのでしょうか?
とくに、重要なスキルや知識について紹介します。
財務諸表や予算、キャッシュフローなど、企業の財務状況を正確に把握・分析・報告する能力が求められます。
税務や監査、コンプライアンスなど、法令や規制に関する知識も必要です。
財務戦略の立案や実行においては、財務モデリングや評価手法、資金調達やM&Aなどの知識も求められます。
CFOは経営陣のひとりとして、企業のビジョンやミッション、目標や戦略に沿った財務戦略を策定・実行する責任があります。
そのためには、経営や業界に関する知識が欠かせません。
自社の業界や市場の動向や競合状況を理解するためには、SWOT分析やPEST分析などのフレームワークを使いこなすスキル、分析結果をもとに具体的な戦略に落とし込むスキルも求められます。
CFOは財務部門だけでなく、他部門や外部ステークホルダーとも連携し、コミュニケーションや交渉を行う必要があります。
そのためには、リーダーシップやチームワーク、アセスメントなどのマネジメントスキルが必要です。
また、財務戦略を実行するにあたり課題が生じた場合には、認識して解決に導く課題解決力や、決定力なども求められます。
CFOへの就任を目指すうえで、どのような経験や資格があると有利になるのでしょうか
人材市場において求められる、バックグラウンドや資格について解説します。
CFOになるために、必ず求められるキャリアはありません。
たとえば、銀行や監査法人、コンサルティングファーム出身、事業会社の経営企画から転身する人も珍しくありません。
CFOには財務領域の知識が必要とされるため、日本では会計や財務畑出身の人が多い傾向です。
CFO発祥のアメリカでは財務出身に限らず、営業部や開発など事業部出身の方も多く見られます。
MBAは経営学の修士号です。
経営戦略や財務管理、リーダーシップなどの幅広い知識とスキルを身につけることができるため、CFOの就任を目指すうえで評価される可能性があります。
国際的に認められた資格なので、グローバルな視野やネットワークを広げることもできます。
公認会計士は、財務や会計に関する専門知識や技能を有する資格です。
会計基準や規則に精通しており、経営判断に必要な情報の提供や法定監査ができる資格なので、CFOの就任で高く評価される可能性があります。
国家資格の扱いであるため、資格の信頼性が非常に高く、CFOとしての信頼獲得にも貢献します。
FASS検定は、経理・財務分野における実務知識やスキルの習得度を測る検定試験です。
経済産業省の委託事業として、日本CFO協会が実施しています。公認会計士のような資格制度ではありませんが、会計や財務の知識・スキルを客観的に示すのに役立ちます。
合否ではなく、5段階でスキルが評価されるため、自分のペースでスキルアップに取り組むことができます。
CFOの年収相場は、1,000万〜6,000万円です。
これだけ幅があるのは、企業の規模や成長フェーズによって大きく異なるためです。
そのため就任後の年収を見通すには、その企業の規模やフェーズに応じた目安を知る必要があ
CFOの年収の内訳は、固定報酬と業績連動報酬の2種類があります。
固定報酬は毎月受け取れる報酬のことで、いわば基本給のような位置づけです。
固定なので就任前の契約で明示されますが、その金額はCFOの経験や市場価値などによって変わります。
業績連動報酬は、企業の業績やCFOとしての成果に応じて支払われる報酬です。
インセンティブの部分なので、モチベーションに大きく影響します。
CFOの年収水準は、企業規模によって大きく異なります。
グローバル人材紹介会社のロバート・ウォルターズ日本法人が公開している「給与調査 2020 日本」によると、東京の大企業で働くCFOの年収は2,500万~6,000万円、中小企業は1,500万~2,500万円となっています。
※参考:ロバート・ウォルターズ・ジャパン|給与調査2020日本 p.35
ベンチャー企業で働くCFOの転職市場の求人を確認すると、1,000万~2,000万円の範囲の求人が多く見られました。
創業年数が短いベンチャーなどの場合には、700万円程度にとどまるケースも少なくありません。
その代わりにストックオプションが付与されるケースもあるので、企業が上場を果たしたときには大きな収入を手にできる可能性があります。
日本ではCFOのポジションがまだ一般的とまではいえないため、CFOの役割や業務内容は企業によって差があります。
また、ポジション名と業務内容があっていないケースもあります。
CFOと呼ばれていても、実際の業務内容が財務部長に近い場合の年収は、700万~900万円くらいが目安となります。
CFOに就任することには、さまざまなメリットがあります。
CFOを目指す場合は、以下のようなメリットを意識しながらキャリアプランを策定してみましょう。
CFOに就任すると、財務戦略や資金配分など会社の重要な意思決定に関わる業務を通じて、ビジネスの成長や方向性に大きな影響を与えることができます。
自社のビジョンや目標に沿った効果的な財務計画を立案・実行することで、会社の業績や競争力を高めることができるのは、大きなやりがいにつながるでしょう。
CFOは、財務だけでなく経営や組織運営にも精通している必要があり、コミュニケーション能力やリーダーシップも発揮しなければならないポジションです。
これらの能力は、どのような業界や職種でも高く評価されるものなので、CFO経験がある人材は市場価値が高まります。
今の職場でキャリアを充実させるだけでなく、将来的にキャリアチェンジを目指す場合にも有利になるでしょう。
CFOは一般的にCEOに次ぐ高いポジションなので、それに見合った高い報酬を得ることができます。
もちろん、年収は会社の規模や業績によって変わりますが、数千万円の年収を手にすることも可能です。
企業によっては、ストックオプションなどを通じて、大きな収入を手にできる可能性もあります。
CFOに就任するとメリットだけでなく、デメリットもあります。
とくに安定性の低下やハードワーク、知識の維持・向上について負担に感じる方も多いでしょう。
大企業のCFOは生え抜きの人材を登用することが多く、社内競争も激しいため、CFOになるためのハードルは極めて高いです。
そのため、中小企業やベンチャー企業のCFO就任を目指すケースが大半ですが、その場合は企業の安定性という点でリスクが生じます。
ベンチャー企業の場合は、経営リスクについてある程度覚悟が必要です。
就任前に企業のビジネスモデルや収益性などをよく確認し、将来性があるかどうかを慎重に見極める必要があるでしょう。
ハードワークになりやすい点は、CFOに就任するデメリットです。
CFOは、企業の業績や財務状況に直接影響を与える重要な決断を行う立場であるため、常に高いプレッシャーと責任にさらされます。
そのため、ストレスや疲労が蓄積しやすく、メンタルヘルスやワークライフバランスに影響を及ぼす可能性があります。
CFOは自社の財務情報を正確かつ適時に開示することが求められるため、法律や規制、会計基準などに精通している必要があります。
そのため、CFOになるまではもちろん、就任したあとにも常に最新の知識や情報をキャッチアップし続ける必要があり、自己学習にも多くの時間を割かなければなりません。
CFOに就任する方法としては、主に「社内昇進」「リファラル」「転職エージェント」の3つがあります。
まずは、社内で昇進する方法が考えられます。
自社のビジネスや組織課題を深く理解した人材を登用させることは、企業にとってのメリットも大きいため、適性が認められればチャンスがあります。
しかし、社内競争を勝ち抜く必要があり、単に仕事をこなすだけでは難しいでしょう。
CFOとして必要なスキルや知識を身につけることはもちろんですが、経営陣や役員とのコミュニケーションや信頼関係の構築も重要です。
自分の業績や貢献を適切にアピールすることも欠かせません。
社内で昇進するのが難しい場合は、リファラルで紹介を受ける方法もあります。
リファラルとは、知人や友人、取引先など自身のネットワークを通じて紹介してもらうことです。
リファラルの場合は、候補者の信頼性が担保されやすいことから、採用の確率が上がります。
また、紹介者から企業の内情や業界の情報などを教えてもらうこともできます。
しかし、紹介とはいえ企業との相性判断は自身でおこないましょう。
転職エージェントを利用する方法もあります。
とくに、ハイクラス人材の転職や公認会計士などの専門職の転職に詳しいエージェントに相談するとよいでしょう。
転職エージェントを利用すると、自分では見つけられない非公開求人や優良企業へのアクセスが可能になることが大きなメリットです。
CFOの求人は少なく競争率も高いですが、転職エージェントの力を借りることで、より多くの選択肢を得られるでしょう。
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各社の特徴を確認し、自分の転職活動のビジョンとマッチするエージェントを選びましょう。
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未経験からコンサルタントを目指す場合の転職、中長期の転職もサポートしている点が特徴になります。
多くのキャリアプラン実現をしてきたエージェントだからこそ、CFOへの転職実現につながる情報も多数持っており、初めて転職を考えている方は利用しやすいでしょう。
公式サイト:https://www.axc.ne.jp/
最後に、CFOが直面している課題、今後CFOに求められることをお伝えします。
あらゆる業界でデジタルの活用が欠かせない昨今、CFOにはビッグデータやAIなどの先進技術を活用して、財務業務の効率化や財務情報の透明性を図ることが求められています。
CFOは企業のデジタル化を推進し、膨大な量のデータを収集・分析して経営判断に役立つインサイトを提供する必要があります。
また、デジタル技術を導入・運用するために、自身や部下のスキルアップや組織改革にも取り組むことが求められています。
ビジネスのグローバル化が加速する中で、グローバル市場における競争力を高めることは多くの企業にとって重要な課題です。
CFOは、海外進出やM&Aなどの成長戦略において、財務面からの支援やアドバイスをおこなう必要があります。
そのためには、グローバルな視点と柔軟性をもち、多様なステークホルダーとコミュニケーションを取ることが求められます。
また、近年はSDGsやESGなどの国際的なキーワードとなる要素も取り込み、経営戦略へと反映させていく必要があります。
CFOはこれらの課題に対応するだけでなく、経営戦略に積極的に関与し、新たなビジネスモデルやイノベーションの創出にも貢献することが求められます。
財務だけでなく、ビジネス全体の状況を把握し、経営陣や他部門と協働して戦略的な決断をくだすことが重要です。
CFOは財務のエキスパートではなく、企業の成長と変革を牽引するリーダーとして活躍する必要があります。
CFOは、財務部門の強化や組織全体のマネジメントを担う経営幹部ポジションです。
財務戦略の立案・実行や資金調達、内部統制など企業の成長フェーズに応じて多様な業務をおこないます。
求められるスキルレベルが非常に高いため、就任するのは簡単ではありません。
しかし、就任すれば大きなやりがいや実績、年収を手にし、人材としての価値を高めることができるでしょう。