IR担当は投資家やアナリストなどのステークホルダーと、企業の間のコミュニケーションを担う職種です。企業の価値を最大化するために重要な役割を果たす職種なので年収は高い傾向がありますが、具体的にはどれくらいの年収なのでしょうか。
この記事ではIR担当の平均年収や特に年収が高い人材の特徴を紹介するとともに、年収を上げるために有効なキャリアパスや磨くべきスキル・知識について解説します。
IR担当の年収について、年代別・役職別の年収やほかの職種との比較を紹介します。
IR担当の年収は企業規模や業務範囲などによっても異なりますが、おおむね年収450万～600万円が水準です。民間給与実態調査によると、給与所得者の平均給与は443万円なので、IR担当の年収は一般的な水準よりも高いことがわかります。
※参考：転職会議|IRの年収まとめ (給料/平均年収/企業名などを集計)
※参考：国税庁|令和3年分 民間給与実態統計調査
20代のIR担当は経験が浅いため、年収も400万円台と平均値より低い傾向にあります。しかし30代になると相応の経験を積むため500万～600万円が目安となります。
40代になるとマネジメントポジションに就く人が多く、年収は700万円以上にまで上がります。IR部門の上級管理職になると年収1,000万～1,200万円といった高年収も見えてきます。
ほかの管理部門系職種の平均年収は以下のとおりです。IR担当の年収は450万～600万円が目安なので、管理部門の中では比較的高い水準にあることがわかります。
IRはしばしば広報職と混同されますが、両者はそれぞれ異なるスキルや知識が求められる職種なので年収にも違いがあります。
広報職は企業の製品やサービス、活動や取り組みなどを一般消費者やメディアに向けてPRすることが主な仕事です。自社製品や業界の知識、マーケティングスキルなどは必要ですが、必ずしも専門的な知識は求められません。
これに対してIR担当は企業の財務状況や経営戦略などを株主や投資家に向けて説明することが主な仕事なので、財務・会計をはじめとする専門的な知識やスキルが必要です。専門性が高い分、IR担当の年収は広報職よりも高く設定されています。
IR担当の年収水準が高い理由としてまず挙げられるのが、IR部門があるのは上場企業や大企業が中心だという点です。全体の給与水準が高く、福利厚生も充実しているためIR担当の年収も高い水準になります。
またIR担当は財務面などの専門性が必要とされるのも理由です。ステークホルダーへの説明責任を果たす役割を担うことから責任が重いため、経験豊富な中堅以上の社員が主担当になることも年収水準を押し上げています。
IR担当の年収水準は高めですが、以下の特徴をもつ人材は特に高い年収を得ています。
IR担当は知識やスキルだけでなく経験も必要な職種なので、経験年数によって年収が変わります。特に年収が高くなるのはIR担当として5年以上の経験がある人材です。
5年以上の経験があるということは、企業の財務や戦略に関する深い知識をもち、さまざまなステークホルダーとのコミュニケーション能力を磨いてきたことを意味します。これらのスキルはIR担当の仕事において非常に重要であり、高い評価や報酬を得るために不可欠です。
また、IR担当として5年以上経験がある人材は自分のキャリアパスを明確にしているケースが多く、自己啓発やスキルアップにも積極的です。これらの姿勢はIR担当としての成長やチャレンジを促進し、さらなる年収アップにつながります。
IR部門の責任者は企業の経営陣や株主、アナリストなどと密接に関わり、企業の財務状況や戦略を的確に伝える役割を担っています。そのため、高いコミュニケーション能力や分析力、説得力が求められます。また、企業の業績や市場動向に常にアンテナを張り、迅速に対応できる柔軟性や判断力も重要です。
IRの専門スキルに限定せず包括的な能力を持つIR責任者は、人材としての価値が高く企業への貢献度も高いため、年収面で優遇される傾向があります。
一般的に外資系企業では、日系企業よりも高い給与水準を設定しています。また業績や評価に応じてインセンティブが支給されることがあります。そのためIR担当の年収が1,000万円以上になることも珍しくありません。
その分、仕事の成果についてはシビアに評価され、成果を出せなければポジションを失う可能性があります。また英語力はもちろん、国際会計基準（IFRS）にもとづいた財務報告が求められることが多いため、その理解も必要です。
このように外資系企業のIR担当は難易度が高いですが、日系企業と比べてかなりの高年収になることもあるため、グローバルな環境に興味がある方はチャレンジする価値があるでしょう。
IR担当は企業の財務状況をわかりやすく伝えることが求められるため、財務知識や分析力が高い人材が必要とされます。この点、公認会計士は会計監査や財務の専門的な知識をもっており、監査経験を通じて企業の内部統制やリスク管理にも精通しています。
会計士の経験とスキルは投資家やアナリストに信頼されるために必要なものであり、公認会計士からのキャリアチェンジ組は高い評価を得ることができます。
IR担当のキャリアパスは多様ですが、以下のキャリアパスを選択することで年収アップの可能性を高めます。
年収を上げるには財務や経営企画へのキャリアチェンジが有効な選択肢のひとつです。これらの職種ではIR担当がもつ株主や投資家とのコミュニケーション能力や、企業の財務状況や戦略を分析する能力、ビジネス知識などを活かすことができます。
財務や経営企画など幅広い業務に携わることで、キャリアアップと年収アップへの道がさらに広がるでしょう。
一般的に財務部長や管理部門の責任者はIR担当よりも高い年収を得ることができます。財務部長や管理部門の責任者になるためには財務や会計の知識だけでなく、経営に関する知識やスキルも必要です。経営陣や社外の関係者との交渉力や調整力も求められます。
IR担当は決算発表や株主総会の準備、アナリストや投資家とのミーティングなどを通じてこれらの能力を身につけることができるため、財務部長や管理部門の責任者を目指すことが可能です。責任者につくことで、さらに高いレベルで企業を支えることができ、人材としての評価も年収も高まります。
CFOは企業の財務戦略や資金調達、財務報告などを担当する役員であり、IR担当者として培ったスキルや経験が活かせます。また、経営陣の一員として企業の方向性やビジョンに影響を与えることができるため、やりがいや責任感も高まります。
CFOになるためにはIR担当としての実績や財務知識はもちろん、経営判断力やリーダーシップなどが必要です。そのためには、自己研鑽や社内外のネットワークづくり、経営層とのコミュニケーションなどを積極的に行うことが欠かせません。
CFOになることは決して簡単ではありませんが、業務の専門性と難易度が高い分、年収アップだけでなくキャリアの幅も広げることができます。
金融業界やコンサルティングファームへの転職も年収アップにつながる可能性を高めます。
金融業界では、証券会社や投資銀行などでアナリストやコーポレートファイナンスの担当者として働くことができます。投資ファンドでポートフォリオマネージャーやリレーションシップマネージャーとして働くことも可能です。
金融業界に転職することで、企業の財務分析や評価、資金調達やM&Aなどの案件に携わることができ、高い年収を得られます。
コンサルティングファームでは戦略コンサルタントやファイナンシャルアドバイザーとして働くことができます。また、IRコンサルティングという専門分野もあります。
コンサルティングファームに転職することで、企業の経営戦略や財務戦略の立案や実行支援、IR活動の改善や最適化などを行うことができ、高い付加価値を提供することで年収アップが期待できます。
年収を上げるにはIR担当としての価値を高める必要があります。それには以下のような知識やスキルを磨くことが有効です。
自社の業界や市場動向に関する知識はIR担当にとって重要です。自社の事業や財務状況を正しく評価し、投資家やアナリストに対して適切な情報提供やコミュニケーションを行うためには、自社の立ち位置や競争力を把握する必要があるからです。業界や市場の変化に対応し、自社の戦略や目標を見直す際にも有効な判断材料となるでしょう。
これらの知識を高める方法としては、たとえば業界団体や専門機関のレポートをチェックする、自社の競合企業や顧客企業の決算発表やIR資料を分析するといった方法があります。
IR担当は企業の経営状況や戦略を外部に伝える役割を担っているため、財務知識や分析スキルが不可欠です。財務知識は財務諸表や会計基準、財務指標など、企業の財務状況を把握するための基礎的な知識です。分析スキルは財務データや市場動向などをもとに自社の強みや課題、競争力や成長性などを評価するスキルです。
これらの知識やスキルを磨くことで 自社の価値を効果的にアピールでき、IR活動の効果測定や改善策の提案にも役立ちます。
IR担当としての価値を高めるためには、対人スキルやコミュニケーションスキルを磨くことも欠かせません。IR担当は社内外のさまざまなステークホルダーと関わり、企業の情報を伝える役割を担っています。
そのため相手の立場やニーズを理解し、適切な言葉遣いや表現方法でコミュニケーションをとることが重要です。相手からの質問や意見に対しても丁寧かつ誠実に回答することで、信頼関係を築くことができます。
自社の財務状況や戦略を外部に伝えるにはプレゼンテーションスキルや表現力が必須です。これらの能力を鍛えるには実践的なトレーニングが効果的です。
たとえば自分の担当する業務やプロジェクトについて人に説明する機会を設ける、自社の強みや課題、将来展望などを簡潔にまとめてみるといった方法があります。またほかのIR担当や専門家のプレゼンテーションを参考にすることなども有効です。
英語力を高めることでIR担当としての価値は大きく向上します。英語力があればグローバルな視点で自社のビジネスを分析し、国際的な基準に沿った情報開示を行うことができます。海外の最新の市場動向や競合情報をキャッチアップするためにも、英語力が必要です。海外の投資家やアナリストからの信頼も得られるでしょう。
英語力を磨くためには、日々の学習と実践が欠かせません。
リーダーシップやマネジメント能力もIR担当としての価値を高めるのに必要です。IR担当は自らの部署だけでなく他部署とも連携し、企業全体のIR活動を推進することがあります。その際には企画や営業、財務などさまざまな部署とコミュニケーションをとり自社の内部情報を収集しなければなりません。
リーダーシップやマネジメント能力を高めるには、IR活動の成果や課題を定期的に分析して改善策を考える、IRチームのメンバーと協力して役割分担や情報共有を行うよう意識することなどが必要です。
転職は年収を上げるための有力な選択肢ですが、IR担当が転職する場合にはポイントがあります。
業務内容や範囲は企業による違いが大きいことを知っておく必要があります。たとえば上場企業では定期的な決算発表や株主総会などのイベントが多く、その準備や運営に携わることが多いでしょう。一方で非上場企業では、資金調達やM&Aなどのプロジェクトが中心となり、その交渉や契約に関わることがあります。
また、IR担当は経営層や財務部門と密接に連携する必要がありますが、その関係性も企業によって異なります。経営層から信頼されていれば戦略立案や意思決定に参画できるチャンスがありますが、そうでなければ単に情報伝達の役割にとどまる可能性もあります。
したがって転職活動の際には自分のキャリアプランやスキルセットに合った企業を選ぶことが重要です。転職先の企業のIR体制や経営方針などを事前に調べておくことも必要です。
IR人材の採用ハードルは非常に高いです。理由として、そもそもIR担当は中途採用で獲得するケースが少ないことが挙げられます。既存人材は自社の事業内容に精通しているという強みがあるため、外部からIR担当を獲得するケースが限定されます。そのうえで、中途採用は即戦力が期待されるため要求水準が非常に高いです。
このようにIR担当としての転職は難易度が高いですが、自分の強みや価値をしっかりとアピールすることで転職可能性を高められます。
IR担当の年収は企業によって差があるため、基本給だけでなく福利厚生や定期昇給の制度なども含めて確認することが大切です。たとえばボーナスがあるかどうか、退職金やストックオプションなどの長期的なインセンティブがあるかどうか、福利厚生の充実度はどうかといった点を確認しておきましょう。
これらの要素は年収に直接影響するだけでなく、働きやすさやモチベーションにも関わります。
IR担当の求人は数が限られているため自分で探すのは困難です。そのため転職支援サービスの利用が必須です。
たとえば転職エージェントでは専門的な知識や経験をもつコンサルタントが求職者のキャリアや志向に合った求人を紹介してくれます。面接対策や日程調整などもサポートしてくれるので、安心して転職活動ができます。
スカウト型の転職サイトを使えば職務経歴を登録することで企業からオファーを受けられるため、自ら探す必要がありません。オファーの件数や内容から自身の市場価値を判断することも可能です。
転職で年収アップを目指すなら、転職エージェントに年収交渉を依頼するとよいでしょう。転職支援のプロが自分の市場価値を正しく評価し、求職者の代わりに企業と年収交渉をしてくれます。
まずは自分の目的や価値観を明確にしておき、信頼できるエージェントを選ぶことが重要です。おすすめは、IR担当の転職支援実績をもつ特化型の転職エージェントです。
たとえば、IR担当の転職支援実績がある「BEET-AGENT」では、IRポジションやIRの経験を活かした職種への転職支援に詳しいアドバイザーが担当してくれます。プライム上場企業などの大手企業から、IPO準備中企業まで求人の幅が広く、選択肢が広がることでしょう。
◆公式サイト：https://beet-agent.com/
転職支援サービスは、求職者側は無料で利用できるため、まずは複数サービスに登録してみることをおすすめします。
IR担当の年収は450万～600万円が目安です。自社の株価に影響を与える重大な責任があり、専門的な知識や高度なプレゼンスキルなども求められるため、年収は高めに設定されています。
IR担当が今よりも年収を上げるには、自己研鑽によるスキルアップや昇進、転職が有効です。IRポジションのままキャリアを積むケースのほか、IRの経験と知識を活かせるほか職種を選択してキャリアチェンジする方法もあります。
選択肢を広く持つことで、年収アップの可能性も広がるでしょう。
