「マネジメント経験って何だろう？」「マネジメント経験がないと転職できないの？」といった疑問を抱えている方は少なくありません。
実際、その定義は企業によって異なり、必ずしも管理職としての経験だけを意味するわけではありません。プロジェクトリーダーやチームリーダーとしての経験、さらには後輩の指導経験なども含まれることがあります。
本記事では、マネジメント経験の具体的な内容や必要なマネジメントスキル・経験などについて解説します。
マネジメント経験とは、一定の地位について、事業や組織を管理（マネジメント）した経験のことです。
マネジメント経験にはリソース配分やスケジュール管理、部下やメンバーの育成・評価など、さまざまな要素があり、企業によってその定義は異なります。そのため、必ずしも管理職としての経験だけを意味するわけではありません。
ここでは、マネジメント経験の中でも代表的な経験を3つ解説します。
プロジェクトの進行・管理は、特定の目標達成のために一時的に編成されたチームやタスクを効果的に運営するスキルのことです。
多くの企業で高く評価されるマネジメントスキルの1つで、プロジェクトの進行・管理経験がある場合、複雑な課題を効率的に解決し、目標を達成する能力を示すことができます。
プロジェクトの進行・管理経験に含まれる業務は、主に次のとおりです。
管理職は、組織内で一定の権限と責任を持ち、部下や部門全体の業務を統括する立場を指します。
一般社員とは異なり、個人の業績だけでなく部門全体の成果に責任を負うため、より広い視野と高度な判断力が求められます。そのため、マネジメント経験において、管理職としての経験は非常に重要です。
管理職経験に含まれる業務は、主に次のとおりです。
管理職はこれら業務経験を通じて、組織全体を見渡す能力や、戦略的思考力などのマネジメント能力を向上させて、実績をあげる必要があります。
したがって、単に役職に就いていただけという場合、マネジメント経験としては不十分です。
マネジメント経験の中でも特に重要な要素の1つとして、部下の教育も挙げられます。組織の持続的な成長と競争力維持のためには、人材の継続的な育成が不可欠です。
部下の教育に含まれる業務は、主に次のとおりです。
また、マネジメント経験としては、単に知識・スキルを教えるだけでなく、どれだけ生産性を向上させたのか、次のリーダーを育成したかなどの成果も重視されます。
マネジメントで求められるスキルは、次の4つです。
それぞれ詳しく解説します。
コミュニケーションスキルは、マネジメントにおいて最も重要なスキルの1つです。
優れたコミュニケーションスキルがあれば、チームメンバー間の信頼関係を構築し、オープンで生産的な職場環境をつくることができます。
また、上司や他部門とのコミュニケーションも円滑に行うことで、組織全体の効率性向上にも貢献します。
チームの協力体制を強化し、目標達成への道筋を明確にするためには、コミュニケーションスキルが欠かせません。
目標設定力は、チームや組織を成功に導くための重要なスキルです。適切な目標を設定することで、メンバーのモチベーションを高め、効率的に成果を上げられます。
また、チームメンバーに明確な方向性を示せるため、彼らの潜在能力を最大限に引き出すことも可能です。
業務管理能力は、限られたリソースを最大限に活用し、効率的にプロジェクトや日常業務を遂行するためのスキルです。
業務管理能力が高ければ、チームの生産性を高め、効率的に目標を達成できます。
また、予期せぬ問題にも柔軟に対応できるため、混乱を避けながらプロジェクトを成功に導くことが可能です。
人材育成力は、チームメンバーの成長を支援し、組織の長期的な成功を確保するための重要なスキルです。
具体的なスキルとしては、ティーチングやコーチング、フィードバックが挙げられます。
昨今ではコーチングを重視する風潮もありますが、大事なことはこれらをメンバーの状態・能力に合わせて、適切に使い分けることです。
適切に使い分けできれば、チームメンバーの潜在能力を引き出し、彼らのモチベーションと成長意欲を高められます。
法務分野におけるマネジメント経験とは、法務部門や法律事務所の運営・管理に関する経験のことです。
ここでは、法務分野におけるマネジメント経験を次の2項目に分けて解説します。
法務部門におけるマネジメントの具体的な業務内容は、次のとおりです。
法務マネージャーは、これらの業務を通じて、ビジネス目標の達成を法的側面からサポートしたり、法務部全体のパフォーマンス向上と組織の法務機能強化に貢献したりします。
法務部門のマネジメントに必要なスキル・知識は、主に次のとおりです。
これらのスキルと知識を総合的に活用することで、法務マネージャーは組織の法的健全性を確保しつつ、ビジネスの成功に大きく貢献します。
経理分野におけるマネジメント経験とは、経理部門の管理職やリーダーとして、チームや業務を統括し、組織の財務戦略を立案・実行した経験のことです。
ここでは、経理分野におけるマネジメント経験を次の2項目に分けて解説します。
経理マネージャーの具体的な業務内容は、次のとおりです。
経理マネージャーは、これらの業務を通じて部門の効率性を高めるとともに、組織全体の財務戦略立案にも関与します。
また、日々変化する法規制や会計基準に対応しつつ、経理業務の品質と正確性を確保することも重要な責務です。
経理部門のマネジメントに必要なスキル・知識は、主に次のとおりです。
経理部門のマネージャーは、業務効率化も進めていかなければならないことも多いです。
そのため、AIや自動化ツールなど、最新のテクノロジーにもアンテナを張り、必要に応じて導入・活用する柔軟な対応力も求められます。
人事分野におけるマネジメント経験とは、組織の人材戦略を立案・実行し、従業員の採用、育成、定着を通じて企業の成長に貢献した経験のことです。
ここでは、人事分野におけるマネジメント経験を次の2項目に分けて解説します。
人事部門のマネージャーの具体的な業務内容は、主に次のとおりです。
人事部門のマネージャーは、これらの業務を通じて、組織の人材価値を最大化し、企業の競争力強化に貢献します。
人事部門のマネジメントに必要なスキル・知識は、主に次のとおりです。
人事部門のマネージャーは、これらのスキル・知識を総合的に活用して、人事部門を育成したり、組織の人材価値を最大化させたりしなければなりません。
マネジメント経験を積む際によくある悩みとして、次の5つが挙げられます。
それぞれの悩みと解決方法について詳しく解説します。
指示に従ってくれない、説明が伝わらないなど、部下と上手くコミュニケーションが取れない悩みは多いです。
近年のリモートワーク勤務の増加によって、対面でのコミュニケーションが減り、コミュニケーション不足に拍車がかかっています。
また、40～50代の中間管理職と10代後半～20代の若者世代で価値観に大きな違いが生まれ、部下との関係に苦労するマネージャーも少なくありません。
この課題を解決するために、次の方法を試してみましょう。
リーダーシップを発揮できないというマネージャー層も多いです。
リーダーシップの欠如は、チームの方向性の喪失や士気の低下を招きかねません。そのため、効果的なリーダーシップを発揮できるように努力していく必要があります。
解決方法としては、次の方法が挙げられます。
マネージャーは個人ではなくチームとしての成果が求められるため、責任が増加し心理的負担も大きくなります。
より健全なマネジメントを実施していくためには、心理的負担をなるべく軽減することが大切です。次のことを実施して、解決しましょう。
生産性が向上しないのも、マネジメント経験を積む際によくある悩みです。この悩みを解決する方法は、主に次のとおりです。
生産性が向上しない要因は、業務プロセスや部下のスキル不足などの要因が考えられます。そのため、要因をしっかりと把握したうえで、これらの解決方法を試していかなければなりません。
現場の第一線で活躍していた方が、マネジメント経験を積む際に苦労するのが人材育成です。この悩みを解決する方法は、主に次のとおりです。
ただし、これらの解決方法をただ実施するだけでは十分とはいえません。
部下を成長させるためには、双方向間のコミュニケーションをしっかりと取りながら、自主性や能力を引き出していく必要があります。
マネジメント能力を高める方法は、次の5つです。
異なる視点から物事を考えることは、マネジメント能力を高めるうえで欠かせないスキルです。
例えば、部下の立場から「何を望んでいるのか」「何を恐れているのか」を考えることで、彼らのニーズや不安を理解し、適切なサポートを提供できます。
このように、多様な意見や視点を尊重し、チームメンバーの立場に立って考えることで、より包括的な意思決定やアドバイスが可能となります。
状況分析・課題解決力はマネジメントスキルの中でも特に重要なスキルの1つですが、正しい状況判断をするためには、論理的な思考が欠かせません。
ロジカルシンキングを意識すれば、論理的思考力を磨けるため、正確な状況判断や適切に問題を解決する能力を高められます。
ロジカルシンキングを鍛える方法は主に次のとおりです。
これらの方法を継続的に実践することで、ロジカルシンキング能力を徐々に向上させ、状況分析・課題解決力を磨けます。
社内外の研修やセミナーに積極的に参加し、最新の知識やスキルを習得することで、自身のマネジメントスタイルを進化させられます。
特に、リーダーシップ・コミュニケーションスキル・人材育成に関する研修は、専門家に分からないことを質問しながら、実践的なスキルを身につけるため、非常に有用です。
まずは自分が気になる研修・セミナーに参加して、知見を広めることをおすすめします。
メンターとは、自分の手本となってアドバイスなどをしてくれる先輩従業員のことです。
メンターは成功事例や失敗談など、自身の経験や知識を基に具体的なアドバイスを提供してくれるため、より実践的な知識を得られます。
また、現在の課題や将来の目標についてのフィードバックを受けることで、自己改善の方向性を明確にすることも可能です。
他部門との連携を強化すれば、組織全体の効率性と効果性の向上が可能です。
定期的なクロスファンクショナルミーティングを開催し、各部門の課題や進捗状況を共有することで、全体の最適化を図れます。
また、部門間の壁を取り払い、情報共有や協力体制を構築できれば、部署同士の信頼関係も築けます。
マネジメント経験を積むなかで役立つ資格は、次の5つです。
ビジネスマネジャー検定は、東京商工会議所が実施する資格です。
学習の柱となるのは次の3つのカテゴリーです。
転職時にあまり役立つ資格ではありませんが、中間管理職として必要なマネジメントや経営学の基礎知識を習得できます。
PMP（Project Management Professional）は、プロジェクトマネジメントの専門知識と経験を証明する国際資格です。
アメリカのPMI（Project Management Institute）が資格認定する資格であるため、日本国内はもちろん、海外で仕事する際もスキルを証明できます。
試験の難易度自体は高くないものの、受験資格を得るにはプロジェクトマネジメントの実務経験が36ヶ月以上必要だったり、35時間の研修を受講したりする必要があります。
キャリアコンサルタントは国家資格の1つで、労働者の職業選択やキャリア開発を支援する専門家です。
資格の勉強を通じて、人事スキルやカウンセリングスキルを習得できる他、厚生労働省が推奨している従業員のキャリア形成支援（セルフ・キャリアドッグ）の知識・スキルも習得できます。
そのため、企業内での人材育成やキャリア支援をするうえで、キャリアコンサルタントのスキルは非常に有効です。
社会保険労務士は、労務管理や社会保険に関する専門知識を持つ国家資格者です。
労働法規の遵守や労使関係の調整、福利厚生の管理、行政機関に提出する書類の作成・申請代行など、人事労務に関する幅広い業務を担当できます。
そのため、マネージャーとして活躍していきたいのであれば、取得すべきおすすめの資格です。
中小企業診断士は、経営コンサルティングに関する国家資格です。
日本版MBAとも呼ばれ、経営戦略や財務、マーケティング、人事管理など、経営全般に関する幅広い知識を習得できます。
企業経営に携わっている方や携わりたいという方は、スキルアップの一環として取得しておくべき資格です。
マネジメント経験とは、組織やプロジェクトの目標達成に向けて人やリソースを効果的に管理・運用する経験を指します。
必ずしも管理職としての経験だけでなく、プロジェクトリーダーやチームリーダー、後輩指導なども含まれることがあります。
そのため、マネジメント経験がなくても、プロジェクト推進や後輩育成の経験をアピールすれば、マネジメント職にチャレンジできる可能性もゼロではありません。
