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転職活動の努力が実り、晴れて転職先が決まったとしても、そこが「ブラック企業」だった場合には、自身の生活やキャリアに悪影響を与えてしまう可能性があります。
そのため、転職活動をする方は、ブラック企業の特徴や見分け方を知っておくことが大切です。
本記事では、ブラック企業の特徴や働くリスク、転職に失敗しないためのブラック企業を見分けるためのポイントを解説します。
応募する先がブラック企業かどうかを見分けるために、まずはブラック企業の特徴を整理しておきましょう。
ブラック企業の特徴として、従業員に対して法定労働時間を大幅に超える労働を強いることがあります。
法定労働時間を超える場合には労使協定が必要であり、労使協定がある場合でも際限なく労働できるわけではありません。
労働基準法で規制されているにもかかわらず、過度な長時間労働が常習化している企業はブラック企業と判断できます。
休日や有給休暇の取得を拒否することも、ブラック企業の典型的なパターンです。
定められた休日に休暇を取ることや、年次有給休暇を取得することは労働者の権利であり、これを合理的な理由なく拒むことは法律違反です。
有給休暇を申請した際に「そんな理由では休ませられない」など、休暇の取得を拒否する行為も違法です。
労働基準法では、法定労働時間を超えた労働に対して残業代を支払うことが義務づけられていますが、ブラック企業ではこれを無視し、従業員に無償で労働させることがあります。
ブラック企業は残業代の未払いについて、「うちには残業代を払う余裕なんてないから」「固定残業代に含まれるから、いくら残業しても残業代は出ないよ」などと不当な言い訳をしがちです。
しかし、余裕がないから残業代を払わなくてもよいというルールはありません。給与に固定残業代が含まれていたとしても、あらかじめ定めた時間を超えた労働が発生したら残業代が必要です。
ブラック企業で支払われる賃金は、仕事量や業務内容に見合っていないという特徴があります。
従業員はしばしば過剰な労働を強いられ、その割には不当に低い報酬しか得られないということが発生し、労働者のモチベーションを著しく低下させたり、経済的な不安定さを招く環境で働かなけれいけません・
賃金は労働の対価として、その価値を正当に反映すべきものです。
達成不可能なノルマや、長時間労働が前提となるノルマなど、過度なノルマを課すのもブラック企業の特徴です。
従業員が自己負担で商品を買い取らないとノルマの達成が困難な「自爆営業」が横行していることも少なくありません。
このような企業では、過度なノルマを強制したうえで、達成できないとほかの従業員が見ている前で叱責するなど、従業員の尊厳を大きく損なわせます。
ブラック企業では、パワハラやセクハラ、マタハラなどのハラスメントが横行していることが多々あります。
など
これらの行為はすべてハラスメントであり、従業員の心身の健康を害する大きな要因となります。
ブラック企業では、退職を申し出ても要求が認められないことがあります。
期間の定めのない雇用契約の場合、民法第627条の定めにより2週間前の通知で自由に辞めることができます。どんな理由であっても退職可能です。
しかし、ブラック企業は「辞めたら損害賠償を請求する」「退職するなら給与は払わない」などといって在籍を強要します。
健康上の問題や家族の事情など正当な理由を伝えたとしても、従業員を脅すような言動によって自社に留まらせようとします。
参考:民法(第627)
ここまで紹介したようなブラック企業で働くことは、精神的・身体的・経済的に大きな負担となります。自身のキャリアに与えるリスクも大きいです。
ブラック企業での勤務は、働く人の心身の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
長時間労働や過度なストレスは生活の質を著しく低下させ、睡眠障害やうつ症状、脳・心臓疾患などの健康問題を引き起こすことがあります。
また、ハラスメントは職場での人間関係の悪化は孤立感を増大させ、自信や自己評価を低下させることがあります。
経済的な面での影響も深刻です。
ブラック企業は往々にして過度な労働を強いる一方で、適切な賃金を支払わないことがあります。また、不当な理由で昇給・昇進の機会が極めて限られていることも少なくありません。
これにより、働く人は経済的な不安定さに直面することがあります。長時間労働やハラスメントなどで、精神的・身体的な健康問題が発生すると医療費が増加し、経済的な負担はさらに重くなるでしょう。
ワークライフバランスの崩壊は、ブラック企業が働く人に与える深刻な影響のひとつです。
長時間労働や休日出勤の強要は仕事以外の活動に参加できる時間を奪い、家族や友人からも遠ざけることになります。
これにより、モチベーションの低下や、将来的なキャリアパスに悪影響を及ぼす可能性があります。また、プライベートの良好な人間関係を構築しにくくなり、幸福感が低下します。
ブラック企業での勤務は健康だけでなく、専門スキルの向上やキャリアアップの機会を奪います。
ブラック企業では、従業員の成長や教育を支援する文化が欠如していることが多く、これがキャリアの停滞に直結します。
長時間労働や過度なストレスで、自己研鑽の時間を捻出することもままなりません。
また、適切な評価が受けられずに低賃金のままでいることも多く、中途入社の賃金は前職の賃金をベースで決まるため、転職した先でも賃金が低くなりがちです。
さらにブラック企業で酷使されたことで心身の不調が生じて働けない休職期間ができると、転職活動においても不利になる可能性があります。
ブラック企業に入社してしまわないためにも、転職活動の際に見分ける方法を知っておきましょう。とくに重要なポイントを解説します。
離職率は、応募先がブラック企業かどうかを見分ける重要な指標のひとつです。
一般的に、高い離職率は従業員が職場環境に満足していない可能性が高いため、求人企業の離職率を調べることで労働環境の質をある程度推測できます。
残業時間と休日の取得状況も、求人企業の労働環境を見極めるための重要なポイントです。
まずは、求人情報に残業時間に関する記述があるかどうかを確認しましょう。
書いていない、あるいは曖昧な記述にとどまっている場合は、少し注意が必要です。応募先企業の口コミから、休日出勤を強いる文化があるか、有給休暇が取得しやすい環境かどうか判断することもできます。
ブラック企業は、しばしば不透明な給与の仕組みを採用している場合があります。
給与計算方法が複雑で理解しにくい場合も警戒が必要です。複雑にすることで、給与計算において、不備を指摘されない状況を作り出している可能性があります。
また、残業代の支給が固定残業の場合、対象となる残業時間をオーバーした場合の対応について明記されていない場合は注意が必要です。
あわせて、人事評価制度を見ることも大切です。ブラック企業では評価基準が不明瞭で、不公平な評価が行われることが多々あります。従業員の声が反映されず、上司の主観による評価が行われることも少なくありません。
従業員の意見がどれだけ通りやすいかも、重要なポイントです。
従業員が自由に意見を述べ、それが会社の方針や業務改善に活かされている企業は従業員の満足度が高く、長期的なキャリア形成にもよい影響を与えます。
一方で、従業員の声が無視される、または意見を言いづらい雰囲気がある企業はブラック企業である可能性があります。
働く人のことを何も考えておらず、ハラスメントが横行しているかもしれません。
職場の雰囲気は働きやすさに直結する要素であり、ブラック企業を見分けるうえでも重要な指標のひとつです。
過度な労働やノルマ、ハラスメントなどが横行している企業は、不満や体調不良を抱えている人が多く、職場の雰囲気が殺伐としています。
従業員同士や管理職と従業員の間にコミュニケーションも少なく、疑問や不安を相談できる人がいない可能性もあるでしょう。
転職活動中にブラック企業を見分けるための大きなポイントとなるのが「求人情報」と「面接」です。少なくともこの2つは、ブラック企業を見分ける重要な機会であると認識し、しっかりチェックするようにしましょう。
まずは「求人情報」から見分ける方法を解説します。
求人サイトやハローワークなど、さまざまな媒体で長期にわたって求人を見かける企業には注意が必要です。
一見、求人が多いことは企業の成長や活気を示しているように思えますが、それが異常に多い場合は高い離職率が背景にあるかもしれません。
労働条件や労働環境が悪く、過度なノルマを強要される企業は離職率が高く人材が定着しないため、常に求人を出していることがあります。
条件や給与が業界相場から大きく逸脱している場合、その求人は慎重に検討する必要があります。
業界相場を大幅に下回る場合はもちろん、大きく上回っている場合も疑ったほうがよいでしょう。
業界相場よりも低い場合は不当な低賃金である可能性が高く、大幅に上回る場合は実際の労働条件が過酷であるか不透明な条件が隠されている可能性があります。
募集要項の文言が抽象的である場合も、ブラック企業の可能性があります。
たとえば「やりがいのある仕事」という表現は一見魅力的に聞こえますが、過度な労働を強いられるリスクがあります。
ほかには、「有給休暇は柔軟に所得可能!」など、具体的な有給取得率がでていないことも注意が必要です。
求職者にマイナスに捉えられてしまう情報を曖昧に記載しがちなのが、ブラック企業の求人の特徴です。
求人には採用予定数が記載されていることがありますが、その数が異常に多い場合は注意が必要です。
労働環境が悪いことから人が辞めることを前提として大量採用するのが通例になっており、その原因を改善しようという気もない企業かもしれません。
新規事業の推進な店舗拡大など正当な理由で大量採用をおこなう場合もありますが、そうした理由もなく採用予定数が毎年多いのであれば、ブラック企業を疑ったほうがよいでしょう。
求人の応募条件が緩すぎる場合は、慎重に検討しましょう。
たとえば、資格や経験が不問の場合、人材を不当に安い賃金で雇用しようとしている可能性があります。人が常に辞めてしまうため、条件を緩くするしか人材を集める方法がないのかもしれません。
もちろん、応募条件を緩くすることで間口を広げ、幅広く多様な人材を獲得したいと考えている企業もあります。そのため、応募条件が緩いから必ずブラック企業とは限りません。
応募要件が緩い企業は、入社後の教育体制を含めて検討することで、ブラック企業への応募を避けられるでしょう。
続いては、面接を通してブラック企業かどうかを見分ける方法を解説します。
面接官が横柄で上から目線の態度を取る場合、それは企業文化の反映である可能性があります。
面接官が候補者に対して威圧的で、経験や能力を軽視するような発言をすることは、その企業が従業員をどのように扱っているかを示しています。
また、面接中に不快な質問をされたなら警戒すべきサインです。
たとえば、妊娠の希望や性的志向、家族の職業に関する質問などが挙げられます。
採用はその人の適性や能力だけで選考することが求められており、このような質問は就職差別や法令違反にあたります。コンプライアンスへの意識が低い企業である可能性が高いため、気をつけましょう。
面接官の言葉が、しばしば精神論ばかりの場合は注意が必要です。
たとえば「うちの会社はチャレンジが好きな人には最適な環境です」や「努力と献身が報われる職場です」といった表現を使う場合が考えられます。
こうした表現は、過剰な労働が期待される文化や、個人の時間や福祉を犠牲にする可能性がある職場環境を示唆しています。ほかにも「やる気」「熱意」「根性」といった、精神的な部分を表す言葉がよく使われる場合も注意しましょう。
面接対応者のあいだのやり取りから、社内の人間関係や社風を推測できる場合があります。
たとえば、メインの面接官が面接案内役の人事スタッフに対して尊敬を欠いた言葉遣いをする場合や、無理な命令を出している様子が見受けられる場合、それは警戒すべきサインです。
厳格すぎる上下関係が垣間見える場合は、注意しましょう。
面接は企業の様子を直接確認できる貴重な機会なので、面接前後に職場の雰囲気に注目することが重要です。
面接の待ち時間や終わった後に従業員の様子を観察し、彼らの表情やコミュニケーションの仕方などを見てみましょう。
コミュニケーションがほとんどない、怒号が飛び交っている、従業員が覇気のない暗い表情をしているといった場合は要注意です。
ブラック企業は自社の悪い部分をひた隠しにするため、入社前に見分けることは簡単ではありません。
しかし、求職者として可能な限りの対策をしておくことで、ブラック企業に転職するリスクを軽減することは可能です。
求人情報や提示された労働条件を見る際、違法かどうか、おかしいところはないかに気づくためには最低限の法律知識が必要です。
たとえば、労働基準法は労働者の権利を保護するための基本的な法律であり、労働時間や休日、残業代などに関する規定があります。
また、最低賃金法により、地域ごとに定められた最低賃金を下回る賃金での雇用は禁止されています。
これらの法律を理解し、面接時や採用時に労働条件を確認することで、ブラック企業を見分ける手助けになります。
ブラック企業に転職しないためには、募集要項や企業情報を入念にチェックすることが不可欠です。
まず、募集要項に記載されている労働条件を詳細に確認しましょう。労働時間や休日、給与形態や福利厚生など、具体的な情報が明記されているかどうかを見極めます。
また、求人広告だけでなく、企業の公式ウェブサイトや転職エージェントを利用して実際の労働環境や社内の雰囲気についても調査することが重要です。
業界内のネットワークを活用して情報を集めることも有効です。
同じ業界で働く人々から直接話を聞くことで、企業の実態や労働環境についてのリアルな情報を得ることができます。
たとえば、業界関連のセミナーやイベントに参加する、業界の経験者に相談をもちかけるなどの方法があります。
転職口コミサイトは、過去にその企業で働いた人々からの生の声を集めており、労働環境や文化、経営陣の姿勢など求職者が知りたい情報が豊富に含まれています。
また、近年は前職のネガティブな情報をSNSに投稿する人も増えているので、SNSのチェックも有効です。
ただし、これらの情報はあくまでも個人の主観にもとづくものが含まれるため、鵜呑みにするのではなく、複数の情報源を参照し客観的な視点をもつことは忘れないようにしましょう。
内定を獲得した後も安心はできません。
雇用条件通知書(労働条件通知書、雇い入れ通知書)を隅々まで確認し、不当な労働条件が含まれていないか、事前に聞いていた条件と相違点はないかをチェックしましょう。
雇用条件については、労働基準法第15条、労働準法施行規則第5条の規定により書面による交付が義務づけられています。
そのため。雇用条件通知書がない場合は先方に求めましょう。それでも交付されない場合は法令遵守の意識が低い企業なので、内定の辞退も含めて慎重に検討するべきです。
参考:労働基準法
入社日を迎えると、その企業でのキャリアがスタートします。
今後のキャリアに傷をつけないためにも、内定が決まってから入社日までに不明点をしっかりと質問しましょう。
たとえば、雇用条件通知書の内容や任される業務内容、会社の文化などについてです。
実際の残業時間や職場の雰囲気、風土などは求人情報だけでは見えづらい情報であり、自力で情報収集するのは限界があります。
そこでおすすめなのが、転職エージェントの情報収集力を活用する方法です。
転職エージェントは、業界の知識が豊富で企業の評判や労働環境に関する情報をもっています。また、求人企業と直接やり取りする立場にあるため、企業の内情に詳しい場合も少なくありません。
このような転職エージェントの情報収集力を活用することでブラック企業を避け、自分に合った企業で働くチャンスを高めることができます。
ブラック企業では、働く人に過度な労働を強いるうえに低賃金・賃金未払い、ハラスメントが横行しています。
このような企業への転職を避けるには、最低限の法律知識をもつとともに求人情報や雇用条件のチェック、面接での見極めなどが求められます。
転職エージェントでの情報収集も活用しましょう。