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安否確認システムとは、地震などの災害発生時に従業員の安否を確認したりBCPをサポートしたりすることを目的としたツールのことです。
大規模災害発生時には、従業員の安否を確認するのは簡単ではありません。
しかし、安否確認システムを導入しておけば、災害発生時にシステム側がメールを自動送信し、従業員側からの回答をそのまま集計してくれるため、災害時の大変なタイミングで会社側が特段の労力をかけるまでもなく、従業員の安否状況を確認できます。
今回は、社内に安否確認システムを導入を検討中の経営者や管理部門の方のために、安否確認システムを導入するメリットや導入時のポイントなどを分かりやすく解説します。
安否確認システムは、企業にとって重要な資産である従業員の安否を、可能な限り効率的に把握するためのサポートツールです。
サービスによって安否確認システムの確認事項は異なりますが、一般的には以下の項目が対象とされます。
まずは、近年安否確認システムを導入する必要性が高まっている背景や理由について解説します。
地震などの大規模災害が発生した時には、最優先で従業員及びご家族の安否を確認する必要があります。
なぜなら、従業員は会社の大切な資産だからです。
緊迫した状況だからこそ、安全確認システムを活用して従業員の安否を正確に把握することで、会社としての対応方針を決定しやすくなるでしょう。
災害に見舞われた時には、行き交う大量の情報から必要なものだけを効率的に抽出したうえで、関係各所と共有しなければいけません。
誰がどこで被災したのか、復帰を目指すことが可能な状況なのか、生活環境や会社までの通勤手段は確保できるのかなど、被災状況や従業員に関する情報は全て必要です。
その際、会社側が各従業員に個別で連絡をとるのは途方もない作業です。
例えば、上司や管理部門の人材自身も被災している可能性があるため、そもそも連絡網が機能しない危険性が生じます。
また、仮に従業員に関する情報が集まったとしても、それを整理してデータ化して社内に共有する作業まで考えると、災害後の厳しい状況では限界があるでしょう。
以上のように、緊急時だからこそ的確かつ効率的に情報収集・情報共有する必要性が高いことを踏まえると、安否確認システムを導入する判断こそ合理的だと考えられます。
事業活動を営む企業には、安全配慮義務が課されています。
安全配慮義務とは、使用者が労働者の心身の健康と安全を守るために配慮を求める義務のことで、労働契約法第5条に示されています。
安全配慮義務を果たすための施策に何が必要かは、事業内容や企業の状況によって異なりますが、企業の社会的責任の重さを鑑みると、災害時のリスクマネジメントをしておくことも必要です。
安否確認システムは、従業員の安否確認の効率化するだけではなく、BCPにとっても重要なものです。
事業継続計画(BCP/Business Continuity Plan)とは、災害やトラブルが事業活動に与える悪影響を最小限に食い止めたうえで、円滑かつ継続的な事業活動を可能にするための諸対策のことです。
災害などの不可抗力が原因とはいえ、事業活動が停止すると経営に大打撃です。
売上げが立たなくなったりクライアントが離れたりすると、復旧後の事業継続が困難になり、倒産リスクが高まります。
このように、災害などのトラブルが原因で、事業活動が根本的に停止することを目的にするのが事業継続計画です。
例えば、メールやチャットなどのコミュニケーションツール、各種管理システムが非常時でも機能するようにクラウド化を進める方法が考えられます。
また、事業所が物理的に打撃を受けたことで、出社での勤務できなくなった時のために、リモートでの勤務ができるような社外環境を整備しておくのも重要な対策です。
災害発生時に企業活動を円滑に進めるためには、BCP計画によってハード面を整備することも大切ですが、同時に、業務を遂行する従業員も大切にしなければいけません。
なぜなら、どれだけ盤石の事業体制を構築したとしても、それを運用して仕事をする人材について把握する術がなければ意味がないからです。
そのため、地震などの災害が発生した時に事業活動への支障を最小限に抑えるためには、入念なBCP計画を策定・運用することに加えて、安否確認システムを導入・運用して従業員及びその家族の安否を効率的に把握するべきだと考えられます。
安否確認システムを導入するには、一定のコストを要します。
それでも、安否確認システムの導入が推奨されるのは、このサポートサービスにコスト以上のメリットがあるからです。
ここでは、安否確認システムを導入する5つのメリットについて解説します。
安否確認システムがなければ、災害時に従業員本人やご家族の安否確認をするために、それぞれに電話をかけたりメールを送信したりしなければいけません。
従業員の数が多い企業だと限られた人員だけでは到底連絡を取りきることはできませんし、全従業員の安否確認が終わるまでに途方もない期間を要します。
安否確認システムを導入すれば、従業員への連絡や情報収集を自動で処理してくれるので、スピーディーに安否確認できるでしょう。
地震のような大規模災害に見舞われた時、会社の人員だけで冷静かつ効率的な対応をするのは簡単ではありません。
安否確認システムを事前に導入しておけば、システムに登録している従業員に対して災害発生時でも自動的に連絡等の対応をとってくれるので、緊急時にも客観的で合理的な対策を期待できるでしょう。
システムを利用せずに、手あたり次第従業員の連絡先に問い合わせをすると、ミスひとつで安否確認漏れが生じる危険性があります。
安否確認システムは、登録している従業員全員に自動でコンタクトをとってくれるので、迅速に漏れなく全従業員の安否確認ができるでしょう。
安否確認システムを活用すれば、システム運用やデータ処理に必要な最小限の人員だけで対応できます。
災害時対応に割くことができる人員数には限りがあるので、システム導入によって合理的に安否確認作業を済ませるべきでしょう。
安否確認システム導入の成功事例を紹介します。
新潟中越沖地震により被災したある酒造業者は、自社の木造酒造・事務所・販売店が全壊する被害を受けました。
自主的に地震直後に出社した幹部社員が従業員の安否確認をするために各従業員に電話をかけましたが繋がるはずもなく、地震発生の当日中に全ての従業員の安否確認ができませんでした。
また、余震による被害拡大のために、災害発生後に、事務所の業務用パソコンからソフト・データを取り出す作業に時間を要してしまいます。
さらに、地震後のマスコミ対応に人員を割かれて、復旧業務に支障が生じるに至りました。
災害発生時の連絡方法についてのマニュアル化、広報窓口の一本化、業務データのクラウド化によって、復旧に向けた作業が効率的になることが明るみになった事案だと考えられます。
本件は、新潟県中越地震で被災した機械製造業の事案です。
本件では、地震によって工場設備に一部破損が生じました。
そのため、工場の安全点検・応急処置と余震対策を実施して、1週間以内に生産を再開するという目標が設定されます。
まず、従業員の安否確認システムを導入していなかったので、電話連絡が全て完了するのに2日を要しました。
その一方で、阪神・淡路大震災の経験を踏まえた顧客対応マニュアルができていたので、納品済みの製品の安全確認などはスムーズに実施できました。
また、数千万円の費用を投下して、地震感知器・強化棚等を設置するなどの形で耐震強化を進めたので、本地震から数年後に発生した新潟沖中越地震時には工場稼働日数を最小限に抑えることに成功しました。
本件では、阪神・淡路大震災の経験があったお陰で一部BCPは適切に運用されたものの、地震発生直後に従業員の安否確認をする体制構築の欠損が判明した事案といえるでしょう。
企業が想定するBCP計画を効果的に運用するには、それを稼働させる従業員の安否確認が大前提にあると考えられます。
新潟中越地震発生後の建設業者における事例を紹介します。
本事業者の場合、事業所自体の被害はないものの、建設業協会が自治体と締結している防災協定に基づいて、道路の巡回確認や応急措置などの公共対応の必要に迫られました。
会社に出社してから現場に向かった従業員についてはスムーズに安否確認できた一方で、県・市から直接連絡を受けて現場に直行した従業員については、会社側との連絡がつかないケースが頻発しました。
その結果、全従業員の安否確認が終わったのは地震の翌週のことです。
普段から防災訓練などを重ねて災害時対応についてシミュレーションしていたので復旧作業自体に滞りはありませんでした。
その一方で、安否確認方法については、従業員側からの連絡窓口の一本化やメール・GPSなどのツール導入の必要性が明らかになりました。
どのような安否確認システムを導入するかは、事業所によって異なります。
ここでは、一般的に導入を検討するべき安否確認システムの機能を解説します。
安否確認の自動通知機能は、システムに登録している従業員に対して、一斉でメールを送信する機能のことです。
従業員それぞれに個別連絡をする手間を省略できるので、無事が確認された従業員は他の復旧作業に集中できます。
安否確認システムでは、従業員側からの回答を自動集計してくれる機能を搭載しているものがあります。
自動通知されたメールには、安否に対する選択肢や任意入力欄が掲載されており、従業員サイドから回答が寄せられます。
災害時にこれを手作業で集計するのは労力がかかりますし、集計漏れがあると正確な安否確認ができません。
自動集計システムによって、従業員から寄せられた情報を瞬時に集計できるので、現状把握と今後の展望を活かしやすくなるでしょう。
災害発生時には、リアルタイムの災害情報や公共交通機関等の復旧状況、避難所の情報などが欠かせません。
安否確認システムには、災害状況の自動通知機能が搭載されているものもあるので、地震や津波などが発生した時には従業員の安全確保に役立つでしょう。
安否確認システムには、さまざまなサービスがあります。
ここでは、安否確認システムを選ぶ時の4つのポイントを解説します。
安否確認システムは、緊急時に活用するものです。
そのため、従業員にとって使いやすい仕様・システムである方が望ましいでしょう。
安否確認システムは自動でメール送信などの処理をしてくれますが、システムを運用・管理する作業は不可欠です。
そのため、安否確認システムを選ぶ時には、管理者にとっての使いやすさがポイントになります。
例えば、管理者権限の付与設定は容易か、グループ会社や部署などの階層ごとにグルーピングできるか、自動送信メールのテンプレーションは自由にカスタマイズできるかなどの機能性をご確認のうえ、利用するサービスを選択しましょう。
大規模災害が発生すると、電話回線が混線したり、通信インフラ設備が故障してインターネットが不通になったりする危険性があります。
これでは、安否確認システムが正常に作動しなかったり、メールの送受信ができなかったりしかねません。
そのため、安否確認システムサービスを選択する時には、システム強度の強さや緊急時のサポート体制の充実具合を基準に選ぶと安心できるでしょう。
安否確認システムを提供している事業者によって、料金プランは異なります。
どれだけ費用を捻出できるかは各企業の判断次第なので、経営に支障がない範囲の金額設定をしている業者を選択してください。
安否確認システムサービスと契約した後は、災害時にスムーズにシステムを運用するための準備が必要です。
最後に、安否確認システム導入後に実施するべきフローについて解説します。
まずは、安否確認システムを社内で誰が管理するのか、災害時に誰が運用するのかを決定してください。
一般的な企業の場合、安否確認システムを統括するのは総務部になることが多いです。
総務部門の人員間で、安否確認システムのサービス内容や管理方法を共有しておきましょう。
安否確認システムによっては、未登録者の情報を選別する機能を実装している場合もありますが、全従業員が確実にシステムに登録している方が、効率的に安否確認できることには間違いありません。
そのため、安否確認システムを導入した後は、全従業員にシステム導入について周知をしたうえで、システムへの登録を促しましょう。
他の防災訓練と同じように、安否確認システムも定期的に運用テストを実施してください。
操作性や機能性の問題点を事前に抽出したり、従業員側に使用方法を体験させたりすることで、緊急時の利便性を高めることができます。
安否確認システムは、災害発生時に従業員の状況を速やかに把握して、事業活動への支障を最小限に食い止めるために役立つサービスです。
特に近年、企業に課された社会的責任は大きくなっているので、「いかに従業員に安全な環境を提供できるか」が、企業の社会的評価を左右するポイントにもなっています。
日本は自然災害も多く、いつどのようなタイミングで被害に見舞われるか分かりません。
少しでも早いタイミングで安否確認システムの導入について検討を重ねて、自社にとってより良いサービスをご活用ください。